スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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十品目 ヴァジュラと、月が昇る時

 

「ふぅ…………」

 

溜め息をつきながらソファーに座る。やはりあのヴァジュラがどうしても気になってしまう。

 

「あら?どうしたの」

 

「ああ、サクヤさん……」

 

アマトが溜め息をついたのが気になったのか、サクヤさんが話し掛けてくる。先輩の意見を聞いておこうと考えたアマトはありのままに話す。

 

「この前の防衛任務のヴァジュラなんですけど…………どうにも組織的な動きをするのが気になって…………」

 

そう、この前遭遇した甘党のヴァジュラなのだが、どこか組織的な動きをする印象を受けた。そもそもアマトの神機を旨そうに思ったのに、そのまま去っていくのもおかしいのだ。

 

まるで自分より強大なアラガミに従ってるかのような…………

 

「うーん……確かに最近アラガミの動きが活発してきてるわよね。動きも計画的になっているし…………」

 

「そうですよね……」

 

サクヤも同じ違和感を感じたらしい。

 

「でも、アマト君やアリサちゃん達の活躍なら心配無さそうだわ」

 

その場を和ませるために言ったのだろう。優しく微笑む。

 

「サクヤさん……コウタのこと、忘れてません?」

 

「え!?あ……コウタ君の活躍も頼もしいわよね!」

 

急いで取って付けた様に喋る。新型の活躍に比べたら仕方がないだろう。『頑張れ……コウタ』と、地味に同情するアマトであった。

 

「ああ、そうだわ。そのヴァジュラだけど、第一部隊に討伐任務が来てたから、戦う準備をしておいてね」

 

アラガミを討伐することが第一部隊の主な任務だ。部隊の人員の貸し借りで、あまりそういった感覚はないが。

 

そして、第一部隊とはリンドウ、サクヤ、ソーマ、アマト、アリサ、コウタの六人だ。

 

「ヴァジュラですか。了解しました。」

 

「相変わらずいつも通りね………」

 

ヴァジュラは強力なアラガミだ。新型とはいえ新人にはキツい仕事で、誰でも最初は緊張するはずだが、やはりアマトは変わり無い。

 

「………メンバーは誰ですか?」

 

アマトが思い出したかのように聞く。

 

「私と、アマト君、ソーマ、コウタ君よ」

 

「そうですか………」

 

少し安心しているアマトに、サクヤは不思議そうにしている。

 

「どうしたの?」

 

「いや、何でもないです」

 

アマトの心配はアリサのことだ。防衛任務の時のアリサの震え、あれは単なるヴァジュラの恐怖への震えではないと感じていた。

 

「それじゃあ、贖罪の町に集合ね。ソーマかコウタ君に会ったら伝えておいてね」

 

「あ…………はい」

 

アリサとの任務ではないのだが、やはりアマトの不安は拭えなかった。

 

 

 

新人区間のとあるドアの前、アマトが三回ノックをする。

 

「う~~い…………」

 

部屋の中から気怠そうな声が聞こえる。こんな時間なのに寝起きのようだ。

 

「やっぱここか」

 

ドアを開けると、ダンボールと『バガラリー』のフィギュアが乱雑していた。アマトは露骨にあきれた顔をする。

 

「絶対片付けた方がいいぞ。極東支部一の汚さじゃないか?」

 

しかし、アマトはまだ知らない。アリサの部屋も散らかっており、ソーマに至っては部屋として機能していないことを…………

 

それを知るのはまた別の話である。

 

「どったの?」

 

若干寝惚けながら呑気に部屋に来た理由を聞く。

 

「任務だ。ヴァジュラの討伐」

 

「ぶーーーーーっ!!??」

 

コウタの盛大に吹き出す音が部屋中に響く。実際吹き出すのも無理はない。ヴァジュラの任務と聞いたとき、少しオーバーリアクションだがこれが普通の反応だ。

 

「うわ~~!マジかよ!ヴァジュラかよ!」

 

アマトの寝耳に水発言に一気に覚醒するコウタ。

 

ヴァジュラの強さは古参のゴッドイーターでも手を焼く程だ。正直任務を受ける身としては面倒なことこの上無い。

 

「じゃ、3時までにヘリポートに来いよ」

 

「いや今2時50分!!!」

 

あまりの理不尽さにツッコむコウタ。しかし、彼にはもうツッコむ時間すら無い。

 

「d(°ω°)」

 

「『d(°ω°)』じゃねーよ!!」

 

「結構探したけど、まだ寝てるとは思わなかったからな…………最初来たとき返事無かったし………」

 

「チクショーーー!!!」

 

全然理不尽ではなかった。完全にコウタが悪いのでなんにも言えない。

 

