TS少女は野蛮な世界を塗り替えたい 作:きうりの魂
燃え盛る青い炎の下には百人を超える人間が集っていた。記憶に導かれた彼らは、多種多様な武器を携えてやって来たという訳だ。その表情は人によりけり。
顔を真っ赤にして怒鳴り散らしている人間もいれば、心底楽しそうに歩き回っている人間まで。楽しそうだから集まってきた野蛮人が大半っぽいのはご愛嬌。広場に集合した彼らは、当初の目的を忘れてわちゃわちゃと戯れていた。
まあいいや。トロール漁で引き揚げた野蛮人の群れだから、こっちに害がないなら放置しておこう。それよりめぼしい異能力者を発掘して、力を頂いてしまうことにする。勿論幹部優先だけどね。
青黄紫だっけ。下手に潜伏されると見つけるのに手こずるだろうから、不慣れな異能を使ってまで煽った訳だけどちゃんと釣れるかな。
「消えろや」
あっ、火鉢が弾け飛んだ。
異能でそれなりに固めていた筈の火鉢は、胴が破裂したことによって呆気なく崩壊し始めた。上空に吹き上げられた土が雨のように振り注ぐ。
火鉢はどうでも良いけど炎は落下させちゃいかん。熱を保つ為のエネルギーをカット。流れで熱操作で火種になりそうな高温を上空に逃がした。火遊びをした後は、ちゃんと消火しなきゃ。大火事になっちゃうからね。
後片付けを終わらせたら怒気を含んだ声のした方向に目を凝らす。土煙に隠されてあんま見えないけど、背丈的に子供かな? 物騒な発言の直後に火鉢が吹き飛んだから、無関係とはいかないだろう。
一つ、異能を起動した。青白い火花が指先から爆ぜる。肌の産毛が逆立つソレを撃ち込もうとして感じたのは、違和感。
「⋯⋯っ!」
咄嗟に脚力を強化して、バックステップを踏む。これアカンやつ!
瞬間。先程まで私が立っていた地面が抉り取られた。ノーモーションアタック怖え。結構広く消し飛んでいるが、注目するべき部分はそこじゃない。
絶対殺したると言わんばかりに込められた力の大きさにこそ目を向けるべきだ。ここまでの力だと、私の防御壁も弾け飛びかねない。朱雀をちょっと舐めてたな。
身体強化を重ねて、身体に満ちる活力を頼りにステップを重ねる。風を切りながら不規則に動いていけば流石に捉えられないみたい。背後の空間が消し飛んでいくのはちょっとしたホラーだが、当たらなければどうということはない。
私を攻撃してる奴は⋯⋯青い着物の人だね。宙に浮きながらなにやら喚いているようだし、とても正気とは思えない顔をしている。
「死にさらせやボケぇ!!」
「貴方がね」
指先に荒れ狂うエネルギーを集めて、今度こそ電撃を放つ。白銀の雷光が空間を切り裂いて一直線に伸びた。
少女は頭に雷を受けて吹っ飛ぶ。空中でゴロゴロと。うーむ、直撃したように見えたけどあんま効いてない気がする。私への攻撃は止まったからダメージゼロって事はないと思うんだけど。
とはいえ落ちてくることはないし、そもそも避ける素振りを見せなかったから火力が足りないのかもしれない。それかどんな攻撃も正面から受けるバーサーカー。戦闘スタイルまで野蛮なの?
というか今吹っ飛んでったのが青か。青い着物に、強力な空間干渉能力。諜報にも使った情報開示の異能で『見て』みれば、それが念力の類であることまで分かる。万の人間を動かすという話は、物理的なものであったらしい。
じゃあさっさと殺してしまおう。残りの幹部は未だ確認出来ていないが、彼女と同等レベルの異能を持っていると仮定した場合かなり面倒だ。
露払いに当てていた実体化異能のいくつかを呼び戻す。まあ、手軽に火力を出したいなら光の異能だよねって事で起動!
