一柱の神が総てを支配する国、ディアスタシノス神教国。その聖騎士団長だったエデンは、自らの正義の為に、祖国に叛逆する。叛逆軍の協力の末、勝利を納めたエデン。彼は叛逆軍に加入し、次の目的地へ向かっていた。
寒い。あまりの寒さに目が覚める。
目の前には知らない天井、知らない場所、そして冷たい金属の台に熱を奪われるのを感じる。
毛布はない、毛布どころか私は一糸纏わぬ姿であることに気づく。
そして周囲を見渡すと、私と同じように何百人も裸体で横たわっていた。
何故このような状況になっているのか思い出すために私は、ジャンヌ・シュトラウドは直前の記憶を思い出す。
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???日前
「お姉ちゃん、、、わざわざ迎えに来なくてもいいのに」
巨大な双峰を携え、長い銀髪を
彼女はアナスタシア・シュトラウド、25歳。私の姉だ。
対する私はジャンヌ・シュトラウド。エルシア共和国で私立フェリシア大学に通っている19歳だ。
見た目は金髪ショートで眼鏡をかけており、お姉ちゃんと違って低身長で、スタイルも良くない地味女だ。
講義が終わって家に帰ろうとしたところ、校門で待つ姉に見つかってしまったのだ。
「可愛い妹を悪~い男達から守ってあげないとね」
「もう、お姉ちゃん。私を狙う人なんていないよ」
アナスタシアはその言葉に一瞬ムッとした表情を見せ、ジャンヌの眼鏡を奪う。
「ジャンヌは可愛いんだから。ちゃ~んと自覚しないとダメよ」
「そんなことないよ。私お姉ちゃんほど綺麗じゃないし」
ジャンヌは照れて眼鏡を奪い返す。
「そうだ、コンタクトに替えてもいいんじゃない?」
「いいの!私はこっちのほうが性に合ってるから」
そんな会話をしていると。ふと、周りがこちらをチラチラ見ていることに気付く。
ジャンヌは恥ずかしくなり、急いで助手席に乗り込んで、2人はそのまま出発した。
街を移動している間、ジャンヌは窓から外の景色をぼーっと眺める。
何の変哲もない平和な日常。結局これが一番だが、今の彼女にとって少々退屈に感じてしまう。
車の走行音に包まれる中、ジャンヌはふと口を開く。
「そういえば、お姉ちゃんは彼氏つくらないの?」
「う~ん。今は考えてないかな、会社も大事な時期だしね」
アナスタシアは国立エリシア大学に在学中に起業し、上場企業の社長となった才女だ。
今は事業拡大を進めており、他の惑星の市場を調査している。
「でも、大金持ちな超絶イケメンが言い寄ってきたら話は別かな」
アナスタシアは冗談めかして言う。
「お姉ちゃんならあり得るよ」
見た目も能力も非の打ち所がない姉が、ジャンヌにとっては雲の上のような存在に感じていた。
「そう言うジャンヌはどうなの?」
ジャンヌは質問が自分に返ってきて戸惑う。
どう回答すればいいのかわからなかったのだ。
「気になる男子とかいないの?」
ジャンヌは大学生活を振り返る。男子と会話をしたことはあったが、これと言って印象的な出来事はなかった。
「いないよ。さっき悪い男がどうとか言ってたじゃん」
「そうだけど~、ジャンヌの気持ちは尊重したいし~」
そんな他愛ない会話を続けていると、渋滞に引っかかった。
窓の外では人が何処かに走っていくのが見えた、何かから逃げるように。
「可笑しいわね、一ミリも進まないわ」
一切車が進まない状況で、そこら中からクラクションの音が聞こえる。
何が起こっているのか気になり、ジャンヌが窓を下げようとした瞬間、渋滞の中心が爆発した。
土煙が襲い掛かり、その中で火花がバチバチ散るのが見える。
車の破片や人の血肉が空を舞い、地面に襲い掛かる。
そして巨大なスクラップがフロントガラスの方向に落ちる。
「嫌っ」
ジャンヌは短く叫ぶ。
「ジャンヌっ!」
衝突の直前、アナスタシアはジャンヌに覆いかぶさる。
鉄塊が彼女の体を貫くとき、シートが後方に倒れ、2人は一命をとりとめた。
「はぁ、よかった。ジャンヌ」
アナスタシアはジャンヌを強く抱きしめる。
しかし、危機は終わらない。そこら中から銃声が響き渡る。
『逃げる者は殺す。大人しく投降しろ』
アナスタシアは自分とジャンヌの口を手で塞ぐ。侵略者に気付かれないように。
奴等は順に車をこじ開ける。そして中にいる人を連れ去っているようだった。
つまり、それは時間の問題だった。
「こそこそしてんじゃねぇぞ!こっちにこい!」
侵略者は車をこじ開け、2人を連れ出す。
「テメェ!うちの可愛い妹に手を出すな!」
アナスタシアは敵と交戦する。ジャンヌが逃げる時間が稼げればいいと。
