スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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とうとう年が明けましたね。
明けてしまいましたね。
ああ、永遠に子供でいたい………



二十五品目 チクチクするって、エロくない?

 

「呼び出してすまない。私ではどうにもならない問題が発生してね…… 彼女に服を着させてくれないかい?」

 

博士がどうにもできない問題、それはシオの服装だった。何処から拾ってきたのか知らないが、ボロボロの布切れで体を包んだだけの格好だ。もしもシオの存在がばれたら違う意味で捕まる。それだけは嫌だ、社会的に死にたくない。

 

「確かに重大な問題ですね、ばれたら少女監禁罪で捕まってしまいます」

 

「あー…… 確かに」

 

まだ服を着てたら博士の隠し子ということで言い訳ができる。何としても服を着せないと……

 

「僕も様々なアプローチを試みたんだど、ことごとく失敗に終わってしまってね」

 

「きちきちちくちく、やだー」

 

「という事らしい。是非女性の力を借りたいと思ってね」

 

「なら何故俺を呼ぶんだ…… 戻るぞ」

 

帰ろうとするソーマの肩を、手で掴んでひき止める。何の用だ…… と言わんばかりの表情を向けているが、お前は帰ったらダメだろ。

 

「ソーマ…… 来るべき夜に向けて馴れとかなきゃ、だろ?」

 

いつか、種族の愛を越えるんだからな………

 

「その喧嘩買った」

 

「ぐふ!?」

 

久々の鉄拳制裁、俺の右頬をキレイに打ち抜いた。脳震盪により地面に崩れ落ちる。ソーマはコウタを見るような目で一瞥し、そのままスタスタとサカキ博士の部屋を去っていった。もっと素直になれよ……

 

「俺も役に立てそうにもないし…… ちょっと今バガラリーがいいとこだったんだ。任せたよ!」

 

コウタもバガラリー目当てにサカキの部屋を去っていく。あのバカ、俺たちの人生が懸かっているんだぞ………!

 

「まったく…… 薄情な男達ね」

 

サクヤさんが呆れるように呟く。しかし、直ぐにリカちゃん人形を買って貰った女の子みたいな顔をしていた。嬉しそうですね……

 

「博士、奥の部屋を借りていいですか?とにかく着せてみますので。シオー!ちょっとおいでー!」

 

「なーにー?」

 

なにも知らないシオは、サクヤさんの元へトタトタと歩き出す。

 

「アリサも手伝ってくれる?」

 

「わかりました!」

 

アリサの目もリカちゃん人形を(ry 。女子はこういうの好きだよなー…… 俺も震える体をたたき起こす。

 

「やれやれ…… 大変なことになりそうだな」

 

「アマト君!? なんで当たり前のようについてきてるの!?」

 

「…………え?」

 

「…………え? じゃないですよ! ドン引きです!!」

 

「だってアラガミの裸を見てもなんとも思わないし………」

 

「ダメです! 絶対ダメです!!」

 

「そうか、なら任せた」

 

アリサが必死な形相だったのでとりあえず二人に任せることにした。アラガミと言っても少女だからなのか? 別に俺は気にしないんだが。

 

「大変ね、アリサ………」

 

そのまま三人は部屋の中に消えていった。残るのは男衆である俺と博士だけだ。不意にサカキ博士が口を開く。

 

「それにしてもアマト君たちとシオはとても興味深いよ。その柔軟さと多様性が予測できない未来を産むのかもね」

 

確かに…… 少し前まではアラガミの面倒を見るなんて思いもしなかった。改めて考えると、人類にとっての大きな一歩なんじゃないか? 俺たちはアラガミと共存してるのだから……

 

「そうで『ドゴーン!』……は?」

 

爆発音!? その後にサクヤさんとアリサが咳き込みながら戻ってくる。部屋の中からは煙が立ち込めていた。まさか………

 

「ゲホッ! ゲホッ! あの…… シオちゃんが」

 

「壁を壊して外に………」

 

着替え中に脱走した……だと!?

 

「………服は着てるよな?」

 

「いえ…… でもあの布はつけてます!」

 

良かった。裸だったら終わってた。

 

「やはり予測できない……! 君たち、お願いだ。できるだけ早く彼女を連れ戻してくれないか?」

 

うわっ、博士が目を開けた。

 

 

 

 

 

何時ものように、しんしんと雪が降り積もる鎮魂の寺院にいる。俺たちは任務をするついでにシオを捜索するはめになったのだ。サクヤさんとアリサは贖罪の町、ジャンケンで負けたコウタは煉獄の地下街で捜索している。コウタに合掌。という訳でソーマと任務をしているのだが、どうしたものか。明らかに動揺している。

 

「アミャト、俺は向こうを見る」

 

「………おう」

 

