スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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 まさかのランキング入り。嬉し過ぎて少しがんばって見たした。本当に色々と励みになります。


五十三品目 怠け者は、ニュータイプ

 正直言って、シエルがブラッドに入ってから任務の効率がだだ下がりする一方だ。

 理由は簡単。シエルが学んできた戦術論と、僕らが実戦で培った戦術論にズレが生じているからだ。

 しかも、シエルは僕らに心を開こうとしない。いや、この言葉には語弊があるな。何と言うか、あくまで業務上の付き合いって感じがするんだよ。

 だから、誰も彼女の認識を改善できないでいる。本来なら僕の役目でもあるんだけど、シエルが完全に僕を副隊長として見てないんだよね。分かりやすく言えば、出来の悪い生徒と生真面目な委員長みたいな関係だ。はてさて、どうしたものやら……。まあ、任務の負担自体は減ってるから別にいいけど。

 そんな僕らの不安とは裏腹に、フライアは着々と極東支部へと近づいている。こんな状態で強力なアラガミと渡り合えるのかな?

 だけど、悪い事ばかりじゃない。神機兵という新たな兵器の開発が完成を迎えようとしている。上手くいけば、その神機兵が無人で制御できるかもしれないんだ。

 これで僕のテンションが上がらない訳がない。初めて聞いた時は、ワクワクが止まらなかったね。こんなに早い段階で命懸けの職業から解放される可能性があるなんて、夢にも思っていなかった。

 そして! 今日はその神機兵の運用テストをするんだ!! 僕達ブラッドは神機兵の標的以外のアラガミを駆逐すればいいらしい。

 いやもう、科学の力って凄いよね本当に。クジョウ博士って人が開発したらしいけど、僕の中ではブッチギリの尊敬する偉人第一位だよ。ラケル博士より優秀だなきっと。

 そういう訳で、僕は意気揚々と出撃ゲートで待機してる。他のメンバーが浮かない表情だけどなんでだろう?

 

「それじゃあ、行って来ます! クジョウ博士、貴方の神機兵は全力で守り抜きますね! なんたって、全人類(主に僕)の希望となるんですから!!」

「任せたよレイジ君! この実験のデータで更に研究を進められるよう、全力を尽くすよ!!」

 

 クジョウ博士と握手を交わす。

 闘志が漲ってくるのを感じる。さてさて、バッタバッタとアラガミをぶっ殺しまくりますか!!

 

「なんだか、いつもより気合が入っているね〜」

「つーかさ、あれだけヤル気になってるレイジに違和感しかないんだけど、俺だけじゃないよな?」

「今だけはお前に同感してやる」

 

 ハッハッハ! 外野が何か言ってるけど、僕には聞こえないなあ!!

 

「レイジのお守を頼んだぞ、シエル」

「了解しました、ジュリウス隊長」

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 蒼氷の峡谷で実験は開始された。ジュリウス隊長、シエル、残った僕らの三手に分かれて神機兵を護衛するという手筈だ。

 いつもより俄然ヤル気に満ちている僕は、いつもより10倍くらい動き回ってアラガミを惹きつけた。そういえば、ヴァルキュリアちゃんが凄く心配そうな顔をしてたな。別に変な物食べた訳じゃないから。

 ヴァルキュリアちゃんに見惚れてるアラガミを殺して殺して殺しまくって、神機兵がサシで戦える状況を作り上げた。相手のアラガミはオウガテイル。初戦にしては妥当だろう。

 

「大丈夫! 神機兵君ならできる!! そんな雑魚アラガミなんて蹴散らしちゃえ!!」

『ガンバ! ガンバ!』

 

 神機兵が持つ巨大な刃が、一切の容赦もなくオウガテイルに振り下ろされる。斬撃をモロにくらったオウガテイルは、今にも倒れそうな程のダメージを受けていた。

 うんうん、僕とヴァルキュリアちゃんが応援してから動きが良くなった気がするぞ!

