次でやっと任務に行かせます。
Sideアリサ
『起きろ、アリサ』
そんな声が聞こえてきた。妙にその声が頭に響いたせいで、私は目を開ける。
そこには薄暗い空と足首くらいの深さの血で覆われた海が広がっていた。
いや……巨大なお菓子が建ち並んでいる。何だこれは?
ここは………何処だろうか。
〈ようこそ、アリサ〉
「!?」
振り返ると、いつの間にか後ろには七歳くらいの男の子がいた。何故か見覚えがある顔の気がした。
「あなたは………だれなの?それにここは…………」
〈ここは、アマトの心の中さ〉
「心の………中…………」
不思議と私はその奇妙な現象を受け入れることができた。でも、アマトさんの心の中が何でこんな……?
アマトさんの心の中なら絶対お菓子の城が建っていると思うのに………
〈新型特有の現象のようだね……多分アマトも似た体験をしてると思うよ〉
「アマトさんも私の心の中に………」
どうしてだろう?何故か気恥ずかしい………
〈今、君の過去の一端を視ているだろうね〉
「!!」
アマトさんが私の過去を視ているなんて……多分、あの時のことだろう。私のせいでパパとママがアラガミに殺されてしまったあの記憶を………
〈そうだな……君の過去だけを視るのは不公平か…………〉
ズキン!!!
「……!!………!!?」
〈折角だ。アマトの過去を視てくるといいよ〉
いきなり頭が割れるような痛みに襲われる。いや、それよりも………
「アマトさんの………過去を!?」
アマトさんの家族の話は全く聞いたことがない。私と同じように殺されてしまったのだろうかと思っていたけど………
〈さあ、楽しんできな〉
「待って……あなたは………誰なの!?」
そう、今最大の疑問であるのが、この男の子の正体だ。
〈………『ボク』のことは、視れば分かるさ〉
視れば……分かる?
この言葉を最後に私の目の前は暗くなってしまった。
『アマト、行くわよ』
私の目の前にいきなり外部居住区の景色が広がっていた。これがアマトさんの過去の記憶なのだろうか………
『あっ!母さん!!父さん!!』
二人の男女の内、女性の方がボールで遊んでいる子供に声を掛ける。振り返ったその子供は…………
「あのときの………」
そう、アマトさんの心の中にいたあの男の子だ。ならあれはアマトさんの子供の時………
『さあ、帰るわよ』
『うん!』
『楽しかったか?アマト』
『うん!父さん!』
ここでまた景色が暗くなった。
次に目の前に広がっていたのは燃え盛っている居住区だった。沢山の人が逃げ惑い、火の手が何人もの行く手を塞いでいた。
「これって……アラガミの襲撃!?」
この規模の被害はそれ以外に考えられない。でも、これは正しく惨劇だ…………
『父さん………母さん…………』
「!?」
声のした方向を見る。そこには巨大な木材の下になり身動きがとれないでいるアマトさんがいた。
アマトさんのパパとママが木材を押し退けようと頑張っている。まさか………この時にアラガミに襲われて…………!
「アラガミだーーー!!」
その叫び声と共に沢山の悲鳴が聞こえてくる。
やっぱり…………
『…………!!?待って!父さん!母さん!』
「…………え!?」
私は、そのままアマトさんのもとを離れていく二人を見た。
「嘘…………」
そんな………アマトさんを置いていくなんて…………
(違う…………)
頭の中に声が響く。その声は憎悪と、悲しみに溢れていた。
(あんなの父さんと母さんじゃない…………!)
(あんな奴ら偽物だ!!)
(偽物なんて…………偽物なんて…………!!!)
(消えちゃえ!!!)
その瞬間
その願いが叶ったかのように
アマトさんのパパとママは
オウガテイルに食い殺された………
血が飛び散るなか、アマトさんは凍りついたかのように無表情だった。
「ハハハハ………」
アマトさんのどこまでも、どこまでも乾いた笑い声が聞こえてくる………
そんな………!こんなことって………!
「ハハハハ………ハハハハ………」
笑っているアマトさんの頬には一筋の涙が流れていた。
(違う……きっと母さんと父さんは助けを呼びにいったんだ。そうだ……そうに違いない…………)
でも!あの逃げかたはどう見たって…………
(それを……それをボクは……)
「……ハハハ……ごめん…………なさい…………父さん、母さん」
もう………!見ていられない!!
ブツン!!
願いが受けいられたかのように、ここで私の目の前は暗くなった。
そこには再び暗い空と、血の海に建つお菓子が広がっている景色だった。
〈どうだい?アマトの過去は……あいつは偽物の愛情にずっと囚われているのさ……〉
「そんな………アマトさんは!!」
そう………!アマトさんは悪くない!!
〈ああ……そうだ、『ボク』の正体も教えてあげよう。『ボク』は所謂アマトの真相心理ってやつさ。アマトは幻だと言って認めようとしないけどね………〉
それじゃあ、アマトさんも心の底では気づいているという事なのだろうか…………
〈アマトは自分に無理矢理見捨てられてないと言い聞かせてるけどね、本人も気づいているよ…………〉
「私は……、私は…………!!」
私は……何をすればいいのだろうか?
〈さあ、君もそろそろ起きる頃だ。アマトにヨロシクね。尤も、『ボク』の事は覚えていないだろうけど〉
「待っ…………」
『じゃあね、アリサ』
目を開けると、そこはアナグラの病室の中だった。私の隣にはアマトさんが右手を握っている。
「……………アマトさん」
私は思わずそう呟いてしまった。
Side end
「起きたのか、アリサ………」
そこには未だに手を握ったままであるアマトが座っていた。その声は素直に安心と喜びの声だった。
「………アマトさん!!」
いきなりアリサは大声をあげる。その目には涙もたまっていた。
「私、見たんです………アマトさんの過去を…………」
「…………!」
アマトが僅かに反応する。アリサの過去を見たが、まさか自分の過去もアリサに覗かれていたとは思わなかったようだ。
「アマトさんは……アマトさんは何にも悪くないじゃないですか!!それなのに……!!どうして!!」
アリサが涙を流しながら言う。それは励ましというより怒声に近かった。
それを聞いてもアマトは、椅子に腰を掛けたまま、どこまでも冷たい目でアリサの目を見ていた。
「……いいか、アリサ……例え全ての人が俺を悪くないと言っても、俺は自分を絶対に許したりしな…………」
ガバッ!!
アマトの言葉を遮るようにアリサが力強く抱きついた。
「アマトさん………!」
それ以上自分を責めないで……そんなメッセージをアマトに送ったはずなのだが
ドサ!!
バスケットの中のお菓子が地面に散乱する。そこには立ち尽くすカノンとエリナがいた。
「…………やっぱり、私のことなんて遊びだったんですね………」
「……え?」
「そんな………アマトはロリコンだって皆言ってたのに…………」
「……え??」
二人は逃げるように去っていた。そこには妙な空気と残されたアマトとアリサだけだった。
「………アマトさん、ドン引きです」
「………え???」
その後、三人を説得するのに丸1日かかったらしい。
アマト君の過去……無理矢理かな…………?
あまり突っ込まないでください