その後、結局コウタは時間に遅れてサクヤのO★HA★NA★SIと、ソーマの無言のプレッシャーに晒される羽目になった。

 

「くそ………俺の心はズタボロだ………」

 

ヘリの中でコウタはもう死にかけていた。ソーマのプレッシャーが現在進行形で精神を削る。

 

「ちゃんと反省しなさいよ?」

 

アマトの隣にいるサクヤが優しくコウタに話しかける。「すみません…………」と言いながら項垂れるコウタ。反省はしてるらしい。

 

「フッ…………馬鹿だな、コウタ。この神機に適合した最初の俺より、遥かにましだろ」

 

アマトは昔を思い出す。いま思えば辛く悲しい道のりだった。任務の同伴者全員に戦えるか心配され、シュンとカレルに至っては大爆笑された。隙を見て誤射(故意)をお見舞いしたが。

 

そんな事を考えながらお菓子の神機を掲げる。皆に認められるまで、何より自分が認めるまで随分時間がかかった。

 

「アレだな、アマトが言うと説得力が違うな………」

 

「哀愁が漂ってるわね………」

 

「…………そうだな」

 

一人悲しみに沈んでいくアマトの傍ら、三人は温かい目で見つめていた。

 

 

 

ーー贖罪の町

 

ヘリから降りた直後、四人はそれぞれがヴァジュラの偵察に動くことにした。

 

「「…………」 」

 

(なぜこうなった?)

 

そして、何故かアマトはソーマと一緒である。正直会話もできる気がしない。ひたすら道が別れるのを待つことしかできなかった。

 

ひたすらに足を進めていると

 

「おい」

 

意外なことに、ソーマから声をかけてきた。アマトも少し驚いている。

 

「……お前、任務中に視線を感じたことはないか?」

 

ソーマから少し変な質問が来たが、アマトは心当たりがないか少し考えてみる。

 

「あるぞ」

 

有った、寧ろ有りすぎるほどだ。

 

「本当か?」

 

ソーマも僅かだが驚愕の表情を浮かべている。

 

「ああ、俺の神機を狙って旨そうに見ている視線がな」

 

最近贖罪の町付近で任務をするとき、頻繁に視線を感じるようにはなっていた。まあ、最初からそういう視線は有ったのだが。

 

「………聞いた俺が馬鹿だったということか」

 

勿論ソーマには期待外れの返答だ。

 

「いや、最近ホント多い気が………と、早速お出ましか」

 

「そのようだな…………」

 

視線を感じたアマトは後ろを向いて虚空を睨み付ける。

 

ドスン、ドスンと一歩づつ近づく音が響く。ソーマもある程度察知していたのか、既に神機を構えている。

 

ついに現れた。赤いマントに身を包み、ただならぬ威圧感を放つ虎のようなアラガミ、ヴァジュラ。

 

しかし、垂らした涎で見事にその威圧感は明後日の方向へ飛んでいった。

 

「ギャアアァアォオアオオ!!!」

 

アマトに向かって走り出す。

 

心なしか、待ってましたという表情をしている気がした。戦場ではどうでもいいことだが。

 

地面を蹴る音が響く。ヴァジュラがその巨体から想像できない跳躍をしたのだ。二人は急いで後ろに跳ぶ。

 

ズゴオォオ!!

 

その攻撃は地面を砕くほどの威力だった。まともに食らったらミンチは確定だろう。

 

しかし、全体重をのせた一撃の後、直ぐに動ける筈もない。

 

「うおぉ!!」

 

アマトのGEチョコがヴァジュラの前足に向かって振り降ろされる。しかし、骨格のようなものに弾かれる。

 

「なんか凄いしっくりくるな……」

 

本来こうなるのが普通だろう。アラガミを斬れること自体この神機はおかしいのだ。

 

「っと!」

 

呟いている余裕はない。ヴァジュラの右足の爪がアマトに迫る。後ろに跳んで攻撃を回避する。

 

しかし、ヴァジュラの追撃は止まらない。左足を振り下ろし、それを避けても牙で噛み砕こうとする。アマトだけに。

 

「ソーマ!早く二人に連絡してくれ!」

 

アマトは一方的に攻撃を受けているため、連絡をする余裕はない。

 

「今回だけだぞ………」

 

手早く腕輪でサクヤ、コウタに現在の位置を教える。援護に加わらなければ、流石にアマトもあれはまずい。

 

後ろからヴァジュラに近づき、ソーマはいきなり神機をプレデターフォルムに変型させる。

 

アラガミの隙がかなり大きかったときのみ出来ることだが、今は最高の囮のアマトがいた。その証拠にヴァジュラは此方すら向かない。

 

神機がヴァジュラの血肉を捕食する。やっと存在に気づいたヴァジュラ

はソーマを切り刻もうと右足をあげる。

 

