スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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眠い…………


二十三品目 白い少女との、出合い

 

博士の任務をこなしてはや五日目。ソーマと話し合った甲斐があったのか、前よりも連携をとってくれるようになり、格段にアラガミを殺しやすくなった。そして今日もサカキ博士の部屋に向かっている。

 

「失礼します」

 

ラボラトリのドアを開ける。相変わらずサカキ博士は手元のパソコンを叩き続けていた。ここ最近いつも同じことをしている。忙しい人だな……

 

「よく来たね、アマト君。毎度毎度呼び出してすまないね」

 

椅子から立ち上がったと思うと、またズイッ!と顔を近づける。しかし、慣れたのか、もうなんとも思わない。

 

「今日の任務はなんですか?」

 

「今回は第一部隊のサクヤ君、コウタ君、アリサ君とシユウ討伐の任務に行ってほしいんだ」

 

…………なんでコウタ達を突然任務に行かせるんだ?それにソーマは待機させるということか?

 

「ソーマはどうしたんですか?」

 

「彼には他の用事で動いてもらおうかと思ってね……気にしなくていいよ」

 

「そうですか」

 

まあ、俺がいくら考えてもサカキ博士の思考が解るはずがない。これでもこの人は世界最高峰の頭脳の持ち主だからな………多分何か理由があるんだろ。

 

「………それと、ソーマの雰囲気が少し柔らかくなってね、君のお陰だろ?彼にかわって礼を言おう。ありがとう」

 

何時もの調子と違い、真剣な声色で感謝の念を告げるサカキ博士。なんやかんやで博士もソーマの心配はしてるらしい。親友の息子だから……いや、ソーマへの罪滅ぼしのつもりなのか……

 

「…………実際、大したことはしてませんよ」

 

そう、本当に大したことはしていない。結局、ソーマの心は凍りついているままだろう………俺は氷に亀裂を入れた程度だ。

 

「そんなことはない、君はよくやってくれてる。さて、今回も任務の結果、期待しているよ」

 

そういえばアラガミ達を大分殺しまくった。そろそろあのリストの最後の覧くらいではないか?

 

「お菓子も期待してますよ。それでは、失礼します」

 

「うん、よろしく頼むよ」

 

軽く頭を下げ、部屋のドアに手をかける。サカキ博士は結構狡賢いからな……お菓子をくれるか心配だ。

 

 

 

 

 

ヘリに揺られながら鎮魂の寺院を目指す。俺の右隣にアリサ、向かいにサクヤさん、コウタという席だ。

 

「アマト、ずっとソーマと任務していたからな……なんか久々に会った気がするぜ!」

 

「あー……五日間博士の任務しかしてなかったからなー」

 

濃度がありすぎたあの五日間、ヴァジュラ、ボルグカムラン、クアドリガ、サリエル等の強力なアラガミの大バーゲン。リンドウさんがぼやいた理由がよく分かった。

 

「大丈夫だった?博士の任務は危険なものが多いから、無理しちゃダメよ」

 

「それはソーマに言ってやってください」

 

「でも、アマトさんは凄いですよね……そんな任務を任されるなんて尊敬します!」

 

アリサが妙に目を輝かせている。一緒に特訓した日を境にやたらと素直になった。最初の頃のアリサとはえらい違いだ。

 

「あ、そろそろ着くよ!」

 

コウタが言った通り、しんしんと降る雪もだんだん強くなっていく。寺院の周辺に着いたということだ。ヘリが雪を舞き散らしながら着陸する。

 

「よっと」

 

ヘリから飛び降りる。雪特有の柔らかい感覚が心地良い。

 

「「さ、寒い!!」」

 

が、他の二人はそれどころではないようだ。そりゃそうだ、ゴッドイーターでなければ凍死確実の服装だからな。なんで上着を持ってこないのか…………

 

「アマト!お前コートなんてずるいぞ!」

 

