スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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珍しくメインは一人称

普段は三人称です。

主人公の心情をとくと見よ(笑)


一品目 理不尽だよ、極東支部

 

フェンリル極東支部、通称『アナグラ』のとある一室に、一通の電話が鳴り響く。

 

金髪の男性が受話器を取る。

 

「私だ」

 

「支部長、照合中のデータベースから新型神機使いの適合候補者が見つかりました」

 

「そうか……名前は何という?」

 

「桐永アマトです」

 

「………さっそく適合試験を受けてもらうとしよう」

 

こうして、桐永アマトの贖罪が始まった。

 

 

 

アマトSide

 

「長く待たせてすまない。さて……ようこそ、人類最後の砦、フェンリルへ」

 

スピーカーから威厳のある声が聞こえてくる。

 

今俺は、所々傷がついた広い部屋にいる。その中央には赤く、大きな機械がある。あの中に神機が入っているのだろう。

 

「今から対アラガミ討伐部隊、ゴッドイーターとしての適性試験を開始する」

 

「よろしくお願いします」

 

間違いなく俺の人生の分岐点だろう。罰を受け続けるか、罪を償うかの………

 

「少しリラックスしたまえ。その方が良い結果が出やすい」

 

「はい」

 

言われた通りに深呼吸をし、少し気分を落ち着かせる。適合できる可能性はできる限り上げておきたい。

 

「心の準備ができたら中央のケースの前に立ってくれ」

 

「いえ、大丈夫です」

 

ここに呼ばれたとき、既に覚悟はできている。躊躇うこと無く赤い機械の前に立つ。

 

そこには俺の武器となる神機が眠っている、はずだった。

 

「…………なんだこれ?」

 

刀身は巨大な板チョコ、その下にはショートケーキと、両側に半分に割れたキャンディーがついていた。

 

……新手のドッキリだろうか?いや、ないない。フェンリルがこんな無意味な事をする筈がない。ということは、何かの手違いと考えるのが妥当だろう。

 

そんな異常事態に、上の人達に視線を向ける。

 

「すみません、神機が入ってないんですけど」

 

「それが君の神機だが………?」

 

「は?」

 

予想だにしなかった返答が俺の耳に届く。アラガミに唯一対抗できる兵器である『神機』が、こんなふざけた装備なわけがない。

 

こんなメルヘンな神機で戦場に出るなんてシュール過ぎるだろ。

 

「チェンジで」

 

「すまないがそれは認められない」

 

「フェンリルはこんな神機でアラガミを殺せと言うんですか!?」

 

「フェンリルの配給を受けている以上、君に拒否権はないぞ」

 

「…………ッ!安心してください。断る気はありませんよ」

 

覚悟はできている。どんなことがあってもゴッドイーターになると決めた。

 

そう………たとえどんなことがあっても………

 

「なんで……こんな神機に…適合したんだ…………!」

 

覚悟を決めても呟かずにはいられなかった。誰にも聞かれることはない、小さな呟きだったと思う。

 

事前に指示された通り、赤い機械の中に入っている神機の柄を左手で持つ。

 

数秒後、赤い機械の上部が左手を挟み込んだ。

 

「グ………アアァァアアアアァァ!!」

 

予想以上にキツイ!体の中に何かが侵入してくる感覚だ……!

 

しかし、これから(多分)手にはいる力の代償と思えば安いものだ!

 

暫くして、機械が上にあがり痛みも消えていった。左手には赤い腕輪がつけられていた。しかし、腕輪からは黒い霧が出ている。

 

そのまま神機を持ち上げる。まるで体の一部のような……

 

黒い触手のようなものが神機から出て、腕輪に繋がった。それと同時に身体中から力が沸いてくる。

 

「おめでとう。これで君がこの支部初の新型ゴッドイーターだ。」

 

成功したらしい。何故か嬉しくもないし成功した安心もなかった。

 

「この後はメディカルチェック

が予定されている。それまで向こうの部屋で待っていてくれたまえ。尚、気分が悪い等の症状がある場合はすぐに申し出るように。」

 

「すみません」

 

「何だね?」

 

「この神機で………この神機でアラガミが殺せるかどうかだけ………教えてください」

 

「恐らく……問題ないだろう」

 

「確証、無いんですね……」

 

そんなやり取りの後、扉を開けて指定された部屋に向かった。

 

