スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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ランキング入りが嬉しいので思わず投稿


二十六品目 原初の、螺旋

 

ドアを開け支部長室に入る。そこにはタメ息をついて『嵐にあった船の絵』の前に立つ支部長がいた。人を呼んどいてタメ息かよ……

正直タメ息をつきたいのはこっちだ。シオの件がばれてはいないとは言えやはり精神衛生上よろしくない。ダッシュで逃げたい位だ。

 

「失礼します」

 

一応挨拶は忘れない。

 

「君はノックというものを知らないのかね?」

 

「俺は支部長の仕打ちを忘れません」

 

「………そうか」

 

詐欺紛いなことをしたのをまだ怒っているんだぞ、主に部屋換えの件で。リフォームはしてもらったがそれとこれとは話が別だ。まあ、今はどうでもいいか……

 

「暫く留守にしていたが、ヨーロッパ出張中も君の活躍は耳にしてたよ」

 

暫く見ていないと思ったらヨーロッパに出張していたのか。確かフェンリルの本部がある場所だな。何が目的だったのか……

いや、考えるだけ無駄か。この人も何を考えてるのかさっぱり分からないからな。天然の博士とは違う、まるで仮面をつけてるような………

 

「そうですか……

やっぱスイーツイーターで有名でしたか?」

 

「ああ、アマト君といえばスイーツイーターという程有名だったよ」

 

ヨーロッパの方でもすっかり定着している二つ名。ソーマは死神、カノンさんは誤射姫、それよりはマシなんだろうが……

このやる瀬無い気持ちは何なんだろう。

 

「さて、時間もないので本題に入ろう」

 

改まった声で支部長が話し始める。

 

「アマト君を呼んだのは他でもない。リーダーとしての特務についてもらう」

 

…………!

遂に来たか、特務。

 

話を聞いた限り、特務とは支部長直轄の任務であり、回収した物品は全て支部長の手に渡る任務という事らしい。あれ? サカキ博士の任務も似たようなものだぞ………

まあ、それは置いとこう。そんな任務なので見返りとしてそれ相応の報酬と物品が得られるそうだ。

 

「前リーダーだったリンドウ君………

彼もよく私に尽くしてくれた。彼ほどの男を無くしたのは、実に大きな損害だった………」

 

その言葉とは裏腹に、表情には何も感情が籠っていないように感じる。俺個人の感覚なので断言はできないが………

 

「しかし、今は彼以上の逸材がここにいるという事だな。君には期待してるよ、頑張ってくれたまえ」

 

「はい、失礼しました」

 

軽く頭を下げ支部長室の扉を開ける。シオの事がばれなくてよかった。俺達自身が反逆罪に問われるだけじゃなく、シオの処遇にも関わってくるからな。もしシオの存在が露見すれば十中八九で研究室送りだろう。そんな事態にさせる訳にはいかない。

 

支部長室の扉が閉まったのを確認する。安心からか思わずひと息ついてしまう。ああ、ほんと心臓に悪い。

 

「とうとうお前も呼ばれたのか」

 

「お、ソーマ………」

 

腕を組みながら壁に寄り掛かるソーマがいた。

 

「これだけは言っておく、アイツに深入りするな」

 

それだけ言ってエレベーターの方へ歩いていく。随分と意味深な忠告だ。だが……

 

「そういう訳にもいかないだろ?」

 

何故リンドウさんが死んでしまったのか………

その真相まで辿り着く。それが、救えなかったリンドウさんに対するせめてもの償いだ。

 

その答を聞いたソーマは、振り返らずに足を進めたままポツリ…と言葉を漏らす。

 

「精々、くたばるなよ」

 

「………ああ」

 

 

 

 

 

嘆きの平原。アラガミに破壊し尽くされた廃墟が広がり、やむことの無い雨が永遠に降り続ける場所。しかし、その雨すら気にならないほどの圧倒的なプレッシャーが、心に重く突き刺さる。

 

討伐対象の名は、ウロヴォロス。

 