「ジャンヌ!今のうちに」
そう言いかけた瞬間、敵の拳がアナスタシアの体にめり込む。
「手間かけさせんな」
アナスタシアはそのまま気を失った。
「お、お姉ちゃん」
ジャンヌが泣き叫びそうになった瞬間、奴は銃口を向ける。
「叫ぶな、耳障りだ」
ジャンヌは何の力も持ち合わせていない。奴等に逆らえば命はないだろう。
ジャンヌは侵略者の指示に従い投降する。
そしてジャンヌは、アナスタシアと共に奴等の宇宙艦へ押し込められた。
(さ、寒い)
そこは牢屋のような場所で、温度調節機構などはなく、老若男女集められていた。
誰かの泣き声、轟く怒号、更に銃声まで。それはまるで地獄絵図だった。
そして、次々と人が運び込まれていく。
そのまま数時間が過ぎると、侵略者はいなくなり、その場を暗闇が支配する。
多くの人がパニックに陥っているところ、プシューという音がした。何等かのガスだろう。
あちこちからバタバタと人が倒れていく音がする。
それを吸ってしまったジャンヌもその場で気を失ってしまった。
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自分が連れ去られた経緯を思い出したジャンヌは、全身を確認する。特に異常という異常は見受けられなかった。
人と人の間を抜けながら、ジャンヌはどうするべきかと辺りを見渡すと、見覚えのある双峰が目に付き、そこへ駆けていった。
「お姉ちゃん!」
長い銀髪、引き締まったスタイル、整った顔立ち、アナスタシアだ。
「よかったよお姉ちゃん。もう、会えないかと思った」
そう言ってジャンヌは涙を溢す。
「お姉ちゃん。起きて」
ジャンヌはアナスタシアを強く揺さぶる。反応はない。それどころか妙に冷たい。
「お姉ちゃん?」
ジャンヌに悪寒が走る。
そんなことはない、自分の想像が間違っているだけだ。
ジャンヌは自分にそう言い聞かせながらアナスタシアの胸部に、手を添える。
ジャンヌの頭の中が真っ白になる。
起業して、成功して、素晴らしい人生を歩むことが約束されていたアナスタシアが、
「お姉ちゃん。ねえ、嘘だと言ってよ。お姉ちゃん!」
悲鳴のような叫び声が、反響する。
その声を聞きつけ、何者かが壁を蹴破って突入する。
「侵入者か!大人しく投降しろ!」
あのときの侵略者と同じような集団が、銃口を向けながらジャンヌの方向に叫んだ。
ジャンヌは勝ち目がないと悟り、両手を挙げて前に出た。
その瞬間、乾いた発砲音が響く。
ジャンヌの左胸を弾丸が貫き、臓器が破壊される。
ジャンヌは反射的に台の後ろに隠れる。
更なる銃声が鳴り響く。
あそこで隠れなければハチの巣になっていただろう。
このとき、血がドクドクと流れ出し、遅れて言い表せようのない激しい痛みが走る。
全身から冷や汗が流れ、うめき声が出る。
そう蹲っていると、偉そうな男の声が聞こえた。
「撃つな!検体が傷つくだろ!小娘一人ぐらい素手でも問題ないだろ!」
すると銃声は止み、奴等はジャンヌの方へ近づいた。
ジャンヌは這って逃げようとするが、呆気なく見つかってしまい、捕えられてしまう。
「最初からそうすればいいんだ低能が」
白衣を着、眼鏡をかける、猫背の男が呆れながらつぶやく。
ジャンヌは引っ張られて、男の前に連れてこられる。そしてその場で力をかけられ、膝をついた。
「まさか侵入者が出るとは思わなかったが」
男はジャンヌの姿を見て、言葉を止めた。ジャンヌが侵入してここに来たわけではないということに気付いたからだ。
「はははははははははは!素晴らしい!素晴らしいぞ!この再現さえできれば私の権力は確固たるものになる!」
男の高笑いを聞いて、ジャンヌは怒りがこみあげてくる。
「何が面白い!お姉ちゃんに何をした!」
男は笑みを消し、ジャンヌを見下ろす。
「疑問を持つのは良いことだ。教えてあげよう」
男はそう言い、検体の一つに近寄る。
「私は今、魔獣を作る実験をしているんだ。犬や猫などの家畜に上位種、悪魔種の遺伝子を埋め込んだ存在。悪魔の細胞を取り込んだそれは、生命活動を停止し、上位種へと進化を始める。やがてそれは、能力者に匹敵するほどの力を得たのだ。しかし、一つだけ問題があった。何かわかるかな?それは、人の指示を受け付けないことだ。何故そうなったのか、何が悪かったのか?私は考えを重ねた末、結論にたどり着いた。それは、低能な生物を素体として選んでしまったことだ。そこで思考能力の高い人間のような生物を素体とすればよいのだと思い至ったわけだ。通常ではその進化には数週間から数ヶ月かかり、それを実行した今までの検体は獣と同じように意思を失っていた。そこで検体を増やし、様々な調整をする予定だったのだが、君が現れたのだ。魔剣使いや神剣使いなどといった超越者と同じように、魔獣にも適合率が関わっていたということなのだよ。君の適合率の高さ、その理由さえ研究すれば思考できる魔獣が再現ができるはずだ。おかげで私の研究は次のステージへ進める。」
