スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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やばい。この話、ストーリーがまったく進んでいない


三十三品目 エイジス計画の、真相

 

エイジス島に潜入してからどのくらいの時が経ったのか? 分かるのは、時間の感覚が朦朧とするほど進んだということだけ………

 

「はあ…………はあ…………」

 

最重要機密区域なだけあり警備も厳重。更に、視界が悪いせいで周りを見渡すことさえできない。でも、中心部まで辿り着いてもいい頃だけど………

 

(ゴメンね。アマト君、アリサ)

 

何も言わずにエイジス島へ潜入したことを聞けば、アマト君は相当怒るわよね。結局はリンドウと同じように、巻き込ませないために一人で抱えているのだから………

 

『ビーーー!! ビーーー!! ビーーー!!』

 

「!!」

 

視界が赤く点滅し、辺りにアラーム音が鳴り響く。しまった! 勘づかれた!!

セーフガードが作動したのか、一筋のレーザーが私を貫かんと迫る。しかし、私の神機には装甲がないので防ぐことができない。避けようにももう、間に合わない……!

 

「危なかったですね!」

 

突如現れた人影にレーザーは遮られた。その人物は間髪入れずに銃形態に変え、セーフガードに銃弾を放つ。

 

「勝手に置いていった挙げ句、死んでしまったじゃ笑い話にもなりませんよ」

 

「アリサ!? あなた、なんでここに!」

 

「サクヤさんと同じですよ。忘れるなんてできませんよ!」

 

私の行動に怒っているのか、口を尖らせるアリサ。その態度が、なんだかとっても心強かった。

 

『カッ! カッ!』

 

その時、突然エイジス島の全体がライトアップされた。円上に広がる鋼板の大地。そして、上空には巨大な女神像のようなものが逆吊りにされている。この場所はいったい……?

 

「ようこそエイジスへ」

 

「「!!」」

 

聞き慣れた声が響く。そこには私たちを見下ろすように佇ずむ支部長がいた。クレーンのような機械に乗り、ゆっくりとそれが上がっていく。

 

「やはり君たちか。どうだろう、思い描いた楽園と違っていて落胆したかな?」

 

「やはりあなたが…… これは一体どういうことですか!!」

 

「彼はここに浸入する手はずまで整えていたのかね、サクヤ君? 実に惜しい…… まったく、実に惜しい人物を失ったものだ」

 

「戯れ言を! あなたが、そう仕向けさせたのね!?」

 

「彼にはどうやら違う飼い主がいるようでね。噛まれる前に手を打たせてもらった。彼の行動は早すぎた…… あの段階でアーク計画が露見するのは、好ましくなかったものでね」

 

やっぱり、リンドウはこれを探っていて支部長に……! あの日のミッション記録やアリサの錯乱も、全て支部長が後ろで糸を引いていたのね!

 

「アラガミが引き起こす終末捕食により、この星はやがて完全な破壊と再生を迎える。全ての種が一度完全に滅び、生命の歴史が再構築される。その新しい世界に、人類という種とその遺産を残すための方舟、それがアーク計画だ。」

 

淡々と言葉を紡いでいく支部長。そんな訳の分からない事の為に、よくもリンドウを……!

いいえ、落ち着いて……… このまま冷静さを失えば、相手の思うつぼだわ!

 

「しかし、残念なことに、新しい世界への誘う方舟の席は限られている。次世代へと続く限られた席だ。真に優秀な人間こそ座るべきだと思わないかね?」

 

これであのリストの意味がわかった。あれは方舟に乗せる人間の名簿だ。

 

「それに乗るのは、あなたとあなたに選ばれた人だけってわけね」

 

そう、逆に言えばそれ以外の人間は全て見捨てるという………

 

「適役がほかにいるのかね?」

 

視線が交錯する。本気でこの計画を実行するつもりだと、支部長の瞳が物語っていた。こんな馬鹿げたことをさせる訳にはいかない!

 

「本当に、そう、本当に残念だがこれで君たち二人はリストから外れてしまった」

 

体が底冷えするような、低い声を放つ。

 

「申し訳ないが、ここで消えてもらおう」

 

黒い神機を持った大男が暗闇から現れる。顔までは暗くて分からない。しかし、重く冷たい殺意が私たちへと襲いかかった。初めて向けられた人の殺意に、肌が粟立つ。

 

「まさか、神機使い!?」

 

その立ち振舞いからわかる。いや、わかってしまった。あの男の実力は、もしかしたらリンドウよりも………

 

神機が銃形態に変わった。白く角張った銃身が向けられる。まさか、アマト君たちと同じ新型ゴッドイーターなの!?

 

「アリサ、目を!!」

 

忍ばせていた閃光弾を発動させる。これで奴らの視界を暫く眩ませる、はずだった。

 

『ドオオオン!!!』

 

すぐ横の地面が抉られる。視界が潰された状態で、ここまで狙えるなんて……!