部屋の扉を開けると、横に長いソファーに小さなテーブルがあるだけだった。まるで選手控え室のような部屋だ。

 

そして、既に先客がいた。黄色い服装の、同じ歳辺りの男だった。

 

「あんたもゴッドイーター?」

 

「ああ、一応新型だ」

 

足をふらつきさせながら質問された。こいつ落ち着きないな。

 

取り敢えず男の横に座る。

 

「ねぇ…ガム食べる?」

 

「いや、いい。輪ゴムを食ってるようなもんだからな」

 

「ちょ…………そんなこと言うなよ!!」

 

「ああー…………すまん、少し気が立ってるんだ。これで許してくれ」

 

あんな神機に適合したら誰でもそうなるだろう。お詫びにコートの懐からチョコレートを取りだし、それを渡す。

 

「おお!チョコじゃん!!いや~ありがとな!!」

 

嬉しそうに口に入れる。喜んでもらいなによりだ。が、次に驚愕の表情を浮かべた。

 

「うわ!!ガムが溶けた!?」

 

がっかりとした表情で肩を落とす。わざとではないが、罪悪感

を感じる。

 

「……しかも最後の一枚じゃん」

 

「…………なんかすまん、まさかガムが溶けるとは…………」

 

しかし、顔をあげてすぐに明るい表情を見せる。

 

「でもチョコはおいしかったよ!俺の名前は藤木コウタ!」

 

「俺は桐永アマト、よろしくな」

 

「ああ、よろしくな!後輩!」

 

「は?」

 

「一瞬とはいえ俺の方が先に適合者になったんだから、俺の方が先輩だろ?」

 

「ならチョコ返せ」

 

「アハハハ、冗談冗談!」

 

その後、コウタと色々なことを話した。それにしても、ここまで真っ直ぐで明るい性格は珍しい。きっと、こんな時代でも幸せなのだろう……

 

 

 

暫く雑談をしていると、いきなり部屋の扉が開く。凛とした、露出度の高い服を着た女性がいた。

 

「立て」

 

俺は指示通りに席を立つ。一方のコウタは、状況が把握できていないようだ。

 

「立て、と言っている!立たんか!!」

 

「は、はいぃ!」

 

「これから予定が詰まっているので簡潔に済ますぞ」

 

コウタが上を向いている。分かりやすいやつだ。

 

「私の名前は雨宮ツバキ、お前たちの教練担当者だ。この後の予定はメディカルチェックを済ませたのち、基礎体力の強化、基本戦術の習得、各種兵装の扱いなどのカリキュラムをこなしてもらう」

 

成る程、覚えることが多そうだ。

 

「今までは守られる側だったかもしれんが、これからは守る側だ。つまらないことで死にたくなければ、私の命令には全てYESで答えろ、いいな?」

 

守られる側、か………

 

「はい」

 

「……あ、はい!!」

 

コウタも今回は返事ができたか。怒られなくて良かったな。

 

「早速メディカルチェックを始めるぞ。まずはお前だ。ペイラー・サカキ博士の部屋に一五○○までに集まる様に」

 

今の時刻は2:30、急がないとまずいか…………?

 

「分からないことがあれば、私のところまで聞きに来るように」

 

こうして一名に恐怖を植え付けて、ツバキ教官は去っていた。

 

「だあーー!怖かったーーー!!」

 

緊張感から解放されたせいか、ソファーに倒れこむ。

 

「コウタ、ずっと上を見ていたな」

 

「しょうがないだろ!?あの服にあの胸は反則だって!」

 

「落ち着けよ、コウタ。確かにツバキさんは美人だが多分歳は三十路辺りだ。だからおばさんと思えば…………どうした?」

 

顔が真っ青で小刻みに震え、口をパクパクさせながらこちらを見ている。

 

「面白い話をしているな」

 

「ゑ?」

 

無表情で後ろに立っているツバキさんがいた。

 

「是非私にも聞かせてくれ」

 

襟元を掴まれ、引き摺られながらツバキさんに連れてかれていく。

 

コウタの目は、死神に連れてかれていく罪人を見るような目だった。

 

今日の教訓は「口は災いの元」だと思った。

 

 

 

ーーー15:05

 

「フム…予想より625秒遅いね……。それより、何かあったのかい?」

 

