ーー支部長室
Sideアマト
「期待通り、『あの』神機で滞りなく任務を完遂してるようだね」
サリエルの任務を終えた後、正式に隊長に任命されるために俺は支部室にいた。支部長室には真ん中に大きなテーブルとイスがあり、そこに支部長が座っている。
「まあ……アレはアレで便利ですよ」
リッカさんに聞いた話だが、俺のお菓子神機はサカキ博士の独断で作られたらしい。支部長が胃薬を飲んでるところを見たとか……博士がアレじゃあそれくらい苦労するだろう。
「まずは祝辞を述べさせてもらおう。リーダー就任、おめでとう」
「……ありがとうございます」
支部長もフェンリル本部に大きく関わっている人物だ。俺達がしてる事を知っての事だろうか………
「アマト君をここに足を運んでもらったのは他でもない、リーダーの権限と義務について触れておこうと思ってね」
ん?そっちは知らないぞ。
「リーダーの権限……ですか?」
「そうだ、先ずは権限の強化だ。リーダー専用の個室を与えられる」
部屋が広くなったりするのか?もしかしたら念願の特大キッチンを付けてる部屋が支給されたり………
「前リーダーのリンドウ君の部屋を使ってもらう」
「…………え?」
支部長の言葉を聞き耳を疑う。リンドウさんの部屋………リンドウさんの部屋!?
「チェンジで」
支部長が「またか………」みたいな顔をしているが今回ばかりは譲れない。
「最初にも似たようなことをしたな……理由はあるのか?」
駄目だ、あの部屋は無い。俺だと三日ももたないだろう。
「リンドウさんの部屋は酒臭すぎて俺には無理です。この前飲んでもないのに二日酔いしました」
本気で任務に支障が出る。つーか命に支障が出る。ウィスキーボンボンは好きなんだが…………
「部屋は変えなくていいです。それなら俺の部屋に特大キッチンを付けてください……!」
誠心誠意を込めて頭を下げる。それを見て支部長が溜め息をつく。頼む……!通してくれ!
「……分かった。そこは配慮しよう」
「ありがとうございます!」
よかった、本当によかった。ありがとう、支部長。
その後も、これまで見れなかった資料の閲覧許可が出るらしい。そっちは……うん、どうでもいい。
「これは我々フェンリルの信頼の証……願わくば裏切らないでほしいものだ」
支部長が目を細める。この人……何処まで知っているんだ……?
「さて、次は義務の方の話だが………通常の任務の他に、リンドウ君が遂行していた特務を引き継いでもらおう」
「特務?」
「…………そうだな」
支部長が口を閉じる。話すかどうか迷っているのか?もしそうならリンドウさんの残したデータに関する物の可能性が高い。
「細かい指示はおって伝える。アマト君も今日は疲れているだろう」
流石に簡単には話さないか………
「ありがとうございます」
「ご苦労だった。これからもよろしく頼むよ」
「はい、それでは失礼します」
そして俺は支部長室を後にした。
ーー支部長室前の廊下
Sideタツミ
支部長室の前にいつも見慣れた黒いコートを羽織ったアマトがいる。そういや第一部隊のリーダーになったんだってな………
「よっ!アマト」
「あ、こんにちは。タツミさん」
「聞いたぜ!こんな早くリーダーに任命されるなんてスゲェじゃねえか!」
このスピード昇格には少し違和感があるが、実際アマトの実力は隊長格とタメが張れるレベルだ。俺なんか班長になるまで何年かかったことやら……
「いえ、今にも隊長の責任で押し潰されそうですよ」
アマトが無理矢理の笑みを浮かべて答える。
………そうだよな、隊長に任命されたとはいえまだゴッドイーターとしての日は浅いんだ。
「そう気負う必要はねえよ。精一杯やれば結果はついてくる」
俺も最初は必死だった。がむしゃらにやって経験を積んできたんだよな。今のアマトの表情はあの時の俺と同じなんだと思う。
「はは……ありがとうございます」
「まっ、隊長同士仲良くやろうぜ!お前なら大丈夫だ!」
「ホント、ヒバリさんに見せてやりたいですよ。多分見直すでしょうね」
「え?マジで!?」
ーーエレベーター前
Sideアマト
板チョコを頬張りながらエレベーターが上ってくるのを待つ。
「貴様はまた菓子を食らっているのか………」
