スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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三十七品目 スイーツイーターと、ハンニバル

 

エイジス島の激闘からどれ程たったのだろうか…… 方舟に乗ったゴッドイーター達もアナグラへ戻ってきた。残った人たちとの多少のいざこざはあるものの、すっかりと日常へと塗り替えられていった。

 

新聞には、支部長はエイジス島崩落に巻き込まれて死亡という扱いになっていた。グレイさんもいた筈だが、あれがそう簡単に死ぬとは思えない。何処かで上手く生き延びているだろう。今頃フェンリル本部の教会で祈りでも捧げていると思う。

 

あれから変わった事といえば、シックザール支部長の代役でサカキ博士が極東支部支部長になったことだ。最初はアナグラ暗黒時代が始まると思ったが、業務はしっかりこなしてくれる。

 

そういえばもう一つある。ここ最近、討伐対象のアラガミが惨殺されているのだ。長い調査の結果、ついにその原因を突き止めた。犯人の名はハンニバル。極東支部で始めて確認された新種のアラガミだ。

 

という訳で、本日第一部隊に課せられたのはハンニバルの討伐だ。メンバーは俺、ソーマ、アリサ、コウタの四人。まあ、新種に対してはこれが無難な選出だろう。

 

ハンニバルが確認された場所は『嘆きの平原』。この日は珍しく雨が降っていなかった。

 

「新種のアラガミかー。どんなのだろうな!?」

 

「ツバキさんがドラゴンっぽいアラガミだって言ってたな」

 

「おお! かっこ良さそうだな!」

 

サイズは大型、炎を操る厄介なアラガミだと調査隊が言っていた。犠牲者はでなかったものの、負傷者の数がとんでもなかったそうだ。

 

「無駄話するな。とっとと行くぞ」

 

「そうですよ、コウタ!」

 

「いや、アマトもだろ!?」

 

俺が心配してるのはただ一つ。手持ちのスイーツが熱で溶けてしまうことだ。そんな不安を抱えながら、捜索を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っと、あれか………」

 

『ハンニバル』……その名前の由来は、ポエニ戦争で活躍した名将からと言われている。神ではなく人間から取った理由が納得できる。左腕に備えた黄色い籠手に、武人のようでもある白い体つきからつけたのだろう。

 

「ここからなら狙えるか……?」

 

白く長い尾がしなやかなに動く。幸い、まだ此方に気づいていないようだ。神機をGEケーキに変型させ標準を定める。

 

「撃ち抜け!」

 

俺、アリサ、コウタによる銃撃。銃口から耳がつんざくような轟音が響いた。

その音に反応したハンニバルが黄金の籠手を構える。そして、振るわれたソレが銃弾を弾き返した。

 

「はあっ!?」

 

コウタが素っ頓狂な声をあげる。何だ…… あの人間染みた出鱈目な動きは……!?

 

「グゥオオオオオ!!!」

 

左腕の籠手から炎を発し、猛々しい咆哮をあげる。

 

「ッ!! 来るぞ!」

 

「うわ!? 速い!」

 

ハンニバルが二本の足で駆け抜ける。シユウもそうだが、それとは比べ物にならない速さだ。

勢いそのままに両手の爪が迫り来る。それをなんとか転がって躱した。

 

「このっ!!」

 

ついでに銃弾を放ったが、ダメージを受けた様子はない。この…… 弱点はどこだ!?

 

「らあっ!!」

 

「はあ!!」

 

前衛組のアリサとソーマが神機を駆使し、ハンニバルと互角に渡り合う。

紅と白の刃が踊る。ソーマの神機がシオを捕食して以来、ホワイトチョコのような純白の色に染まったからだ。

 

「俺も前線に出た方が……」

 

銃撃によるダメージの見込みはない。神機をGEチョコに変型させようとしたその時……

 

「アマト! あそこが効くよ!!」

 

コウタがハンニバルの背中を指差す。確かに…… 被弾する度に顔も痛みで歪んでいる。

 

「よし……!」

 

背中の部位に集中砲火する。しかし、側転やバック転などのトリッキーな動きに翻弄され、標準がつけ難い。そんな中でも攻撃直後の硬直を狙い、なんとかダメージを蓄積していく。

 

俺の銃弾が命中したのを最後に、何かが割れるような甲高い音が響く。

そう、とうとう結合崩壊を起こしたのだ。

 

「よっしゃ! 行けるぜ!!」

 

「ああ、これで一気に畳み掛け……」

 

勝利を確信した瞬間、ゾクリ……と背中に嫌な汗が這う。これまでの経験が「まだ終わっていない!」と叫ぶ。次の瞬間、ハンニバルがその場から『翔んだ』。

 

「グゥオオオオオ!!」

 

背中から赤い輪が出現する。そして、翼のような炎も噴き出した。離れているのも関わらず、相当な熱量を放っている。

同時に、恐れていた事が………

 

「熱っ! 溶ける溶ける!!」

 

