最初のソーマ動かしにくい(涙)←普通に技術不足
アナグラ内には食堂がある。
金を払えば支給品とは比べ物にならないくらいの高レベルな料理を頼むことができるし、ゴッドイーターの給料はもともと高いのでそこは何時も人が賑わっている。
その中にも料理を注文するアマトがいた。
「おばちゃん、いつものヤツで」
「はいよ、あんたも好きだねぇ」
おばちゃんが呆れながらも「いつものヤツ」の調理を始める。
待つこと数分……
「はい!おまちどおさま!」
「あざーっす」
トレーと料理を受け取り、空いている席を探す。途中で黄色い何かが目の端に入る。
「あっ、アマトじゃん!ここ、空いてるぜ」
そう言いながら手を振ってくる。
「おお、コウタか、サンキュー」
特に断る理由もないので向かいの席に座る。ふとテーブルを見てみるとコウタは焼き魚定食を食べていた。
「旨そうだな、ソレ」
「ああ、俺のオススメだ!アマトはなに頼んだんだ?」
「ん?ああ、これだ」
テーブルに置いたトレーを見る。そこには山盛りのご飯と横に置いてある板チョコだけだった。
「………あれ?オカズとかないじゃん」
コウタの疑問は正しい。しかし、何故かアマトは不思議そうな顔をする。
「いやいや、ご飯の横にあるだろ?」
衝撃的な発言をした。
「え?」
「え?」
暫く無言の時間が過ぎる。コウタの頭が情報処理に追いついていないのだろう。
その一方で、アマトは板チョコをおろしの様なものでゴリゴリと削り、ご飯に掛けている。
米の熱でチョコレートが溶けて、どろどろの黒い液体となっていた。
「いただきま…………
「ふりかけかよ!」
なんだよ?」
食事を中断されたせいで、少し言葉に怒気が含まれている。しかし、コウタもそれどころでない。
「なんで別々に食わないんだよ!?チョコが勿体無さ過ぎだろ!」
このご時世にお菓子はとても高価な物だ。第2部隊の台場カノンもクッキーなどを作って配っているが、それでも珍しい。
「なんでって……旨いぞ?」
「マジかよ!」
薦めるようにこちらにチョコ ON THE ご飯を差し出す。
「いや、気持ちだけで……気持ちだけで嬉しいから気にすんな!」
流石にコウタも断る。いつも食料が足りない時代でも、この食べ物を口に入れる勇気はない。
「そうか」
そう言いながら黒くなった米を口に運んでいく。美味しそうに食べるアマトの傍ら、コウタは一人微妙な顔を浮かべている。
「そういやさ、初任務ってどうだった?」
お互いに箸を進めているなか、コウタが質問するがアマトは相変わらず箸を止めない。
「俺の方はもう大変だったよ!緊張してリンドウさんに誤射しちゃってさ~」
「あらら……ドンマイ、リンドウさん」
しかし、それでもアマトの箸は止まらない。そう思っているようにはとてもでないが見えなかった。
「アマトはどうだったんだ?」
「俺?俺はオウガテイルを討伐したけど」
「ええーー!スゲェじゃん!さすが新型神機使いだな!」
「ああ……うん、まあな」
コウタは誉めていると分かっているが、アマトにとっては皮肉めいた意味にしか聞こえなかった。
暫く雑談をしたあと、二人は昼飯をキレイに平らげた。
「「ご馳走さまでした」」
そう言って席をたつ。
「んじゃ、そろそろ任務だから行ってくる」
「どんな任務なんだ?」
「ザイゴート、オウガテイルの群の討伐」
「うわっ、キツそうだな……」
「三人でのミッションだからそうでもないと思うぞ」
「そっか、ガンバれよ!帰ってきたらバガラリー見ようぜ」
「ああ、じゃあな」
「じゃあな!」
コウタが去ったとたん、今までの賑やかな空気から嘘みたいな静寂が訪れる。
(本当に騒がしいヤツだったな)
そう思うアマトの顔は少し嬉しそうだった。
いつものヘリポートに神機を持ったアマトの姿があった。しかし、心なしか表情は険しく、頻りに腕時計を確認している。
「遅い………!」
ヘリの出発準備も既にできており、後は他のゴッドイーターを待つだけなのだが、全く来る様子はない。
