視界が晴れると、そこには長い金髪をなびかせ、優しく微笑む中性的な人物の巨大な壁画が描かれていた。周囲を見渡すと、大理石のような石材で造られた広間であることがわかる。おそらく、神殿か大聖堂の類だろう。
皆はどこへ行ったのか。不安がよぎったが、畑山愛子を含め、クラスメイトたちは全員無事なようだった。安堵したのも束の間、ここは一体どこなのかという困惑に包まれていると、一人の老人が歩み寄ってきた。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎いたしますぞ」
いきなり『勇者』などと呼ばれても、寧々花には胡散臭さしか感じられなかった。
「私は聖教教会にて教皇の地位に就いております、イシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、よろしくお願いいたしますぞ」
あまりにも嫌な予感しかしない。寧々花は、内心で深いため息をつくしかなかった。
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寧々花たちは、先ほどとは別の大広間に通されていた。
そこも同様にきらびやかな装飾が施されていたが、大きなテーブルがいくつも並べられており、晩餐会などに使われる食事処のようだった。
ここまで騒ぎにならなかったことに少し驚いたが、おそらく皆、状況を理解しきれていないことに加え、クラス内でカリスマ性のある光輝が皆を落ち着かせているからだろう。
席に着くと、メイドたちがカートを押しながら現れた。ハジメを含めた男子生徒たちが、彼女たちをじっと凝視している。寧々花は『自分もメイド服を着たらハジメは喜んでくれるのかな』なんて考えつつも、そんな彼をジトーっとした目で眺めていた。すると、急にハジメの顔が青ざめた。一体どうしたのだろうか。
全員に飲み物が行き渡ったことを確認し、イシュタルが口を開いた。
簡潔に言えば、この世界の名は「トータス」。
主な種族は人間族、魔人族、亜人族の三つだ。人間族が北を、魔人族が南を支配し、亜人族は東の森でひっそりと暮らしているという。
現在、人間族と魔人族は戦争中である。兵力では人間族が、個の戦闘能力では魔人族が勝っており、長らく戦力は拮抗していた。しかし、魔人族が魔物を使役し始めたことでその均衡は崩れてしまった。
「あなた方を召喚したのは〝エヒト様〟です。聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という〝救い〟を送ると。〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」
寧々花は、イシュタルが語る時の恍惚とした表情を見て、即座にこの世界の宗教が危険だと察した。ちらりとハジメの方を見ると、彼もまたイシュタルに対して警戒心を露わにしている。同じ危機感を共有できているのだと思い、寧々花は内心で少し嬉しくなった。
そんなやり取りの最中、愛子がイシュタルに対して憤慨していたが、彼から「帰還することはできない」と無慈悲な事実を告げられた。パニックに陥るクラスメイトたちを静かに見つめるイシュタルの瞳には、隠しきれない侮蔑の色が浮かんでいた。その表情に気づいた寧々花は、聖教教会から一刻も早く手を切る方法を考え始める。
しかし、ここで動くのが『光輝クオリティ』だった。彼は力強くテーブルを叩き、立ち上がった。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」
「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」
「俺達には大きな力があるんですよね?」
「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
一体何がどう「大丈夫」なのか、到底理解できない。寧々花が呆れ果てるのを他所に、光輝はクラスの空気を掌握し、皆を奮い立たせていた。
「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」
「龍太郎……」
「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」
「雫……」
「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」
「香織……」
いつもの幼馴染たちが賛同したことで、一人、また一人と追随者が現れ、クラスの総意となってしまった。
寧々花は静観を決め込んでいたが、確信があった。この中の誰かが、いつか必ず死ぬ――。
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話が終わると、寧々花たちは「ハイリヒ王国」という国へ向かうことになった。
どうやらここは「神山」と呼ばれる山の頂上らしい。その麓に位置するハイリヒ王国の正面門まで案内された寧々花たちだが、門をくぐった先に広がっていたのは、言葉を失うほど見事な雲海だった。
ここからどうやって降りるのかと思案していると、魔法のロープウェイのような乗り物で下山するらしい。ちょっとしたアトラクションのようで実は少し楽しかったことは、誰にも言えない秘密だ。
王宮の玉座の間で謁見を済ませた後、寧々花たちは晩餐会に招かれ、異世界の料理に舌鼓を打っていた。
しかし、寧々花は先ほどの出来事に思いを巡らせていた。
返事も待たずに扉を押し開けて入ってきた教皇。一国の主である王が、教皇を出迎えるために立ち上がって待機していたこと。そして、王が教皇の手に接吻(キス)を捧げていたこと。
これらの光景は、この国を実質的に動かしているのが国王ではなく教会であり、ひいては教会の背後にいる「神」であることを示唆していた。状況がどんどん悪化しているような嫌な予感に襲われるが、今考えてもどうにかなる問題ではない。寧々花は思考を放棄し、目の前の食事を楽しむことに専念した。
ハジメはなぜか、期待を込めたような眼差しでランデル王子を見つめていたけれど、一体何があったのだろうか。
ちなみにそのランデル王子は、といえば香織にしきりに話しかけている。ませた子供だなと思いつつも、どこか微笑ましい光景ではあった。
晩餐会がお開きになり、寧々花はそれぞれに用意された個室へと案内された。天蓋付きのベッドを目の当たりにして少しテンションが上がったものの、立て続けに起きた出来事の疲労が押し寄せてくる。彼女はそのまま、深い眠りへと落ちていった。
寧々花はハジメのハーレムに加入
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するに決まってる(メインヒロイン)
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するに決まってる(サブヒロイン)
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しないでくれ
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お前が決めろ