「うわ、とんでもない八つ当たりだ」

 

ずるいっつーか……コートはいつも着てるからな。

 

「早く終わらせましょうか?それに、体を動かしていれば暖かくなるしね」

 

「そそ、そうですね…………」

 

平然としているサクヤさんとは対照的に、アリサの声は震えている。仕方がない、コートを貸すことはできないがこれをやろう。

 

「……寒いだろ?やるよ」

 

「え!?ありが………チョコでどうやって温まるんですか………」

 

「さあ?」

 

首を傾げながら返事をする。チョコで温まる方法なんて知るわけがない。ウイスキーボンボンでも持ってくればよかったのか?アルコールで体を温めれるからな。

 

アリサが膝をつきながら落ち込んでいたが、しっかりブリーフィングを済ませてシユウを捜索しに行く。今更シユウ一体なんて余裕だが、油断は禁物だ。辺りを警戒しながら足を進める。

 

「…………いたな」

 

「ああ」

 

発見した。岩の上で座禅をしている。武人っぽいアラガミだと思っていたがここまでとは。修練に明け暮れているのだろう。アラガミの生態は謎だらけだ。

 

「ブリーフィング通り、俺が前衛で錯乱、コウタとサクヤさんは後衛で狙撃、アリサは臨機応変に戦ってくれ」

 

「「「了解」」」

 

「作戦開始………!」

 

 

 

~戦闘中~

 

ドドドドドォン!!ザッシュ!!ギャアアァア!!!?

 

 

 

びっくりするほどワンサイドゲームだった。やったことと言えばアリサ、コウタ、サクヤさんが銃撃しまくり、結合崩壊し怯んだところをGEチョコで一閃。これだけで呆気なく倒れた。修業してたからな……まだ弱かったんだろ。

 

「こう言うのも何だけど、弱かったなー……」

 

「そうですね………」

 

憐れ、シユウ。何故サカキ博士が討伐を頼んだのだろうか………?まあ、後で聞けば問題ないだろ。とりあえず捕食しておこう。神機をプレデターフォルムに変型させる。

 

「さて、捕食する…………」

 

「それ、ちょっと待った」

 

制止され、慌てて神機を元に戻す。

 

「え!?」

 

「博士、なんでこんなとこに?」

 

俺が捕食するのを止めた人はなんとサカキ博士だった。全員驚愕の表情を浮かべている。まさかこんな危険な場所に赴くとは思わなかった。その後ろにはソーマがいる。別の用事は博士の護衛のことだったのか?

 

「質問は後だ。とにかくそのアラガミはそのままにして、ちょっとこっちに来てくれるかな?」

 

そう言ってサカキ博士は踵を返して階段の下に隠れる。さて、どうしたものか………

 

「一先ず、博士についていきましょう」

 

「………そうですね」

 

サクヤさんの判断に従い、階段の下に向かう。

 

「こんな所まで来て、何のつもりなんでしょう………?」

 

「そうだな……待ち伏せ、とかか?」

 

一応全員が神機をかまえておく。その傍らでは博士がしきりに時計を確認していた。シユウをそのままにしておいて、アラガミが来るのを待っているのか?

 

「来たよ!!」

 

博士が歓喜の声をあげる。それと同時に『白いの』が血に染まりながらシユウの上で立っていた。

 

(新種のアラガミか!?)

 

その『白いの』を全員で囲む。そして、近づくに連れて分かってきた。これは、ヒトの形をしている………!色素の抜けたような白い体を、ボロボロの布切れで包んでいた。

 

「お前はアラガミ……いや、人間なのか?」

 

博士を除いて誰もが警戒している中、思わず『ソレ』に問いかける。

 

「オナカ………スイタ………ヨ?」

 

「ひっ!?」

 

返ってきたのは検討外れの返答だった。ソレを聞いたコウタが短く悲鳴をあげる。当たり前だ。こんな得体の知れない者が人の言葉を話すなんて………

 

「…………(ジーーーー)」

 

…………なんか、俺の神機をガン見してるのだが、どうすれば良いんだ?オナカスイタの意味は分かっている……のか?

