今日は黎明の亡都で小型のアラガミを討伐する任務だ。エミールさんに加えて、ブラッドの各員まで任務に同行している。
この面子なら楽勝なので、僕はできるだけ目立たないようにアラガミと激闘( )を繰り広げた。強敵だったぞオウガテイル。
さてさて、皆もアラガミを討伐し終わった頃だろう。
「集合場所に戻ろうか、アテナイちゃん」
『ダメダメ!』
アテナイちゃんが首を横に振る。まだ僕に働けってか。
このように、アテナイちゃんは僕に対して若干厳しい態度を取る。だけど、それは愛がある故の厳しさと解釈している。
「あのね、仕事をしようにも他にアラガミは―――」
「うわぁぁぁぁぁ!!??」
僕の言葉を遮るようにエミールさんの叫び声が響いた。なんか、似たような経験が前にもあるんですけど。
叫び声が聞こえた方に目を向けると、エミールさんが必死な形相で走っていた。
またアラガミか…… って、あれ?
エミールさんって、そう簡単に敵前逃亡しないよな。なら、なんで逃げているんだ?
「レイジ! まずいんだ、神機が動かなくなってしまった!!」
僕に気づいたエミールさんがそう叫んだ。
神機が動かない? それって、ブラッド以外の神機を動かなくさせる感応種って奴なんじゃ―――
「グォォォォォ!!!!」
僕は目を疑った。曲がり角から出て来たのは、他とは桁違いの図体を持つ狼のようなアラガミだった。
え、ヤバくね? 勝てる気が微塵もしないんですけど。
「ピンチだ! まさにピンチだこ――― へぶッ!!??」
エミールさんが巨大な右脚で吹き飛ばされた。
一瞬ヒヤッとしたが、どうやら気を失っているだけのようだ。だけど、この状況を打破しないと結局アイツに殺られてしまう!
狼のアラガミがゆっくりと足を進める。まるで、いつでもお前を殺せると言わんばかりの足取りだ。
逃げるか? うん、逃げよう。アレに立ち向かうなんて馬鹿らしすぎる。
問題は、どうやって時間を稼ぐかだ。エミールさんを担いで逃げるとなると、絶対に追いつかれる。
「フラン、なんか強そうなアラガミと遭遇したから救援要請を頼む!!」
『分かりました! どうか、御無事で……!!』
アテナイちゃんを構え、目の前のアラガミに集中する。
やっぱり、ジュリウスさん達の救援を待つしかない。その間は、死ぬ気で逃げ回る!
「グォァァァ!!」
アラガミが大きく両前足を上げる。このままじゃ叩き潰されると予感した僕は、全力で後方へと跳んだ。
バゴン、と鈍い音が響く。地面には小さなクレーターができていた。
直撃しなくてよかったと、一先ず安堵する。しかし、その直後に悪寒が走った。
目の前が紅く輝く。それと同時に、目を開けられないほどの熱風が襲って来た。
怯んだ隙を狙ったのだろう。アラガミの尾が僕の脇腹へと叩き込まれた。
肺の空気が強制的に吐き出る。あまりの衝撃に、僕は地面まで吹き飛ばされた。
体が痛い。当たり前だ。受け身を取る余裕さえなかったのだから。
フラフラの体で立ち上がる。そして、神機をヴァルキュリアちゃんに変型させた。
逃げ回る体力なんて残っていない。だから、ここでコイツを殺すしかない!!
死ねない……。死にたくない!! こんな死に方なんて真っ平御免だ!!
「あああぁぁぁぁぁ!!!!」
僅かに残った体力を振り絞り、ヴァルキュリアちゃんを振り上げる。その瞬間、体の奥底に眠る何かが目覚めたような感覚がした。
ヴァルキュリアちゃんが紅く輝く。この光は前にも見た気がする。ジュリウスさんがブラッドアーツを使おうとした時にも―――
「ガァァァ!!??」
アラガミを斬り飛ばした。僕の何処にそんな力があったのだろうか。
やった…… のか?
あっ、僕のバカやろ! これって死んでないフラグじゃん!!
「ヴヴヴゥゥ……」
ノソリ、とアラガミが立ち上がる。僕の渾身の一撃は、どうやら左目を潰したのみだったようだ。
ああ、もう死んだな。これだからゴッドイーターっていう職業は嫌なんだよ。
せめて人思いに殺してくれと願いながら、ゆっくりと目を瞑った。
―――ドドドドドド!!!!
銃声が響いた。
目を開くと、ブラッドの皆が僕を守るように佇んでいた。
銃撃に怯んだアラガミは、ビルを伝ってそのまま逃げて行った。
た、助かった…… のか? あまりにも感極まって、ちょっと泣きそうになった。
「よく頑張ったな。大した奴だ」
倒れそうになっている体を、ジュリウスさんが支えてくれた。
「ジュリウスさぁぁぁぁん!!!」
僕の涙腺が決壊した。
暫くして、ギルさん達も僕を心配して集まってくれた。
「大丈夫か、レイジ!」
「ロ゛ミ゛オ゛ざぁぁぁぁん!!!」
「ちょっ、俺の服に色々つけるなよ!?」
「あはは! レイジは泣き虫だねぇ〜」
「ったく、無駄な心配かけさせやがって……」
仲間って良いもんだなと、今日は改めて思い知った。
短めでも別にいいや!