スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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十二品目 叱咤と、感謝

 

「急患です、退いてください!」

 

ゴッドイーターや職員達が道を開ける。その中にはエリックとエリナもいた。

 

「あれ?……アマ……ト……?」

 

医者達がガラガラガラと音をたてながら駆け抜ける。そのベッドの上に横たわっていたのは、既に意識が無いアマトだった。

 

息遣いは荒く、顔も土気色になっていた。

 

「ッ!エリナ!見ちゃいけない!!」

 

エリックがアマトの悲惨な状態を見せないために後ろを向かせて抱きしめる。

 

「ガフッ!!」

 

そのとき、アマトが更に血を吐き出した。

 

「先生!!」

 

看護師の1人が慌ててショウコに話し掛ける。

 

「ええ………まずいわね……急ぐわよ!」

 

そのままアマトは手術台まで運び込まれていった。

 

 

 

〈お帰り〉

 

ふと、そんな声が聞こえた気がした。ゆっくりと目を開けるアマト。上半身だけ起こし周りを見ると。仄暗い夜空と、巨大なお菓子が並び建ち、辺り一面が血の海に覆われた場所だった。

 

「…………懐かしいな」

 

後ろからバシャリ、バシャリと水の中を歩く音がする。後ろを向くと……

 

〈久しぶりだね、アマト。そしてようこそ、『ボク』の世界へ〉

 

七歳位の男の子がアマトの前に立っていた。

 

「お前………」

 

〈うん、覚えているかい?『ボク』さ〉

 

「幻が何の用だ…………」

 

アマトが少年を睨み付ける。

 

〈最近のアマトは見ていられなくてね……忠告しにきたんだ〉

 

「どういう………」

 

〈どうもこうも、知ってるだろ。あの時、どうして逃げなかったんだい?〉

 

「………!リンドウさんを置いていけないだろ!!」

 

しかし、少年は首を横にふる。

 

〈違うね、君は死にたがってるんだ。罪から逃れようとしてるんだ。リンドウさんを助けて自分は死ぬ。言い訳にはバッチリだね〉

 

「違う………」

 

〈違くないさ、アマトのことは『ボク』がよく知っている〉

 

「違う………!」

 

〈認めろよ、アマト〉

 

「違うって言ってんだろ!!」

 

辺りに静寂が訪れる。やがて、少年は口を開いた。

 

〈…………そうか。なら、答えは自分で探してくるといい………いってらっしゃい、アマト〉

 

 

「!!!」

 

カバリッ!と体を起こして目覚める。そこには血だらけの海ではなく、白い壁が広がっていた。

 

(ッ!……頭が痛い……!)

 

頭を抱えて痛みに耐える。あの『夢』を見ると、いつも頭が割れるような痛みが襲う。

 

「………!起きたのね!!」

 

ショウコがディスクの上にある受話器を取る。

 

「ツバキ!?桐永アマトが目を醒ましたわ!!…………ええ!…………」

 

会話の内容からして話し相手は恐らくツバキだろう。

 

ガシャンと受話器を置いたショウコは、アマトのベッドまで駆け寄る。それは非常に驚いている表情だった。

 

「流石新型ゴッドイーターね……まだ三日は起きないと思ったのに………」

 

自分の体をよく見ると包帯で至るところが巻かれていて、ケーブルの様なものまで繋がっていた。流石にこれにはアマトも驚く。

 

「貴方……何をしたの?外傷は大したこと無かったけど、神経や細胞がグチャグチャだったのよ………」

 

黒いヴァジュラに負わされた傷は深くない。しかし、五段階のリンクバーストでオラクル細胞が暴走し、神経と細胞を破壊したのだ。

 

「リンクバーストを……五段階までやっちゃった、みたいな………」

 

説教されることが分かってるのだろう。少し言い辛そうに話す。それを聞いたショウコは呆れた顔で溜め息をつく。

 

「やっぱり貴方は馬鹿ね………自分のことはどうでも良いのかしら?」

 

ピクリッ!とアマトが反応する。

 