アミャトってなんだ、アミャトって。今のソーマにアラガミと戦わせるのがすごい不安なんだが。今回の標的はオウガテイルだけだが、なんかもう任せられない。

 

(先に見つけて殺るしかないな)

 

そうと決まればあれだ、罠を張るしかない。

 

 

物陰に隠れて約10分、GEケーキを広場に仕掛けてオウガテイルがかかるのを待つ。漁業で言う撒き餌というやつだ。

 

「………とっ、来たか」

 

匂いを嗅ぎとったのか、オウガテイルが1匹、2匹と増えてくる。遂には目標討伐数のオウガテイルがGEケーキに群がっていた。一網打尽にできる絶好の機会だ。

 

「狙い撃つ……!」

 

引き金を引き絞り、銃身っつーかケーキが揺れる。銃口から放たれた弾丸は1体のオウガテイル一直線に飛んでいった。

 

「ギギャア!?」

 

オウガテイルが異変に気づくがもう遅い。次の標的に銃口を定める。一体、また一体とオウガテイルを撃ち抜き鮮血が飛び散る。そして最後に残ったオウガテイルの脳天を弾丸が貫いた。

 

銃口から硝煙が立ち昇る。神機をGEチョコに変型させオウガテイルの屍の山まで進む。数を確認すると討伐数丁度だった。これでソーマの方は大丈夫だろ。

 

(さて、後はシオの捜索だな)

 

血まみれのオウガテイルを捕食しながら、シオがいそうな場所を考える。だが、手掛かりが有る訳もなく…… 仕方ない、しらみ潰しに探し続けるか。

 

 

 

 

 

階段を上り、木造の院内の中に足を踏み入れる。なんとなくだが、この場所から確かにシオの気配を感じる。

 

「おい、いるんだろ?」

 

仏壇の陰から布の切れ端が見え隠れしている。間違いなくシオだ。あのバカ、手間をかけさせやがって………

 

「いないよー」

 

「遊びは終わりだ。さっさと帰るぞ」

 

ったく、声に出したら意味ねえだろ。

 

「ちくちくやだー」

 

そう言った後、暫く沈黙が続いた。少しも出てくる気配がない。

 

「………ふっ、所詮は化物か」

 

自分の事しか考えていない。こいつも結局はアラガミということか………

 

「そーま」

 

「あぁ?」

 

「もう…… おこってない?」

 

…………!

 

「そーま、あのときおこってた」

 

シオが俺の顔色を伺うように仏像の陰から顔を出す。それはまるで父親を怒らせた子供がとるような態度だった。

 

「………てめえには関係ない」

 

「あのとき、そーまにいやなことしたもんな……… シオ、えらくなかったもんな」

 

シオはアラガミだ。アラガミだが、誰よりも、俺なんかよりも人間らしい心を持っている。

 

「一丁前な口利きやがって」

 

自分の事しか考えられないのは、俺だったじゃねえか……… 本当に、俺はバカ野郎だ。

 

「俺もお前みたいに自分のことなんな考えず生きていけたら、楽になれるかもな」

 

「そーま」

 

「あ?」

 

「じぶんって、うまいのか?」

 

「ふっ……ははは! てめぇも少しは自分で考えやがれ」

 

やらやれ、声を出して笑ったなんていつぶりだ?

 

「ま、お互い自分のことが分からない出来損ないってことだな」

 

「おお、やっぱりいっしょか」

 

「だから、一緒にするなと………」

 

「いっしょにじぶんさがしだな!」

 

シオがガッツポーズをとる。確かに自分探しと同じ事だが………

 

「や、 やめろ………」

 

そんな恥ずかしい事、絶対他のやつらには聞かせられない………!

 

「おやつにスイーツでも持っていけよ」

 

突然後ろから声が耳に届く。この状況でスイーツという単語を使うのはあいつくらいだ。

 

「ア、アマト………!」

 

「あまと~~」

 

振り返るとやはりそこにはアマトがいた。まさか、聞かれたか………?

 

「てめえ…… 何処から聞いてた!?」

 

「全部だ。さて、二人でゆっくり自分探しをしてな」

 

「待ちやがれ!!」

 

アマトがダッシュで俺たちの元から去る。しかし、どこか安心したような顔をしていた。その顔を見て、あのときの話を思い出す。

 

『俺だから言えるんだ、お前は何も悪くない』

 

最初に会ったとき、俺とは違う暗い目をしていた。そしてそれは今も変わらない。あいつは子供の頃、自分を見捨てた両親を本気で殺したいと言っていた。そして、その罪を永遠に背負っている。本当に、俺より救われないやつだ……

 

「バカヤローが………」

 

「そーま」

 

突然シオが俺に顔を向き合わせる。その顔はいつもの幼稚な雰囲気はなかった。

 

「………あまとも、みんなも、おなじ『なかま』だってかんじるよ」

 

仲間、か。

 

