スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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三品目 俺の神機、旨そうなの?

 

「あっ、アマト君」

 

「どうも、リッカさん」

 

自販機に向かうと、カレードリンクを飲んでいる楠リッカがいた。

 

「新型の神機はどう?」

 

「正直戦えるか心配でしたよ。まあ、杞憂で終わりましたけど」

 

事実、アマトの神機は一般の神機との性能が頭一つ飛び抜けていた。

 

「私たち技術班の最高傑作だからね!」

 

そう言うと、二本目のカレードリンクのプルタブに手をかける。

 

「またカレードリンクですか……良く飲めますね」

 

「どう?試しに飲んでみる?」

 

「いや、遠慮しておきます。ソレ大分飲む人を選びますよね」

 

そう言いながら自販機に小銭を入れる。ボタンを押し、ゴトンと落ちてきた缶を取り出す。

 

「君の飲んでいるモノも人を選ぶと思うよ………」

 

アマトが手にした缶には、『極甘ジュース~チョコレート味~』というロゴが書いてあった。

 

「そもそもソレを買った人、初めて見たよ」

 

「どうです?リッカさんこそ飲んでみます?」

 

「いや、遠慮しとくよ」

 

実際、彼らが飲んでいるジュース(?)は大多数の人には受け入れられない味だろう。しかし、そんなことは気にせず缶を傾け、一気に飲み干す。

 

「「プハァ~」」

 

二人とも缶をゴミ箱に入れると、リッカが少し心配そうな顔を向ける。

 

「ショウコさんから聞いたよ……初任務で怪我をしたって…………」

 

「大丈夫ですよ。大した怪我でもなかったですしね」

 

「それなら良いけど、まだ神機使いになって日が浅いから、無茶だけはしないでね? 神機の代わりはあっても、キミの代わりは世界中探したってないんだから……」

 

「そう………ですね、ありがとうございます」

 

「あっ!あと甘いのを食べ過ぎるのも気をつけてね」

 

「そっちはもう手遅れな感じなんですけどね」

 

ゴッドイーターになる前の健康診断で糖尿病予備軍という結果がでてしまったのだ。流石にアマトも大分堪えたらしい。

 

「それじゃあ……そろそろ任務があるので」

 

「うん、気をつけてね」

 

こうしてアマトはヘリポートに向かった。

 

 

 

ヘリポートに行くと、そこにはヘリの側に立つ一人の女性がいた。

 

「こんにちは、新人君。確かリンドウと一緒にいた子よね。私の名前は橘サクヤ、よろしくね」

 

「桐永アマトです。よろしくお願いします」

 

しかし、やはりサクヤもアマトの神機に目が釘付けだった。その視線に気づいたアマトは口元に乾いた笑みを浮かべる。

 

「ハハハ……変な神機だと思いますか………?」

 

「え!?あ……いや………個性的な神機だと思うわ!」

 

「まあ……でしょうね」

 

アマトは達観した目で虚空を見つめていた。どこか気まずい空気が漂う。

 

「え……と……、取り敢えず乗りましょうか」

 

「はい」

 

気まずい空気のまま、ヘリに乗り込んだ。

 

ヘリに揺られること数十分、今回の任務の目的地である「嘆きの平原」が見えてきた。

 

しかし、その場所には大きな竜巻が渦巻き、しとしとと雨が降り続けている。流石のアマトもつっこまずにはいられなかった。

 

「何ですか、あれ?」

 

そんな中でもサクヤはいつも通りの様子だ。

 

「気にしないで、ここではいつものことだから」

 

「…………マジですか?」

 

ゴッドイーターの職場環境の現実に軽く打ちのめされたアマトであった。

 

ヘリから降り、サクヤと今回の任務のブリーフィングを始めた。

 

「今回の討伐対象はコクーンメイデン4体よ。遠距離からは光弾、近距離からは針を突き出してくるわ。無闇に近づかないようにね。」

 

「コクーンメイデンですか……」

 

「私たち遠距離型の神機使いは後衛で援護をするわ。今回、アマト君は前衛をお願いね」

 

「了解です」

 

「以上でブリーフィングを終了するわ。何か質問はある?」

 

「いえ、問題ないです」

 

「頼もしいわね。さあ、行きましょうか」

 

これから任務が始まる合図のように、サクヤは険しい表情に変わっていた。アマトも、同じようにお菓子の神機を持つ手にも力が入る。

 

