寧々花たちは、メルド団長率いる騎士団の面々と共に、大迷宮『オルクス』への挑戦者で賑わう宿場町ホルアドに到着した。新兵訓練にも頻繁に利用される場所らしく、彼らは王国直営の宿屋に腰を落ち着けることとなる。
香織、雫と割り当てられた部屋に入った寧々花は、ふたりが休息をとる傍らで、明日から挑む大迷宮の情報をひとり静かに整理していた。
オルクス大迷宮
世界に七つ存在する『七大迷宮』のひとつ。全百階層に及び、深層へ進むほど強力な魔物が跋扈する死地である。
しかし、階層ごとに魔物の強さが画一的で把握しやすく、地上のものよりも良質な『魔石』を採取できるため、挑戦者は後を絶たない。
魔石とは、魔物の身体に宿る力の核のことだ。魔力の通りが良いため軍事利用のみならず、人々の日常生活においても極めて需要が高い。しかし、良質な魔石を持つ魔物ほど強力な『固有魔法』を使いこなす。
固有魔法とは、一種類しか行使できない代わりに、詠唱も魔法陣も必要としない、魔物特有の唯一無二の魔法である。
――それこそが、魔物に油断ができない最大の理由であった。
情報の整理を終え、ハジメに会うべく部屋を出ようとしたその時、同室の雫に声をかけられた。振り返ると、雫は呆れたような、しかしどこか温かい眼差しを寧々花に向けていた。
「そんなボサボサの髪で南雲君に会いに行くの? 整えてあげるから、こっちにいらっしゃい」
転移前の教室で何度も繰り返されたやり取りに、寧々花は渋々ながらも促されるまま、大人しく雫の前に座る。雫の手つきは慣れたもので、寧々花の髪を丁寧に梳かし始めた。
「雫は、なんで私を気にかけてくれるの?」
ふと、そんな疑問が口から零れ落ちた。自分でも驚いて思わずしまったという表情をする寧々花だったが、雫は彼女の顔が見えているかのような落ち着いた笑みを浮かべた。
「寧々花が、何処か香織とは違うところで目が離せない雰囲気があるからかもしれないわね」
「なにそれ~。もう、雫は私まで妹にしようとしてるの?」
「馬鹿なこと言わないの。そんなわけないでしょう。ほら、終わったわよ」
「うん。ありがとね、雫」
気遣ってくれる雫への感謝を胸に、寧々花は軽く髪を整えてから、改めてハジメの待つ場所へと向かった。
ハジメの部屋の前まで来ると、中から話し声が聞こえてきた。寧々花は思わずノックを止め、壁に背中を預けて耳をすませる。
「守ってくれないかな?」
「え?」
「白崎さんは〝治癒師〟だよね?何があってもさ……たとえ、僕が大怪我することがあっても、白崎さんなら治せるよね。その力で守ってもらえるかな? それなら、絶対僕は大丈夫だよ」
聞き慣れたハジメの声。そして、香織の声が続く。
「南雲くんは、私と会ったのは高校に入ってからだと思ってるよね? でもね、私は、中学二年の時から知ってたよ」
「私が一方的に知ってるだけだよ。……私が最初に見た南雲くんは土下座してたから私のことが見えていたわけないしね」
それは、寧々花の知らない出来事であった。
「強い人が暴力で解決するのは簡単だよね。光輝くんとかよくトラブルに飛び込んでいって相手の人を倒してるし……でも、弱くても立ち向かえる人や他人のために頭を下げられる人はそんなにいないと思う。……実際、あの時、私は怖くて……自分は雫ちゃん達みたいに強くないからって言い訳して、誰か助けてあげてって思うばかりで何もしなかった」
「白崎さん……」
「だから、私の中で一番強い人は南雲くんなんだ。高校に入って南雲くんを見つけたときは嬉しかった。……南雲くんみたいになりたくて、もっと知りたくて色々話し掛けたりしてたんだよ。南雲くん直ぐに寝ちゃうけど……」
「あはは、ごめんなさい」
「だからかな、不安になったのかも。迷宮でも南雲くんが何か無茶するんじゃないかって。……でも、うん」
「私が南雲くんを守るよ」
「ありがとう」
扉の向こうで交わされる穏やかで、しかし確固たる信頼に満ちた言葉たち。寧々花はただ、壁に寄り添ったままそれを聞いていた。ハジメと話せるような雰囲気ではなくなってしまった為、会話がたわいない雑談へと移ったところで、彼女はその場を静かに離れた。
――自身の心の奥底で渦巻く、名付けようのない暗い感情に、まだ自分でも気づかぬまま。
ハジメの部屋を醜く歪んだ表情で静かに見つめる人影にも気づかず。
今回はだいぶ短くなりました。
次回以降からバトルシーンが出てくるかと思います。
寧々花はハジメのハーレムに加入
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するに決まってる(メインヒロイン)
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するに決まってる(サブヒロイン)
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しないでくれ
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お前が決めろ