スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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二十四品目 甘党は、アラガミにも…………?

「アマトー! オッス!」

 

扉を開けて出迎えてくれたのは、コウタが教えた挨拶の真似をしているシオだった。満面の笑みで元気よく右手をあげる姿を見ると、大分人間らしくなったと実感する。

 

「よ、シオ」

 

ついついシオの頭を撫でる。天真爛漫に育ってくれて俺は嬉しいぞ………… なんか親父くさいな。

 

「えへへ~!」

 

「アマト…… お前か、シオに変な名字をつけたのは」

 

例に漏れずソーマが佐藤の事を反対する。第一部隊からもノラミ以上の大反対だったからな。コウタにまで反対されたのは心外だったが。

 

「全然変な名字じゃないだろ、全国の佐藤さんに謝れ」

 

佐藤は今も昔も一番多い名字なのに何が気に入らないんだ。普通に無難だろ。

 

「そうだそうだー!!」

 

「そーいうことじゃねえ!! 『佐藤』と『シオ』なんて調味料だらけの名前になるだろ!」

 

「本人が気に入ってるし、別にいいと思うんだが? そもそも塩って何だよ…… ふつうバニラだろ」

 

「塩じゃなくたシオだ……! どこぞの甘党バカと一緒にするな!」

 

ソーマめ……… 完全にシオにゾッコンじゃねえか。種族を越えた愛を育むのも時間の問題だな。

 

「ゴホン! 話があるんだけど………」

 

そんなアホな事を考えていたら、博士が咳き込んだ。そうだ、博士に呼ばれてラボラトリに来たのを忘れていた。

 

「このように、シオの知能は成人のそれと言っていいほど成長した。でも、驚かせたい訳じゃなくてね……重大な問題があるんだ」

 

「何ですか、それ?」

 

「シオの食料不足でね………実は、君たちが集めてくれたコアが先日尽きてしまったんだ」

 

シオを発見してから翌日、旧時代の労働基準法違反スレスレの連続任務。オウガテイルからヴァジュラまで幅広いアラガミを第一部隊で倒しまくった。推定で1ヶ月分のコアを集めた筈なのだが………

 

「もう無くなったんですか!?」

 

「マジか…………!?」

 

あまりの大食いっぷりに驚愕の声をあげた。あのソーマですらも驚いている。まだシオが来て1週間も経っていないぞ………

 

「おいしかったよ~!ありがと、ありがと~!」

 

シオがちょこまか動き回りながらお礼を言う。天然キャラだけでなく、大食いキャラまで確立しているなんて恐ろしいヤツだ。

 

「そこで君たちにはシオをデートに連れてってほしいんだ。フルコースを宜しく頼むよ、アマト君」

 

「デザートに俺の神機を食わせろと? 嫌ですよ、シオがどんだけ食い意地張ってると思ってるんですか」

 

神機との別れを覚悟するのはあの1回で十分だ。人間の女の子と同じで、お菓子(神機)が大好きだから遠慮せずにガツガツ食われる。そのせいでリッカさんに怒られるんだよ………!

 

「グダグダ言うな、とっとと任務を受けろ」

 

「この………!」

 

ソーマ…… 他人事だと思いやがって。神機絡みでリッカさんを怒らせるとツバキさん並に怖いんだぞ。

 

「はかせー、デートってなんだー?」

 

「楽しいことだよ。アマト君の神機も食べれるんだ」

 

「やったーーー!!」

 

悪いが俺は全然楽しくない。どうにかして対処策を練らないと……… 要は甘そうなアラガミを食わせればいいのだ。だが、そんな都合がいいアラガミが………

 

「………いたな」

 

そうだ、あのアラガミがいたじゃないか…………! あれならシオでも糖分を摂ることすら…… いや、暫くお菓子を見ることすら嫌になる。

 

「これは断れないね~ アマト君」

 

「なら、倒すアラガミは俺が指定してもいいですか? それなら受けますよ」

 

「うん、構わないよ。ソーマも問題ないよね」

 

「………ああ」

 

ソーマが若干怪しがっていたが、返事をした今ではもう遅い。これから俺の超絶お菓子パーティーに付き合ってもらおうか………

 

「じゃあ、早速愚者の空母でお願いします」

 

 

 

 

 

神機を片手に欄干の上に佇み、地平線に沈む夕日をしみじみと見つめながら極甘ジュースを喉に流し込む。他の面子は「よくそんなもの飲めるな、こいつ」という視線を向けている。このジュースの理解者は俺以外にまだいない。なんか、寂しいものだな…………

 

「アマトー! なにのんでるのー?」

 

しかし、シオだけが極甘ジュースに興味津々といった感じで近づいてる。この味は人間に理解されないなもしれない。だが、アラガミなら理解するんじゃないか?

