スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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シリアス続きもどうかと思ったので無意味に日常回を挟んでみました。相当キャラがぶれとる……


二十七品目 鬼神、降★臨

「お邪魔します、カノンさん」

 

「はい! どうぞ上がってください」

 

ドアを開けるにと、きちんと整理整頓された部屋が広がっていた。私の部屋と違ってとても綺麗だ。やっぱり普通の女の子の部屋はこんな感じなのだろうか………

 

「それじゃあアリサさん………」

 

「はい、いつでもいいです………」

 

私が何故カノンさんの部屋に来たかというと、とある本を一緒に読むという約束をしたからだ。さっそくカノンさんが本棚から一冊の本を取り出す。そして、取りだした本のタイトルを見て目当ての物だと確信した。その名前は………

 

『ソーマ×アマト 禁断の花園』

 

そう、BL本だ。今、密かに極東支部女性陣の人気を呼んでいるのだ。私も読んでみたかったが、気恥ずかしさと申し訳なさで買うことができなかった。だが、ジーナさんがその本をカノンさんに譲った事で読むチャンスが到来したのだ。なんでも、『なんで人気なのか分からない』とのことだ。

 

一時期二人きりで任務をしていた頃にこのブーム(?)が到来したのだ。勿論アマトさんとソーマはこの本の存在を知らない。もし見つかったら、問答無用に燃やされるだろうし………

 

「こ、これがそうですか」

 

「はい…………」

 

カノンさんの隣に座る。緊張からなのか、何故か正座になってしまう。落ち着け、自分に言い聞かせろ、私。腐ってなどいない。極東支部で人気だから少し見るだけだ、それだけだ!

 

「それじゃあ、捲りますよ………」

 

「は、はい…………」

 

震える手で表紙を捲る。そこにはいきなりアマトさんとソーマが【自主規制】している絵が描かれていた。

 

「きゃ…………!」

 

カノンさんが真っ赤になりながらもしっかりと見ている。私ももう少ししっかり見ていいのだろうか…………

 

因みに本の内容はマンガ形式で、お菓子作りをしているアマトさんをソーマが【自主規制】というストーリーのものだ。予想以上に濃い絵と内容に、なんだか引き込まれてしまう。

 

「「ハァ………… ハァ………… 」」

 

知らず知らずの内に鼻息が荒くなっている。カノンさんも同じのようだが、かなりドン引きの表情だ。ヨダレを垂らし、目が爛々と輝いている。私も似たような表情なのだろうか………

 

「は、早く次のページに…………」

 

「り、了解です…………」

 

い残りのページも少なくなってきた。ストーリーもいよいよ佳境に……

 

『コンコンコン!』

 

(カノンさん!!!)

 

(わかりました!!!)

 

私の目配せの意図を察してくれたのか、いつものおっとりしたカノンさんからは想像のつかないほど素早い動きで例の本を本棚の裏に隠す。よし、これで安心だ。

 

「ど、どうぞ~……」

 

カノンさんがドアを開ける。まったく、こんな時に一体誰が…………

 

「こんばんわ」

 

「「!!!???」」

 

バスケットを持ったアアアアアアア、アマトさん!!!???

 

「ん、アリサも一緒か。何してたんだ?」

 

「いえ、何でもないです!!!!」

 

こんな時に限って何故アマトさんが来るのだろうか。もしもあの本がアマトさんにばれたら色々と大切な物が失われる。これは試練だ。絶対に乗り越えないと…………!

 

「どどどど、どうしたんですか!?」

 

カノンさん! 平常心を心がけて!!

 

「あれ、忘れたんですか? お菓子パーティーをする約束じゃないですか。エリナも来てるんですよ」

 

「こんばんわ。アリサさん、カノンさん」

 

エリナちゃんがアマトさんの後ろからヒョコッと顔を出す。カノンさんの顔はみるみる青くなっていった。

 

(なんで約束を忘れてたんですか………!)

 

(す、すみません!!)

