スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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 主人公最悪にして最凶の受難。


四十八品目 歌姫と、怠け者

 今日は蒼水の峡谷であるアラガミを討伐するという任務だ。蒼水の峡谷とは、旧時代に建設されたダムの跡地だ。異常気象にみまわれて、いつも流氷が流れている。

 メンバーは僕、ロミオ先輩、ナナの3人だ。ナナの服装(として機能してるのか?)だと風邪を引きそうで心配だ。

 

「たまに、ここにある雪を食べちゃうよね! シロップとか持ってきてさ!」

 

 ……うん、要らない心配だったね!

 

「ナナ、それ腹壊さないの?」

「ぜーんぜん大丈夫だよ!」

 

 こう言っちゃ悪いけど、2人とも油断しすぎじゃないか? まったく、近くにアラガミがいるかもしれないのに……。

 

「んで、何でレイジは雪だるまを作っているんだよ!!!」

「………え? だって、雪があったら雪だるまを作るのが人の罪深い性でしょ?」

「しょーもない性だな!!」

 

 一応、周りは警戒してるから油断ではない。

 さて、右目を作ったらレイジ特性雪だるマン52号の出来上がりだ。あと少しだぞ!

 その辺にあった石ころを付ける。できた、所要時間五分の超大作だ!

 

「うわっ! クオリティー高っ!!」

「すごーい!本物みたーい!!」

 

 今回のモデルは神機兵だ。ハッハッハ、我ながら完成度の高い雪だるまを作ったものだ。

 

「チェストォォォォォ!!!!」

 

 雪だるマン52号に強烈な右足の蹴りを喰らわせる。ゴッドイーターになって身体能力が強化されたおかげか、跡形もなく消し飛んだ。

 ああ、か・い・か・ん……!

 

「あぁー!! もったいないよー、レイジ!」

「何を言っているんだい、ナナ。雪だるまはぶっ壊すのが醍醐味じゃないか」

「えぇーーー!」

 

 そう、これまでの雪だるマンも等しく蹴り飛ばしてきた。これからも、僕はこの生き方を変える気はない!

 

「おい、そろそろ来るぞ……!」

 

 ロミオ先輩の声色がシリアスになる。

 ああ~、来ちゃったか……。直前に進路を変更して逃げてくれても良かったのに。

 さて、僕らがぶっ殺すアラガミはウコンバサラというワニみたいなアラガミだ。ワニのくせに、何故か電気をバチバチしているのが最大の特徴だろう。

 ジュリウスさん曰く、僕ら3人なら危なげなく倒せるらしい。けど、知っての通りジュリウスさんは人間を止めているので当てにならない。

 おっ、見えた見えた。あれがウコンバサラか。生では初めて見るな。

 

「そんじゃ、先ずは銃撃して奇襲って感じでいいな?」

「「了解ですっ!」」

 

 神機を銃形態に変更する。

 

「……レイジの神機、銃形態も女の子だな」

「言わんでください……」

 

 ウコンバサラが射撃範囲に踏み込む。

 さあ、しんどいお仕事の始まりだ!

 

「いけっ!」

 

 僕らに気づいたウコンバサラが雄叫びをあげる。しかし、銃弾の雨にすぐ仰け反った。

 とりあえずガンガンぶっぱなす。命中率はまちまちだけど、ダメージはそこそこ入ったろ。

 

「えいっ! えいっ!」

 

 隣を見れば、ナナも必死に銃撃していた。だけどさ、全然届いてないじゃん。ウコンバサラに届く前に拡散してんじゃん。

「ナナ! それはショットガンだから遠距離は狙撃できないって!!」

「えっ!? そうだっけ!?」

「だぁー、もう! ナナは前線! 俺とレイジは状況に応じて臨機応変に戦うぞ!」

 

 流石はロミオ先輩。先輩している。

 

「いくぞっ!」

 

 ロミオ先輩とナナがウコンバサラに突っ込んでいく。尾びれや噛み付きを避けながら、着実にダメージを重ねていった。

 頑張ってー! 僕は後衛でサポートするよ!!

 とりあえず狙撃しようと構える。でも、僕の腕じゃあ敵味方入り乱れる場所で正確な狙撃なんてできないな。仕方ない、見てるか!

 

「レイジ! サボるなよ!!」

「あっ、すんません!」

 

 ロミオ先輩に怒られた。やっぱ、僕も戦うしかないのか。悲しいけどこれ、(アラガミとの)戦争なのよね。

 

『プンスカプンプン!』

 

 僕の神機も怒っていた。

 そーですよね、戦わなきゃ駄目ですよね……。

 ウコンバサラの側面へと駆ける。こっちに振り返った瞬間、ヴァルキュリアちゃんで渾身の一撃を叩き込んでやった。

 

「ギュガァ!!!??」

 

 おお、効いた効いた。

 畳み掛けるなら今かな?