 

「一旦退くわよ! アリサ!!」

 

「はい……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「極甘ジュース…………っと」

 

休暇も終わり、シオの捜索任務に就く日々が続いている。ぶっちゃけ、シオはサカキ博士の部屋にいる。つまり、実質は雑魚アラガミの討伐だ。

 

「ふぅ………」

 

自販機から極甘ジュースを取り出す。プルタブを開け、そのまま喉へと流し込んだ。

いつまで経ってもシオが目覚める様子はない。そして、アーク計画の実態も全く掴めていない。俺はこんな事をしたままでいいのだろうか?

 

「あ、アマト君」

 

「あ………… どうも、リッカさん」

 

相変わらずオイルまみれのリッカさんがいた。冷しカレードリンクでも買いに来たんだろう。よくもまあ、あんなのが飲めるものだ。

 

「ねえ……… サクヤさんにエイジス島への入場記録の改竄を頼まれたんだけど、何か知ってる?」

 

………は? サクヤさんがエイジス島に!? どおりで最近姿を見せないと思ったが………

 

「どういう事ですか!?」

 

「アマト君でも知らないんだ…… あそこは最重要機密区域だから心配で……アマト君!?」

 

全力で廊下を駆ける。確かに心配ではあるが、同時に沸々と怒りが湧き上がってきた。俺に黙ってエイジス島に行くなんて……!

リンドウさんのように一人で抱え込むつもりか……!

 

 

俺の部屋には今、コウタとソーマの二人がいる。いままでアーク計画の真相を追っていた事を秘密にしていたが、そうも言っていられなくなった。内容が内容なだけに、二人にも聞いてもらわないといけない。

 

『以上が、アーク計画とエイジス計画の全容よ』

 

ターミナルのモニターの向こうにいるサクヤさんが、エイジス島で起きた全てを説明し終える。

 

『そして、そこにあると思うけど…… それが方舟に乗れる人のリストよ』

 

テーブルに置いてあるリストを手に取る。こんなちっぽけな紙に書かれた人しか救われないなんて、狂っている……!

 

『ここにいる私たち全員の名前も記載されている。二等親以内の親族の同乗も認められているわ。まあ、私たちはリストから外れちゃったけど………』

 

そこには、俺の名前もしっかりと記載されていた。

 

「……… エイジス計画が、嘘……!? そんな、そんなことって………」

 

ソファーに座っていたコウタが力なく呟く。エイジス島完成を誰よりも願い、その為に身を削ってアラガミを殺し続けてきたんだ。その結果がこれでは、落胆するのも無理はないだろう。大勢の人を見捨てて、自分達だけは生き残るという計画なのだから……… それを単純に喜べるほど、コウタの性根は腐っていない。

 

「………俺はあの男に従うつもりはない。それに、俺の体の半分はアラガミだ。そんな奴が次の世代に残れると思うか?」

 

壁に寄りかかっていたソーマが忌々しげにいい放つ。自分の名はリストに乗っていないと思っているのだろう。でも、実際は………

 

『それでも支部長は、あなたのお父様は……… あなたの名前もリストに入れているわ』

 

俺の名前の下には、ソーマ・フォン・シックザールと確かに書かれていた。

 

「………知ったことか」

 

やはりというか、ソーマは一蹴した。断固としてアーク計画に反対のようだ。

 

「サクヤさんたちはどうするんですか?」

 

『私たちはあの舟を認めるつもりはないの』

 

『はい、私たちは支部長の凶行を止めなければならない…… とりあえずは身を隠して、エイジスの浸入方法を探るつもりです』

 

まあ、確かにそれが妥当だろう。アナグラでもサクヤさんとアリサは絶賛指名手配中だ。賞金までかかっている。

 

『伝えておきたかったのはそれだけよ。たとえ私たちの敵に回ったとしても、恨まないから安心して』

 

『その時は全力で排除しますがね』

 

『アリサ……!』

 

『冗談ですよ。でも、そうならないことを願っています』

 

『そろそろ切るわ。後悔のないよう、しっかり考えなさい』

 

「あ、待ってください。俺も言いたいことがあるんです」

 

通信する機会は暫くないだろう。これだけは言っておかないといけない。

 

『何かしら?』

 

「二人とも……… 帰ってきたら、極甘ジュース2ダース分な?」

 

満面の笑みを浮かべ、サムズアップをして処罰の内容を話した。

モニターの向こうにいる二人の動揺が手に取るように分かる。極甘ジュースが2ダースも飲めるなんて軽く天国を見れるぞ。良かったな、二人とも。

 

『え? ちょ……どういう………』

 

「以上、通信終わり」

 

サクヤさんが言い終わるより早く通信をぶちきる。決定事項なので異論は認めない。俺たちに黙ってあんな事をしたんだ。ちゃんとリーダーの威厳を見せないと。

 

「………怒ってるのか?」

 

「いや、全然。………さて、俺はサクヤさんと同じで、アーク計画を認めない。お前らはどうする?」

 