 

これはどうにかしてお引き取りしてもらうしか…………

 

「よかったな、エリナ。お前昨日から楽しみにしてたからな………」

 

「べ、別にしてないわよ!」

 

嬉しそうにしながらも、恥ずかしさからか慌てて否定をするエリナちゃん。ソレを見てアマトさんが優しく微笑む。これはもう…… 断れないッ…………

 

「そうでしたね! 上がってください!!」

 

カノンさんも同じ考えだったようだ。ひきつった笑顔で歓迎する。そうだ、普通にしていれば絶対にばれない。隠し通すことは可能だ!

 

アマトさんがソファーの上に座り、バスケットの中からチョコレートを取り出す。よし、本棚からは距離がある。このまま引き留めておけば問題ない。

 

「今回のチョコレートも美味しそうですね!」

 

カノンさんが話題を振った。上手い……… お菓子の話題ならアマトさんはいつまでも喋っていられる。

 

「今回は少しウイスキーを入れてみました。要はウイスキーボンボンのパクリですね」

 

「………私そんなの食べれないわ」

 

ウイスキーという言葉に反応したのか、エリナちゃんが顔を膨らませる。

 

「そう思ってほら、ハイミルクチョコレート」

 

「ありがと! アマト!!」

 

そう言ってエリナちゃんはハイミルクチョコレートをもぐもぐと食べていた。カワイイ………

 

「今回ウイスキーボンボンを作ったのは、なにも極上な甘さだけがスイーツの美味しさに繋がらないと気づき比較的甘さが控えめなウイスキーを使うことによって……」

 

早速アマトさんのお菓子講義が始まった。これで30分はもつ!

 

 

「………ということですよ」

 

「へぇ~~、そうなんですか」

 

このまま会話に熱中してくれれば………

 

「あれ? なにコレ??」

 

本棚の方向から突然エリナちゃんの声が。しまった! アマトさんばかりに警戒しすぎたんだ!! あのエリックさんの妹なのに! 何事も無いことを祈り恐る恐る振り向くと

 

「「 」」

 

その手には、あの本が…………

 

 

 

死刑宣告は、唐突に、突きつけられた。

 

 

 

「なんだそ、…………!」

 

アマトさんの表情が凍りつく。それもそのはず、でかでかと『アマト×ソーマ 禁断の花園』と書いてあるのだから………

 

「エリナ……… ちょっと貸してくれ」

 

「ええ、いいわ」

 

その本はアマトさんの手に渡され、ペラペラと中身のチェックされていた。隣を見るとカノンさんが真っ青を通り越して真っ白な顔になっている。かくいう私も生きた心地が全然しない!

 

アマトさんはゆっくりとケータイを取り出す。まさか、ソーマまで呼ぶつもりじゃ…………!

 

「ソーマ、カノンの部屋にちょっと来い。大至急だ」

 

アマトさんの声はいつもより更に重く冷たくなっていた。カノンさんなんて普通に呼び捨てにされているし……… そのカノンさんは人知れず隣で涙を流していた。ショックだったのだろう………

 

アマトさんは本を片手に立ち上がり、壁に寄っ掛かって腕を組む。俯いてるせいで表情を読み取ることができない。それがとてつもなく不気味だった。

 

何千、何万秒と感じる重苦しい時間のなかでもアマトさんとエリナちゃんの態度は変わらない。アマトさんは相変わらず俯き、エリナちゃんはソファーで満足そうにチョコレートを食べている。因みに私たちは床に正座だ。ソーマ、お願い早く来て!

 

その願いが届いたかのようにドアが開けられた。ああ、来てほしかったけど来てほしくなかった…………

 

「おい、俺も暇じゃ…… なんだそれは」

 

アマトさんが無言で本を渡す。勿論ソーマも中身を確認するためページを捲り始めた。その捲る音が虚しく部屋に響き渡る。そして、ページの中間で手が止まった。やはりソーマも俯いて表情が分からない。見に堪えられなかったのだろう………

 

「アマト………」

 

「ああ………」

 

そして二人の顔が上げられて

 

「「レッツパーリィー!!!!!!!!!!!!!!」」

 

「「キャアアァアア!!?」」

 

