スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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オリキャラ二人目!


三十二品目 甘党と、外道神父

シオを保護してから翌日。既に対象のいない捜索任務なんて受ける気にならなかったので、たまっていた休暇を消費することにした。支部長にめちゃくちゃ睨まれたが一応任務は断っていない。

 

折角できた休日なので、外部居住区で人気のレストラン『甘味処』にいる。ここで作るパフェは絶品だ。生まれてこのかたここより美味しいパフェを食べたことがない。値段も中々リーズナブルなので毎日長い行列ができている。あの味を思い出すと口内に唾液がジワリと染み出る。最近任務が忙しくて全く行くことができなかったからな。楽しみだ。

 

「いらっしゃいませ!」

 

その列を並び終えてコウタと共に二つだけ空いていた席に座る。さすが俺が認めた店だ。他の席は老若男女で全て埋まっている。

 

「あ、スイーツイーターだ」

 

「うお……! マジだ……!」

 

「ホントにお菓子神機を使うのかな?」

 

これだけの人がいると俺に気づく人も多くなる。外部居住区でもスイーツイーターの名で結構顔が知られているせいだ。アラガミ相手の視線に慣れてはいるが、やはり人間相手だと気恥ずかしい。

 

「ご注文は?」

 

「特大激甘パフェ1つ」

 

「おれはイチゴパフェで!」

 

「かしこまりました」

 

注文を承ったウェイターさんが人混みの中へ消えていく。「こいつ正気か?」という顔が印象的だった。別に頼んでもいいじゃないか。

 

「すごいなー、スイーツイーターの人気」

 

「他人事みたいに言うなよ。この前も子供たちに囲まれて大変だったんだぞ、お菓子を寄越せって…………」

 

「お菓子ばっか配ってるからじゃん」

 

「ぐ………! コウタのくせに的確なツッコミを!」

 

こう言いながらも、結局のところお菓子を配ってしまう。お菓子を食べて幸せそうな顔をする人を見ると、こっちも十分幸せな気分になれるからな。

 

「そういやさ、シオは大丈夫?」

 

「ああ、ソーマと博士が付きっきりで看病しているから大丈夫だ。ああなった原因はわからないままだが………」

 

「そっか……… 心配だなあ。それにしても、ソーマも随分素直になったよな!」

 

「だなー」

 

向こうから若い女性が歩いてくる。よく見れば俺たちの頼んだパフェを恐る恐る持っているじゃないか。新人、いや、研修生とかか? 何にせよ落とさないか不安だ。

 

「きゃ!」

 

「うお!?」

 

反対側から歩いてきた厳つい男の肩がぶつかる。そのままパフェは宙を舞い、男の服にベッタリとくっついた。ああー……! 勿体ない……!!

 

「てめ、どこ見てんだ! 服にパフェがベッタリじゃねえか!!」

 

「す、すみません!!」

 

「この! 店長呼んでこい!!」

 

店内の空気が一気に静まり返る。新米ウェイターさんはパニックのあまり涙目だった。

 

「ぶつかったのはあいつだろ……!」

 

コウタが怒りの表情を浮かべるが、それは俺も同感だ。ぶつかったのはウェイターさんじゃない。あの男の肩だ。それなのにクレームをつけるなんてお門違いもいいところだろ。

 

「ちょっと俺行ってくる!!」

 

席を立とうとしたコウタの肩に手を置く。

 

「任せろコウタ。パフェの仇は俺がとる」

 

「あれ、そっち!?」

 

一番の問題は、あの男はパフェを落とした事になんの反省もないことだ。むしろクリームだらけになった服の方を心配している始末。そんな愚かな男に血の制裁をくわえようとした……その時

 

「神はこうおっしゃってます。謝るべきは貴方の方だと」

 

「っ!? なんだてめえ!!」

 

黒い神父服に身を包んだ大男が、聖書を片手に話しかける。目付きはタランと垂れ下がり、金髪でオールバックの男だ。どことなく優しそうな雰囲気をしている。少しあの人に任せてみるか…… 制裁はそれからだ。

 

「さあ、今謝れば神も寛大な御心で赦してくれますよ?」

 

「すっこんでろ!」

 

あろうことか男は神父に殴りかかろうとする。マズイ! 神父じゃ手をだせな……

 

「暴力はいけない!!」

 

「ぐべら!!?」

 

神父は振るわれた拳をボクサーよろしく屈んで避け、その勢いを利用して顔面にカウンターパンチを放った。あれ? 言ってることが綺麗に矛盾しているぞ?