そもそも既に集合時間は過ぎている。流石のアマトも苛立ちを隠せない。
いい加減我慢の限界だという時、ようやく扉が開く。
そこにはフードを被った青年と、赤毛のベストを着た青年がいた。
「やあ、君が例の新人クンかい?噂はきいているよ。僕はエリック、エリック・デア=フォーゲルヴァイデだ」
「…………桐永アマトです」
遅れてきた事もあり、少しばかり不満が滲み出ている。
「…………」
一方で、フードを被った青年は無言を貫いていた。アマトはガン見するが少しも動じない。
「ほら、君も名乗ったらどうだい?」
エリックが自己紹介をするように促す。
「…………ソーマだ。別に覚えなくてもいい」
一言だけ喋ると再び口を閉じる。まるでこれ以上自分とは関わるなと言わんばかりに……
「彼は少しシャイな性格だから、気にすることはないよ」
(絶対シャイってレベルじゃないな)
既に彼からは近寄りがたいオーラがガンガン発されている。
「そういえば集合時間もう過ぎてますよ。二人とも何やってたんですか?」
ひとまずソーマの事は置いておき、二人の遅れた理由を聞く。
「ああ、トイレを詰まらせてしまってね。まったく、これだから安物は困るよ」
「お前には関係無い」
「…………」
一つ息を吐き、そのまま空を見上げる。
(もうコイツらめんどくさい)
切実な感想だった。
三人はヘリに揺られながら今回の仕事場である『鉄塔の森』に向かっていた。昔は活気溢れる大規模の工場だったのだが、今ではもう流れ落ちる水の音が虚しく響くのみである。
そんな中、アマトのストレスは際頂点に達していた。
「君もそんな珍妙な神機で心配だろう?大人しく華麗なる僕の活躍を見習っていたまえよ」
「ハハハ、ソウデスネ」
エリックはアマトの握りこぶしから赤い液体がポタポタと落ちていることに気づいていなかった。
(コイツ……超しばきたい…………!)
「ああ、ただ華麗なる僕の足を引っ張らないように」
「ハハハ、キヲツケマス」
明らかに様子がおかしいのだがエリックはまったく気づかない。ソーマに至っては我関せずという感じだ。
そんなやり取りのあと、鉄塔の森に着き、三人はアラガミ達の群を探していた。
しかし、任務の最中だというのにエリックは誰から見ても隙だらけだった。
本来のアマトならばここで注意するのだが
(どうやって正当にぶちのめすか…………?)
そんなことしか考えていなかった。そんなことは露知らず、エリックの舌は更に回る。
「華麗なる僕がいるからにはアラガミだって恐れるに足りないよ」
任務が始まってからずっとこの調子である。アラガミに襲われたら命の危険すらある。
そのとき
その最悪のケースが起きた。
「エリック、上だ!!」
「え?」
頭上からオウガテイルが飛びかかってきた。ソーマが叫んだが間に合わない。
このままではアラガミの餌になるが、
「逝け!!」
アマトのGEケーキが火を吹いた。
エリックに
「ナバヌッ!?」
放物線を描いて華麗に吹き飛ぶ。ダメージは無い仕様なのだが痛いものは痛い。
ベチン、と地面に叩きつけられた。そのままヤ●チャよろしく暫く倒れていた。
「しまった、とっさにエリックさんをうってしまった」
晴れやかな顔と棒読みで言われても説得力は無いだろう。
「何してんだ…………」
ソーマが呆れながらもオウガテイルを身の丈はある大剣で叩き斬る。オウガテイルは呆気なく倒れた。
「油断するからそうなる……」
エリックは倒れたままケーキが、ケーキが……という謎のうわ言を呟いていた。しかし、起きる様子はない。
ソレを見るソーマの視線はどこまでも冷たかった。
「何気に酷いですね、ソーマさん」
誤射(笑)した張本人が言えることではないだろう。
「敬語はやめろ、さん付けもするな」
オウガテイルを捕食しながら、珍しくソーマが口を開く。
「……ようこそ、くそったれな職場へ」
その声はすべての負の感情を混ぜ合わせた声色だった。
「言っておくが、ここではこんなことは日常茶飯事だ。コイツは運が良かったがな」
