スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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思うに、ゴッドイーターのラストは短期間での怒濤の展開だと思うんですよ。だから急展開も許してください。


三十一品目 別れの、序章

愚者の空母の橋の上で佇みながら、何とはなし地平線の向こうに沈む夕日を見る。ここからの夕日はいつも魅入ってしまう程に綺麗だ。

 

「ひさしぶりのでばんだぞ~~~!!」

 

「…………何を言ってるんだ?」

 

しみじみと感傷に浸っている隣でシオが意味不明の言葉を口走る。久しぶりも何も毎日毎日サカキ博士の部屋で会っているだろ。そもそも出番ってなんだ?

 

「どうかしたんですか? アマトさん」

 

「あ、いや、何でもない……」

 

あまり深く突っ込んではいけない……… そんな気がした。

 

今回はサクヤさん、アリサ、シオ、俺でのハガンコンゴウ討伐任務だ。勿論シオの食糧確保も兼ねている。サカキ博士が言うには、強いアラガミは栄養価が高いらしい。

 

「そろそろ行くわよ」

 

「イタダキマスだな!!」

 

相当空腹なのか、シオがサクヤさんの元へ駆けつける。さてと、俺もシオの晩飯の為にも頑張るとするか。

 

 

ハガンコンゴウとは名前通りコンゴウの派生進化を遂げたアラガミだ。どこか神々しさを感じさせる黄金の表皮からは雷神を彷彿とさせる。そしてその外見通りに雷を操る強力な相手だ。

 

「ギアアァア!!」

 

上空に向かって吠えたと同時に、足元が青白く光った。急いで飛び退きその場を離脱する。瞬間、大気に一筋の稲妻が走った。甲高い音が響き、大地が黒々と焦がされている。コンゴウの名がつきながらも、明らかにそれと一線を画す力量だ。

 

割れた仮面から覗いている無気味な顔がギロリッ! と向けられる。その大きな口からヨダレを垂らしながら…………

 

「この……!!」

 

接近と共にGEチョコを振りかぶる。ハガンコンゴウの肩口めがけてGEチョコで斬り下ろすが、鎧のように堅い肉体に阻まれる。ダメージは与えているが致命傷にはほど遠い。その黄金は伊達じゃないってか……!

 

「はああああ!!」

 

「えい!!」

 

背中越しからアリサの神機『アヴェンジャー』の刃と、シオの神機(なのか?)の白い刃が振るわれているのが見えた。しかし、ダメージを負っているにも関わらず見向きもしない。振り上げられた丸太のように太い右腕が俺を吹き飛ばそうと迫る。久々の囮訳だ。強いアラガミがこういう状態ほど厄介なことはない。

 

膝を曲げ身を屈める。俺の上半身を吹き飛ばそうと振るわれた右腕は空を切った。そして、攻撃を外した後はどんなアラガミでも隙ができる。

 

「貫け!!」

 

サクヤさんの正確無比な狙いのレーザーがハガンコンゴウの顔に吸い込まれていく。

 

「ギェアアァア!!?」

 

もがき苦しむハガンコンゴウ。追撃をかけるべくアリサの神機が両足を刈るように振るわれる。足のダメージが相当堪えたのか、前のめりに倒れ込んだ。

 

「うおおお!!」

 

みすみすこのチャンスを逃しはしない。地面を蹴って宙を舞い、重力に身を任せながらGEチョコの刃を下に構えて落下する。パキリッ! という音と共に刃先が黄金の表皮に深く突き刺さった。徐々に亀裂が走り、血で赤く染まった肉体が晒けだされる。

 

「ギェアア!!!」

 

しかし、まだ刺さりが甘かったのか、口から血を吐き出しながらも見境なしに暴れまわる。止どめを刺すのは難しそうだ。仕方がない、フィニッシュは任せるとしよう。

 

「いいぞ! シオ!!」

 

神機から手を放し、ハガンコンゴウの背を思いっきり蹴り距離をとる。

 

「とりゃ~~!!」

 

間抜けた掛け声と共に白い刃が振り下ろされた。

 

血溜まりの中で臥しているハガンコンゴウへと足を進める。シオの止めの一撃は顔の判別ができそうにないほど深く抉っていた。ある意味ハガンになったなコレは。

 

「よ…………っと」

 