ああ……!? 手持ちのスイーツが溶けていく……

 

「この…… 許せん!!!」

 

こいつだけは血祭りにしてやる!神機をGEチョコに変型させ、ハンニバルに向かい駆け出す。

 

「バカやろ……!? 迂闊に近づくな!!」

 

ハンニバルは顔の前で両手を交差させている。何をするか知らないが、その前に斬り抜け……

 

「グオオオオ!!」

 

突如、両腕から剣を型どった炎が現れた。火の粉を散らしながらそれが振るわれる。

 

「くっ!!??」

 

反射的にGEキャンディーを展開し、なんとかソレを受け止めた。あまりの威力に吹き飛ばされそうになるが、足腰に力を込めなんとか踏ん張る。

二太刀目が迫ってきたので、急いでその場から飛び退く。危なかった…… 息つく暇もない。

 

「アマト! なにやってんだよ!?」

 

コウタが心配して駆け寄ってくる。

 

「……ん!? なんか甘い匂いが……」

 

コウタがスンスンと鼻を鳴らす。確かにキャンディーのような甘い匂いがした。

いつもの嫌な予感がした。急いで神機を確認すると……

 

「…………」

 

GEキャンディーが溶けそうになっていた。確かに熱には弱いだろうが、アラガミの攻撃でこうなるなんてかつて無かったぞ……

神機を破壊(?)したのを誇ってか、ハンニバルが天高く吼える。なんかもう、屈辱だ。膝を着きそうになる。

 

「くたばれ……!!」

 

「てい!!」

 

「ギュガア!!?」

 

「あ」

 

しかし、いつの間にか接近していたソーマとアリサによって斬り伏せられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アマトさん! なんであんな無茶をしたんですか!?」

 

「すみません…… お菓子の仇をとりたかったんです………」

 

アリサが本気で怒っていたのでひたすら頭を下げる。今考えると、何の情報も無しに突っ込むなんて信じられない。

 

「……レアモノだな」

 

「いやぁ、なかなかの強敵だったね〜! でもまあ、初めての相手にしちゃ上出来っしょ!」

 

ソーマはハンニバルのコアを捕食し、コウタは神機の先で突っついたりしていた。空気を読んだ二人は全く関わろうとしない。

 

「帰投したらさっきの続きですよ! サクヤさんとツバキさんにも報告です!」

 

「な!!?」

 

今日はもうダメだ。スイーツとGEキャンディーは溶かされるわ、恐ろしい女性陣に説教されるわ…… ほんと最悪だ。

 

「ああ…… コートの内側がベタベタだ…………」

 

「おい、とっとと行くぞ」

 

ヘリとのランデブーポイントに向かって歩き出す。足取りが凄く重いのは気のせいか?

 

「ちょっと待ってよ〜! せっかくの新種なんだしさ〜! 魚拓でも取っとこうぜ!」

 

「おいおい、魚拓って…… っ!? コウタ!」

 

振り返ると、赤い炎を渦巻かせながらハンニバルが起き上がっていた。

どういうことだ!? 確かに、確かにソーマがコアを摘出した。にも関わらず、動き続けるなんて……!

 

「う、う、うわあああぁぁぁ!!!」

 

ハンニバルの右拳が握られた。

マズイ……!? 今のコウタじゃ躱せない!

 

「アマトさん!!」

 

考えるよりも先に体が動いた。コウタを飛び越え、ハンニバルと相対する。その瞬間、俺に向かって豪腕が振るわれた。空かさずGEキャンディーを展開するが……

 

「ぐおっ……!!?」

 

溶けかけなのを忘れていた。そのGEキャンディーが衝撃に耐えきれるはずもなく、そのまま吹き飛ばされる。

湿った地面を転がりながら、チラリとコウタを一瞥する。よかった、無事そうだ。

 

「どういうことだ……!? コアは確かに摘出したハズだ!」

 

「考えるのは後です! 早くアナグラへ撤退しましょう!」

 

「アマト! 立てるか!?」

 

コウタに肩を抱えられて何とか立ち上がった。

しかし、どんどん意識が遠のいていく。申し訳無いが、コウタに全体重を預けてそのまま瞼を閉じた。

 

「今日は厄日か………」

 

そう呟かずにはいれなかった。そこから先は覚えていない。





コラボもあります。
『ハイスクールG×E×B』からスミカさんがでます。


エントランスの階段を下る。いつもと同じく、今日の任務をヒバリさんに聞くはずだったんだけど……

「なにやってるの? アマト君」

なぜかアマト君がテーブルの下に隠れていた。端から見れば、頭がヤバめな人と思われても仕方ないわね…… 本当に何をしてるのかしら?