神機をこちらに突きつける。
「お前はどんな覚悟をもって『ここ』に来た?」
「覚悟、か…………」
ポツリと呟きアマトもゆっくり神機をソーマに向ける。
「『譲れない覚悟』だ」
ソーマとは全く逆の、一切の感情を排した平淡で機械のような声だった。
互いに睨みあいながら一歩も動かない。
「…………なんてな。時間だ、いくぞルーキー」
神機の刃を降ろし、アマトに背を向ける。
「とにかく死にたくなければ、俺になるべく関わらないことだ」
「…………」
こちらを振り返らずにそのまま歩きだす。その背中は小さく、どこか哀しそうだと感じた。
「ああ、そうだ……行きますよ、エリックさん」
エリックがガバッと起き上がる。
「なんであんなにシリアスな空気だったんだい!?起きるに起きれないじゃないか!!」
「そりゃあ、エリックさんが黙ってたからじゃないですか?」
「」
アマトとエリックはソーマの後を追い、鉄塔の森の奥を進んでいった。
『ガアアァァア!?』
「「ッ!?」」
オウガテイルの断末魔を聞き、二人は足を早める。
「遅かったな………」
そこには既に切り裂かれたオウガテイルの屍の傍らに立つソーマがいた。
「ぼーっとするな、来るぞ」
『ギキャアアァア!!!』
断末魔を聞きつけた二体のザイゴートが襲いかかってきた。ザイゴートの聴覚は非常に鋭い上に他のアラガミを呼び寄せる特性がある。更に三体が増えていた。大混戦は必至だろう。
アマトはGEケーキ形態の神機を構え直す。
「次は油断しないでくださいよ」
「フッ、油断なんて愚かなことはしないさ」
「最初の方、忘れたんですか?」
「う………そもそもなんで僕を撃ったんだい!?」
「うるさい、行くぞエリック」
「呼び捨て!?」
銃口をザイゴートに向ける。
「撃ち抜く…………!」
アマトのGEケーキで弾幕が形成される。ザイゴートは旋回し避けるが一匹が被弾する。
「ソーマ!」
「ッチ………分かってる!」
すかさずソーマが撃ち落としたザイゴートに接近し、重量に任せ神機を振り下ろす。
隙ができたと思ったのか、ザイゴート3体が人ひとり飲み込める程の口を広げ襲いかかる。
「華麗なるエリックシュート!!」
((イラッ))
「!?寒気が?」
エリックが放った銃弾はザイゴートを全て撃ち落とす。
「くたばれ…………!」
落下するザイゴート全てを巻き込み横に振り回す。
(ッ…………なんて戦い方だ)
ソーマの戦闘はアマトに戦慄を覚えさせるほど凄まじいものだった。
ソーマの横を駆け抜けて、入れ替わるようにアマトが残ったザイゴートの前まで跳躍し躍り出る。
「っぁ!」
GEチョコ形態の神機でザイゴートの体を貫く。地面に着地し、ビュンッと神機を振るとザイゴートの肉片が地面にへばりつく。
「何意外そうな目で見てんだ」
慌ててエリックが目を逸らす。
「い…………いや!何でもないよ……」
アマトの目線は明らかに殺気が籠っている。ここでヘタな事を言ったら再び誤射(?)をされるだろう。
改めて戦場を見渡すと、そこは地獄絵図だった。
「これは捕食しようが無いね…………」
エリックはザイゴートだった潰された屍と地面の肉片を見て呟く。
「まあ、一応喰らっておくか」
神機をプレデターフォルムに変えて捕食できそうなアラガミに噛ぶりつく。
既にソーマもオウガテイルを捕食している。
「…………二人にお願いがあるんだ」
グシュ、グシュと咀嚼するなかエリックが悲痛そうな顔で頼み込む。
「父さんと………エリナには………妹にはこの事を内緒にしてくれないかい?余計な心配はさせたくないんだ………」
アマトは少し意外そうな顔をする。
「………安心しろよ、誰にも言わない。だろ?ソーマ」
「…………ふん」
ソーマはそっぽを向いたが、肯定ととって良いのだろう。
「…そうか……ありがとう」
少し、ほんの少しエリックの印象が変わったアマトであった。
皆さんもやってみてください。
意外にいけなくもない…………かも