スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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 とあるとスイーツイーター、いい感じで更新できてる気がする、暇な時間に感謝です。


五十品目 極東支部の、神機使い

 

 神機使いとしての職務にも慣れてきた最近、このフライアに極東支部の神機使いがやって来るという知らせが届いた。

 極東支部といえば、アラガミの動物園と言われる程の激戦区だ。さぞかしワーカーホリックな神機使いが集まっているのだろう。

 そんな支部から来た人なら、僕の任務も肩代わりしてくれるかもしれない。そして、僕の休暇も増えるかもしれない!

 そう期待して数日後、ギルさんとの任務を終えてフライアに帰ってきたら、フリフリの格好をした男の人がいた。

 多分、この人が極東支部の神機使いだ。だからギルさん、不審者を見るような目は止めてあげてください。

 

「ブラットというのは、君たちか? フフ、緊張するのも無理はない。だが安心したまえ! この僕が来たからには、心配は完全に無用だ!」

 

 ええ~…… ぶっちぎりの変人じゃないですか。

 

「おっと、失礼した。僕はエミール。栄えある、極東支部第一部隊所属! エミール・フォン・シュトラスブルクだ!」

 

 ギルさんが冷めた視線を向ける。まるで、ラケル博士が僕と話す時の目みたいだ。

 

「そうか、よろしくな」

 

 素っ気ね~……。まあ、ギルさんってこういうノリ嫌いそうだし。

 それにしても、これって絶好の機会なんじゃないか? 目には目を、電波には電波を。多分、上手くやれば人間関係を拗れさせずに任務を押し付けられる!

 

「僕の名前は無動レイジです。そういえば、なんか最近風邪っぽいんですよね……」

「なんと!? 大丈夫なのか?」

「今のところは大丈夫です。ああ、この忌々しい風邪さえ治れば、エミールさんに僕の勇姿を見せられるのに!! 数日休めば治りそうな気がするのに!! 誰か僕の代わりに任務に行ってくれる勇者はいないかなぁ!?」

 

 身振り手振りを大袈裟にして、演劇に出てくる悲劇のヒロインのように頭を抱える。ギルさんが更に冷たい目をしてるけど気にしない!

 さあ、のってこい!! 哀れな僕に、休暇を与えておくれ!!

 

「……分かった! 僕が行こう!!」

「なっ!? しかし、エミールさんに迷惑をかける訳には……!!」

 

 にやけそうになるのを全力で堪える。演技にボロがでないよう、ギリギリと歯を食い縛った。

 よっしゃあ! チョロすぎるぜ! これ、いつぶりの休暇だ!?

 

「迷惑なものか! 同じ騎士が危機に陥っているのなら、それを助けずにして何が騎士だ! 心配せずに、私に任せてくれ!」

「……ありがとう! エミールさんのような人がフライアに来てくれれば、百人力だ!!」

 

 エミールさんの手を取り、心の底から感謝を述べる。

 

「それ程でもあるな! ハッハッハッハッ!!!」

 

 そう言って、エミールさんは任務の受注へと向かった。いやー、ありがたや。僕にとっての騎士だよエミールさん。

 さてさて、部屋に帰ってトランプタワーの続きでもやりますかね! 目指せ20階!!

 

「部屋に戻って養生しよっと!」

「んな訳ねえだろ。ほら、行くぞ」

 

 部屋に戻ろうとした矢先、ギルさんが僕の襟を掴んだ。なんか、嫌な予感が……。

 

「え? 行くって何処に?」

「エミールのとこだ。アイツ一人に任せられねえ」

 

 ビキリ、と一瞬だけ固まった。

 折角の休暇を棒に振ってたまるか!!

 

「いやいや、大丈夫ですよ! だって、ワーカーホリックが集まる極東支部の神機使いなんですよ? どうせ並の使い手じゃありませんって!」

「ごちゃごちゃ言ってねえで行くぞ」

 

 ギルさんに引き摺られる形で任務へと向かった。必死に抵抗したけど、ギルさんの腕力に敵う筈もなかった。

 

「うわぁぁぁぁ! 横暴だぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 僕にできたのは、ただ叫ぶだけだった。

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 結局、エミールさんに付いていく形で任務を受注するはめになった。

 鉄塔の森っていう工場跡地で、小型のアラガミとウコンバサラをぶっ殺せという任務だ。

 5年も経験があるギルさんと、極東支部第一部隊の神機使いがいるのに、僕みたいなぺーぺーが一緒に加わって意味があるんですかね?

 トランプタワー、作りたかったなぁ……。こうなったら、接着剤でも使って速攻で作ろうか。

 暫くすると、先行したエミールさんの姿が見えてきた。どうやら、エミールさんの神機はハンマーらしい。

 

「レイジよ、本当に風邪は大丈夫なのか?」

 

 エミールさんは僕の風邪を心配してくれた。

 正直に言っちゃえば、仮病だ。風邪になりたくてもなれない健康体だ。

 ここまで心配されると本当に申し訳なくなる。

 

「ああ~…… エミールさんから騎士道パワーを貰ったら大丈夫、みたいな」

「そうかそうか! 流石は騎士道パワーだ!!」

 

 ひとしきり笑った後、エミールさんが僕の手に持つ神機に気づいた。流石はヴァルキュリアちゃん、人間の雄も釘付けだね!

