スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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なんだかなあ…………
もっと上手くソーマの心を開ければ良いんだけど……
それは白いあの子の役割だしな………


二十二品目 サカキ博士の、鬼畜任務

重くなった体を引きづりラボラトリ、もといサカキ博士の部屋のドアを開ける。相変わらず物凄い設備だ。こういう部屋は男心をくすぐる。

 

「よく来たね、アマトく…………どうしたんだい、その有り様?」

 

今の俺の顔はひどい有り様だ。口周りに泥棒みたいな髭を描かれた。更に右目は黒丸で囲まれて、左目には星形のアザを描かれた。どこのエクソシストだ。

 

「三人のAKUMAに捕獲されてこうなりました」

 

三人と鬼ごっこをする約束をしてしまったのが悲劇の始まりだった。ゴッドイーターの身体能力なら余裕だろと思い、ハンデとして俺が逃げ、三人を鬼にした。が、普通に壁際に追い詰められ、三人同時のタックルを喰らいあえなく捕獲。直後に、俺の顔に油性ペンで落書きという罰ゲームを実行される。どうにか手持ちのお菓子をあげて中断させたが、それでもこの有り様だ。

 

「………さすがの僕にもよく分からないな。そういえば最初にもこんなやり取りをしなかったかい?」

 

「あー……確かにありましたね」

 

初めてのサカキ博士との邂逅のとき、ツバキさんにボコボコにされた状態だった。あれは本気で痛かった。

 

「そうだ、ディスクを返しに来ました。……何が目的だったんですか?」

 

コートの内側からディスクを取り出す。この人は支部長と同じく何を考えているか分からない。マーナガルム計画の記録を見せたのは何の狙いがあったのか…………

 

「なんのことかな?僕はそれを落としただけなんだけどなあ。しかし、アマト君が拾ってくれてたのか……助かったよ」

 

しかし、当の博士は薄ら笑みを浮かべているだけだった。あくまでディスクを落としただけと主張する。どこまでも謎な人だ。

 

「それより、中身は見ないでくれたかな?………ちょっとした若い頃の思い出なんだけどね」

 

「勿論、見てないですよ」

 

とりあえず話は合わせておこう。サカキ博士の手にディスクを渡す。それを博士はお礼を言いながら受け取った。

 

「そういえばリーダーになったんだっけね。おめでとう」

 

「いつの話ですか、それ」

 

これには少し呆れてしまう。確かにリーダーに就任したが、今更言われるとは思わなかった。俺が思うに、サカキ博士はもっと部屋から出た方がいい。

 

「………さて、君はマーナガルム計画って聞いたことあるかい?」

 

博士が人差し指と中指で眼鏡を上げる。驚いた、突然喋りだしたと思ったら、まさか博士の方からディスクの内容の話を振ってくるなんて………

 

「………大体は、知ってますよ」

 

そうとしか言えない。博士は何をしたいんだ?

 

「あれはお世辞にもエレガントとは言えない実験だった。大切な友達も無くしちゃったしね………」

 

生存者は偏食因子を持つソーマとアラガミ装甲壁の御守りを持つ支部長だけ……それ以外の人間は全て死んでしまったのだ。一度に多くの友人を無くした、当時のサカキ博士の心境はどんなものだったのだろう………

 

「その負の遺産を、ソーマは一人で背負っているかもしれないんだ」

 

「……でしょうね」

 

「僕自身、ソーマに恨まれても仕方ない事をしてきた一人だ」

 

ズイッ!と博士が顔を近づける。近い、こっちの気分が落ち着かない。

 

「できれば君もソーマと仲良………ブフゥ!!」

 

博士が突然吹き出す。折角のシリアスな雰囲気が一気に崩れた。そういえば忘れていた。俺の顔に落書きされたままだった事を………

 

「惜しかったですね、もう一寸で言えたじゃないですか」

 

「いやー、我慢できなかったよ!」

 

博士にも笑われるなんて……帰って落書きを消さないとな。これ今日中に落とせるか?

