スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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四十九品目 後輩だけど、ベテランで

 フライアのロビーに行くと、ナナとロミオ先輩が見馴れない人と話していた。誰だあの人?

 

「ちわっす、ロミオ先輩」

「おお、レイジ! コイツはギルっていうんだけど、ブラッドに入る新しい隊員みたいだぜ!」

 

 マジでか。これって、僕にも後輩ができたって事だよな。そうと決まれば、早速先輩としての威厳を見せて―――

 

「……」ドドドドドドド

 

 いや、無理だわ。

 なんか知らんけど、百戦錬磨のオーラがバリバリ出てるもん。

 

「そんで、元第一世代の神機使いらしくてな! えーっと、どの支部なんだっけ?」

「テメェには関係ねえ……」

「そうツンケンしないでさー! どこの支部から来たの? 教えろよー」

 

 あちゃー、元第一世代の神機使いって超ベテランじゃないか。道理で、神機使いに成り立てホヤホヤの僕とは雰囲気が違う訳だ。

 というか、ロミオ先輩。ギルさんの機嫌がみるみる悪くなっている気がするんですけど? 質問するのはその辺にして―――

 

「いって!!」

「はぐぅ!?」

 

 案の定、ロミオ先輩が殴られた。そんで、僕の方に倒れてきた。ロミオ先輩が殴れるのは良いとして、僕まで巻き込まれるのは納得いかない!

 

「状況を説明してほしいな」

 

 物音に気づいたのか、下の階からジュリウスさんがやって来た。助けて隊長、ギル隊員が謀反です!

 

「コイツが急に殴りかかってきたんだよ! 前にいた場所を聞いただけなのにさ!!」

「ロ、ロミオ先輩…… 重いっす」

「あ、悪い」

 

 絶賛、ロミオ先輩の下敷き中だ。

 慌てて退いてくれたけど、もっと早くそうしてほしかった。

 

「俺はギルバート・マクレイン。ギルでいい。その小僧がムカついたから殴った。除隊でも懲罰でもいいから、勝手にしてくれ」

 

 ギルさんはそう言い残し、そのまま何処かへ去っていってしまった。

 それにしても、恐っ。

 

「アイツ、短気すぎるよ! そりゃあ、俺も少ししつこく聞きすぎたかもだけどさ……」

「ロミオ先輩、ついにあのジュースを有効活用する時が来ましたよ!」

「ん? ………おお、そういう事か!!」

 

 ロミオ先輩が僕の目論見に気づいた。そうそう、あのジュースはこの為にあったんですよ。

 僕にまで被害を及ぼした責任は、きっちりと取ってもらおう。

 

「そうと決まれば、僕が例のジュースを渡してきます。ロミオ先輩だと怪しまれるし」

「レイジ…… 俺は、良い後輩を持ったよ!!」

「「HAHAHAHA!!!」」

 

 ロミオ先輩と握手して笑いあう。こういうノリは嫌いじゃないぜ、先輩!

 ジュリウスさんとナナが呆れた目を向けてくるけど、気にしないでおこう。

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 ギルさんを探し回ること数分。庭園でそれらしき人影を見た、という情報をフレイア職員から聞き出した。

 庭園に足を運ぶと、庭園の東屋に腰を掛けているギルさんの姿があった。

 

「ん? ああ、お前は……」

「無動レイジっす。あ、お近づきの印にどうぞ」

「おっ、悪いな」

 

 ギルさんに例のジュースを渡す。

 ククク、このジュースは極甘ジュースだ。

 地獄の甘さを味わうがいい……!

 

「すまなかったな、レイジ。お前、ロミオに巻き込まれていたろ?」

 

 どういう訳か、先に謝られた。あまりの予想外の事態に、僕は一瞬だけ固まった。

 ……あり? もしかして、意外と良い人!?

 えっ、どうしよう!?もう極甘ジュース渡しちゃったぞ!?