 

「思いっきり暴力ふるってんじゃん!?」

 

「しかも凄いエグいな」

 

男は鼻血を噴き出しながら後ろへと倒れ込んだ。完全に気を失っている。これはもう制裁をくわえる必要はないな。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ…… はい」

 

神父は特に気にしたようすもなくウェイターさんの心配をする。ぶっちゃけ今気にするのはウェイターさんの方ではない。周りの人の目だ。

 

「制服にクリームがかかっていますね。少しお待ちください」

 

のびた男に近づき、屈みながら服の中を漁る。暫して立ち上がった神父の手には長方形の何かが握られていた。あれって財布だよな?

 

「はい、どう……「なにしてるんですか?」…………シスター?」

 

ギギギ…… と錆びれた機械のように振り返る神父。そこには銀髪で吊り目をした女性が佇んでいた。ツバキさんと通じた恐ろしいオーラを感じる……

 

「払うならご自分のお金で、ですよね?」

 

「……………………はい、勿論ですよ」

 

悲しそうに財布を手放す神父。そして自分の懐から取り出したfcを差し出た。ウェイターさんは必死で断ったが、なんでも神父に二言はないらしい。あの身のこなしに無茶苦茶な性格といい、何者なんだ?

 

「おや? 貴方はスイーツイーターの桐永アマトさんではないですか?」

 

うわ、話しかけてきた。今日だけは面倒な目に会いたくないのに。

 

「いや失敬、自己紹介がまだでしたね。私の名前はグレイ・ヴァンガード。貴方の先輩ですね。そして彼女はシスター・エクレアです」

 

「こんにちは」

 

「「こんにちは」」

 

エクレアか…… フランス語で雷、稲妻の意味だったか? それにしても、とてもいい名前だ。名付けた両親のセンスの高さが伺える。

 

って、そんな事考えてる場合じゃない。あの神父は確かに『貴方の先輩ですね』と言った。つまりゴッドイーターということだ。腕輪の有無を確かめるめに左腕を注視する。腕輪の大きさのせいか、袖先が見事に膨れ上がっていた。

 

「え?? ゴッドイーターなんですか!?」

 

コウタが驚愕の声をあげる。ゴッドイーターならばあの身のこなしも納得だ。

 

「ふむ、そう言う貴方もゴッドイーターですか……… まだお若いのに大変ですね。ここで会ったのも神の思し召でしょう。教会で祈りましょうか」

 

何故か襟元を掴まれる。ちなみに、隣にいるコウタもしっかりと掴まれていた。まさかこのまま教会に直行する気か!?

 

「ちょ…… パフェまだ食べてな…………」

 

「ははは、気にしないでください」

 

まるで些細な事という感じで引き摺る神父。神様がいるのなら物申そう。こんな神父を、赦していいのですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちが辿り着いた場所は教会と言うにはあまりにもお粗末な一軒家だった。違いがあるとしたら、屋根に十字架が申し訳程度に飾られているくらいか。グレイさん曰く、本来の教会はフィンランドにあるらしい。

 

だが、小規模ながらも内装はしっかりとしていた。赤いカーペットの一番奥には巨大な十字架と祭壇が設置され、長椅子が6列ずつ並べられている。まるで旧時代の教会のようだ。

 

「グレイさんって極東支部の神機使いじゃないですよね?」

 

「はい。本来はフェンリル本部に所属しているのですが、上の命令で極東支部へ出張することになったのです」

 

祭壇の前に立ち、膝をついて祈りを捧げる。なんちゃって神父でもその姿は神聖なものに見えた。神父でありながら、神を喰らうことを生業とする……… なんとも皮肉な話だ。

 

「じゃあ俺も! アーメン…………」

 

コウタが胸の前で合掌する。それ仏教だぞ?

 

「それは仏教です!!」

 

「ぐはぁ!!」

 

早速、理不尽神父の粛清が行われた。『暴力はいけない』という言葉はすっかり記憶から抜け落ちているらしい。

 

「………あの人が神父でいいんですか?」

 

神父足る者の要因が一つも見つからない。あれだと言葉遣いが丁寧なチンピラだぞ。

 

「はい、グレイ神父は素晴らしい人物ですから」

 

しかし、エクレアさんは驚くほどキッパリいい放った。とてもそうには見えないぞ………

 

「大丈夫、すぐにわかりますよ」

 

「?」

 

ドタドタと物音が聞こえてくる。次第に大きくなっていき、音の正体は複数の足音だとわかった。なんだ、参拝者か?