「ん? ああ、スミカさん。あれ見てください」

アマト君が首をクイッと動かす。その先に視線を移すと………

「ヒバリちゃん、この後飯でもどう?」

「すみません、まだ仕事があるので」

「…………」

いつもどーりタツミさんが猛烈なアタックをしかけ、いつもどーりヒバリさんがそれをいなしていた。
タツミさんは肩を落としてこっちに歩き、それをヒバリさんは笑顔で見送っていた。
なるほど、そういうことね。これじゃあ下手に近づけないわ。

「あはは…… タツミさん、またふられちゃったね?」

「そーですね………」

アマト君も呆れているが、かく言う私も大分呆れている。ほんと、あんなアプローチじゃいつまで経っても落とせないのに………

「チクショウ…… なにが駄目なんだよ! 教えてくれ、アマト!」

とうのタツミさんは全く気づいていないのよねー……

「そりゃー、お菓子を持っていかないからですよ」

「いや、絶対違うよ!?」

物の問題じゃなくて、もっと根底から……

「なるほど…… やってみるぜ!!」

「やりましたね。これで絶対いけますよ」

納得しちゃうの!? まったくもう…… なんで二人ともこんなに鈍いのかしら?
結局、タツミさんはアマト君から買い取ったクッキー片手に出陣した。

「ヒバリちゃん、一緒にお菓………」

「すみません、仕事があるので」

これは酷い。最後まで言わせなかったわね……

「ぜんぜんダメじゃねーか!!」

タツミさんがダッシュで戻ってくる。アマト君だけは心底驚いた表情だった。女心をお菓子で釣れると思っていたのかな?

「ば……ばかな…………」

アマト君が膝をつく。私がいくしかないか。

「やれやれ、しょうがないなあ。タツミさん、私の言う通りにしてみてください」





「お菓子を持っていかせなくていいんですか?」

「うん、ちょっと黙ってて?」

話した通り、タツミさんが落ち着いた様子でヒバリさんに話しかける。

「ヒバリちゃん、任務はある?」

アマト君の作戦を言うのなら『スイーツで鯛を釣る作戦』。なら、私の作戦は『押すのがダメなら引いてみろ作戦』だ!

「あ、はい。グボログボロの討伐任務がきてますね」

「そうか、グボログボロか」

ふふふ! 怪しんでる怪しんでる!

「タツミさん……? 今日はどうしたんですか?」

ヒバリさんが心配そうな声をあげる。普段のタツミさんならここでデートに誘うはずだもんね。でも、今回は……

「いつもと様子が違いますが………」

さあ、タツミさん! やってしまえ!

「はは! ヒバリちゃん、心配してくれてありがとな(キラッ☆ミ)」

タツミさんだからこそ似合う、超絶爽やかスマイル。口元から覗く白い歯がキラリと輝いた。

「え!? あ…… はい………」

いつもと違う様子に慌てるヒバリさん。ほんのりと頬が紅く染まっていた。やっぱり…… ヒバリさんもその気はあったわね!

「ふふふ、やっぱりタツミさんに問題があったか」

「え? どういうことっすか?」

「アマト君はキャンディーでも食べてて」

いっつもお菓子ばっかり作ってるからなのかな? カノンさんやアリサちゃんも苦労してるだろうな~

何はともあれ、作戦は大成功。これならタツミさんも大満足でしょ!

「タツミさん、大成功でしたね!」

でも、帰ってきたタツミさんの顔は浮かないままだった。いったいどうして……?

「…………いや、こんなんじゃダメだ!」

「え?」

「ヒバリちゃん、なんも言ってくれないじゃん!?」

「えええええ!!??」

「やっぱりですか。お菓子を持っていくべきですよ」

「くそ……! いったいどうすればいいんだ………!」

ダメだ…… タツミさんもアマト君も重症だ………! もう私にできることはない。これはもう……

「放っておこうっと!」










それから翌日。エントランスのソファーに座りながら、タツミさんがため息をついていた。まだ落ち込んでいたのね……

「タツミさん………」

ん? あれはアマト君?

「タツミさん、お菓子を持ってアタックあるのみですよ。諦めたらそこで試合終了ですよ!」

お菓子をタツミさんの手に握らせ、力強く言い放つ。どこかで聞いたことがあるセリフだけど、タツミさんは心にはしっかりと響いていた。

「安西先……っと、違う違う。アマト………」

勢いよく立ち上がる。一応元気は取り戻したけど…… なんと言うか、納得できない!

「そうだよな! よし、今日もデートに誘ってみるぜ!」

「お菓子を忘れないでくださいよ」

「ああ!」

そして、勢いそのままにヒバリさんのもとまで駆け出した。

「ヒバリちゃーーーん!! このあとデートでも…………」

「ごめんなさい、仕事があるので」

案の定、即行で断られた。しかし、タツミさんはやけにサッパリとした顔で帰ってくる。

「ふられたけど明日があります!」

「ああ! 俺は諦めないぜ!!」

二人で一緒にガッツポーズを取る。
ああ…… もう、我慢の限界だ………!

「あんたら…… いい加減にしろーーー!!」

「「何で!?」」

気づいたら二人にドロップキックをお見舞いしていた。でも、百人に聞いたら、百人が悪くないって言うわよね!


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