ハガンコンゴウの背中から突き刺さったままの神機を引き抜く。傷口から血がドクドクと溢れだした。しかし、こんな状態でも僅かに手足が痙攣を起こしている。まだ生きているなんて末恐ろしい限りだ。

 

「シオちゃん、ご飯ですよ!」

 

「うん、イタダキマス!!」

 

満面の笑みでハガンコンゴウの腕に手を掛けるシオ。ここから先はグロ映像なので、地平線の向こうに浮かぶエイジス島でも見ながらゴチソウサマを待つとしよう。

 

(エイジス島、か……)

ふと気づくと、あの島で進行しているエイジス計画のことばかり考えていた。サクヤさんは忘れろと言っていたが、やはり俺にはそんな事はできないらしい。

 

「あれ……? シオ、なにをしてるの?」

 

アリサが断崖へと歩いて行くシオを見つける。まだハガンコンゴウを食べていると思ったが、あんな所で何をしているんだ?

 

「ヨンデル…………」

 

片言で呟くと同時に突然シオの体から蒼白い紋様が浮かび上がる。そのままフラフラと足を進めていった。

 

「タベタイ…… オイシソウ…………」

 

「シオ!?」

 

明らかに様子がおかしい……! いったいどうしたんだ……!?

 

「くそ……!」

 

この距離なら十分間に合う筈だ。全力で駆け抜けた先には、断崖の端でエイジス島を眺めるシオの後ろ姿があった。

 

「おい! シオ!」

 

シオの肩を掴もうとしたその時、俺に白い刃が振るわれた。頭で理解するよりも速くGEキャンデイーを展開する。

 

「がっ………!!」

 

不意の攻撃ということもあり、放射線状に吹き飛ばされ背中から地面に叩きつけられる。落下の衝撃で肺の中の空気が一気に吐き出され息が詰まる。まさか本気の攻撃をされるなんて……!

 

「アマトさん! 大丈夫ですか!?」

 

「ああ、大丈夫だ……!」

 

少し遅れながらもサクヤさんとアリサが駆けつけてきた。アリサの手を借りて起き上がる。

 

「シオ!? あなた、なにを!!」

 

サクヤさんが問い掛けるが、そこにはシオであってシオでないような者が無言で佇むのみだった。凍りついたような表情からは何も感じることができない。

 

「イカナキャ…………」

 

突然視界からシオが消える。この高さから海に飛び降りたのか……!? 急いで断崖から見下ろすが、岩肌に打ち付けられる波のみが目に映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラボラトリの扉を開けると既にコウタとソーマがソファーに座っていた。事態を重くみた博士が二人を呼び出したのだろう。

 

「あ、アマト! シオがどっか行ったて本当か!?」

 

コウタが勢いよく立ち上がり俺たちへと詰め寄る。気持ちは分かるがサカキ博士並みに近いのはどうにかしてほしい。

 

「ちょ、コウタ! 近いです!」

 

「今説明するって……」

 

まったく、冷静にソファーに腰を掛けているソーマを見習って…… いや、ダメだな、貧乏揺すりを起こしている。ゴッドイーターの身体能力が無駄に発揮されてとんでもなく速い。その様子からは冷静さを微塵も感じられなかった。

 

「そうだな、できればどんな些細なことでも報告してくれないかい?」

 

「はい、実は……」

 

丁度良くサクヤさんが皆に説明し始めた。要点を抑えつつ無駄を省いていて解りやすい。さすが俺たちより歳をくってるだけ……

 

「(ニコッ……!)」

 

聡明なだけある。

 

「なるほど、それでシオが海へ飛び込んだと…………」

 

「はい、申し訳ありません………」

 

「君たちが無事なだけで十分だよ。でも、これだけじゃ流石に僕もわからないな……」

 

確かにわからないな事だらけだが、何故かシオの凍りついた表情だけが頭から離れない。今思い返すと、あれはシオというよりもっと別の何かのような印象を受けた。

 

「シオのやつ、母さんにでも会いに行ったのかな………?」

 

コウタがぽつりと呟く。なるほど、母親か…………

 

「母親って……… アラガミにいるわけないじゃないですか」

 

「いいや、ヨンデル…… って言ってたしな。案外いい線いってるんじゃないか」

 

「え!?」

 