 

「どうした、何かあったのか?」

「いえいえ何でも!!」

 

 ヤバいヤバい。取り合えず、ポーカーフェイスを保たないと。

 ここで変な様子を見せると、極甘ジュースをわざと渡したと疑われてしまう。ぶっちゃけ、ギルさんと喧嘩になったら勝てる気がしない。

 

「改めて自己紹介をさせてくれ。俺はギルバート・マクレイン。グラスコー支部で5年間神機使いをやっていた。槍をそこそこ使う。よろしくな」

「よろしくお願いします」

 

 ああ~…… どうしよう。僕の良心がキリキリと悲鳴をあげている。

 こんなんなら極甘ジュースなんて渡さなきゃよかった。でも、意外と優しいし、謝れば許してくれるかな?

 

「それで、お前は何をしに来たんだ?」

「えっ!? あ~…… ロミオ先輩がごめんって伝えてくれって」

「そうか……。まあ、俺からも謝っておくか」

 

 適当な事を言っちゃったけど、まあいいか!

 暫く話し込んだ後、僕は用事があると言って庭園を出ていった。後ろから何かを噴き出す音がしたけど、僕は何も聞いてない事にした。

 後でちゃんとしたジュースでも奢ろう、と心に固く誓った。

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 今日はコンゴウの討伐任務だ。鎮魂の廃寺って場所に出没したんだけど、これまた寒い場所なんだよな鎮魂の廃寺は。

 暑いのも嫌いだけど、寒いのも嫌いだ。さっさもフライアに戻って布団にくるまりたい。今日もさっさと終わらせよう。

 

「行くぞ、レイジ」

「うっす、ギルさん」

 

 任務の同行者はギルさんだ。他の人たちは別の場所でアラガミを刈っている。

 ちなみに、極甘ジュースを渡した罰はチョップ一発で許してくれた。

 地味に痛かったけど、ロミオ先輩がキャラメルクラッチくらってたから何も言えなかった。あれはマジで痛そうだった……。

 

「それにしても、お前の神機も変わってるな。まあ、スイーツイーター程じゃないが」

「そうっすか? よかったね、ヴァルキュリアちゃん」

『エヘヘ~///』

「前言撤回だ。トップクラスでイカれてやがる」

 

 だよね。初見だったらまだマシに見えるけど、その性能(?)で一気に評価が変わるんだよね。というか、何気に会話してないかった僕?

 

「一体どうなっているんだ? 周りの状況に合わせて反応を変えるなんて……。まさか、人工知能が搭載されているのか? いや、そんな無駄な機能を付ける意味もないし、それだけの技術が確信しているとも考えにくい―――」

「あの、そんな真剣に考察されても困ります」

 

 あんまり考えない方が良い気がする。

 なんというか、ブラックボックス…… そう、神機を造る上でのブラックボックスな気がする。これ以上足を踏み入れると後悔しそうだ。

 改めて自分の神機に戦慄していると、ヴァルキュリアちゃんから泣き声が聞こえた。

 

『ヒッグ…… エッグ……』

「あーあ、ギルさんがイカれてるなんて言ったから。謝った方がいいっすよ」

「……すまん」

 

 釈然としないといった様子で頭を下げるギルさん。うん、その気持ちはよく分かる。

 

『アラガミ、接近します。臨戦態勢に入ってください』

 

 オペレーターのフランからの指示が聞こえた。

 彼女、あれで僕と同じ16歳なんだってね。もっと大人の雰囲気が出てるから、かなりの年上だと思っていたよ。

 ちなみに、そう話したら「お、大人の雰囲気なんてそんな……」って照れていた。

 

「っと、そろそろか」

 

 ギルさんが神機を構える。すると、向こうの屋根の上からコンゴウが降りてきた。

 コンゴウの聴覚はアラガミの中でもトップクラスに鋭い。僅かな物音でも、下手すればこっちの存在に気付かれる。

 足音を最小限に殺し、ゆっくりとコンゴウに近づいた。この不意打ち一発で死んでくれないか――― あ、ヤバい。くしゃみでそう。

 

「―――くしゅん!」

「!!?」

 

 くしゃみの音に反応して、コンゴウがこっちを向いてしまった。

 

「ギィガァァァァ!!!」

 

 コンゴウの咆哮が廃れた寺院に響く。やっちまった……。

 

「何やってんだバカ!」

『プンスカプンプン!!』

 

 ギルさんにもヴァルキュリアちゃんにも怒られた。いや、今回は失態すぎた。マジで反省しています。

 

「気づかれちまったもんは仕方ねえ。基本的に俺が前線、レイジは状況に応じて戦え」

「はいっ!」

「あと、サボり癖はロミオから聞いた。真面目にやれよ」

「…………………はい」

 

 僕の急速がどんどん消えていく。

 ロミオ先輩め、余計な事を!