 

「そうそう、君にもう一つお願いがあるんだ」

 

「もう一つですか?」

 

「うん、この任務をソーマと一緒に受けてほしいんだ。ソーマには前から似たような事を頼んでいたんだけどね………勿論、他の人には他言無用だよ」

 

博士に渡された紙には討伐するアラガミのリストが書いてあった。これを全部殺るのか?下までギッシリ書いてあるんだが………

 

「あの、ヴァジュラ一体とボルグカムラン一体を二人でやれと………」

 

一般のゴッドイーターなら瞬殺レベルの難易度だ。唯でさえ単体でも強力なヴァジュラがいるのに、それに匹敵するボルグカムランを二人だけで相手取る。かなり危険な任務だ。

 

「そうだよ、支部長から頼まれた仕事だからね。よろしく頼むよ」

 

「…………分かりました」

 

「あれ?意外だね、僕はもっとごねるかと思ってたんだけど」

 

「仕事熱心なだけですよ」

 

例えどんなに強力なアラガミでも、俺のやることは変わらない。殺して俺の罪を償う……それだけだ。

 

「特別手当てのお菓子、期待していますよ」

 

だが、それくらいの報酬は貰っても良いだろう。

 

「成る程、検討しておこう」

 

博士が笑みを浮かべるが、どうにも信用できない。支部長が詐欺紛いな事をしたせいで人間不信気味だな……

 

「それでは、失礼します」

 

「うん、また明日ね」

 

博士に別れの挨拶をすませドアを閉める。今思うと、ソーマの為にディスクの映像を見せたのか……?それよりも、またこの重い体を引きづって自室へ戻るのか。ああ、とても長く感じる………

 

 

 

 

 

サカキ博士にディスクを返してから翌日、サカキ博士の任務を受注するためにヒバリさんのもとへ向かう。すると向こうからエリックが歩いてきた。

 

「ん?アマト君じゃないか。今日も華麗にリーダーとしての職務をまっとうし………どうしたんだい、その目?」

 

俺の顔の落書きは油性ペンで描かれたのだ。一日洗面台前で格闘したが、左目の星だけはどうしても落としきれなかった。いや、泥棒髭よりはまだマシだが…………

 

「………触れないでくれ」

 

「いやいや、カッコいいじゃないか!まるでボクが憧れるロック歌手みたいだよ!」

 

カッコいい……この左目がカッコいい?エリックの服装はへそだしの赤いベストで、サングラスを掛けており、体にタトゥーをいれている。そんなエリックのセンスで見ればカッコいいのか………

 

イラッ!

 

「お前の厨二ファッションと一緒にする………なんでもない」

 

「それ殆ど言ってるよ!?」

 

「そういやエリナ達と遊んでこうなったんだ……兄として落とし前つけろ」

 

「いや……それ僕関係無いよね?」

 

 

「こんにちは、ヒバリさん」

 

「こんにちは、アマトさん。どうしたんですか、その左目と買い物袋?」

 

「エリックが奢ってくれました。あー………左目は気にしないでください」

 

左目には黒色の眼帯がつけられ、両手にはお菓子で一杯のスーパー袋が握られていた。よろず屋でエリックから強奪……もとい貰った金で合計1000fcほど購入した。まあ、殆どはお菓子につぎ込んだが。

 

「はあ………そのお菓子、任務完了まで預かっておきますか?」

 

「いいんですか?ありがとうございます」

 

ヒバリさんにスーパー袋を渡す。流石極東支部受付嬢だ。こんなところまで配慮が行き届いている。

 

「今回受けるのは……サカキ博士の特別任務ですね。十分気を付けて下さいね」

 

博士の任務は骨が折れるとリンドウさんやタツミさんが言ってたからな……ヒバリさんに心配そうな表情をされても仕方ない。

 

「大丈夫ですよ。それじゃあ、行ってきます」

 

「はい、御武運を」

 

 

 

 

 

アラガミに壊された数多のビルが並び立つ贖罪の町が今回の狩場だ。地面スレスレでホバリングしているヘリから飛び降りる。ヴァジュラとボルグカムランという強大なアラガミが二体いるだけあり、どことなく空気がピリピリするのを肌で感じた。

 

合流ポイントまで足を運ぶと、そこには既にソーマがいた。俺に気づいたのか、神機を担ぎながらこちらを見る。

 

「お前もサカキのおっさんに頼まれ………なんだ、その目は?」

 

「……気にすんな」

 

ソーマが怪訝そうな目で睨む。左目の眼帯を外して、星形の落書きを晒しているからだ。いくらなんでも片目が塞がれたハンデを負いながら戦うつもりはない。

 

「何でも良いが、足を引っ張るなよ」

 

そう言うと一人でさっさと歩き始める。

 

「あ~……まったく」

 

ズンズン進んでいくソーマの後を急いで追う。ソーマくらいの実力者でも、一人で行かせるわけにはいかない。単独でヴァジュラとボルグカムランに遭遇すれば無事ではすまないからな。

 

 

「ここにもいない、か」

 

一旦ソーマと別れ、アラガミを捜索する。複数の大型アラガミと戦うときは、散会して各自でアラガミを相手取るのが定石だ。が、幾ら辺りを捜索してもアラガミと遭遇しない。まさかと思うがソーマが一人で二体を相手にしているんじゃないか?