起動と同時に街が薄暗くなり始めたけど、夜になった訳じゃないよ。ちょっぴり光を回収させて貰ってるだけだ。
集めて、集めて、更に集める。地面とか瓦礫とか建物が光源に向かって伸び始めてる。光が歪んでるだけだから手を伸ばしても触れないけどね。
空間が歪むほどの超高熱が、手のひらに押し込められていく。極彩色の塊は幹部ちゃんへのプレゼント。暗くなっていく朱雀とは対照的に、一点の光は輝きを増していく。
綺麗な光だ。私の防御壁を貫通する熱が無ければネックレスとかにして身につけたいんだけどね。光の中へ熱を押し留める作業は、光の回収と並列して行なっている。気を抜いたら私と朱雀が蒸発しちゃう。
震撼。
何をしようとしているのか気付いた青幹部ちゃんが、私ごと広場を押し潰そうとしているらしい。火鉢の残骸や野蛮人が、蟻みたいに潰れていく。でも私は立っている。
干渉範囲が広くなれば一部に掛けられる力は減る。確かに彼女の念力は強力だけど、ここまで広い範囲を一度に攻撃するなら力が分散するから、障壁で耐えられちゃうんだよ。
広場は原型がないくらい消えちゃったけど、私は無傷です。広範囲攻撃は通じないと悟ったのか細々とした集中攻撃が飛んできた。避けきれずにコートの一部が千切れる。
熱操作と光集束、障壁展開に異能実体化。昔の私なら絶対耐えられない多重タスク。正直頭が痛い。ズキズキじゃなくてガンガン殴ってくる方の痛みね。
「クソがあぁぁぁっ!!」
溜め込まれた極彩色の光が、一転して咆哮を上げた。手のひらから解き放たれたのは、視界のすべてを焼き尽くす極彩色のエネルギー。あまりの超高熱に、射線周辺の空気は一瞬でプラズマ化しバチバチと紫色の放電を撒き散らす。
世界を白一色に塗り潰しながら突き進むその光は大地を溶かし、巻き上がった土砂を一瞬で蒸発させながら突き進む。
青幹部ちゃんがわざわざ上空に滞在してくれて助かったよ。威力が高すぎて地上にぶっ放すのは躊躇する様な異能だからさ、これ。
眩しさと高温で近寄れないからどうなってるのか分かんないけど、流石に蒸発したんじゃないかな。私がこの規模の攻撃受けたら逃げるよ? 絶対障壁吹き飛ぶし、正面から受けるもんじゃないからね。青幹部ちゃんは避けなかったけど。
光線は上へ上へと伸び続け、最後は上空で大爆発を巻き起こした。突風が地上にまで流れ込んでくるのを感じながら、広場後を見回してみる。
草が剥げ、所々溶解している地面。炎上を通り越して灰になった建物群。朱雀の人たちは災難だと思うけど、一応これって戦争なのよね。広場にいた人間を潰したのは青幹部ちゃんだし。
私の中に念力の異能があるから、オリジナルは塵一つ残さず消えたみたい。あの光線に真正面から衝突したらそうなるわ。
「わぁ~! おっきい光、ギュンギュン!」
荒れ果てた大地を幼女が走り回っている。親御さんは何をしているんだか。子供から目を離しちゃダメでしょうが。
⋯⋯ん? この子どっから湧いてきたんだ?
あれだけの光線だ。地表にも少なからず被害はあったはず。しかし目の前の子供は、火傷一つなく元気そうにしている。異能案件か? 熱耐性的な何か持ってるんか?
「あっ! おねーさんが光のひと? ゆかりと同じ!」
「貴方───」
話しかけた直後、私は幼女の背中から出現した色とりどりのビームを見た。それらは反応する間もなく動き出し、私を吹き飛ばす。
痛っ! くっそこの子供出会い拍子にビームぶちかまして来やがった。野蛮仕様の幼女可愛くねえ。
仕方ない。取り敢えずついさっき手に入れた念力で拘束して話を────
「は⋯⋯?」
ない。念力がない。確実に手に入れた筈の力が、最初から存在していなかったかのように、綺麗さっぱり消滅している。
目の前の幼女が取った? それとも、青幹部ちゃんが死んでいなかったとか? 一度死んで、その後に生き返ったとかなら理解できる挙動だ。そして、それを出来る能力者にも心当たりがある。
生を扱う黄色の幹部。まさか塵一つ残さない状態から蘇生出来る化け物性能だとは思っていなかったが。取り敢えずこの幼女をどうにかして、黄色幹部を探しに行こう。
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