 

「とっても美味しくて甘いジュースだ。飲むか?」

 

そんな期待を込めてシオに極甘ジュースを渡す。シオは嬉しそうに受け取った。気に入ればいいのだが……

 

「んーー……いらない!」

 

しかし、結局淡い夢だったようだ。匂いを嗅いだだけで極甘ジュースは俺の手にカムバック。純粋であるシオにもこの拒否のされ方である。アラガミにすら不評の極甘ジュース…… 発売中止にならないことを願おう。

 

「まあ……… アマトがおいしければそれでいいと思うぜ」

 

「私も…… うん、個性的で良いジュースだと思いますよ!」

 

あまりにも落ち込んでいる俺を見かねてか、コウタとアリサが肩に手を置きながら励ます。でもな、余計心を抉っているんだよ……

 

「………任務、始めるか」

 

今日の事は、任務をして忘れよう。

 

「なあなあ、なんのアラガミを討伐するんだ?」

 

「あ、私も気になります」

 

今回の討伐するアラガミの名前は敢えて伏せている。アラガミの名前を言うと、リーダー権限を使っても絶対に皆来ないからな。あのアラガミはそれだけ危険なのだ。なんやかんやで第一種接触禁忌種アラガミだし。

 

「言ってなかったか? アイツだ、アマイアマイだ」

 

「「「な!!??」」」

 

かつて共に討伐をしたことがある3人は、絶望と苦痛に満ちた表情で悲鳴に近い声をあげる。そこまで嫌か……

 

「おいしーのかー??」

 

「きっと凄く美味しいぞ、多分」

 

名前通りに甘いアラガミだが、旨いかどうかは保証できない。

 

「嘘だろ!? 何でアマイアマイなんだよ! アレがシオのご飯になるんだぞ!?」

 

「テメェ…… シオを殺す気か!」

 

「う……… 吐き気が………」

 

アマイアマイの激闘を思い出したのか、みるみると顔が蒼くなる。ここでアマイアマイの説明をしよう。アレの攻撃自体に殺傷能力は無い。しかし、その攻撃には極甘ジュース以上の糖分度数が含まれている。あまりにも甘すぎる攻撃で悶絶している所を捕食するというアラガミだ。奇妙なアラガミもいたものだ。

 

「基本俺が殺るからお前らは陽動でいいぞ。アレはアレで危険だからな…… 俺が先行する」

 

一先ず俺だけで捜索する事にした。何故なら、ほとんどのゴッドイーターはアマイアマイのたった一撃で悶絶してしまうからだ。アラガミであるシオでさえも悶絶すると思う。極東支部でもマトモ(?)に耐えられるのは俺だけだ。

 

「シオもイタダキマスしたい!!」

 

「心配すんな、後で沢山食わせるって。じゃ、行ってくる」

 

駄々をこねるシオを宥めて欄干から飛び降りる。常人なら自殺ものの高さだが、ゴッドイーターの身体能力ならこの程度の高さはなんともない。髪を乱すほどの風圧を感じながら、重力に従い落下していく。

 

『ズドンッ!』

 

極力衝撃を分散するよう膝と手をついて着地したが、音までは消せなかったようだ。だが、幸いな事にアマイアマイは近くにいない。奇襲せずにヤツを倒すのは骨が折れるからな。

 

早速、辺りを警戒しながら海辺を沿って足を進める。因みに、アマイアマイは水の中を泳げない。お菓子を水の中に入れるとふやけるのと同じ原理だ。

 

どんな肉体かと言うと、姿はグボログボロに近く、肉体はスポンジケーキの表面にチョコクリームがベッタリ塗ってできている。目は渦巻きキャンディで、砲台は板チョコを六角形状の筒のような感じにしたものだ。つきでにヒレも板チョコだ。初見の時、道理でふやける訳だと思った。

