互いの正義を賭けて戦う叛逆軍シアンと
「死ねぇ!」
ゼンはシアンに刀を振り下ろす。シアンはそれを軽々と躱し、追撃を加える。
素早い突き、ゼンは長い刀で絡め取るように槍を抑えた。
身動きをとれないシアン、ゼンはもう片方の刀で首を狙い斬撃を与える。
「
シアンは巨大な冷気を放つ。その冷気に充てられたゼンの体は、凍てつき停止する。ゼンは腕が凍ったタイミングで素早くシアンから距離を取った。
「なんて強力なギフト、才能のくせに」
ゼンは嫉みの感情をシアンに向ける。
ゼン、彼の扱う刀は神剣ではない、彼には神剣を扱う才がなかったのだ。それに、シアンのような生まれながら得られる能力、
しかし、彼はそんな才能の差を壊すために努力した。努力して努力して努力して努力して、その果てにどんなギフト持ちとも同等に戦える戦術を編み出したのだ。
「
シアンは斬撃を繰り出す。ゼンは両手の刀を重ねて受け止める。しかし、シアンの斬撃から放たれる冷気により、刀は凍り付く。ゼンは両手の刀を手放し、シアンの腹部を蹴る。
シアンは後方に吹き飛ばされる。シアンは体勢を立て直そうとしているところに、何かが転がってくる。
「卑怯だとは言わせない。いつだって、俺たち非能力者は大きなハンデを抱えているんだ」
煙が薄れてゆく。その中から現れたシアンは無傷だった。破片が皮膚を貫く直前、彼は冷気を放出し、破片を停止させていたのだ。しかし、
「
長い刀がシアンの手首を切り刻む。シアンは握力を失い、槍を手放してしまった。
「正攻法がダメなら搦手で」
ゼンの追撃、シアンは紙一重で避けゼンの腹部を蹴り上げる。
「搦手がダメなら数で」
他の騎士がシアンを取り囲み、突きを繰り出す。
「貴様を圧倒する」
何本もの剣がシアンの身体を貫いた。
――――――――――――――――――――
「流石に数が違いすぎる」
どんなに敵を対処しても、無尽蔵に湧き続ける。どんな強者であってもこの人数差で生き残ることは出来ないだろう。
「あーもう!こんなちまちました作業はうんざりだ。俺の必殺技で片付けてやる」
セツナは重心を下ろし、右足に力を溜める。溢れ出す殺気、セツナの全身に風が巻き起こり、技を放つ寸前。
「やめとけ、そんなポンポン技を打ってたら持たんぞ」
セツナもシアンと同じくギフト持ちで生まれつき特別な力が扱える。しかしそれは、無尽蔵に使えるものではなく、通常では起こり得ない事象を顕現させる力、
鵼はその事を理解してセツナの身を案じていたのだ。
「しるか!」
セツナは鵼の忠告を無視し、大地を蹴り上げ風を巻き起こす。
「
セツナは旋風を巻き起こしながら、常人では視認できないような速度で敵陣に突っ込んでいく。
そこから繰り出される無数の斬撃、それは災害のように騎士たちに襲い掛かる。繰り出される斬撃と旋風により、数百もの騎士を吹き飛ばし、戦闘不能まで追い込んだ。
そして風は止んだ。
「こんなもんだろ」
セツナは一息つく。そこには大量の騎士が転がっていた。
「これが俺の力だ!殺れるもんなら殺ってみろ!」
セツナは敵に対して威嚇する。彼らは少し怯んだが、構わずセツナを取り囲む。そしてセツナは完全に包囲されてしまい、身動きをとれないでいる。
「あー!言わんこっちゃない!」
鵼はセツナを救出しようと進もうとするが、敵の層が厚すぎてどうもできないでいた。セツナのもとに訪れる絶体絶命のピンチ。騎士たちはセツナに対して剣を振り上げる。その瞬間、
「
巨大な鉄塊が精製され、地面と平行にまっすぐ突き進む。その軌道上にいた騎士たちは等しく吹き飛ばされ、セツナへの道が生まれる。
「やっぱ、デカいものは時間かかるな」
鵼はその隙にセツナを担ぎ戦線に戻った。鵼は少し緊張がほぐれて一息つく。
「ふぅ、助かった。あんたは確か騎士団長の」
鵼はエデンの姿を凝視して右手を差し出す。
「エデンだ。元だけどな」
エデンはその手を握り返す。
「お前なんかいなくても、俺一人で何とかなったし」
セツナはそっぽを向いてボソッとつぶやく。
「恩人に対してその言葉はないじゃろ」
鵼はその言葉を聞いてセツナに手刀を与える。
「痛~な!何すんだよクソ爺!」
セツナは激高し暴言を吐く。
「お前はそうやっていつもいつも」
それに対して鵼も日ごろの怒りをぶつける。
そんな自分たちだけの世界に入った二人に騎士が斬り掛かる。
「
エデンは鉄の盾を生成してその斬撃を防いで跳ね返す。
「忘れてないか?ここは戦場だぜ」
エデンは(こいつら正気か?)といわんばかりの顔で言う。
「うっ、すまん」
鵼は反省した表情を浮かべて謝罪する。
「まあ、いいさ。今はここを切り抜ける方法を考えるんだ」
そして3人は武器を手に取り騎士に立ち向かった。
――――――――――――――――――――
(何が起こった?)