「リンドウさんは………皆は無事ですか?」

 

死にかけた自分ですら生きていたのだ、リンドウさんや他の奴等も生きているに違いない。そう思っていたのだが

 

ショウコは悲哀の表情を浮かべる。

 

「いいえ……残念だけど、リンドウだけはMIAよ………アリサちゃんも今別の病室にいるわ」

 

その言葉の意味を、ゆっくりと噛み締めながら理解した。MIA、そうなったら最後、生きて帰ったものは数えるくらいしかいない。

 

アマトはゆっくり顔を俯かせる。

 

「……ハハハ、何で死にかけの俺が………生き残ってるんでしょうね」

 

自嘲の笑みを浮かべる。仲間の命を危険にさらしてまで、期待を裏切ってまで、自分は生き残った。生き残ってしまった。

 

恐らく重症を負った自分を置いていけばリンドウは助かったのだろう。

 

しかし、リンドウはそれをしない男だとアマトは知っている。

 

何故あそこで攻撃を避けきれなかったのか?作戦をもっと上手く組み立てれたのではないかという後悔ばかりを感じてしまう。

 

「ほら………しゃんとしなさい。そろそろ来るわよ」

 

ショウコがそう話した瞬間、病室のドアが開く。

 

「ツバキさん………サクヤさん……」

 

そこにはツバキとアマトが一番会いたくない人物、サクヤがいた。

 

「サクヤから何をしたか聞いたぞ………覚悟はいいか?」

 

一歩づつアマトに近づいてくる。只ならぬ迫力を感じたアマトはビンタを覚悟した。

 

ついに右手を降り上げる。

 

バキィ!!

 

「グォフォォオ!!??」

 

しかし、現実は非常にも、ビンタでなく鉄拳であった。

 

「ちょ……!一応病人よ!?」

 

ショウコがツバキとアマトの間に割って入る。当たり前だ、左手が既に降り上がっていたからだ。病人にコレはまずすぎる。

 

顔面血だらけのアマトはベッドに倒れる。

 

「貴様の犯した失態は2つ!1つは上官の命令無視!2つはリンクバーストでの五段階解放!自分が何をしたか分かっているのかッ!!」

 

「………すみません…」

 

ツバキのこれまでにない怒りを含んだ声に、アマトは謝ることしかできなかった。

 

「……しかし、そこまでしてリンドウを救おうとしてくれた貴様に………感謝する。」

 

アマトに頭を下げる。

 

最初は上官の雨宮ツバキとしての怒り。そして今は雨宮リンドウの姉、雨宮ツバキとしての感謝の念だった。

 

「私からも礼を言うわ……リンドウを助けようとしてくれて、本当にありがとう………そして、ごめんなさい………私が自分勝手な判断をしてこうなってしまったものね………」

 

サクヤの目が赤い。ずっと泣いていたのだろう。それなのに自分を責めること無く頭を下げるサクヤを見て、アマトは自分に怒りを覚える。

 

ベッドのシーツをグッ……と握りしめる。

 

「………くそ…………くそ…………!」

 

ただただアマトの呟きが室内に響くのみだった。

 

 

 

ツバキとサクヤが去った後、コンコンとドアをノックする音が聞こえる。

 

「………どうぞ」

 

「アマト、入るぜ!」

 

大量のお菓子が山積みされているバスケットを持ったコウタが入ってきた。

 

「ほら、みんなからのお見舞い品!」

 

アマトのベッドにバスケットを置く。すると山積みのお菓子が崩れてしまった。

 

「そこはフルーツとかじゃね?まあ、嬉しいけどさ……ありがとな」

 

やはり元気が無い。何時もならここで狂喜乱舞の筈なのだが……

 

「元気だせよ!まだリンドウさんが死んだって決まった訳じゃないだろ?それに、アマトだって生きてるしさ。リンドウさんもひょっこり帰ってくるって!」

 

「ああ、そうだな………」

 

少しだけ笑顔になるアマト。アナグラ内では、アマトを元気付ける為にコウタを行かせようとなったのだが、どうやら正解だったようだ。

 