沢山の人間の犠牲の上で平和にのうのうと生きていくことなんて、そんなのは間違っている。どんな人間だろうとそんなことは許されない。

 

「俺は言ってた通りだ」

 

「そうか……… コウタ、お前は?」

 

暫く続く沈黙。そして、覚悟を決めたかのように顔を上げた。

 

「………悪い、俺はアーク計画に乗るよ」

 

返ってきた言葉は、アーク計画を肯定するものだった。

 

「勿論それがどういうことかってのも分かってる……… でも、エイジス計画が無くなっちまった以上、他に母さんたちを確実に守れる方法はない……」

 

俺とは違い、コウタには守るべき人がいる。だから、その選択はある意味では何よりも正しいのだろう。ソーマも分かっているのか、何も言わなかった。

 

「俺は、どんなことをしても家族を、母さんと妹を守るって決めたんだ。そのためにゴッドイーターになったんだ。だから俺…… アーク計画に乗るよ!」

 

「ああ、お前はそれでいい。乗らないって即答したら、ぶん殴っていた」

 

「アマト…… ゴメン………」

 

そこから先は、誰も、何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サクヤさん達の連絡から翌日、支部長に呼び出された。聞けば、他の神機使いたちも支部長に呼び出されているらしい。恐らく、アーク計画の全容を話すのだろう……

 

「失礼します」

 

扉を開けると、机の傍らに佇む支部長がいた。

 

「やあ、よくきたね」

 

薄ら笑みを浮かべる支部長。俺たちを裏切っておきながら、余裕な態度を少しも崩さなかった。

 

「君や先人たちの努力のおかげで、計画は最終段階に入りつつある。まずはその礼を言いたくてね」

 

先人たちのおかげか……

リンドウさんを殺しておきながら、そくそんな言葉をだせるものだ。

 

「……どの口が言うか、といった様子だな」

 

「そうですね。俺、すぐに感情がでるタイプなんで」

 

「サクヤ君から連絡くらいきてるのだろう? 彼女たちが指名手配となっているこの状況で、君たちの心中は察するよ。いまだ私が、ここアナグラでのうのうとしていることも理解しがたいだろう…」

 

「ええ、今すぐにでもリンドウさんの仇をとりたいです」

 

「言い訳はしない。今すぐここで刃を交わすことを望むなら、それにも応じよう。だが、君には理解してほしいのだ。アーク計画こそが、真の地球再生と人類の保存を両立させる唯一の方法だということを……」

 

支部長が壁に掛けられている大きな絵の側まで足を進める。いつも飾られている、嵐に遭遇して沈没しそうな絵だった。

 

「そうだな…… 例えば、船が沈没し、君や乗員が荒れ狂う海に投げ出されたとしよう。嵐の海には、たった一枚の板が浮かんでいる。だがどう考えてもその板には、2人が掴まれば確実に沈んでしまう…」

 

他人を犠牲に自分が生き残る……

今、俺たちの現状がまさにそれなんじゃないか?

 

「さて…君はどうするかね? 他の者を押しのけて、1人助かるか……… それとも、自分が犠牲になるタイプかね?」

 

「………」

 

「君はこの『カルネアデスの板』に掴まるべき人間だ。その選択は人類の未来にとって、決して間違いではないのだよ」

 

「………俺にその資格があるとでも?」

 

「ああ、君は間違いなくその資格を得るのににふさわしい人間だ」

 

断言する支部長。方舟に乗る資格とは一体何なのだろうか? ゴッドイーターだから資格がある……

本当にそれでいいのか?

 

「『箱舟』の完成まで残りわずかだ…この計画に賛同してくれるのであれば、残る任務を全力で遂行してほしい。その暁には、君と君の愛する人たちを、『箱舟』の乗組員として迎えようと思う」

 

愛する人か…… 失ってからもう9年だ。それこそ、俺に愛する人をつくる資格なんてない。

 

「支部長…… 俺にはもう、愛する人なんていませんよ」

 

「………すまなかった。しかし、次の世界では、君の身に起きたような悲劇は無くなる。それを理解してほしい。………用件はそれだけだ、さがりたまえ」

 

「…………失礼しました」

 

支部長に背を向けて、部屋の扉まで足を進める。

 

「そういえば、先程コウタ君は、箱舟の乗船チケットを受け取っていってくれたよ」

 

そうか……

コウタは受け取ったのか。

 

「守るべきものを持つことで生まれる強さを、私は誇りに思う」

 

「はい。少なくとも、俺より強い奴ですよ」

 

「………ここで結論を出せないのならば、暫しの間考える猶予を与えよう。計画の発動まで、あと一歩なのだ。そう、あとは、特異点さえ見つかれば…」

 

振り返ることなく、そのまま支部長室の扉に手をかける。特異点は間違いなくシオだ。いつまで隠し通せることか……

 

「願わくば、正規のチケットを持った君と彼の地で再開したいものだな…」

 

支部長のそこ言葉が、嫌に耳に残った。

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