「………そろそろ戻るぞ」

 

頬に一筋の涙が伝う。涙なんて、とっくの昔に凍りついたと思っていたんだがな。

 

「………ありがとな、シオ」

 

「シオがふいてあげる!」

 

「 や、やめろ…………」

 

 

 

 

 

俺、コウタ、アリサ、サクヤさん、サカキ博士はソーマとシオの帰りを待っていた。もう帰ってきていいはずなのだが妙に遅い。まさか本当に自分探しの旅をしてるんじゃないだろうな。だが、そんな心配はよそにドアが開く音が聞こえる。ソーマがシオを連れてサカキ博士の部屋に入ってきた。どこか憑き物が落ちたような顔をしている。思った通りシオがソーマの心を救ってくれたみたいだ。

 

「おかえり、ソーマ。無事シオを連れて帰ってくれたね」

 

「ああ」

 

ドカリッ! とソファーに座り込む。さらにその膝の上にシオも座る。だがそれを必死になって退かそうとする。やれやれ、その辺は相変わらずか。

 

「さて、シオの服をどうするか……」

 

「だな、俺もうあんな暑いところ行きたくねえ!」

 

そう、根本的な問題は解決していない。なんとか解決策を考えないと…………

 

「あら、それならもう心配ないわ」

 

「はい! リッカさんに新しい服をつくってもらいました!」

 

いつの間に作らせたのか、アリサの手には純白のドレスが握られていた。胸元に一輪の花が咲いている可愛らしいドレスだ。

 

「それはアラガミの繊維を材料にしたものでね、シオも気に入ってくれると思うよ」

 

「何て言って作ってもらったんですか?」

 

コウタが心配そうに尋ねる。確かに、リッカさんにどんな説明をしたんだ?

 

「アマト君が女装に使うって言ったら快く引き受けてくれたよ」

 

「いや何故に俺」

 

リッカさんも快く引き受けんな。

 

 

サクヤさんがシオを奥の部屋に連れていき数分。前回の思い出からか、大分行くことを渋っていたがなんとか説得することができた。

 

「楽しみだな~! きっと超可愛いぜ!」

 

「そうだな」

 

さて、そろそろ出てくる頃だと思うが…………

 

「お待たせ」

 

扉を開けて出てきたのはサクヤさん、その後ろからついてきたのはドレスに身を包んだシオだった。嫌がることなく着てくれたみたいだ。

 

「キャーーー! 可愛いじゃないですか!!」

 

「本当に普通の女の子みたいね」

 

「おおー! 可愛いじゃん!! な、ソーマ!?」

 

「まあ…… そうだな」

 

「おお、予想外のリアクション………」

 

周りもなかなかの好評だ。俺も天真爛漫なシオにぴったりないい服だと思う。リッカさん、デザイナーとしての才能もあったんだな。

 

「なんか、きぶんいいな~!!」

 

俺たちの反応を見てシオも体をちょこまかと動かし喜んでいる。あの服の着心地が良いというのもあるのだろう、なかなかご満悦のようだ。

 

「………~~~♪」

 

シオが突然目を瞑り、歌を歌いだした。聞く人の心を癒してくれるような、とても繊細で綺麗な歌声だった。心なしか壮大なBGMまで流れてきた気がする。クッキー片手に聞き惚れていたが、やがてシオの歌が終わる。もう少し聞いていたかったな。

 

「これ、しってるか?うたっていうだぞ!」

 

シオが自慢げに言う。

 

「すごいじゃん! シオ!」

 

「ああ、お菓子の肴にピッタリだ」

 

「アマトさん、よりによってそんな感想ですか!?」

 

いやいや、いつもより3割増に美味しくなった気がする、それほど素晴らしい歌声だった。

 

「誰にならったの?」

 

「んー?」

 

俺の予想だとアイツだな……

 

「そーまといっしょにきいたんだよ」

 

「な…………!?」

 

やっぱりか…… 恥ずかしいのか、浅黒い肌の上からでもわかるくらい顔を紅くしている。こんなソーマを見るのは初めてだな。

 

「あら………あらあらあら??」

 

「へえ~、そうなんですか~」

 

「やるねー、いつの間に仲良くなってんだよ~?」

 

「よ、極甘カップル」

 

「らぶらぶだなーー!」

 

「うんうん、ヨハンにも見せてやりたいよ」

 

すかさず俺も含め第一部隊全員でいじりにかかる。なぜかサカキ博士と当事者のシオまで。

 

「くそ………! やっぱ一人が一番だぜ…………」

 

「ソーマ、照れ隠しですか~?」

 

「うるせえアリサ、てめえはアマトとイチャイチャしてろ!」

 

「な、何を●■▲!!??」

 

「アリサ!? 喋れてない、喋れてないって!!」

 

「だから何故に俺なんだ」





今年も何卒お願いします。
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