「ふはひぃさん…………」
後ろから誰かが話し掛けてきたので振り返ってみるとツバキさんがいた。慌てて口の中のチョコを飲み込む。ああクソ、勿体無い………
「調子はどうだ?」
「やっぱり辛いですね……隊長の義務は…………」
そう、重い。最初の単独任務の時もエリナを守るために戦ったが、プレッシャーで押し潰されそうだった。
誰かの命を背負うのはとても重いものだ。自分だけの為の戦いなら何とも思わないんだがな…………
「フッ、あの時のリンドウと同じように不安そうな顔つきだ」
そう言いながら俺の頬に手を当てる。何故か分からないが………安心できた。
「まずは肩の力を抜くことだな。お前一人で全てをこなす必要はないんだ。自分を使い、仲間を使え。それが信頼を生む」
リンドウさんの『死ぬな、死にそうになったら逃げろ、そんで隠れろ。不意をついてぶっ殺せ』と同じ生き残り続けて身につけた持論か……やっぱり姉弟だな。
「お前なら良いリーダーになれる。自信をもて」
「良いリーダーですか……タツミさんにも言われました」
「そうか……これからもよろしく頼むぞ。さあ、任務に向かえ」
「はい………!」
さて、景気付けにもう一枚板チョコを食うとするか。
ーー贖罪の町
Sideアマト
「だがこれは無理だと思う」
そうぼやいた俺は悪くない。決意した直後でなんだけどコレはどうする。
「アマトさん、リーダー就任おめでとうございます!」
「お前、リーダーになったからって調子に乗んなよ!」
「分け前が減ったらぶっ潰すぞ」
「そ、そんなこと言ったらダメですよ!」
今いるメンバーが分かるだろうか?カノンさんとシュンさんとカレルさんだ。何でこう悪い意味でキャラが濃い人たちが集まった………
カノンさんは二重人格、シュンさんは口が悪い、カレルさんは金に汚い。ツバキさん……どうやってこの人達を動かせば良いんですか?
「えー……今回の討伐対象はボルグカムランなんで気を付けてください」
作戦はこうだ。まずはボルグカムランの盾を俺、シュンさんで破壊して、剥き出しになった頭部にカノンさん、カレルさんが銃弾を撃ち込むというものなのだが………
「おい!何でカノンを固定砲台にしないんだよ!」
シュンさんが難癖をつけてくる。
「お前、ヘタしたら俺達も危険なんだぞ!」
「大丈夫です。俺達が攻撃してる時は撃たせません。それに………」
「それに?」
「誤射されたらお菓子が貰えますから」
「得するのお前だけだろ!」
・
・
・
漆黒の蠍のようなアラガミ、ボルグカムラン。尻尾に巨大な矛を持ち、その両手に顔のような巨大な盾を持つ厄介なアラガミだ。
「居ましたね」
「はい…………」
建物の陰から見ているのだが、ボルグカムランはなんか知らんが尻尾の矛を研いでいた。
金属と金属が擦れる嫌な音が聞こえてくる。流石騎士みたいなアラガミだ。武器の手入れも怠らない。
「さて…………」
モシャッとGEケーキをむしりとる。今更だからカノンさん達は驚かない。助走をつけて腕を思いっきり振りかぶる。
『ポーーーーン………グサッ!!』
GEケーキが宙を舞ったと同時に、そのGEケーキをボルグカムランが矛で突き刺す。折角の矛がクリームだらけだがいいのか?
矛を口に近づけGEケーキを咀嚼する。よし、この隙にボルグカムランに奇襲を仕掛け……
『ドンドンドォン!!!』
は?何で銃撃音がするんだ!?
「ギュアァアア!!?」
銃弾は吸い込まれるようにボルグカムランの尻尾に直撃する。誰かは分かるが念のため振り返る。
「あそこの部位は売れるからな」
カレルッ…………!!
いや、まあ良い。一応奇襲は成功した。後は予定通りにシュンさんとボルグカムランの盾を破壊するだけだ。
「行きますよ、シュンさ………」
隣を見るとシュンさんは既におらず。前線で普通にボルグカムランの後ろ足を斬りつけていた。
「だ、駄目ですよ!カレルさん、シュンさん…………」
カノンさん、貴方は天使ですか?
「「うるせえ!固定砲台!」」
「………す、すみません………」
ブチンッ!と何かが切れる音が聞こえた。ああ……もう、限界なんだな。
「こいつら………激甘ジュースの海に沈めよう…………」
その後、俺の作戦に背くものはいなくなった。
ビバ!京都!!