 

「神父様ーーー!!」

 

奥の扉から子どもたちがぞろぞろと現れる。その数はパット見で10人は越えていた。その全員がグレイさんを取り囲むように集まる。あれでも子どもたちからは好かれているんだな。

 

「皆仲良くしていましたか?」

 

「うん! 仲良くしてたよ!!」

 

「神父様、お土産ある!?」

 

「お土産ならあちらの彼が持っています。今日は沢山のお菓子ですよ!」

 

「「「やったーーー!!」」」

 

神父のあるべきイメージだ……… と思ったら、何故か人指し指が俺に向けられていた。ちょっと待て、まさか沢山のお菓子ってことは………

 

「「「ありがとうお兄ちゃん!!!」」」

 

子供たちの顔が一斉に向けられる。ヤバイ! あれは完全にお菓子を奪い尽くす顔だ!

 

「この外道神……ああーーーー!!」

 

 

「ドンマイ、アマト…………」

 

「ああ………」

 

コートの内側に常備してあるお菓子を全部奪われた。確かにお菓子はあげてもいいが、限度ってものがあるだろう…………

 

「いやはや、まさかあれだけ持っているとは。流石スイーツイーターですね」

 

「グレイさん……!! なんであんたが呆れた顔をしてるんですか……!?」

 

「まあまあ、持つ者は持たざる者に施せと言うじゃないですか」

 

この……! マジで外道神父だな!! まさかこの為に連れてきたんじゃないだろうな………

 

「失礼しました、桐永様。お詫びにこれをお受け取りください」

 

「何ですかこれ?」

 

「ぬが! 私のヘソクリが!!」

 

エクレアさんが俺に招き猫を差し出した。招き猫にヘソクリを隠すってどういうことだよ。まあ、折角なので遠慮なく受け取っておこう。それを見てグレイさんが肩を落とすが、自業自得だコノヤロウ。

 

「そういえば、この子たちって近所の子ですか?」

 

嬉しそうにお菓子を頬張る子どもたちを見て、コウタが訊ねる。しかし、グレイさんとエクレアさんは少し気まずそうな顔をしていた。

 

「いいえ。孤児、ですかね…… フェンリルで引き取りきれない子を、私たちの教会で請けおっているです」

 

「「……!」」

 

これまでの飄々とした態度がうって変わり、悲しそうな表情を浮かべる。そうか…… この子たちは俺と同じなのか………

 

「出来る限りの事はしていますが、心の傷はどうしても癒せないんですよね………」

 

どこか悲しそうな笑顔を見せる。多分、自分の力不足のせいで……… と思っているのだろう。だが、俺はそう思わない。両親が殺されているにも関わらず、子どもたちはこんなにも笑顔なのだから。やはりそれは、グレイさんのおかげなのだろう。

 

「それでも、私は神を喰らい続けます。この子たちを守るためなら……」

 

エクレアさんの言葉を思い返す。確かにグレイさんはどんな神父よりも優しく、素晴らしい人だった。

 

「アマト…… 俺、決めたよ」

 

コウタがゆっくりと口を開く。

 

「俺も、家族を守るためならどんなことでもやってやるって…………」

 

その言葉には、なによりも強い覚悟が込められているように感じた。決して揺るがない、強い覚悟だ。

 

(守りたい人……か)

 

天上にあるステンドグラスを見上げる。大切な人を、守るどころか見殺しにした俺には眩しすぎる決意だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エントランスには多くの神機使いたちで賑わっていた。フィンランドの本部からベテランの神機使いがやって来るので、挨拶をするらしい。

 

「絶対グレイさんだよな………」

 

「ああ………」

 

恐らくって言うか、ほぼ確実にグレイさんだろう。その内極東支部にお邪魔するって、自分で言ってたし。

 

「では、入ってください」

 

ツバキさん、まさかの敬語。あれ? グレイさんってそんなにすごい人なのか?