 

(いや、いくらなんでもそれはない…………よな?)

 

救援信号はまだ来ていない。ソーマの方もアラガミに遭遇していないことになるが………

 

「でもな………」

 

ソーマは何事も一人で背負い込む気質だ。単独でヴァジュラとボルグカムランを倒そうとする可能性も十分有りえる。いや、考えていても仕方ない。とりあえずソーマの元へ向かおう………と思った、その時

 

『ズゴォン………!!』

 

僅かに聞き取れる位の小さい爆発音。ということは、ソーマがアラガミと交戦、もしくは交戦中という事だ。

 

「おいおい、まさか…………」

 

嫌な予感しかしない………地面を蹴り、贖罪の町を全力で駆ける。このペースで走れば、五分で行けるかどうかだ。

 

「間に合えよ…………!」

 

走ること暫く、アラガミとの戦闘音がどんどん大きくなっていく。それと同時に俺の不安も募っていった。単体で戦ってるなら、こんなに激い音になることはない。

 

『ギュアアァアアァ!!!』

 

『グゥガアァアアァア!!!』

 

(見えた!!)

 

小さいが、雄叫びをあげるヴァジュラとボルグカムランが見える。ここまで激しく暴れ回るということは……ソーマと交戦しているのか!

 

「ぐぅ…………!!」

 

ボロボロになりながらボルグカムランの針を避け続けるソーマの姿が見えた。地面を抉る程の刺突を右、左とバックステップをしながらかわす。そのまま針の射程圏外まで逃れるが

 

「防げ!ソーマ!!!」

 

好機と言わんばかりにヴァジュラがソーマに向かって飛び掛かる。全体重をのせた、クレーターができる程の威力だ。

 

『グォアァァアアァア!!』

 

「グ………ガアッ!!」

 

シールドを展開して防いでいたが、それでもダメージは逃がしきれない。土塊と共にソーマが弾き飛ばされる。

 

「このっ!」

 

限界までスピードを上げてヴァジュラのすぐ横まで接近する。その勢いを上乗せしながら体を捻る。

 

「らあっ!!」

 

「ギュガァアアァ!!?」

 

相変わらず戦場には似合わない神機だ………って、そんな事を考えてる場合じゃない。顔面を右から左へと斬り抜いたダメージからか、ヴァジュラは二,三歩退く。

 

(このまま一度撤退を………)

 

「!!」

 

転がるようにしてその場から離れる。その直後に巨大な針が空を切った。少し引っかけたのか、服から血が滲み出ていた。もしもあの場に留まっていたら、串刺しは間違いなかっただろう。

 

(思ったよりキツい…………!)

 

このまま撤退は厳しそうだ。少なくとも片方のアラガミを倒さないと……

 

「グガアァアアァアアア!!!」

 

くそ!今度はこっちか!雄叫びをあげながらヴァジュラが右足を振り上げる姿を捉えた。岩をも切り裂く鋭い爪が………

 

「…………は?」

 

ボルグカムランに振り下ろされた……!?

 

「グゥオアアァァア!!!」

 

「ガゴァアアアァァア!!!」

 

ボルグカムランも応戦して尻尾の針を振り回す。突如繰り広げられたアラガミ同士の戦い、例えるならサソリvsトラ、巨大怪獣大激突。

 

「………おい!どうなってんだ!?」

 

起き上がったソーマが、あまりの異常事態に俺に怒鳴るように聞く。だが、俺はその理由に気づいた。

 

「…………………お菓子の、取り合いじゃね?」

 

「なんだそれ」

 

余裕が無くて最初は気付けなかったが、どちらも口元からヨダレが溢れていた。今の状況を分かりやすく言えば、『ヴァジュラ!ボルグカムラン!私(の神機)のために争うのはやめて!!』って感じだ。俺の神機、いつも意外な所で役に立つな。さて、まだ活躍してもらうか。

 

「ソーマ……これ(神機)食ったら参戦するぞ」

 

渾身の力でソーマの肩を掴む。こんな修羅場になったのはコイツのせいだ。神機を食わさないと気がすまない。

 

「ざけんな……放しやがれ!俺は回復錠で十分だ!!」

 

「お前のせいでこうなったんだからな、それ相応の報いは受けてもらおう……さあ、食え」

 

既にボロボロのソーマに抗う力など残っていない。神機を食わせるなど朝飯前だ!