単独で討伐する事ができるのは極東支部でもリンドウさんのみだったという強敵。この特務を任されたということは、少なくともリンドウさんの実力に追い付いたと支部長に判断されたのだろう。昔の俺は瞬殺されるとまで言われていたのにな……

 

「…………行くか」

 

そろそろ任務の開始時間だ。ウロヴォロスは唯でさえ山のように巨大なアラガミだ。歩き回れば嫌でも直ぐに見つかる。早速、雨に打たれながらウロヴォロスを探し始めた。

 

 

ズシン! ズシン! という地響きがする。姿が見えないにも関わらずこんな音を出せるのはアラガミの中でもウロヴォロスくらいだろう。音を聞く限り距離はまだ遠い。ビルに背を預け、曲がり角からゆっくりと向こうを見る。

 

「おいおい……」

 

そこにいたのは深緑の色合いをしたアラガミ、ウロヴォロス。数十本はあろう腕のような触手を持ち、赤い宝石のような煌めきを放つ複眼が絶えず動き回る。それにしても、山のようとはよく言ったものだ。唯でさえ不気味だというのにそのサイズのせいで迫力も増している。

 

だが、俺のすることは変わらない。殺して喰らう、それだけだ。

 

神機をGEケーキに変型させる。通常のアラガミならこの距離で狙撃するのは難しいが、相手は巨大なウロヴォロス。弱点の複眼に銃弾を叩き込むのは容易いことだ。

 

「いけっ………!」

 

先手を取るべく銃弾を放つ。

 

狙い通りウロヴォロスの複眼に被弾する。しかし、大してダメージを受けた様子はない。俺の存在に気づいたのか、一斉に複眼がこちらへ向けられる。

 

「ヴオォォオォオオオォ!!!!」

 

「…………ッ!」

 

天に吠えると同時に圧倒的な声量で空気が震える。ギンッ!とこちらに顔を向けると、ウロヴォロスの複眼の前にモヤモヤした光が集まる。

 

「ーー!」

 

右方向へ飛び込むように回避する。その予備動作はターミナルで確認済みだ。

 

甲高い音と供に一筋の光線が空を切る。余りの熱量で通った地面が真っ赤になって溶けていた。あれを喰らえばゴッドイーターと言えどもただではすまない。

 

前転して体勢を立て直し、ウロヴォロスと向き合う。直ぐさま神機をGEチョコに変型させ、一気に距離を詰めようと駆け抜ける。

 

しかし、ウロヴォロスの方も行動を起こす。右手の触手を地面に突き刺した。その瞬間、俺を串刺しにしようと次々に触手の槍がつきだしてくる。それを右、左と避けて接近を試みるが………

 

「痛っ………!」

 

右腕が槍に引っ掛かった。肉を抉り、たらたらと血が流れる。決して傷は浅くない、寧ろ深いくらいだ。だが、それくらいで俺は止まらない!

 

「おおぉ!!!」

 

触手の槍を掻い潜り、ウロヴォロスの右腕を渾身の力で斬りつける。左腕のみの力なので切断までは敵わなかった。しかし、切り口から大量の鮮血が噴き出す。ダメージとしては十分だ。

 

「ヴゴォォオオ!?」

 

痛みからか、ウロヴォロスが触手を地面から引っこ抜く。たじろいでいる間にウロヴォロスの左腕を更に斬りつける。怪我で右腕が動かすことができないが、今は気にしている場合ではない。ひたすら斬りつけるのみだ。

 

「ヴガァァアアアァ!!」

 

「!!」

 

右腕の触手を鞭のように薙ぎ払う。まずい! これは…… 避けきれない!!

 

(間に合え…………!)

 

反射的にGEキャンディを展開する。しかし、この盾の種類はバックラーだ。展開速度は速いがその分防御力に欠けてしまう。この攻撃、受けきれるか……!?