 

「うっわ…… カオスだな……」

「何だか私も応援したくなっちゃった!」

「あれが俺達の部隊の副隊長なんだよな……。はぁ……」

 

 神機兵が一太刀浴びせたっきり、オウガテイルは地面に伏して動かなくなった。どうやら、決着がついたみたいだ。

 素晴らしいです、クジョウ博士!

貴方の研究は、僕の希望です!!

 神機兵に感銘を受けてる最中、無線が繋がる音がした。さてさて、お待ちかねの帰還命令ですかね!

 

『ブラッド各員に告ぐ、こちらジュリウス! 帰還途中に赤乱雲を確認した!! そちらからも確認できるか!?』

 

 聞こえたのはフランの声ではなく、ジュリウス隊長の声だった。

 いや、それよりも赤乱雲って!? あれが降らす雨に当たったら、不治の病が発症するらしいじゃん!

 や、やばい! どうしよう!! 病気になって仕事を休めるのはいいけど、不治の病は流石の僕でもお断りだ!!

 

「こちらギル…… 赤い雲を確認した」

 

 ギルさんの視線の先には、不気味な赤で染まった雲が広がっていた。

 ……あっ! 僕らはまだいいとして、シエルがいる位置はやばいじゃん!! あの距離じゃ防護服も取りに戻れないじゃん!

 

「ジュリウス隊長! このままだとシエルが……!!」

『分かってる...… フラン! 輸送部隊の状況は!?』

『周囲にアラガミの反応が多数みられます。輸送部隊単体での救出はできませんね.…..』

『ブラッド各員、防護服を着用、及び携行し、シエルの救援に急行してくれ! 戦闘時に防護服が破損する可能性が高い、なるべく交戦は避けるよう、心がけろ!』

 

 ふざけやがって! なんでこう最近はトラブル続きなんだ!! 僕の日頃の行いが悪いってのか!!

 兎に角、モタモタしてられない。早くシエルを助けないと!

 

『シエルはその場で雨をしのぎつつ、救援を―――』

『待て! 勝手な命令を出すな』

 

 無線越しでもシッカリ聞こえた。グレム局長がジュリウス隊長の命令に横入れしやがった。

 

『神機兵が優先だろ。おい、アラガミから神機兵を守り続けろ』

『馬鹿なっ! あの雨の中では戦いようがない!』

『俺がここの最高責任者だ! いいから命令を守れ! 神機兵を守れ!』

 

 フツフツと、かつてない怒りが腹の底からこみ上げて来た。

 ふっざけんな! マジでふっざけんなよ!

 仲間は見捨てられない!

 なにより、人手が減ったら任務の負担が超増えるんだぞ!! あのデブは僕の胃に風穴を開ける気か!!

 だいたい―――

 

「―――前から思ってたけど、あいつだけ横幅がおかしいんだよ!! なんですか、服の下に肩パットでも入れているんですか!? ホント、慈悲も情けも無いなあの肩パットデブ!! あの腹に溜め込んでるのはやっぱり脂肪だけかよ!!」

 

 ビシリ、と空気が固まった。

 ……あれ?

 

「レイジー…… 声に出てたぞ〜」

「」

『無動レイジ…… 貴様、自分が何を言ったか―――』

 

 プツリ、と無線を切る。これ以上何も聞きたくないし。

 

「レイジ…… お前、やっちゃったな」

「何も言わないでください」

 

 だけど、いい機会だ。なんというか、これで色々と吹っ切れた。

 

「レ、レイジ〜? どこに行くの〜?」

 

 神機兵の元へと足を進める。

 

「おい! 何をする気だ、戻ってこい!!」

「いやね、実はと言うと1度だけロボットに乗ってみたかったんだよ」

「てめっ、まさか!」

「レイジッ! いっきま〜す!!」

 

 子供は皆ニュータイプ! だから、多分僕でも大丈夫でしょ!!