 

「おいバカ!やめ………」

 

 

 

~暫くお待ちください~

 

 

 

未だに争いあっているヴァジュラとボルグカムラン。ソーマとの戦いと、現在進行形でおきている不毛な争いのせいで傷だらけだった。

 

「さて………と」

 

互いに傷つけ合う二体のアラガミにGEケーキの銃口を向ける。餌を取り合うために戦うのは構わないが、時と場所を考えろ。

 

「撃ち砕く!!」

 

『ドドドドドドドド!!!』

 

俺のオラクルが尽きるまで銃弾を撃ち続ける。次々と襲いかかる銃弾に被弾し続けたヴァジュラとボルグカムランは、所々の結合が崩壊していく。が、カシュン、カシュンという間抜けた音と同時に銃弾が尽きる。しかし、予想以上にダメージを与える事ができた。

 

「行け、ソーマ!!」

 

「…………」

 

苦虫を噛み潰したような顔をしたソーマが走り出す。理由は言わなくとも分かるだろう。地面を蹴り勢いよく宙を跳んだソーマは、ヴァジュラの顔に神機を突き立てる。

 

「ギ………グゥガァア…………!」

 

地に臥したヴァジュラは夥しい血を噴き出しながら力尽きる。しかし、まだボルグカムランが残っている。勿論ソーマもそんなことは理解している。間髪いれずに神機を引き抜き、ボルグカムランへと一気に駆ける。

 

「ギュガァアアァ!!!」

 

両腕を合わせると、顔のような巨大な盾が現れる。同時に尻尾を前方に伸ばして、ソーマを串刺しにしようとするが

 

「喰らうか…………!!」

 

一瞬見失うほどのスピードで加速して、針を回避する。それと同時にボルグカムランに接近し、神機を振りかぶる。

 

「消えろ」

 

吐き捨てるように呟かれた言葉と共に神機を叩き降ろす。その一撃は、かなりの強度を誇るはずのボルグカムランの盾を砕け散らせた。

 

同時に、俺は作戦通りにOアンプルを摂取し、地面を蹴って弱点の口の前まで跳ぶ。そのままGEケーキを口の中に突っ込み、引き金を引く。

 

「じゃあな」

 

0距離から放たれた銃弾がボン!!ボン!!ボン!!と体内で爆発する音が響く。GEケーキを引き抜いてボルグカムランから離れると、力なく地面に倒れた。

 

 

 

 

 

アラガミを粗方捕食し終え、ヘリとの合流ポイントに向かう。黙々と歩き続けるが、第一部隊の隊長として何も言わない訳にはいかない。意を決して口を開く。

 

「…………ソーマ。今回の任務、ヘタしたら死んでたぞ……」

 

しかし、ソーマは立ち止まり煩わしそうに睨み付けるだけだ。

 

「………黙れ、偉そうに説教する気か?」

 

「あまり無茶すんなってことだ………お前には家族がいるだろ?支部長だってきっと…………」

 

「黙れつってんだろ………!お前に俺の何が分かる!?」

 

ソーマが胸ぐらを乱暴に掴み上げる。だが、黙るつもりはない……!

 

「分かるさ……俺は、両親を殺したからな」

 

「…………!!」

 

ソーマの目が大きく見開く。それほど衝撃的だったんだろう………

 

「アラガミから………俺を置いて逃げたから、消えてしまえって思った…………でも、父さんと母さんはきっと俺を助ける為に行動したんだ………それを俺は…………」

 

胸ぐらを掴む力が弱まる。正直、話している俺も辛い。だが、ソーマには聞いてもらわないといけない。

 

「………悪いが博士からマーナガルム計画のディスクを見せてもらった。一通り見ただけだが、二人ともお前を愛していたのは直ぐに分かった」

 

「………だからどうした!!俺がお袋を殺した事実は変わらねえだろ!」

 

「いいや、変わるさ。お前は母親を殺す気なんてなかったろ?でも俺は違う。殺したいと思ったんだ」

 

ソーマと俺は違う。この事さえ気づいてくれればそれでいい。

 

「俺だから言えるんだ、お前は何も悪くない」

 

「…………クソ!!」

 

一言そう呟くと手を離し、背を向けて再び歩き始める。しかし、ピタリと立ち止まり

 

「………今回の任務、すまなかったな」

 

小さいが、謝罪の声が確かに聞き取れた。

 

「…………ああ」

 

 




文才不足を実感!!
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