「いいえ、なにも」

 

頭の上に大きなたんこぶを作っておいて言うことではないだろう。

 

「そうかい?まあ、よく来たね、新型クン。私はペイラー・榊。以後君とはよく顔を会わせる事になるだろうと思うけどヨロシク頼むよ」

 

「よろしくお願いします」

 

「ヨハン、先に君の用事を済ませたらどうだい?君も忙しいだろう?」

 

俺が遅れたせいだろう、何だか申し訳ない。サカキ博士は手元のパソコンのようなもので作業し始めた。

 

「榊博士、いい加減に公私の区別をつけていただきたい。」

 

博士の横に立つヨハンと呼ばれた男性が口を開く。

 

「さて、適合テストではご苦労だった。私はヨハネス・フォン・シックザールだ。この支部の支部長を務めている」

 

この声、適合試験の時の人か……

 

「よろしくお願いします」

 

「改めて、適合おめでとう。君には期待しているよ」

 

「いやいや、期待って………」

 

あのお菓子神機に何に期待しているのだろうか?

 

「彼も元技術屋なんだよ」

 

サカキ博士が作業を止めて話に入り込んできた。

 

「ヨハンも新型のメディカルチェックと新型神機に興味津々なんだよね?」

 

「貴方がいるから、技術屋を廃業することにしたんだ……自覚したまえ。しかも神機をあんなことに………」

 

「失礼な、あれは極東支部の科学技術を詰め込んだ最高傑作だよ。だから君も期待しているんだろ?」

 

「ふふ、確かにそうだな……」

 

「それに………ホントに廃業しちゃったのかい?」

 

「ふっ」

 

あの神機が最高傑作?なぜ極東支部の科学技術を詰め込んでお菓子になるんだよ。

 

「……さて、ここからが本題だ。我々フェンリルの目標を、改めて説明しよう」

 

「はい」

 

「君の直接の任務は、ここ極東地域一帯のアラガミの撃退と素材の回収だが……それらは全てここ、前線基地の維持と、来るべき“エイジス計画”を成就するための資源と

 

「この数値は!?」

 

……」

 

無言でサカキ博士を睨む。しかし、サカキ博士は全く動じていない。

 

再び支部長が話を始める。

 

「エイジス計画とは、簡単に言うと、この極東支部沖合、旧日本海溝付近に、アラガミの脅威から完全に守られた“楽園”を作るという計画なのだが……

 

「ほほ~っ!?」

 

……」

 

なんかもう、逆に面白いな。

 

「この計画が完遂されれば、少なくとも人類は当面の間絶滅の危機を遠ざけることができるは

ず……

 

「すごい!!これが新型か!!」

 

……ペイラー、説明の邪魔だ」

 

とうとう注意されたか。当たり前と言えば当たり前だが。

 

「ああ、ゴメンゴメン。ちょっと予想以上の数値で舞い上がっちゃったんだ」

 

しかし、機械を弄る手は止めない。これは全然反省していないな。

 

「ともあれ、人類の未来のためだ。尽力してくれ」

 

面倒になったのか、話を強制的に締めてきた。

 

しかし、人類のためか……そんな大層な物の為でなく、俺は贖罪の為に戦うつもりなのだが………「いいえ」と答えるわけにもいかないな。

 

「はい」

 

「それでは、私は失礼するよ。ペイラー、終了次第データを送っておいてくれ。」

 

サカキ博士が片手で作業をしながらも手を振って見送る。

 

「じゃあ、早速メディカルチェックを始めようか。ベットの横になってくれないかい」

 

「はい」

 

「少しの間眠くなると思うが、心配しないで良いよ」

 

しかし、その両手には謎の液体の入った注射器と、よく分からないケーブルが握られていた。いや、何を安心すれば良いんだ。

 

「何をする気ですか……!」

 

思わず身を乗り出して聞く。

 

「うん、ちょっと………ね」

 

なぜ言い淀む?

 

「具体的に教え

 

「えい」

 

ぐ…………あ…………」

 

腕には注射器が刺さっていた。やられた、即効性の睡眠薬か…………!

 

「次起きたら自分の部屋だ。戦士のつかの間の休息と言うやつだね。予定では10800秒だゆっくりお休み」

 

こうして意識を手放した。

 





がんばって更新します。暖かい目で見守ってください。
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