鬼神の如き表情が迫ったあと、私たちの記憶は途切れた…………

 

 

 

 

 

ーーとあるアナグラの1場面

 

「なあなあ、カレル。こんなの見つけたぜ」

 

「うわ、なんだこれ。『アマト×ソーマ 禁断の花園』?」

 

「なんか極東支部の女共に人気でな! 他の支部で売ればそれなりの大金が………」

 

「おい!! 後ろ見ろ!!!」

 

「え?」

 

「死んで………」

 

「地獄で………」

 

「「詫びやがれッ!!!!」」

 

「ぎゃあぁぁあああぁああ!!!??」

 

「シューーーン!!??」

 

死人が増え続けていた。

 

 

 

 

 

「へへ、大分儲けたぜ…………」

 

薄暗い夜道を歩きながら今回の売上を計算する。そんな俺の正体はグラサンが似合う毎度お馴染みのよろず屋だ。それはそうと、あの気持ち悪いマンガを描いただけで普段の1・5倍の利益がでやがった。まったく、こんな世の中何が売れるか分かったもんじゃねえ…………

 

さてと! 仕事の話も終わりにして、今夜も豪勢にあの店で酒を飲み干すとするかね!

 

『ザワザワザワザワ………』

 

「!?」

 

後ろを振り向く。しかし、そこには誰もいない。だが、一瞬、ほんの一瞬だが身を刺すような殺気を感じた。 バカな事を言ってると思うが、人間としての本能が殺気だと訴えかけてきやがる!!

 

こういう時には直ぐに逃げた方がいい! そう思った矢先……

 

『ガシュン!!! シュ~…』

 

「なんで!!!??」

 

足下のすぐ横の地面に缶がめり込んだ! これ少しでも位置がずれてたら死んでたぞ!? くそ! 恐怖で動けねぇ!!

 

そんな俺の恐怖を知ってか知らずか、後ろから、ひた…… ひた…… と足音が近付いてくる。誰だ!? 誰がいやがるんだ!?

 

「………殺殺轢轢轢刺刺刺潰潰潰潰」

 

クマだ。何かよく分からないことを口ずさみながら、幽鬼のようにふらふらと近付いてくるクマだ…… 何故か血まみれの………

 

「ぎゃあぁぁああ!!!??」

 

怖い、下手したらアラガミより怖いぞ!! なんだ!? 俺が何をしたんだ!?

 

「■■■■■■■!!!!」

 

「ああああぁぁぁぁ!!!??」

 

声にならない声。それだけで俺の命、いや、魂を食い尽くそうとする悪魔だと分かった。走る、ひたすら走る。もう一生走れなくていい。この悪魔から逃げ切れるのなら…………!!

 

足が軋むほど走り続ける。その甲斐あってなんとか撒くことができた。建物の陰に一先ず座り込む。もう足も限界だ…………!

 

「いったい何なんだ…………」

 

誰に言う訳でもなく呟く。あんな化け物、どうして居住区にいるんだよ!そう思いふと上を見上げると………

 

「…………」

 

月夜の光に照らされている人影が確かにあった。巨大な首刈鎌を肩に担ぎ、黒装束に身を包んだ男が建物の上に立っている。その顔は

 

「ああああああああああああ!!??」

 

禍々しいドクロだった。ああ、死神にまで遭遇するなんて………

 

「あああああぁぁぁぁ!!!??」

 

地を這い逃げようとするも、目の前にはいつの間にやらあのクマが歪な笑みを浮かべて首をふらふら動かしてた。危険に思い後ろを向くと、血塗られた鎌を構えるさっきの死神が………

 

「ーーーーあ………」

 

死んだなコレ。

 

 

 

 

 

ーーその後のエントランス

 

「どうしたんだよろず屋!?」

 

「はい、なんで御座いましょうか?」

 

「七三分けにスーツなんか着て! いつものグラサンはどーしたんだ!?」

 

「生きてるって、素晴らしいですね………」

 

「戻ってこい!! よろず屋ーーーー!!!」

 

見事に改心していた。




次はしっかりとディアウス・ピター戦です。
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