 

「やっと姿を見せてくれたね!」

 

博士が嬉しそうに一人ごちる。

 

「ソーマもここまで連れてきてくれてありがとう。お陰でここに居合わすことができたよ」

 

「礼などいい……どういうことか説明してもらおうか」

 

「そうですよ、さっきから視線が痛いんでどうにかしてください」

 

………ん?この視線、いつも感じているものと同じ気がする。

 

「そうだね……『彼女』を誘い出すために、ここら辺一帯の『餌』を根絶やしにしてみたのさ。どんな偏食家でも空腹には勝てないだろ?」

 

「それであんな任務をやらせてたんですか………」

 

「チ………悪知恵だけは一流だな」

 

ソーマが苦い顔をして吐き捨てるように言う。あの顔はなにか心当たりがあるな。俺も用心しておこう………

 

「えー……と、博士……この子は???」

 

コウタが恐る恐る尋ねる。そうだ……微妙に話の路線がずれていた。結局この少女がなんなのか博士は話していない。

 

「そうだね。立ち話もなんだし、僕のラボで話そ「イタダキマス!」」

 

「グハァ!………俺の神機食うな!!」

 

いきなり神機に飛び掛かったかと思うと俺のGEケーキを食べ始めた。本当になんなんだ……こいつは!

 

「コウタ!アリサ!ちょ……助けてくれ!!」

 

「お、おう!ほら!離れろ!!」

 

「この子、凄く力が強いです!」

 

結局、五分間格闘した。

 

 

 

 

 

「「「えええええええええええええ!!!???」」」

 

「マジですか、博士!」

 

ラボラトリに響く大絶叫。サクヤさん達は変なポーズをして固まってしまっている。が、かく言う俺も驚きが隠せない。ソーマが唯一ポーカーフェイスを保っているが多分驚いてるだろ、多分。

 

「あの……博士………今なんて……?」

 

サクヤさんが辛うじて尋ねる。

 

「何度でも言おう。彼女はアラガミだよ」

 

博士が大したこと無さそうに言うが、有り得ないだろ。俺達が日々殺しまくっているアラガミが襲いもせず目の前に座っているなんて……

 

「ちょ………ま………あぶ!!」

 

「う…………え?」

 

「ヤバイでしょこれ、ヘタしたら犯罪者ですよ!」

 

コウタとアリサは最早マトモに言葉を話せていない。完全に脳内がフリーズしている。それよりもこの状況がヤバイだろ!アラガミを連れ込んだなんて絶対言えない!

 

「落ち着いて、彼女は君たちを捕食したりしないよ……まあ、腹が減ったら迷わずガブリ!だけどね。あ!アマト君の神機を食べてお腹一杯かな?」

 

「ゴチソウサマデシタ!」

 

律儀に『ご馳走さま』と言うのが余計腹立つ。そう、このアラガミの少女は俺の神機を所かまわずどんどん食いまくったのだ。あの時は神機との別れを真剣に覚悟した……どんだけ引き離すのが大変だったか。

 

「知っての通り全てのアラガミはね、『偏食』という特性を有しているんだ」

 

「要は好き嫌いですね」

 

一言でざっくりまとめる。まあ、簡単に言えばこんなもんだろ……なんかアリサが凄く言いたそうな顔をしてたがまあいいか。

 

「君達の神機にも適用されている特性だね。まあ、常識だよね」

 

「…………知ってた?」

 

「当たり前だ」

 

コウタ……ソーマにも憐れみの目で見られているぞ。少しは博士の講義を真面目に聞けよ………

 

「この子の偏食の傾向はより高次のアラガミに向けられているみたいだ。つまり、われわれは食物の範疇に入っ

ていないんだよ」

 