 

鈍い音が響き、体に衝撃が走る。

 

「ぐはぁ!!」

 

体が宙を舞う。あの巨大な腕をモロに喰らえば当たり前だ。重力に従ってそのまま地面に叩きつけられる。くそ、 受け身をとる余裕もない………! 泥まみれになりながらゴロゴロと地面を転がる。

 

「………く……ぅ………!!」

 

震える足で神機を支えに何とか立ち上がる。立ち上がったは良いものの、このままでは勝てる見込みはない。

 

(………ここで、死ぬ気はない!)

 

直接GEケーキに噛ぶりつく。俺の神機ならこの怪我もある程度回復する事ができる。勝つまで、泥臭く戦い続けてやる……!

 

右腕の抉れた肉が塞がっていく。まだ痛みは残るがなんとか動かせるくらいにはなった。神機を構えてウロヴォロスと向き合う。

 

「ヴゴォォオオ!!」

 

ウロヴォロスが地面を揺らしながら戦車のように迫ってくる。それと同時に俺も地を蹴り走りだす。端から見ればただの自殺行為だが、勿論策があってのことだ。右手に掴んでいた物を後ろに落とす。

 

「ヴガァァ!?」

 

ウロヴォロスが動きを止める。

 

眩い閃光がウロヴォロスの目を潰したからだ。発動させた物はスタングレネード。止められるのは数秒だがそれだけあれば十分だ。

 

思いっきり跳躍する。助走をつけただけあり、楽々とウロヴォロスの顔を眼前に捉える。

 

GEチョコの半分が隠れるほどウロヴォロスの顔面に深く突き刺す。

 

「ヴオォォオォオ!!!」

 

痛みと怒りか、はたまたか振り落とそうしているのか、ウロヴォロスが見境なしに暴れまわる。触手を地面に叩きつけ、轟音と共に土が弾け飛ぶ。この…… 無駄に暴れやがって…………!

 

左手で複眼の一つを掴み、神機を右手で引っこ抜く。夥しい量の血が噴き出し、その痛みと怒りで更に激しく暴れ回る。

 

振り落とされぬよう左手に力を込める。

 

「喰らえ…………!!」

 

右手の神機をウロヴォロスに向けてプレデターフォルムに変型させる。さあ、このまま喰らいつけ!!

 

アラガミのような顎(あぎと)がウロヴォロスの顔面を喰い千切る。ガリッ! ゴリッ! と骨や肉を噛み砕く音をたてながら咀嚼する。

 

バーストモードになり体の底から力が溢れだす。

 

「うおおおぉぉぉ!!!」

 

GEチョコで斬り下ろしながら地面に落下していく。落下の重力と強化された腕力により易々とウロヴォロスの顔面を斬り裂いた。

 

「ヴギャアァアアァア!!!」

 

地面に着地した直後に、ウロヴォロスの無数の触手が俺を串刺しにしようと迫る。

 

「ーーーッ!!!」

 

GEチョコで一本一本叩き潰していく。斬撃が音速を越えるくらい速くなってる気がするがバーストモードの恩恵だろう。返り血が全身を濡らしていくがそんなことはどうでもいい。

 

最後の一本の触手を一刀両断する。そして斬られた触手は俺の左右の地面を打ち叩く。

 

神機をGEケーキに変型させ、ウロヴォロスの傷だらけの顔面に狙いを合わせる。今から撃ち込むのはアラガミパレットだ。この一撃で終わらせる。

 

「ーーいけっ!」

 

銃口にモヤモヤとした光が集まる。より一層輝きが増したとき、極太のレーザーが放たれた。単純な太さなら通常レーザー10本分だ。その威力は計り知れない。

 

肉が吹き飛ぶ鈍い音響く。レーザーがウロヴォロスの頭部を貫通したのだ。後頭部から血を撒き散らしながらゆっくりと前のめりに倒れる。因みに俺はしっかり避難済みだ。

 

「……フゥ」

 

なんとか生き残ったか…… とは言ったものの満身創痍だ。恐らく全身打撲、あとアバラも二本は折れている。俺もまだまだだな………

 

「さて、後はコアの摘出か………」

 

こういう疲れた身体には、極甘ジュースが恋しいな。

 

 

 

 

 

今日はショウコさんの手伝いで病室のお留守番をしています。医療器具の整備や部屋の掃除で大変な仕事です。だけど皆のために頑張らないと……

 

「失礼します」

 

「はい、どうぞ」

 

早速病室に誰か来たみたいです。大変! 急いで治さな………

 

「きゃぁあああ!!? アマトさん!!?」

 

「こんにちは、カノンさん」

 

アマトさんは普通に挨拶をしているけど、血まみれです! どこからどう見ても血まみれです! 何でこんなに冷静なんですか!?