 僕とロミオ先輩とナナでウコンバサラをタコ殴りする。切ない悲鳴をあげた後、ウコンバサラはピクリとも動かなくなった。

 

「なんか、少し可哀想だったな……」

「そーですね……」

 

 後味が良いんだか、悪いんだか。とにかく、よく分からない任務だった。

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

 フライアに帰還後、僕らは今回の任務の反省会を開いた。僕としては、生きて帰れただけで十分だと思うんだけど。

 

「レイジはさぁー、もっと積極的に前線に出ようぜ? 折角の強い神機も、宝の持ち腐れじゃねえか」

「いえいえ、僕はいつも頑張ってます」

 

 そうそう、僕はいつも頑張っている。前線に出るかは別として。

 決して、痛い思いをしたくないから前線に出たくない訳ではないよ? 違うからね?

 

「それにナナはさー、アラガミの動きもよく見ずに突っ込み過ぎなんだよ」

「えー? ロミオ先輩が怖がってるだけじゃないのー?」

 

 上目遣いでロミオ先輩に迫るナナ。これがビッチ…… いや、天然だなこれは。

 

「ちょっ、近いって!」

 

 ドカリ、とロミオ先輩がぶつかってきた。

 ロミオ先輩と一緒に倒れ込む。

 固い地面に倒れるなんて痛いだろうなー、と思っていたら予想外の柔らかい心地がした。

 この感覚、覚えがある! 近所にいた女の子のマコちゃんのおっぱいを触った時だ!! 故意で触った訳じゃないけど、このせいで失恋したんだっけ!

 女性の誰かとぶつかったのか!? ぶっ殺されると思いつつ期待して、顔を確認しようとしたらそこには―――!

 

「貴様、何をして――― おうふっ///」

「」

 

 このフライアを統括しているグレム局長がいた。僕が掴んでいたのは、グレム局長の胸だった。ちなみに、グレム局長はおっさんだ。

 鏡を見なくても分かる。きっと、僕の表情は死んでいるだろう。

 ああ、僕はきっと呪われているんだな。

 手頃な壁を見つけて、僕は頭を打ち付けた。

 

「忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ」ガンガンガンガン

 

 血が出てるけど気にしない。さっきの悲劇を忘れさせてくれるなら。

 ポタポタと鮮血が飛び散る。痛いとか、そういう感覚はなかった。ただ、綺麗な景色だなという他人事みたいな感想が浮かんだ。

 

「レイジが壊れたー!?」

「おぉおおおおぉぉお!! ユノさん、ユノさんだぁー!!!」

「先輩それどころじゃないって!?」

 

 ワーワーギャーギャー声が聞こえる。

 でも、僕には別世界の音に思えた。

 

「……見苦しい場面をお見せしました」

「い、いえ。そんな事……」

 

 ドン引きしてるね、ユノさんとやら。あと、隣にいた赤髪の人もドン引きしてるね。

 そーだよね! おっさんを喘がせた少年を見るなんてドン引きだよね!! 僕だって見たらドン引きするよ!!

 アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!

 

「貴様、今月は減給だ」

「」

 

 鬼のような形相でグレム局長に睨まれた。

 もう家に帰りたいと、切実にそう思った。

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 ソファーに座ってボーッとする。もう嫌だ。神機は変だし、局長の胸は揉むし、減給されるし、変なジュースを二本も飲むし、睡眠時間は減るし、隊長は人外だし、ゴッドイーターになってから良い事がまったくない。

 ブルーになってる僕に、我が世の春が来たと言わんばかりに浮かれているロミオ先輩が僕に話し掛けてきた。

 

「今から局長室に行かねえ? もう一度ユノさんに会えるんだぜ!」

「え、ユノってあの?」

 

 あの歌姫の!? サテライト拠点で何回か見たような、そうでないよな。

 

「そうそう! あの歌姫の!! というか、お前もさっき会っただろ?」

「えっ、そうなんですか!?」

「ああ! それにしても、柔らかかったな~ユノさん!!」

 

 ユノさんが柔らかかった。その一言を聞いた瞬間、僕の心に大きな亀裂が走った。

 え? 僕はおっさんの胸を揉んだ挙げ句、今月は減給されたのに?

 え? どうしてロミオ先輩は美少女とゴッツンコなんて役得をしているの?

 え? え? え?

 心の底から、今まで味わった事のないドス黒い感謝が溢れだしてきた。

 ―――ああ、駄目だ。この感情は、抑えられそうにない。

 

「―――逐してやる」

「え?」

「駆逐してやるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」

 

 




 サブタイトル詐欺という自覚はあります。
 そして、ロミオ先輩が先輩やってるという。主人公がアレだから仕方ないですね。

現段階レイジの神機スペック
⑤怒る。プンスカプンプン!
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