「だよな!! だよな!!」

 

あからさまに呆れた表情を向けていたアリサだったが、俺がコウタの意見を肯定したことに面食らっている。まあ、俺が肯定したのは母親がいることではなく、何かを探しているという方向性なのだが。

 

「まさかアマトさんまで認めるなんて………」

 

「へへーん! どうだアリサ!!」

 

勝ち誇るコウタとは対照的にしょげこむアリサ。

 

「どうでもいい……! さっさと探すぞ……!!」

 

そして二人に一喝するソーマ。シオに出会ってからアイツも気苦労が絶えないな。それも含めてソーマには良い傾向なのだが……

 

『you get SweetS !!』

 

「何ですかさっきの音!?」

 

「ん? 俺のケータイの着信音だが」

 

コートの内ポケットから早速取り出して画面を見てみると、新着メールが一件届いていた。受信ボックスを開き新着メールにカーソルを合わせる。…………げ、支部長からかよ。

 

「どったの?」

 

「支部長からのお呼びだしだ。少し行ってくる」

 

「そうかい、くれぐれもヨハンに勘づかれないようにね」

 

サカキ博士の部屋を後にして支部長室へと向かう。ここから支部長室のある階層はかなり近いのでエレベーターを使う必要もない。一段ずつ階段を降りる。近いだけあり、ものの三分程度で支部長室の前までついた。

 

「失礼します」

 

扉を開けると手を組ながらイスに座す支部長がいた。机の前まで足を進める。

 

「うむ、御苦労」

 

顔を伺うと、いつもより更に険しい目付きをしていた。あまり感情を出さない支部長にしては珍しい。

 

「目下最優先の特務を、君にお願いしたい」

 

「特務ですか……」

 

どこまでも冷えきった声でそう告げる。僅かにあった柔らかさは何処にもない。機嫌でも悪いのか? それにしても、このタイミングで特務なんてついていない。シオの捜索で忙しくなるってときに……

 

「今日未明に太平洋エイジス島周辺で、非常に特殊なアラガミのコア反応があった。非常に高度な知性を持っているアラガミの討伐任務だ」

 

ちょっとまて。特殊なアラガミ…… 高度な知性…… おいおい、まさか…………

 

「もしそのアラガミを発見したら、速やかに無傷でアラガミのコアを摘出し、持ち帰ってもらいたい」

 

「もし…… 失敗したら?」

 

「元より、十分な実力を持つアマト君だからこそに発注した特務だ。失敗はないと信じてるよ」

 

失敗しようものなら明日はない、と描いてある顔をしてよく言うものだ。しかし、俺の予想が正しければコアの摘出をする訳にはいかない、というよりしたくない。

 

「この特務はいかなる任務よりも優先される最重要項目だ。そうだな……一人では厳しいと思うから、ソーマと共に後日、任務にあたってくれ」

 

「あー…… 了解しました」

 

「うむ、健闘を祈るよ」

 

さて、これからどうしたものか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地平線の向こうでは白々と太陽が煌めいている。いつもと違うのはエイジス島がある東側から昇っているということだ。

 

「眠い…………」

 

朝から晩までシオの捜索をさせるつもりらしい。くそ、支部長め………… こんな明朝の任務なんて全支部でもそうそう無いぞ。

 

「おい、そろそろ着くぞ」

 

「分かってるって」

 

ソーマの歩幅が大きくなる。そうだ、眠気を感じてる場合じゃない。シャキッとしろ、俺。絶対シオを見つけないと。

 

暫く歩くと巨大な橋が見え始める。アラガミの出現する前には雄大な姿で架かっていたのだろう。しかし、座礁した空母が乗り上がった惨めなその姿に、かつての面影はない。支部長曰くその橋近辺にコア反応があったらしい。

 

「お前なら気づいてると思うが………」

 

「………?」

 

「支部長が探している特殊なアラガミ、ってのは……… シオに間違いない」

 

「まあ、だろうな」

 

シオがいなくなったタイミングでこの特務だ。むしろ勘づかない方がおかしいだろう。

 

「俺はずっとあのクソ親父の命令でそいつの探索を任されてきたんだ。だが俺はシオを…… あの野郎に差し出すつもりはない」

 

「当たり前だろ、仲間だからな」

 

「勘違いするな」

 