「すみません、俺の神機は普通に食物の範疇なんですけど」

 

俺の神機って高次な食料なのかよ………!そりゃあみんな大好きなスイーツだけども。

 

「まあ、美味しそうに作ったからね。アラガミのみにだけど」

 

「…………」

 

なんも言えねーとは正にこの事、か………

 

その後の博士の話を要約すると、どうやら彼女は人間と同じ進化を辿ったアラガミらしい。頭部神経の造りが人間の脳とそっくりだそうだ。それをサカキ博士は観察したくてこの少女を連れ込んできたらしい。ニュアンス的にマズイ気がする…………

 

「最後に、この件は私と第一部隊の君達だけの秘密にしておいてほしい………いいね?」

 

「ですが、教官と支部長に報告しなければ………」

 

「ダメですよ、サクヤさん。俺達は知らないとは言えアラガミをアナグラに連れ込んだんですから……減俸じゃあすみませんよ」

 

「その通りだ、サクヤ君!」

 

サカキ博士がサクヤさんにズイッ!と顔を近づける。流石に女性にはどうかと思うぞ。

 

「僕たちはもう共犯なんだ。なに、心配することはない。この部屋は通信インフラやセキュリティ関係も独立しているんだ。バレることはないさ」

 

お菓子作りの資金が減るだけならまだいいが、言った通り、ヘタしたら俺達は犯罪者扱いだ。サカキ博士はそれも狙っていたんだろ。まったく、してやられた…………

 

「…しかし、なんのために………」

 

その時、博士がサクヤさんの耳元に口を近づける。

 

「君だって、いや、アマト君もか………今やってる個人的な活動に余計なツッコミを入れられたくはないだろう?」

 

「…………!!」

 

俺にも聞こえるように博士が呟く。まあ、知っているとは思っていた。今更驚きはしない。が、サクヤさんは違ったようだ。明らかに動揺している。

 

「仲良くしてやってくれ……ソーマ、君もよろしく頼むよ」

 

「ふざけるな!………人の姿をしていようと、化け物は化け物だ」

 

そう言い残して部屋を出ていった。…………ソーマの心はまだ凍ったままだ。俺に溶かすことはできない、か………

 

「この子、どうしましょうか?」

 

「一応アラガミだもんなー、部屋の外に出すわけにもいかないし………」

 

「ゴハン!!」

 

さて、本当にどうするか…………

 

 

 

 

 

「なあ、あの白い子ってどうするんだろうな。バレるとヤバイんだろ?」

 

「そうだな………まあ、サカキ博士なら大丈夫だろ」

 

白い少女との邂逅から後日。エントランスで、欄干に肘をかけながらコウタと白い子について話している。コウタの心配ももっともだが、あんなに悪知恵の働くサカキ博士の事だ。有りとあらゆるえげつない手を使って隠蔽するだろう。

 

「それにしても、ほんと大変な時代だよなー……アラガミが出る前はすげー平和だったらしいぜ、命のやり取りなんて全然なくてさ………」

 

「ああ、俺もノルンで見たことある。皆幸せそうだよな。」

 

今じゃ考えられない位の建物が建ち並んでいて、沢山の人が往き来していた。初めて見たときはこんなに人がいるんだと驚いたものだ。

 

「いや、全部ノルンの受け売りだけどね………知ってた?昔はバガラリーみたいな番組が沢山あってさ、昔の動画がストックされてるログがあってさ」

 

「マジで?料理番組とかあるか?今後の参考にしたいんだが」

 

「ああ!『カノンとアマトの三分クッキング』のためか!あれすげー面白かったぜ!!」

 

さすがテレビっ子、すぐに番組名を言い当てた。面白かったとは嬉しい事を言ってくれる。あれは賛否両論だったからな……

 

「次ゲストで来るか?」

 

「え!?行く行く!!」

 