 

そんなアラガミ、アマイアマイは勿論甘党だ。全ての個体が俺の神機を狙ってくる。正に永遠の宿敵とも言えるだろう。

 

 

柱の陰に隠れながら前方を確認する。

 

(いたな………)

 

夕日を見ながら優雅にくつろぐアマイアマイ。腕輪で救援信号を発信してから、GEチョコの一部を投げつけた。それに気づき、必死にGEチョコを捕食する。さっきまでの優雅な態度はどこへやら…… アマイアマイも糖分に飢えているのか?

 

滑らかな食感とほろ苦い甘さ(アラガミ限定)を堪能するアマイアマイに音をたてぬように詰め寄る。ある程度近づき、神機をプレデターフォルムに変型させる。黒い化物の顎(あぎと)が今か今かと開かれる。

 

「喰らえ……!」

 

グジャアァア!!

 

「アヴァイイィィイ!!?」

 

アマイアマイの板チョコヒレを噛み千切ると同時に、体から力が溢れてくる。最初からバーストモードになり全力でかからないと、倒すことはできない。第一種接触禁忌種の名は伊達ではないのだ。

 

「アヴァイィ!!!」

 

アマイアマイが此方を向き雄叫びをあげる。上に向けた砲台を起点に、ピンク色の液体がシャワーの如く降り注ぐ。その糖度は極甘ジュースの10倍だ。液体が俺の服をベトベトにする。

 

「甘っ!」

 

しかし、俺には効かない。せいぜい「うわ! 甘い!」程度だ。神機を上段に構えて、力の限り振り下ろす。アマイアマイのチョコレートコーティングされた肉体と、GEチョコがぶつかり合う。

 

ガガッ!!!

 

表面のチョコレートはかなりの硬度を有しており、GEチョコの刃が通じない。だが、今の俺はバーストモードだ。

 

「ぬあぁ!」

 

強化された腕力に任せて神機を押し込み、無理矢理チョコレートを打ち破る。中のスポンジケーキまで届けば後は容易い。

 

「アヴァィイ!!」

 

巨大な顔面にザックリと傷を刻んだ。それに逆上したアマイアマイは突進攻撃を仕掛ける。だが、怒りに任せた単調な攻撃だ。難なくそれを右にステップして回避する。バーストモードなだけあり、通常よりかなりの距離をとることができた。

 

(さて、どうするか………)

 

そろそろバーストモードも切れる時間だ。しかし、それだけ時間が経てば………

 

「アマトさん! 遅くなりました!!」

 

期待通り、アリサの声が耳に届く。

 

「ナイスタイミ………」

 

後ろを振り返ると、100Mほど先に四人の姿があった。射撃ができるであろう限界ギリギリの距離だ。お前ら、そんなに戦いたくないか。アマイアマイのクリーム弾を右、左とかわしながら救援の視線を向ける。流石の俺でもあと三発喰らったらダウンする。

 

「ソーマ! はやくイタダキマスしよ?」

 

「シオちゃんは私達と一緒に見ていようね。ソーマ、はやく前線に行ってきてください! アマトさんがピンチです!」

 

「な…………!!」

 

「俺達が後方支援してるからシオは心配すんな!」

 

「てめえら、覚えてろ………!!」

 

ソーマがしぶしぶながら前線に加わる。標的が増えたと判断したのか、更にクリーム弾砲撃の激しさが増す。途中からブラックチョコレート弾も混ざってくる始末だ。因みにカカオ1000%、これは甘いというより苦いので専門外だ。一番危険な攻撃と言えるだろう。

 

「くそ! 居るだけで気分が悪い………」

 

「そうか? なかなか心地良いけどな」

 

「それはお前だけだ」

 

「じゃ、ソーマ。陽動たのんだぞ」

 

「な……… アマト、待ちやがれ!」

 

喋るくらいの余裕があるのだ、このまま避け続けてもらおう。バックステップで後退し、一旦瓦礫の陰に身を隠す。気付かれぬよう、弧を描くようにしてアマイアマイに接近する。ソーマへの砲撃に夢中なのか、こちらには見向きもしない。