 

 

 

 

★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 赤い雨が降りしきる中、僕は神機兵の足をグングンと進める。このペースなら、すぐにでもシエルの場所まで辿り着けそうだ。

 というか、初めてにしてこの操作技術って凄くない? もしかして、僕ってガチのニュータイプなんじゃ……。

 

「―――!」

 

 前方から言いようのないプレッシャーを感じた。えっ、これってピキーンの奴だよね!?

 急いで足を進めると、いた。シエルと神機兵の他に、何故かシユウの姿があった。シエルって不幸の星の元で産まれたの?

 シユウが宙高く飛び上がり、シエルに向かって滑空する。

 ヤバイ、冗談言ってる場合じゃない。神機兵の持つ刃を銃形態に変え、シユウを狙い撃つ。

 銃弾がヒットし、爆発が起きる。シユウはそのまま吹き飛び、地面に伏して動かなくなった。

 うっわ、凄い威力。

 

「レイジさん、どうして貴方が神機兵に……!?」

『ねえシエル、僕ってアムロ•レイの再来かも……』

「………………………………………………………………はい?」

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 シエルを連れてフライアに戻ったら、あれよあれよと言う間に懲罰房に入れられちゃいました。まあ、あれだけ色々やったからな〜。というか、グレム局長は肩パットデブの方で怒ってたし。

 クジョウ博士やブラッドの皆の援護がなかったら、今頃どうなっていたか。因みに、ラケル博士は僕を全力でフライアから追い出そうとしてました。

 にしても、いい! 最高だよ懲罰房!! だって、ここに居れば仕事しないで済むんだもん!! 最初はどうかと思ったけど、住めば都って奴だね!!

 

「レイジさん……」

「ん? おお、シエル」

 

 扉の向こうにシエルの姿があった。なんか、申し訳なさそうな顔をしてるな。

 

「レイジさんは、こんな結果になることが分かっていてあんな無茶を?」

「まあ、仲間を守る為だしね」

 

 もっと言えば、シエルがいなくなったら僕の任務の負担が増えるしね。

 

「神機兵の搭乗だって、入念な事前検査が要るんですよ。最悪命を落とすことだってあるのに。ホント、命令違反だらけですね、君は……」

「ゑヱっ?」

 

 …………僕のあの行為って、実は命懸けだったの?

 

「……? 大丈夫ですか、顔色が悪いですよ」

「ナンデモナイヨ………」

 

 まじかー……。

 命を懸けるって分かってたら、神機兵に乗ったかな?

 うーん…… どうなんだろ? まあ、実際にそんな状況になんないと分からないか。

 

「……ん? どうしたの、シエル」

 

 シエルが何故かモジモジしてた。

 なんだ、トイレか?

 

「あの、私と友達になってくれませんか!?」

 

 突然、シエルが意を決したように頼み込んだ。えっ、どうしたの?

 

「私、最初はレイジさんを上官の命令もロクに聞かないダメダメ副隊長だと思ってました。でも、違いました。レイジさんは、いざとなったら誰かの為に命を懸けれる人だと思い知らされました。だから…… えっと、その……」

 

 僕、最初の評価がえらい低いな。しかも、なんか誤解されちゃってるし。

 まあ、別にいっか。僕もシエルと友達になっちゃいましょう!

 

「シエル…… トモダチ……」

 

 ダミ声の片言でそう呟き、プルプルと震わせながら人差し指をシエルに突き出す。さて、乗ってくれるかな〜?

 

「は、はい! ありがとうございます!!」

 

 シエルは僕の指をガッチリ掴んだ。やっぱり真面目ちゃんだな、シエルは。

 

「あの、良かったらレイちゃんと呼んでいいですか?」

「!!??」

 




 クジョウ博士がヒロインでもいいかもなー(錯乱)。神機兵に関しては、レイジ君の反応はこうだろうなと皆予測できたと思います。あと、レイジの神機は応援もできるようになりました。
 感想などなど、お気軽にどうぞ。
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