「……アリサは、どうしてる?」

 

少し言い辛そうにコウタに訊ねる。

 

「……面会できない程酷かったよ。今は大分落ち着いたんだけど……」

 

「…………そうか」

 

「後でアマトもお見舞いに行ってやれよ。多分今ならいけると思うぜ」

 

「ああ、この後に行くさ………」

 

暫くコウタと眠っていた間のアナグラの様子を話していた。全員アマトの事を心配してくれたらしい。

 

「ん?こんな時間か……んじゃ!またな!!」

 

「ああ」

 

任務の時間が来たのだろう。コウタが席をたち別れの言葉を告げる。アマトはそれを手を振って見送った。

 

「さて……俺もそろそろ行くか」

 

アリサの見舞のため、アマトもベッドから立ち上がった。

 

松葉杖をつきながら、アリサのいる病室へ目指す。

 

やっとのことでアリサのいる病室の前まで辿り着くと

 

「ああ、アマト君か…………!」

 

廊下には眼鏡と口の周りに髭をたくわえた中年の男、オオグルマがいた。

 

「どうも、オオグルマさん」

 

話し掛けたオオグルマも驚いた顔だ。

 

「あんな重症からこんな短い時間で歩けるなんてね……驚きだよ」

 

「いやいや、まだ右足が動きませんからね……全快には程遠いですよ」

 

「ハハハ、それでも充分凄いよ。流石新型ゴッドイーターだね。アリサの面会なら立ち会おう。さあ、入ってくれ………」

 

「はい」

 

病室のドアを開ける。そこには自分と同じようにベッドに横たわるアリサがいた。

 

「アリサ………」

 

「話しかけても無駄だ。効果の高い鎮静剤が届いたんでね、当分意識は戻らないはずだ」

 

アマトは頷きながらアリサの横のベッドに座る。

 

「…………すまなかったな、アリサ…………」

 

届きはしない言葉とはわかっている。しかし、謝らずにはいられなかった。あれだけ無理をさせて結局リンドウを救えなかったのだから………

 

そう言いながらおもむろに右手に触れると………

 

ピキン…………!!

 

「!!?」

 

頭の中に浮かんだ霞みつつも鮮明である幾つものイメージ。

 

かろうじて見えたものはタンスの中に隠れている少女。そして突如現れるアラガミ、黒いヴァジュラだった。

 

ブツン!!

 

そこで、映像は途切れた。

 

(何だ………これは………!?)

 

何故あのようなリアルな映像が頭に浮かんだのかと考えているとき

 

「……んっ」

 

「!!」

 

アリサが突然目を開けた。

 

「……………アマトさん?」

 

そう呟くと同時にまた目を閉じてしまった。意識を失ったのだろう。

 

「なっ…………!い、意識が回復しただと……!?」

 

後ろからオオグルマの声が聞こえた。声色からして相当驚いているようだ。

 

「し、失礼する!!」

 

オオグルマが慌てて医務室から飛び出す。これにはアマトも少し怪しく感じた。ドアに耳をあて限界まで聴覚を集中させる。

 

「……はい、はい、ええ……まさか意識を取り戻すとは……」

 

どうやら意識を取り戻したことは相当異常らしい。

 

「詳しくはわかりませんが……おそらく、新型同士の感応現象かと思われます」

 

(感応現象……?さっきのことか…………!)

 

「どうしましょう……隔離しまか?」

 

「!!?」

 

アマトの目が大きく見開く。さっきの現象で隔離までするなんてどう考えても普通ではない。

 

「……このままで宜しいのですか!?はい………はい……わかりました。それでは、私はこれで」

 

任務での同一区画で2つのチームの遭遇と、いきなりのアリサの錯乱、オオグルマの電話の会話、この3つを偶然で片付けるのはむしが良すぎる。

 

暫くして、オオグルマの足音が病室から離れていった。

 

(まだ……裏があるのか……)

 

1人、病室で座り続けるアマトだった。




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