男は聞かされる側の気持ちを考えず、嬉々として自分の研究を語った。
「意味が解らない」
ジャンヌは男を睨み付ける。
「学がないとは、残念だ」
男は肩を落とす。
「端的に説明しよう。君の姉は死んだ。それが普通の反応だ。しかし君は生きている。私はその理由が知りたいのだ」
男はあっさりと言いのけた。アナスタシアの死を。
ジャンヌの胸の中に、どす黒い感情が沸き上がる。
それと呼応するように、全身から黒い
彼女の心が、憎いという感情が支配する。
黒い靄が彼女の全身を包み込み、憎しみを具現化したような刺々しい装甲として定着した。
「死ね」
ジャンヌは腕を振り払う。それだけでジャンヌを捕えた者は破裂し、絶命した。
他の者は、ジャンヌに銃口を向け、発砲する。
「撃つなと言っただろう!」
弾丸がジャンヌに直撃する。しかし、それは彼女の装甲を貫くことはできなかった。
ジャンヌは地面を蹴り上げ、発砲する者の眼前に現れる。
そのまま頭部を蹴り、命を奪う。
そこから一人ずつ、確実に、命を奪い続けた。
発砲音は静まり、静寂が訪れる。その場に立つ者はジャンヌと男しかいなかった。
ジャンヌは標的を研究者の男に移す。
手の甲辺りから虎のような
「死ねええええええええええええ!」
そのままジャンヌは腕を振りかぶり、男に向かって攻撃した。
「ヴァルキュラ、私を護れ」
男はそう言うと、男の影から漆黒の剣が生え、それを防いだ。
「ガストン。相変わらず人使いが荒いな」
ジャンヌの攻撃を弾き返し、影から黒いマントを羽織り、クマが濃く、眠たそうな顔をしている男が現れた。
「そんなことはいい!あれを生け捕りにしろ!いいか、生け捕りだからな!」
「はいはい。わかりました」
そして再びヴァルキュラは姿を消す。
ジャンヌは彼を見失い辺りを見渡す。
そうしている間にヴァルキュラは音もなく彼女の背後に出現し、剣を振るった。
「あ゛、あ゛ぁ!」
ジャンヌの装甲は切り裂かれ、鮮血が散る。
ジャンヌは後ろを振り返る。しかし、そのころには既に、ヴァルキュラは彼女の背後に回っていた。
そのままヴァルキュラはジャンヌを蹴り飛ばす。
壁に突進するジャンヌ。彼女が壁に近づく度、壁の影は濃くなる。
その影の中から黒い剣が生える。
「ぐはっ」
ジャンヌの腹部は貫かれ、吐血する。
「丁寧に!できるだけ丁寧に扱え!」
ガストンは野次を飛ばす。
「はぁ、めんどくさ」
ヴァルキュラはそう言い、剣を引き抜こうとするが、剣は一切動かなかった。
「掴゛ま゛え゛だぁぁぁ!」
ジャンヌは左手で剣を握りながら、右手でヴァルキュラを殴りつける。
衝突の寸前、ヴァルキュラは溶けるように影に潜み、ジャンヌの攻撃を躱す。
その攻撃によって、壁にはクレーターができた。
「頑丈だな」
ヴァルキュラはジャンヌの影から這い出し、ジャンヌの腹部を蹴り上げる。
赤黒い液体をまき散らしながら宙を舞うジャンヌ。
そのまま天井を突き破り、血が滴り落ちる。ジャンヌは力を使い果たし、黒い装甲が消滅した。
「やべっ」
ジャンヌは太陽が照らす地上に出たのだ。
「何をやっている!早く掴まえろ!」
「無理だ。まだ日が出てる」
その回答を聞いたガストンは苛立ちながら施設内に進む。
「ちっ、使えん奴め。総員地上に出て、小娘を生け捕りにしろ!絶対に逃がすな!」
ガストンが自分の部隊に指示を送る中、ジャンヌは地面を這って逃げる。
奴等から少しでも距離を取るために。
「絶対に、許さない」
姉の顔を思い出す度に、怒りが込み上げてくる。
こうして少女は、復讐を誓ったのだった。
――――――――――――――――――――
それから数時間後、とある森にて。
「大変よ。こんなところに女の子が倒れているわ」
金髪のショートヘアで、一糸纏わぬ姿の少女が、意識を失っていた。
「そんな奴放っておけ、罠かもしれねぇだろ」
ガタイの良い、中年男がそう吐き捨てる。
「何を言うの!助け合いこそがレジスタンスの信条でしょ」
美しい女性がそう言うと、男は黙ってしまった。
「情けは人の為ならず。そういうのは巡り巡って自分に返ってくるんだから」
女性は少女を抱きかかえると、誰にも聞こえないような小さな声で囁いた。
「ねぇ、