 

「どうも、グレイ・ヴァンガードです。31歳の新型神機使いで神父をやっています」

 

31歳でゴッドイーター!? よく引退しないまま戦い続けているな……

 

「彼は旧型から新型へと適合したベテランの神機使いだ。粗相のないように」

 

聖書を片手に丁寧にお辞儀をする。その顔からは緊張感の欠片もない。

 

「この時代に神父って、バカじゃねえの?」

 

あ、シュンさんやらかした。優しそうな外見だから油断して口走ったのだろう。俺とコウタはゆっくりとシュンさんに敬礼した。

 

「あん? なん………ゲファ!!!??」

 

神父様のドロップキックが炸裂した。的確に横腹にヒットしている。シュンさんは放物線状に吹き飛ばされ、一階の床に叩きつけられた。

 

「バカではありませんよ?」

 

あまりにも突然の事態に、全員が固まって動けない。ニコッ!! と擬音が付きそうなほどの満面の笑みを浮かべているが、それが逆に怖かった。

 

「グレイ殿、あまりやり過ぎないように」

 

「これでも手加減しましたよ?」

 

こうして、僅か数分でツバキさん並みの恐怖を全員に植え付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして、時は動き出す……」

 

「何言ってるんですか?」

 

「いえ、神からの啓示です」

 

荷電性ボルグカムランが現れたらしいので、贖罪の町で討伐任務に就いている。メンバーはカノンさん、シュンさん、そしてグレイさんだ。

 

「蠍ですか…… たくさん粛清してきましたね~」

 

一人懐かしがっているグレイさん。ほのぼのとした本人とは対照的に、手にしている神機は厳格な雰囲気を放っていた。角張った漆黒の神機、それはまるで………

 

「墓石のようですね……」

 

カノンさんが言ったように、それは墓石のようだった。

 

「………墓石之剣って名称なんですよ。だから、この神機が大嫌いなんです」

 

「す、す、すみません!!」

 

地雷だったのか、グレイさんが一瞬、ほんの一瞬だけ険しい顔をする。それだけでカノンさんはかなり畏縮していた。

 

「ククク!! それにしても、流石スイーツイーターですね……」

 

これまた表情を一変させる。 最早笑いを隠そうともしないな、この神父は。

 

「喧嘩なら買いますよ?」

 

「いえ、喧嘩などという野蛮な行為などいたしませんよ」

 

「くそ……! 俺を蹴ったくせに、どの口が言うんだよ……!」

 

「ナニカイイマシタカ?」

 

「何でもないです!!」

 

そんなどうでもいいやり取りをした後、ボルクカムランの捜索を始めた。

 

 

建物のかげから様子を伺う。さこにはオウガテイルを捕食している荷電性ボルグカムランがいた。黄色い表皮を煌めかせがら針を右、左と動かしている。

 

「いましたね、早速行きましょうか」

 

「あ、待ってください」

 

GEチョコの一部を掴み、そのまま手を捻る。手の平サイズのGEチョコをボルグカムラン目掛けて投げつけた。

 

「最近の神機は面白いですね~」

 

流石ベテラン。まったく驚いていない。

 

「今のうちに捕食しましょう」

 

気配を殺して、GEチョコにがっつくボルクカムランの後ろをとる。そして、3つの黒い顎がボルグカムランの後ろ足に喰らいついた。

 

「ギュアアアアア!!!」

 

ようやく俺たちの存在に気づいたのか、荷電性ボルグカムランが襲いかかる。その鋭く長い針が俺たちを貫こうと放たれる。シュンさんと俺は急いで飛び退くが、グレイさんは動かなかった。

 

「遅いですよ?」

 

片腕で振るわれた墓石之剣・御影。目視できないほどの速さにも関わらず、完全に針を捉えていた。確かにバーストモードになれば身体能力が上がるが、あんな芸当が可能なのか!?

 

「ギュガアアアアア!!??」

 

予想外の攻撃で怯むボルグカムラン。その隙をつき、グレイさんは追い討ちをかける。

 

「さあ、穿ちなさい」

 

白色の銃身、斑糲が轟音を発する。放たれた銃弾はボルグカムランの盾を抉り、粉々に砕き散らした。銃弾があんな破壊力を持っているなんて………

 

「アマト君、いいですよ!」

 

っと、呆気に取られてる場合じゃない。防御を崩されたボルグカムランに向かって駆け出す。電撃を帯びた無数の針を飛ばしてきたが、苦し紛れの攻撃なんて砂糖より甘い。針を跳躍して躱し、勢いそのままにボルグカムランの顔まで一気に迫る。

 

「うおおお!!!」

 

GEチョコがボルグカムランの顔面に深々と突き刺さり、そのまま地面に倒へと込んだ。

 

「俺ら要らなくね?」

 

「そうですね………」

 

あ、二人ともいたのか………




力関係はこんな感じです。
グレイ神父=ツバキ>その他
彼を止めれるのはシスター・エクレアだけです。

因みに、この頃からサクヤとアリサは姿を消しています。
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