TS少女は野蛮な世界を塗り替えたい   作:きうりの魂

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文字数少ないね⋯⋯

提出が滞ると死んじゃうレポートとアクナイエンフィのハフバが同時に迫ってきてるので失踪します


時間が足りないというミステリー

 あれからテンと男をそれぞれ送り届けた後、私は帰宅して地図を広げていた。紛争であれ戦争であれ、地形の把握は最重要事項の一つであると元の世界では説かれていた覚えがある。

 

 だから私は定期的に工兵を街の外へ派遣して、地図を作成させているのだ。ただしこの世界の地形は結構簡単に変わるのであまり信用していない。ないよりはマシ程度の落書き帳と思っていたほうが失敗は少なくなる。

 

 まず私の街が中央にある。西に進むとぶち当たるのは砂漠。西についてはそれだけしか分かっていない。私の異能で作成した工兵部隊が3週間ほど移動して得られた情報がそれだけだったからだ。

 

 単純に砂漠が広いのか異能が関わっているかまでは分かっていないが、今のところ砂に用事はないので放置している。面倒を後回しにしているとも言う。

 

 砂漠を南下すれば神聖王国跡が見られるけれど、特に面白いものがあるわけではない。かつては中世ヨーロッパのように城やら城壁が存在していたが、もう何も残っていない。観光には向かないだろうな。

 

 私の街から南下すると今度は巨大な森林地帯にぶつかる。槍とか弓で攻撃してくるタイプの原住民が生息しているけど、精神性はその辺の野蛮人とイーブンだと思う。文明が発達しているか、していないか程度の違いのはず。

 

 森を抜けると海に当たったから、南はそこまでしか調べていない。もっともっともーっと頑張って南下すれば文明人の生息する楽園に辿り着けるかもしれない。野蛮人に滅ぼされてないといいね。

 

 東には朱雀と細々とした街がいくつか。朱雀は昔視察に行ったことがある。古風の日本に近い雰囲気で、懐かしさを感じる場所だった。

 

 ナチュラルに治安が悪いのはご愛嬌。桜は綺麗だったし温泉も気持ちよかった。もしもこの世から野蛮人が消えたのならという条件で旅先を選ぶとしたら、真っ先に候補へ上がるのが朱雀だろう。

 

 それくらい野蛮人がやばい。数が多いだけでなく、メキシコギャングとイタリアマフィアが合体したみたいな組織があそこで幅を利かせている。

 

 その組織が朱雀に結界を張っているから出入りがかなり大変なんだよね。というか、さっき男が語っていた血祭りとやらの運営をしているのも同じ組織でしょ。

 

 そして北上していくと、そり立つ山脈が歩みを拒んでくる。この山脈、何年か前までなかったはずなんだけどね。当たり前のような顔をして居座る異常事態に、当時の私はかなり驚いてしまったことを覚えている。タケノコじゃないんだからポンポン生えてくるのは辞めてほしい。

 

 山を越えれば私が確認した中では最も栄えている商業都市に到達できる。紙幣を含めた近代文化のいくつかはこの都市から到来してきているので、私はこの都市に文明の啓蒙者がいるんじゃないかと睨んでいる。

 

 私自ら赴こうとしたこともあったけれどその度に邪魔が入ってしまい、結局今日まで行かずじまいだ。異能で作った情報員は尽く道中の山崩れで消し飛ぶ為、現地からやって来た商人か旅人に話を聞くしかないというのが現状である。

 

 

 ⋯⋯うーん、なんか引っかかるんだよねぇ。デジャヴ?

 

 まあ気にしなくていいか。むしろ知らないほうが上手く事を進められそうだ。何を進めるのかは分からないけど。

 

 

 とにかく、私は私の縄張りを守るために行動しなければ。潜伏系の異能か情報操作系の異能を持った諜報員を朱雀に送りつけよう。そして私の街にちょっかいをかける計画が立ち上がっているのなら、計画立案者を痛めつけてやろう。

 

「ふぁ〜⋯⋯」

 

 ふとあくびが漏れる。あれこれ考えていたため時計を見ていなかったが、時計の針は既に頂点を越えていたらしい。眠くなってきたからこれ以上の考え事は辞めておこう。深夜テンションは碌でもない事態を引き起こすだけだって私は過去に学んでいる。

 

 パーカーとシャツ、ついでにズボンを脱ぎ捨て、洗濯機に投げ込む。おっと、パーカーは洗濯ネットに入れるんだった。引っ張り出して裏返す。ネットに突っ込んで再び戻せば片付け終わり。

 

 私は無地の寝巻きを身に纏ってソファーへ転がった。まだまだ成長期だからたくさん寝なきゃね。おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

「そんで? もう一回言ってくれへん? 朱雀が何やて?」

 

「何度も言っておるじゃろう。このままだと朱雀は壊滅すると。件の魔王によってな」

 

 鳥居を抜け拝殿を通り過ぎた先の建造物。いわゆる本殿の内部で、二人の女が対談していた。

 

「冗談も大概にしぃや。ウチらがこまい街一つを統治して満足しとる程度の小物に負けるわけないやろ」

 

 なめとんちゃうぞ、と青い振袖を身に纏った勝気な女が扇子で地面を強く叩いた。直後に少女は扇子を一瞥し、じろりと青い振袖の女を睨みつける。

 

「私に勝てないような小童がぬかしおる。お主ら、狐六番館の幹部が全員で仕掛けようとも返り討ちにされるじゃろうて。あの魔王が着込んでおる防護壁破壊の目処も立たぬと見える」

 

 つらつらと語る少女の言葉に、青い振袖の女は憤りを隠せずにいた。それは戦う前から弱腰な少女の態度に対してであり、その弱腰少女が朱雀で最も強い現状に対してのものでもあった。

 

 強者が強者と、しのぎを削って殺し合う。最上級の喜びだ。幸福だ。この世界で、それが理解出来ない人間はいないだろう。道理を理解出来ぬ赤子だってその道義には頷く。

 

 しかし、少女はそれを理解できていない。赤子にも劣る倫理観。彼女は悪びれもなく戦いを避けるべきだと語る。

 

 女がそれを無知蒙昧の外道だと、迷妄な年寄りであると断ずるのは簡単だ。しかし、この世界においては道理よりも重視されているルールがある。理不尽な暴力は、時に道理すらも歪めてしまう。

 

 だからこそ女は、少女に強く出ることが出来ない。譲れないものは耐えて守り抜くしかない。青い振袖の女は少女の言葉を聞き流し続け、日が沈む頃にやっとの思いで少女の神社から離れることに成功した。

 

「よう覚えとけよ、あのクソアマ」

 

 無論、諦めるつもりはないと女は心に誓っていた。弱腰の少女から協力の言葉を得られなかったが、むしろそれはプラスであるとも考えた。あの少女の呪法は如何せん強力すぎるため、一度少女が戦場に出ると取りこぼしなく皆呪殺されてしまうのだ。

 

 その為女はいつも満足できない戦いを強いられていた。此度の争い事に手出しして来ないというのなら、女は自身の取り分が大幅に増えるだろうと喜んだのである。

 

「待ちきれへんなぁ〜。魔王とかいうやつどんな見た目しとんねんやろな。はよう腹かっ捌いて、血ぃすすりたいわぁ」

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