即答してくれた。やはり喜んでくれたか。テレビ好きなら一回は番組に出演したいものだろう。博士がもう一度撮影しようって張り切っていたからな。交渉すればなんとかなるだろ。

 

「そうだ、妹が作ってくれたお守りがあるんだ!カワイイやつだろ?」

 

ポケットからノゾミちゃんが作ってくれたというお守りを取り出す。

 

「おお、そっくりだな」

 

自慢するだけあって相当の出来の良さだった。目はボタンで、肌や帽子はフェルトで作られたコウタの顔だった。心のどこかで羨ましがっているのか、ついついコウタに羨望の目を向けてしまう。

 

「へへ!実はな………」

 

俺の視線に気づいたコウタは、得意そうな笑みを浮かべてポケットから何かを取り出す。

 

「アマトの分もあるんだぜ!」

 

俺の手に渡された物は、コウタと同じように目がボタンで、肌や髪がフェルトで作られた俺そっくりのお守りだった。まさか俺にも作ってあるとは思わなかった。何と言うか……嬉しいもんだな………

 

「はは、俺そっくりだな。ありがとうって言ってくれ。……そうだ、御返しにお菓子でも作っとくか」

 

いつ渡せるか分からないが、お礼にクッキーとケーキを焼いておこう。今度の休暇にでも遊びに行くか………

 

「ははは!きっと喜ぶぜ!皆アマトのお菓子が大好きだからな!」

 

しかし、笑い声とは裏腹にコウタの表情は次第に浮かないものになっていった。遠い目をしてアナグラを下の階で遊んでいるエリナ達を見ている。

 

「皆こうやってさ、いつもニコニコして暮らしてたんだろうな………うちに帰ったら笑顔で家族がお出迎えでさ」

 

「………お前だってそうだろ?おばさんやノゾミちゃんもいる」

 

「ああ、そうだけど……何かあったらと思うとやっぱり心配でさ、かけがえのない家族だしな」

 

「…………そうだな」

 

………無意識に視線を下げていた。理由は簡単だ。こうやって家族の話をしていると、罪の意識ばかりが沸き上がってくるからだ。どうしようもないな……俺は。

 

「あ………ゴメン、アマト!!そんなつもりじゃ!」

 

俺の家族は全員殺されている事を思い出したのか、慌てて頭を下げて謝る。

 

「ん、気にすんなって」

 

なにも家族がいないのは俺だけではない。アリサだってそうだし、この世界には家族を殺された人が数えきれない程いるだろう。自分だけが不幸だと嘆くことはできない。

 

「「…………」」

 

暫く沈黙が続く。このまま黙っているわけにもいかないな。そうだ、完成間近を迎えているエイジス島の話でもするか。

 

「……エイジスができれば、皆笑顔で暮らせるんだろうな」

 

「ああ、そうだな……俺達が頑張んないとな。皆安心して暮らせる世界のために…………」

 

…………あれ?結局湿っぽい空気かよ

 

「よし!そろそろ博士の部屋にいこうぜ!待たせると恐いからな」

 

いきなりコウタが明るい声をあげた。そういえばサカキ博士に呼ばれていたな。それにしてもさすがだ、強引にこの空気をぶち壊した。

 

「ああ、そろそろ行くか」

 

 

 

 

 

「名前、ですか?」

 

サカキ博士のラボラトリで、アリサが困ったように呟く。

 

「ああ、いつまでも『この子』扱いだと色々不便だからね」

 

『この子』が興味深そうに俺達の顔を見渡す。なんの事か分かってないんだろうな。つーか、名前を考えさせる為に呼んだんじゃないだろうな。

 

「どうもこの手の名前をつけるのは苦手でね……代わりに素敵な名前を考えてほしいんだけど、どうかな?」

 

「どうかなー?」

 