 

「フム、それが君の神機か……」

「そうですよ。ほら、挨拶は?」

『ヨロシネ!』

 

 ヴァルキュリアちゃんはとても元気に挨拶した。他にも喋るんじゃないかと検証した結果、挨拶もできると判明できていてね。挨拶できるんなら、しっかり挨拶させないと。

 そう思ってたら、ギルさんに軽く頭をどつかれた。いや、気持ちは分かるけど。

 

「神機に順応しすぎだ! お前は母親か!」

「だって四六時中これと一緒なんですよ!? そりゃあ、感覚も麻痺しますって!!」

 

 事有るごとに反応を返してくるんだもん! 3日くらいこの神機を使ってたら、誰だって感覚くらい麻痺はする! 母親になった気分になる!

 ふと、エミールさんに目を向ける。どういう訳か、少し微妙な表情だった。なんだ、新しい反応だぞ……?

 

「う~む。少しインパクトに欠けるというか、なんと言うか……。まあ、極東支部にいればな」

「「!!??」」

 

 衝撃を受ける。いやいや、これでインパクトに欠けてたら、エミールさんにとってのインパクトって何なんだよ!

 

「ギルさん! マジで極東支部ってどんな所なんですか!?」

「推測に過ぎないが、スイーツイーターのせいで耐性でもできてるんじゃねえか……?」

「ぱねぇ! スイーツイーターぱねぇ!!」

 

 一度で良いから、スイーツイーターに会ってみたい。イカれた神機同盟を作って、サカキ博士に抗議したいものだ。

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 二手に別れて、ウコンバサラと小型アラガミたちを分断する作戦を採った。

 僕とギルさんが小型のアラガミで、エミールさんがウコンバサラの相手だ。

 エミールさんが言うには、自ら困難に立ち向かわずして何が騎士だとか何とか。ギルさんは渋ってたけど、僕は大賛成だった。そのおかげか、ギルさんが折れてくれこの作戦に至る。

 

「でも、どっちにしろ大変なんだよねっと!」

 

 飛び掛かってきたザイゴートをヴァルキュリアちゃんで切り伏せた。ブチャリ、と悲惨な音をたてて、ザイゴートは地に落ちた。

 やれやれ、今回も僕にしかアラガミが襲ってこなかったよ。

 ヴァルキュリアちゃんに魅了されるのって、小型アラガミに多い傾向なんだよね。知性があまり無いから、欲望の制御がきないのかな?

 というか、ザイゴートって女性型なんじゃないの? ほら、女の人の体が付いてるし。なんでヴァルキュリアちゃんに魅了されてんだよ。

 ……まさかあれか、レズなのか? アラガミ同士のレズって誰得?

 

「あらかた片付いたか」

「ほとんど僕に襲い掛かってきましたけどね」

 

 これで僕らのノルマは終わりだ。さてさて、エミールさんは上手くやれてるかな?

 

「うわぁぁぁぁ!!??」

 

 エミールさんがウコンバサラにぶっ飛ばされていた。何やかんや言いながら立ち向かうけど、その度に吹き飛ばされる。駄目じゃん、全然倒せていないじゃん!!

 

「先走りやがって、あの馬鹿……。おい、いくぞ」

「まあ、仕方ないっすね」

 

 僕とギルさんは神機を構えた。

 一応仲間のピンチなのだから、面倒だとかは言ってられない。

 

「こいつは僕に任せてくれ! 僕の騎士道を君達に示してみせる!!」

 

 エミールさんが大きく声を張り上げた。思わず、僕らは動きを止めた。

 そんで、またエミールさんが吹き飛ばされた。

 

「ギルさん、さっさと終わらせて帰りましょう」

「そうだな」

 

 うん、あのままじゃ死んじゃうしね。

 正直に言えば、さっさと終わらせてトランプタワーを建設したい。

 

「ゴッドイーターの戦いは、ただの戦いではない……」

 

 ピタリ、と足が止まった。エミールさんに兎や角言われた訳じゃない。それでも、僕らは足を止めてしまった。

 

「この絶望の世に於いて、神機使いは、人々の希望の寄り代だ! 正義が勝つから、民は明日を信じ、正義が負けぬから皆、前を向いて生きる! 故に僕は、騎士は、絶対に倒れる訳にはいかないのだ!!」

 

 その言葉には、どれだけの覚悟があるのか。

 冗談抜きに、今のエミールさんの姿は本物の騎士のように見えた。

 

「げっ、こっち気づいた!」

 

 僕の神機に気づいたウコンバラサが、目をハートにして飛び掛かろうとしていた。空気読めよバカワニ! エミールさんが良いこと言ってるだろうが!!

 

「騎士の戦いに背を向けるなッ!!」

 

 エミールさんが地面を蹴る。

 宙を舞ったエミールさんは、重力と筋力を乗せながらハンマーをウコンバラサの頭部に振り下ろした。

 鈍い音が響き渡る。ウコンバラサが動きを止めた後、糸が切れた操り人形のように地面へと倒れこんだ。

 エミールさんはそれを、茫然としながら見詰めていた。

 

「……や、やった! 騎士道精神の勝利だぁ!!」

 

 大きく手を上げながら、雄叫びをあげるエミールさん。その姿は誰よりも騎士らしく、正義の神機使いらしかった。その姿は本当に―――

 

「僕には理解できない生き方だよ」

 

 急に、エミールさんが眩しく見えた。

 誰かの為に命を懸けるのは理解できる。だけど、顔も名前も知らない誰かの為に、自分の命を捧げる生き方なんて僕にはできない。

 やはり僕は重度の怠け者なのだろうか?

 その答えは、僕には分からなかった。

 

 





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⑦挨拶する

 シリアスに見せかけて、レイジ君はただただ面倒くさがりなだけ。
 そういえば、レイジ君の容姿に触れていませんでしたね。灰色がかった髪に眠そうな目の少年です。
 まあ、僕の中ではですが。
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