「潰す…………!」

 

ソーマの巨大な神機『イーブルワン』が右足に向けて横一閃に振る。

 

アマトの神機では弾かれたが、今のソーマはバーストモードだ。力は格段に上昇している。

 

「ギュアアァァアオ!!?」

 

結果は見事にヴァジュラの右足を砕くこととなった。激痛にヴァジュラがのけぞる。

 

しかし、これで終わらない。レーザーが、銃弾がヴァジュラを襲う。レーザーは僅かなマントの間を縫って貫通し、銃弾はマントに阻まれるものがあるものの、マントを通り抜けた銃弾は確実にダメージを与えている。

 

「アマト!!」

 

「大丈夫!?」

 

「サクヤさん!コウタ!」

 

銃弾を放ったのはサクヤとコウタである。どんなアラガミもダメージを受けた方向を見るはずだが

 

「やっぱり俺か!」

 

ヴァジュラが作った電弾がアマトを狙う。それをGEキャンディーを展開して防ぐ。

 

バチバチバチィ!!!

 

「し…………痺れる…………!!」

 

ダメージを受けてもなおアマトを狙う。そこには最早狂気すら感じられた。

 

「アマト君には申し訳ないけど、凄い楽よね…………」

 

「そーっすねー…………」

 

今度は後ろ足をソーマに潰されたヴァジュラ。何故かヴァジュラまで可哀想に思えてきた。

 

 

 

「くっそ!!」

 

相変わらずアマトだけを狙うヴァジュラ。他のメンバーには攻撃を喰らったときの反撃しかしない。

 

しかし、動きが随分鈍くなっている。まあ、仕方の無いことだ。

 

「うおぉ!!」

 

ヴァジュラが牙で噛み砕こうとする瞬間に、アマトは神機をヴァジュラの顔に突き刺す。

 

「これで、満足か…………?」

 

GEチョコがヴァジュラの口に入る。幸せそうな顔をした直後、断末魔も上げず眠るように倒れてしまった。

 

「幸せそうに死んでいったわね………」

 

「そーっすねー…………」

 

二人がヴァジュラを捕食する中、サクヤとコウタはアマトに改めて同情した。そんな事をしてる間にヴァジュラを粗方捕食し尽くす。

 

「(俺だけ)辛い戦いだった………」

 

アマトの中でベスト3に入る程のしんどさだった。

 

しかし、

 

「…………来る!!」

 

ソーマの直感が新たなアラガミの出現を感じる。ソーマの直感はかなりの頻度で当たるので第一部隊には信用されている。

 

「な…………」

 

「マジかよ!」

 

「もう…………止めてくれ…………」

 

その直後

 

『ギュアアァァアオ………!!』

 

丁度教会の方向からヴァジュラのようだが、明らかに違う叫び声が聞こえてくる。

 

「報告では確か一匹だったはずなのに…………」

 

「取り合えず行きましょうよ、サクヤさん!!」

 

コウタが様子を見に行くことを勧める。

 

「ええ、そうね…………」

 

しかし、再びアマトの胸騒ぎは始まっていた。

 

 

 

教会の入り口、中に入りいよいよあの砲口の主と邂逅するというところで

 

「何…………?」

 

ソーマが思わず疑問の声をあげる。声には出さなかったがアマトも同じ心情だ。なぜなら………

 

「お前ら?」

 

「あれ!?リンドウさん何でここに!?」

 

コウタも思わず驚く。リンドウとアリサがいたからだ。

 

「どうして同一区画に2つのチームが……どういうこと!?」

 

そう、本来同じ区間に2つのチームが入ることなど先ずはない。あるとしたら、それは作為的な…………

 

「考えるのは後にしよう。さっさと仕事を終わらせて帰るぞ」

 

しかし、いまいる場所は戦場だ。疑問に思っている場合ではない。

 

「リンドウさん達は中のアラガミを追いに来たんですか?」

 

アマトが現状の把握のためにリンドウに聞く。

 

「ああ、中々の強敵でな。ここまで追い詰めたんだが…………」

 

「なら任せて良いですよね」

 

「勿論だ。俺たちは中を確認、お前たちは外を警戒、いいな?」

 

リンドウの指示通りサクヤ、アマト、コウタ、ソーマは外の警戒に当たる。

 

そして

 

今この時

 

アマトの予感が現実となる。

 

 

 

ドオォォオオォオン!!

 

「ッ!!?」

 

「何!?」

 

教会から轟音が鳴り響くと同時に

 

「「「ギュアアァァア!!」」」

 

何体もの不気味な顔を持つ白いヴァジュラが、アマト達を取り囲んだ。





次回

蒼穹の、月
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