スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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 短めでももう別にいいやと開き直りました。これからはガンガン進んで行こうかと思うので宜しくお願いします。


五十二品目 新入りの、混乱

 僕を襲ったアラガミは、マルドゥークという感応種のアラガミらしい。ガルムというアラガミの上位互換にあたるとか。

 今は足取りを掴めていないけど、近いうちに討伐の任務が来るかもしれない。正直、このまま大人しくしているのを願うばかりだ。

 そういえば、僕にも血の力が覚醒してしまった。なんでも、喚起というよく分からない能力らしい。ぶっちゃけ、何の役に立つのか甚だ疑問なんですけど。

 それに呼応して、ブラッドアーツも使えるようになった。刀身…… この場合はヴァルキュリアちゃんの威力が格段に上昇するだとか。

 僕のやる気とは裏腹に、どんどんと新たな力に目覚めていく。なんで僕が最初なんだか……。

 僕の戦果が少し上がった以外に目立った出来事はなく、そのまま月日が過ぎて行った。

 そして、今日。ジュリウスさんから、新たにブラッドの隊員が増えるという連絡を受けた。やったね、仕事が減るよ!!

 どうやら、顔見せはラケル博士の研究室でするらしい。皆でラケル博士の研究室へと向かい、新たに増える隊員を待った。

 

「シエル•アランソン、入ります」

 

 扉が開いた。そこには、銀髪の髪をした女の人がいた。名前はシエルというらしい。

 そして、彼女の自己紹介が始まった。なんでも、ジュリウスさん達と同じくマグノリア•コンパスで育ったらしい。そこでは、沢山の戦闘技術を詰め込まれたとか何とか。僕がそのマグノリア•コンパスにいたら3日で家出してるね。

 それにしても、なんか取っ付きにくい雰囲気だな。ロミオ先輩みたいにフランクな人なら良かったけど……。

 まあ、ブラッドに華やかさが増えたから良しとしよう。

 

「これからブラッドは戦術面における連携を重視していく。その命令系統を一本化するために、副隊長を任命する」

 

 副隊長…… ねぇ。僕にはあまり関係なさそうな話だ。

 ジュリウスさんが前に出てきた。僕の方に向かってるけど、副隊長に指名するのは隣にいるギルさんだよね!

 さてさて、今日はダブルダッチの特訓でもしますか。

 

「副隊長はお前だ、レイジ」

 

 ………………ヱゑ?

 一瞬だけフリーズしたが、即座に頭の中で反論の台詞を組み立てる。副隊長なんて辛そうな中間管理職、絶対になってやるものか!!

 

「いやいやいや、あり得ないでしょ!! キャリアも年齢も上のギルさんがいるし、いざとなればロミオ先輩やナナだって良いじゃないですか! どうして僕になっちゃうの!?」

「そうですよ。貴方の愚行はブラッドを瓦解させかねません」

 

 なんか心を抉ってくるけど、今だけは有難い!

 

「これまでの経緯と、血の力に覚醒した順当で言えば適任だと思うが?」

「私も賛成〜! 宜しくね、副隊長!!」

「まっ、別に良いんじゃねえか? ロミオよかマシだ」

「お前の方がもっとないよ!」

「あっ?」

 

 退路は塞がれた。どうやっても、これは断れない……。

 あれだな、新しく胃薬を注文しておこう。なんか、胃がキリキリと悲鳴を上げてる気がする。

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 僕とシエル以外、ラケル博士の研究室には誰もいない。皆が気を利かせたとかそんなんじゃなく、ブラッドについてのコンセンサスを重ねなきゃいけないからだ。

 あ〜あ、こんなんだから副隊長は嫌なんだよ。

 それにしても、なんかシエルが不機嫌そうな顔なんですけど。

 

「あの、どうしたの?」

「いえ、貴方に少し言いたい事が」

 

 まさか、愛の告白…… な訳ないよね。寧ろ、怒られそうな予感さえするんですけど。

 

「いいですか? 立場が上の人間の指示には、多少無理が伴っても速やかに承諾するべきです」

「だけど、僕は副隊長なんて器じゃあ……」

「そんな貴方に、私が特別に組んだトレーニング表を渡します。これなら、すぐに副隊長としての能力が飛躍する筈です」

「え゛」

 

 トレーニング表が書いてあるらしき機械を渡された。そして、ディスプレイを見て目を疑った。

 睡眠時間が5時間。しかも、休憩時間が3分だけ。残りは全て任務か訓練だ。

 ふっざけんな! こんなの、人間のやる事じゃない!! 僕に廃人になれってのか!!