降りしきる雨の中、バシャ,バシャと音をたてて二人は足を進めた。

 

ふと、サクヤが足を止める。

 

「……いたわ」

 

その視線の先には、平原の地面から生えている4体のコクーンメイデンたちがいた。

 

「先ずは私が先制するわ。アマト君はブリーフィング通りにお願いね」

 

アマトは無言で頷きながら神機を構える。

 

(…………凄いわね)

 

本来ならアマトにとっては未知の、更に複数のアラガミとの戦いであるにもかかわらず、あまりにも自然体な構えに驚愕する。

 

しかし、直ぐに任務に気持ちを切り替え、愛用の神機『ステラスウォーム』の銃口をコクーンメイデンに向ける。

 

「いくわよ………3,2,1」

 

「0!」

 

バシュン!

 

一筋の閃光が走り、コクーンメイデンに風穴を開ける。

 

それと同時にアマトも大地を蹴り、平原を駆け抜ける。

 

異変に気づいた3体のコクーンメイデンがこちらを向き、一斉にアマトへ光弾を放つ。その光弾を右,左と上半身を揺らし回避しながら距離を詰める。

 

その中、アマトは一番手前にいたコクーンメイデンに狙いを定める。

 

あと一歩踏み込めばGEチョコが届くという距離で、コクーンメイデンの腹部が開く。そこから無数の針がアマトを狙い、繰り出される。

 

「甘い」

 

そのまま直撃を受けるほどアマトも馬鹿ではない。コクーンメイデンの倍近くの高さの跳躍を披露する。

 

そのままコクーンメイデンを飛び越え、身体を捻り、後ろを取る。

 

「ーーぁあ!」

 

落下のタイミングを合わせ、神機で横薙ぎをする。文字通りコクーンメイデンは真っ二つになった。ゴトリ…………と嫌な音が響く。血を噴き出しながらコクーンメイデンは事切れた。

 

だが、他のコクーンメイデンも黙っているわけではない。アマトを射わんばかりに光弾を精製する。

 

バシュン!

 

バシュン!

 

しかし、二つの閃光が再び空を切る。その閃光は吸い込まれるように二体のコクーンメイデンに命中し、貫通する。

 

「ナイスショットです、サクヤさん」

 

素直に称賛の声をかける。

 

アマトの一連の動作の合計時間は僅か5秒。その間に2体の位置を正確に把握し、連射をしつつ精密な射撃をする。

 

ベテランの神機使いであるサクヤであるからこそ可能な芸当だ。

 

「どういたしまして、アマト君こそ新人とは思えない良い動きだったわ」

 

しかし、サクヤはリンドウと同じ感情を抱いていた。

 

ーーー彼は、アラガミを恐れていないーーー

 

事実、コクーンメイデンとの戦闘中でもアマトは一度も後退していない。これは技術や経験というより精神の頑強さによって初めて可能なことだ。

 

そう、この新人は、何かが狂っている。

 

「それじゃあ、補食しておきますね」

 

アマトは神機を禍々しい補食形態に変える。禍々しいのだが、装備(お菓子)との不釣り合いさによってイマイチ迫力に欠ける。

 

「…………ハァ……」

 

グチャ……グチャ……と補食音を聞きながら思わず溜め息を洩らす。未だにこの神機に馴れることが出来ないようだ。

 

暫くして、コクーンメイデンを粗方補食し終える。

 

「サクヤさん、終わりま……」

 

ボコッ!

 

「な!?」

 

「!?」

 

いきなり目の前の地面が盛り上がり、コクーンメイデンが飛び出してきた。

 

腹部が開き、針が飛び出す。アマトは倒れるように横に避ける。

 

「アマト君!大丈夫!?」

 

「ッ!!はい!」

 

いったい何故このタイミングで?

 

体勢を立て直し、神機を構え臨戦態勢に入る。しかし、他の個体と様子が違う。アマトの神機を凝視している。

 

「…………」

 

そして、アマトはあることに気づく

 

無表情なはずのその顔から

 

本来あり得ない

 

よだれが出ていた。

 

「………死ね!!」

 

怒りに任せて神機をおもいっきり振るう。コクーンメイデンに直撃し再び血の海が出来上がった。

 

アマトは亡骸を見ながら肩越しに震えている。自分の神機に振り回されるのにも限界らしい。

 

「………美味しそうだったのかしら?」

 

サクヤは遠くでポツリと呟くことしかできなかった。

 

こうして、今回の任務も無事終わった。

 

 





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