ソーマが足を止めて神機が突きつけられる。しかし、不思議と恐怖は感じなかった。

 

「俺やシオをオモチャにして勝手なことを考えてるのが気に食わないだけだ」

 

照れ隠しか…… 相変わらず不器用なヤツだが、最初に比べれば随分心を開いてくれたものだ。

 

「そういえば…… 最初に会ったときもお前に剣を突きつけたな。しかも生意気に突き返しやがって………」

 

「おいおい、お互い様だろ?」

 

「あんときのルーキーが気がつきゃリーダーかよ」

 

「ま、スイーツイーターだけどな」

 

「ふっ、確かにな…… 辺りのアラガミも活性化している。気を引き締めろよ」

 

 

一直線に伸びる見晴らしのいい風景。しかし、逆に言えばアラガミに格好の餌食にされるということだ。お菓子神機を持っている俺には尚更集まってくる。

 

「おおおおお!!!」

 

周りにいたオウガテイルを一掃するために、GEチョコを360°振り回し一体ずつ巻き込みながら切り刻む。夥しい量の血を撒き散らしながらオウガテイルが倒れていく。しかし、まだまだたくさん群がっていった。次から次へと面倒な……!!

 

「ソーマ! ヘルプ!!」

 

「くたばれ……!」

 

重厚な刃がオウガテイルの死角から振り下ろされた。ソーマの突然の乱入により着実に数を減らしていく。だが、気のせいなのだろうか。奥に進むにつれてアラガミが少なくなるように思える。

 

「はあっ!!」

 

肉を斬る確かな手応えを感じながらそのままGEチョコを振り抜いた。これで粗方は片付いた筈だ。数は驚異だと改めて思う。

 

「ギュガァアアアア……!!」

 

「なんだこれ……?」

 

最後の一体を斬り伏せた先には、オウガテイルの死体が瓦礫の上までゴロゴロ横たわる風景が広がっていた。かなり強力なアラガミに殺されたのだろうか?

 

「~~~~~♪」

 

ジリジリと警戒しながら瓦礫の山へ近づいたとき、どこか儚い歌声が耳に入った。

 

「おい、この歌………」

 

「ああ、俺が教えた歌だ……!」

 

そのまま上を見上げると、人形のように座り込みながら歌を口ずさんでいるシオがいた。その表情は寂しそうなものだった。

 

「あれ? …………なんだろ、これ。イヤだな…………」

 

「別れの歌、だからかな…… その歌は」

 

「そーま、あまと!またあえたな!」

 

寂しそうな表情から一転、いつもの天真爛漫なニコニコした表情へと変わった。一先ず無事そうでなによりだ。

 

「ッチ…… こっちが探してやったんだろ」

 

悪態をつきながらもその声色からは喜ぶと安堵を感じる。

 

「そーま」

 

「なんだ?」

 

「わかれって、なんだ?」

 

「…………別れってのは、大切な人と二度と会えなくなるってことだ」

 

「そっか………… わかれって、いやだな……」

 

俺たちはどれだけ駆けずり回っても、何時かは別れの時期がやってくる。シオがその事に気づくのは当分先なんだろうな……

 

「帰ろう、シオ。ご飯がたくさんあるぞ」

 

「うん!」

 

立ち上がるシオ。その時、一瞬目の中の光が消えていくように見えた。まさか……!

 

「うううううううううう!!!!」

 

マズイ! やっぱりあの蒼白い紋様が浮かび上がった! このままじゃまた姿をくらませる!

 

「シオ!!」

 

「ッ!! 危険だ!! ソーマ!!」

 

ソーマの肩を掴み制止する。あの状態のシオは躊躇なく俺たちを攻撃する。

 

「イカ……ナキャ…………」

 

フラフラと歩きだすシオ。くそ! どうにかして気を逸らすか引き留めるとかしないと……!

 

「戻ってこい! シオ!!」

 

「ほら! 神機やるから!! 美味しいぞ!」

 

足を止めて此方を見た。俺の神機を食べたいから……… いや、絶対ソーマの言葉が届いたからだな。しかし、崩れ落ちるように倒れ込んだ。

 

「おい! どうした!! おい!!」

 

「落ち着け! とりあえずアナグラに連れていくぞ!」

 

この先、何が起ころうとしているんだ………!

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