ドンピシャかよ。まあ、この後用事が入っていないから別にいいが。しかし、名前か………どんなのにするか?安直だが、やはり皮膚が白い所から名前を取ったほうがいいのか……

 

「ふっ……俺、ネーミングセンスには自信があるんだよね!」

 

丁度良さそうな名前を思索している中、コウタが自信満々そうな顔をして言い放つ。あ、何かのフラグが建ったな。

 

「イヤな予感しかしないんですけど…………」

 

「以下同文だ」

 

アリサも似たように感じたようだ。しかし、コウタはお構いなしに口を開く。

 

「そうだな、例えば……ノラミ!とか………」

 

ピシッ!と空気が固まる。やっちゃったな、これは………サカキ博士ですら微妙な顔をしている。

 

「ドン引きです………」

 

「糖分取るか?野生児だからノラミって付けたんだろ?少しはましに頭が回るだろ」

 

糖分は脳の活動を活発化させるからな。コウタにはある意味必要なものだろう。

 

「なんだよー!他に良いのがあんのかよー!!」

 

おお……!コウタが反論した。

 

「ええ!?何で私が言わなきゃいけないんですか!!」

 

「へ~んだ、自分のセンスを晒すのが恐いんだろ」

 

「そんなことないですよ!え~………と………」

 

エリックではないが、華麗なほどの立場逆転だ。アリサのネーミングセンスか………興味あるな。

 

「…………ア、アマトさんは何かありますか!?」

 

「俺に振るなよ!」

 

コウタがニヤニヤしてやがる…………くそ、こうなったら言うしかない!

 

「一気に言うぞ……クリーム、シナモン、バニラ、シュガー、etc……」

 

「全部お菓子関連じゃんwwwww」

 

「くっ…………!」

 

コウタが腹を抱えながら笑う。しょうがないだろ………言い名前が浮かばなかったから、お菓子関連の名前を取るしかなかったんだよ!

 

「で、でもノラミよりは断然良い名前です!」

 

「そうだ!ノラミよりは断然ましだ!なんか一個気に入ったのがあるはずだ!」

 

そう、こんなに言ったのだ。確実に何か気に入った筈………!

 

「何か気に入ったのはあった?」

 

サクヤさんが腰をかがめながら尋ねる。俺個人ではバニラという名前が一番似合うと思う。

 

「んー………シオ!!」

 

は………?塩…………?

 

「………俺塩って言ったか?」

 

「いや、絶対そっちの塩じゃないですよ!?」

 

「それ、あなたの名前?」

 

「そうだよ!」

 

「どうやら、ここにいない誰かが先に名付け親になったみたいだね」

 

この少女の事を知っているのは第一部隊と博士だけで、今いないのはソーマだけ。そうか、アイツが………

 

「成る程……甘党代表であるこの俺にケンカを売ってるのか」

 

「甘党代表ってなんだよ!」

 

全国の甘党代表として、このまま引き下がる訳にはいかない。名前が塩だけなんて許せない。

 

「なあ、だったら名字で『佐藤』なんてどうだ?」

 

「佐藤…………?」

 

気に入れ……!気に入れ………!!

 

「ちょ…………アマト君、いくらなんでもそれは…………」

 

「そうですよ………この子の名前、調味料しかありませんよ………」

 

「佐藤!!佐藤ーー!!」

 

他の二人は苦々しい顔をしている。しかし、この少女は気に入ってくれたようだ。確かに調味料だらけの名前だがどうしても砂糖………間違えた、佐藤を入れたい!

 

「気に入ってしまったみたいだね」

 

『しまった』て何だ、博士?

 

「よし、お前の名前は『佐藤シオ』だな」

 

うん、甘味と辛味のバランスが取れた良い名前だ。

 

「いやいやいや!そんな名前可哀想だって!なあ、ノラミが良いだろ!?」

 

「イヤ!!」

 

「んだよチクショー!!」

 

 




原作微改変!
彼女の名前は佐藤シオに!!
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