 

「アラガミの血だから落ち着いてください」

 

アラガミの………ええーー!?

 

「と、とりあえず服を脱いでください!!」

 

あれ? なにか誤解を招きそうな気が………

 

 

「酷い………

こんな怪我、どうして………」

 

アマトさんの体を診たら、上半身に打撲傷ばかりありました。それだけでなく、酷い内出血まで起こしています。いったいどんなアラガミと戦えばこんなに酷い怪我を………

 

「………まあ、気にしないでください」

 

やっぱり少し気になりますが、アマトさんが『気にするな』と言えば触れないべきなのでしょうか……?

 

「あれ? ショウコさんはどうしたんですか?」

 

あ、気づいちゃいましたか……… 言わなきゃダメですよね。

 

「えー……と、婚活に…………」

 

「……………ああ………」

 

予想通り暗い雰囲気になってしまいました。ショウコさん、必死になって頑張っているんですけど中々貰い手がいないらしいです。なんだかとっても可哀想です………

 

「……そうだ! 早く治療しないと!!」

 

こんな世間話をしてる場合じゃありませんでした!! 早く薬を付けて包帯を巻かないと!

 

「そんな焦らなくて大丈夫ですよ」

 

私が気づいた時にはアマトさんが自分で包帯を巻いていました。ううー…… 私が巻きたかったのに………

 

包帯を巻き終わったアマトさんは、コートのポケットから極甘ジュースを取りだし、プルタブを開けてゴクゴクと飲んでいました。まるで何事も無かったように…… なんだか無性に心配です………

 

「………体には気をつけてくださいね? アマトさんは大切な人ですから………」

 

アマトさんが死んだら私も、皆も、とても悲しみますから……

 

「ブフーーーーー!!!」

 

アマトさんがすごい勢いでジュースを噴き出してしまいました! 折角いい雰囲気だったのに一体なに………あ!

 

「ちちち、違います!! お菓子作りの同志としてです!! そういう意味じゃないです!!」

 

「ですよねぇ……… 初めて極甘ジュースを噴き出しましたよ」

 

ハンカチで口を拭きながら、アマトさんが納得した声で呟いてしまいました。ああ、やってしまいました…… 一度否定するとアマトさんはきっと一生気づきません………

 

「どうしたんですか?」

 

「………いえ、なんでも………」

 

「???」

 

アマトさんは首を傾げたまま不思議そうにしています。ああ、やっぱりですか……

 

『業務連絡、本日第七部隊がウロヴォロスのコアの隔離に成功、技術部員は第五開発室に集合してください』

 

え!? ウロヴォロスを倒したって………

 

「 もしかしてアマトさん………」

 

「………あまり皆に言いふらさないでくださいね、特務なんで」

 

「そうだったんですか……… それでそんな怪我を………」

 

「大丈夫ですよ、大したことないですし」

 

アマトさんは微笑みながら言いますが、何故かリンドウさんと重なって見えました。まるで一人で危険なことを背負っているような………

 

「本当に、大丈夫ですか………?」

 

言わずにはいれませんでした。このままだと何処か遠くへ行ってしまう気がして………

 

「大丈夫です。死ぬことは許されませんから」

 

「え…………?」

 

「それじゃあ、ありがとうございました」

 

悲しそうな表情でそれだけ言うと、椅子から立ち上がり病室を出ていってしまいました。

 

「アマトさん………」

 

どうか、無事でいますように……





次回はピター戦です。
時間かかるぞコレ………
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