 ―――待てよ、シエルはマグノリア•コンパスでこんな生活を送っていたんだよな。こんな、人間らしさが微塵もない生活を……。

 

「シエルも苦労したんだな……」

「?」

 

 できる限り優しく接しようと、僕は心に固く誓った。

 まあ、こんなトレーニングは全力でボイコットするけどね。

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 僕とシエルにシユウの討伐任務が与えられた。場所は黎明の亡都だ。暑くも寒くないだけ良しとしよう。

 さて、問題なのは僕の神機だ。頭が固いというけ、真面目なシエルが受け入れてくれるかとても不安だ。

 そうこう心配してるうちに、シエルがやって来た。僕の神機を見て少し怪訝な表情を浮かべたけど、予想通りっちゃ予想通りだ。

 

「只今到着しました、レイジさん」

「そう固くならないで。ほら、飴でも食べて」

「いえ、結構です」

 

 さてさて、2人の挨拶も済ませないとね。

 

「シエル、この子がヴァルキュリアちゃんだよ。ほら、挨拶して」

『ヨロシクネ!』

「」

 

 にぱーっと笑うヴァルキュリアちゃんとは対照的に、シエルの表情は固まったままだった。

 だけど、僕は構わずに神機を銃形態にした。

 

「ほら、アテナイちゃんも」

『』ペコリ

「」

 

 相変わらず無愛想だな、アテナイちゃんは。まあ、大した問題には発展しないだろうけど。

 

「え〜っと、え? 神機って、喋る…… え? 座学では、そんな事なんて一回も…… え? え?」

 

 うわっ、超混乱してるよ。

 

「そうですよね。私の幻聴ですよね。神機が喋るなんてバカな事―――」

「あっ!? そんな事言ったら……」

『エッグ…… ヒッグ……!!!』

「あ〜あ、アテナイちゃんが泣いちゃったよ。ほら、謝って」

「私は何も聞こえてません見ていません」

 

 シエルの頭から煙が出ていたので、アテナイちゃんを必死で宥めてシユウの捜索を始めた。

 さてさて、シエルは特別な訓練を積んだらしいから、僕の出る幕はあまりなさそうだね! 今日も元気にサポートに回るとしますか!!

 ふと、シエルが足を止めた。どうやら、シユウを発見したようだ。

 物陰に身を潜めて、ゆっくりと顔を出す。そこには、我が物顔で周囲を徘徊するシユウの姿があった。

 

「それじゃあ、いきますか!」

 

 神機を銃形態にする。

 極力音を殺してシユウの背後に忍び寄り、引き鉄を引いた。

 轟音が鳴り響く。僕の銃弾はシユウの堅い表皮を確実に削り、シエルのレーザーは脆い部位である頭部を的確に撃ち抜いた。

 すっげ〜……。シユウの頭部を狙えるなんて、流石は訓練を詰んでいるだけはある。

 怯みながらもシユウは振り返る。そして、時が止まったかのように固まった。その目は、僕の神機に釘付けになっていた。

 シエルの目が大きく見開く。まあ、初めて見れば驚くよね。アラガミが恋に堕ちる瞬間なんて。

 シユウが若干頬を紅く染めてるのは気持ち悪…… 初々しいぞ!

 

「グオォォォォ!!!!」

 

 シユウが鋼鉄の翼を振るいながら襲い掛かる。僕はそれを避けながら、胴体に着実に銃弾を当てる。

 こうなっちゃったら仕方が無い。最大限までシユウを惹きつける囮役として、シエルのサポートを―――

 

「ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえない」

 

 うわ言のように何度も何度も呟くシエル。

 どうやら、僕が殺らなきゃダメそうだ。まさか、シエルと任務を組む度にこんな目に遭うのか?

 いや、今は任務に集中しよう。

 

「いけるかな?」

 

 誰に言うでもなく呟く。

 シユウの胴体はボロボロになっていた。これなら、ヴァルキュリアちゃんで致命傷を叩き込めそうだ。

 神機を切り換える。シユウが真横に振るった翼を屈んで避けて、矢を引き絞るように体を回した。

 

「よいしょっ!」

 

 確実にトドメを刺したいので、ブラッドアーツを使用した。

 ヴァルキュリちゃんが紅く輝く。

 力が漲るのを感じながら、シユウの胴体にヴァルキュリアちゃんを突き刺した。

 力任せに神機を引き抜く。

 血を噴き出しながら地面へと伏せるシユウ。なんか、その表情が妙に幸せそうに見えた。

 働いた。いや、今日はマジで真面目に働いた。自分へのご褒美に今日はステーキでも頼むか。

 

「ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえない」

 

 うわっ、まだ言ってたのか。

 

 

 




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