 

「悪いが狙わせてもらうぞ」

 

神機をGEケーキに変型させる。左足の膝を地面につき、右手で銃身を支え、左手で引き金を握り、銃口を目線と同じ高さにする。狙いは顔の傷痕だ。鉄壁の防御を誇るアマイアマイでも、銃弾が体内で爆発すればただじゃ済まないだろう。

 

「…………」

 

感覚を極限まで研ぎ澄ます。

 

「撃ち抜け………!!」

 

『ドォン!』

 

真っ直ぐに空を切った銃弾は、吸い込まれるように傷痕に着弾した。体内にめり込んだ銃弾は、爆発する!

 

『ズドオオォォオン!!!!』

 

爆風によって、ケーキの生地やクリーム、チョコレートが弾け飛ぶ。いくらアラガミでも、これは致命傷だ。

 

「ア………ヴァ………イ…………」

 

アマイアマイが絶命時にとる行動。それは、カラメルソースを砲台から発射し自分自身にかけるという奇行だ。最後に自分を美味しく味わってもらいたいのだろう。そして、カラメルソースが噴水のように発射され、アマイアマイは力尽きた。

 

 

 

 

 

「イタダキマスしていいんだな!?」

 

シオが、待ってましたと言わんばかりの勢いでアマイアマイの死体を捕食しようとする。相当腹をすかしてたのだろう。神機を守るためとはいえ、折角のごはんがアマイアマイか…… 悪いことしたな。

 

「ああ、待たせて悪かったな」

 

しかし、食わせない訳にもいかない。捕食衝動が出たら洒落にならん。

 

「イタダキマス!!」

 

手を合わせて、元気よく捕食する。が、どんどん微妙というより苦痛な表情に変わっていく。計画通りだ……

 

「シオこれきらい! あまとのがいい!」

 

「シオ…… 好き嫌いは、いけないぞ?」

 

「うーー…… ソーマのアラガミもいっしょにたべて!」

 

…………っ! 地雷を踏みやがった!

 

「……え?」

 

事情を知らないコウタとアリサがソーマに視線を移す。マーナガルム計画の副作用、いや…… この場合は対価としてソーマの半分はアラガミの細胞なのだ。まさかシオが気づいてたとは……

 

「テメェみたいな化物と、一緒にするな!!」

 

ソーマが声を荒げて、背を向ける。ここまで怒りを露にするのも珍しい。

 

「どうしたんですか、ソーマ………?」

 

「いいから、俺に関わるな………」

 

力なくそう言い残し、歩きだす。そんなソーマの態度から何かを感じ取ったのか、シオがソーマのあとを追いかける。

 

「シオも、ずっとひとりだったよ」

 

…………ソーマが足を止めた。

 

「だれもいなかった」

 

「う~んと………だから、だから、そーまをみつけてうれしかった。みんなをみつけてうれしかった! だから、え~っと………」

 

どう言えば良いのか分からず、言葉に詰まってしまうシオをよそに、ソーマ再び歩きだした。だが俺は、シオが何を言いたかったか確かに伝わったと思う。

 

「どうしたんだ? あいつ」

 

「あの、アマトさん…… なにか知ってませんか?」

 

「………少し長くなるが、いいか?」

 

ソーマには悪いと思ったが、マーナガルム計画の全てを二人に話した。同じ第一部隊の仲間だからな。いつかは知らないといけないことだ。

 

「そうか…… あいつ、自分が母親を殺したと思って……… カッコつけて、一人で背負うなよ」

 

「私達は、どうすればいいんでしょうか……」

 

俺達にできることか…… ふと、アマイアマイの甘さに苦戦しながらも捕食しているシオに目を向ける。

 

「大丈夫だろ、シオがいれば」

 

いつかきっと、あいつがソーマを救ってくれるだろう。




アマイアマイはDragneelさんが考えてくれました。
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~アマイアマイの補足説明~

アマイアマイは稀少種である。いつも任務の欄に残っているが、これは殆んどのゴッドイーターが戦闘をいやがるため。しかし、アラガミ防壁を破る攻撃力もないので観察対象になっている。運悪く出会った時、間違っても戦おうと思わない事だ。全力で逃げることに徹しよう。
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