 

『攻撃、来ます! …………フフッ』

「ねえフラン、ちょっと笑ってない?」

 

 いやいや、くしゃみで笑ってる場合じゃないんだよこっちは?

 くしゃみの件は一先ず忘れ、神機を構える。

 コンゴウが空気弾を放った。僕は真横にステップして避けたけど、ギルさんはジャンプしてそれを回避した。すげえ、やっぱり5年のキャリアは違うのね。

 このまま銃形態にして様子見…… と言いたいところだけど、ギルさんに釘を刺されたばっかりだし接近して叩きますか。それに、今日の任務は早く終わらせたいし。

 地面を蹴り、コンゴウへと接近した。ギルさんが素早く動いてコンゴウを錯乱しているし、今がチャンスかな?

 後ろへと回り込み、間合いへと踏み込んだ。

 後ろから脳天かち割って終いだ!

 

「ギュアァ!!」

「ッ!!?? レイジ、避けろ!!」

 

 僕が後ろにいると分かっていたのか、コンゴウは裏拳の要領で拳を振るった。一瞬だけ目が合って分かったが、微かに目がハートになっていた。

 こいつ、ムッツリかよ! さては、僕の神機をずっと見てたな!!

 裏拳がすぐそこまで迫る。このままじゃ直撃する! 多分、メチャクチャ痛い!! 嫌だ、痛いのは嫌だ!!

 その気持ちに反応してか、無意識に僕の体が動いてくれた。

 

「どっせい!!」

 

 体を無理矢理後ろに倒す。

 コンゴウの裏拳は虚空を切った。まさか外すとは思っていなかったのか、コンゴウはそのまま姿勢を崩した。

 反撃といきたいけど、無理な体勢で避けたのが祟って地面に倒れてしまった。でも、この隙をギルさんが見逃す訳がない。

 一突きの槍が、コンゴウの顔面を貫いた。ギルさんは勢いよく槍を引き抜く。ブシャリ、と血が一気に噴き出したが、コンゴウは怯んだだけだった。まだ生きてるとかしぶとすぎ!

 咄嗟に銃形態に変型させて、コンゴウに何発も撃ち込む。距離が近いお陰で、全ての銃弾がコンゴウに叩き込まれた。

 更に血を噴き出しながら、コンゴウは地面に臥した。そして、ピクリとも動かなくなった。

 

『アラガミ、沈黙しました。レイジさん、風邪を引かないように注意してくださいね?』

「はーい……」

 

 今日も真面目に働いたっと。いや、真面目に働き過ぎたな。次はもう少し後衛で戦ってても良いかもしれない。

 人知れず今日の任務の反省をしてたら、ギルさんが手を差し伸べてくれた。

 

「レイジ、よく避けたな。立てるか?」

「あっ、ありがとうございます」

 

 ギルさんの手を掴む。5年も実践経験がある仲間だと便りになるな。

 

「キレイなスウェーイングだったな。ボクシングでもしていたのか?」

「あー、あれですか。数年前、ある映画に憧れて練習したんですよ。ほら、銃弾避けるやつ」

「……ハハッ! 神機も大概だが、お前も相当変わってるな」

「そうっすか?」

 

 雪の寒さに耐えながらヘリを待つ。

 なんやかんやで、ギルさんとも仲良くできそうな気がした。

 

 




 どんどん情けなくなる主人公。怠け者の宿命ですかね? というか、ヒロインどうしよう。ヴァルキュリアちゃんでいいですかね?

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