何本もの剣が、シアンの体を貫いた。常人ならば、いくつもの臓器が破損し、尋常じゃない量の血液が溢れ出る。生きていれば奇跡だろう。
しかし、シアンの体から血液が漏れることもなく、動きに一切支障は生まれなかった。それどころかシアンの体を貫いた剣は凍てつき粉々に砕けてしまった。
シアンの体にできたはずの傷は、すべて凍り、塞がっていた。
そしてシアンは槍で薙ぐ。単純な斬撃で周囲にいた騎士は全員致命傷を負い、横たわる。ゼンとシアンは睨みあう。
「おかしい?なぜ生きている。いったいどんな手を使った!」
ゼンは焦りを表に出して叫ぶ。
「単純に、俺を殺すには不足していただけだ」
シアンは冷たく言い放つ。しかし、その言葉はゼンにとっての地雷だった。
「俺は努力した!策も用意した!どんな手も使った!貴様に負ける道理はないだろ!」
ゼンは今まで心の奥に押し込めていた感情を爆発させた。たしかに、彼がこれ程の力を手にするのには、想像も絶するような努力が必要だっただろう。
「努力か。それは何の免罪符にもならない」
だが、シアンはそれを否定するかのように言う。
「貴様は大きく勘違いしている。結果が伴わないならば、努力に意味などない」
シアンはそれを嫌悪するように吐き捨てる。それに対し、ゼンは反論する。
「貴様のような才に恵まれた者に、努力の価値は判るまい」
シアンはあきれた様子で口を開く。
「俺がここまでの力を手に入れるまで、一切努力をしてないとでも思ったのか?」
このごく単純な事実によって、ゼンは今まで頭から抜けていたことを思い出す。
いつだって、努力量が彼のアドバンテージだった。それ故、誰でも気づけるような事実を見落としていたのだ。自分以外の人間も
ゼンは取り乱してシアンに攻撃を仕掛ける。
「はぁぁぁぁぁ、
的確にシアンの手首を狙った攻撃。どんなに心が取り乱しても、技の精度が落ちることはなかった。これも努力の成果だろう。
それに対してシアンは、大きく前に踏み込む。ゼンの斬撃を紙一重で避け、致命的な一撃を与えるために槍を突き出す。
「
膨大な冷気を纏った驚異的な突き。それがゼンの体を貫く直前、
「
ゼンと槍の間に透明な盾が顕現し、シアンの攻撃がはじかれる。
「ゼン、よくやった。ここからは私たちが加勢する」
凛とした声が響く。それは、
そしてハルフィアはシアンに斬撃を加える。
シアンはそれを槍で受け止め、後方に飛ぶことによって衝撃をいなした。
「
その瞬間、シアンの上空の大気が圧縮し、シアンを押しつぶす。
「貴方を殺すまでは死ねません」
その声がする方向にシアンは顔を向ける。そこには、シアンに貫かれたはずのレーゼベッテが剣を地面に突き刺し、辛うじて立っていた。
「手加減はしない!最初から全力で相手をする」
そう言ってハルフィアは神剣を地面に刺す。そこを中心にして紋章のようなものが広がっていく。レーゼベッテも同じように紋章のようなものを展開していく。
「「神域開放!」」
その言葉と同時に、紋章は光放つ。
「戦略神域-
「征圧神域-
紋章内の大気が圧縮し、シアンは跪く。更に、紋章内の騎士は透明な盾に包まれた。
「
ゼンはシアンに向かって攻撃する。シアンは追撃に意味がないと考え、後方に飛ぶ。
「征圧剣!」
回避した先で、レーゼベッテが剣を振り下ろす。その剣先は僅かに左にぶれていた。そしてシアンはレーゼベッテの軌道を注視しながら右に避ける。そして彼の心臓を神剣アテナが貫いた。
「想定通りだ。いかに貴様が強かろうと、戦略の前には無力」
ハルフィアはそう言うと、シアンから剣を引き抜く。
シアンの体から大量の血が流れ落ちる。
「やはりか。心臓まで凍らせれば血液が回らなくなるからな」
そしてシアンは心臓を抑え、地に伏せた。