スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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五十四品目 ヤンデレは、お断り

 

 庭園に寝っ転がって、何をするでもなく天井を見つめる。それがここ最近の日課だ。こうしているだけで、日頃のストレスが癒されていく。

 ただ、どういう訳か……。

 

「気持ちいいですね、レイジ」

「うん、そうだね……」

 

 何故か隣にシエルが座っている。というか、いつも何をするにもシエルが付いてくる。

 今くらいは1人で何も考えずゆっくりしたいなー、なんて……。

 

「あの、どうしてここにいるの?」

「えっ? あの、友達だから可能な限り一緒に居たくて……。もしかして迷惑でしたか?」

「あ〜…… そんな訳じゃ……」

「ご、ごめんない!! 今すぐ、今すぐ消えますから、お願いだから友達をやめないで……。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

「」

 

 目の光が消えた状態で、必死に謝り続けるシエル。正直、怖くて堪らない。絶交なんて言った日には、冗談抜きで首を吊ってそうだ。

 何が彼女をそこまでさせるのだろう? 僕の推測だけど、子供の頃から望んでいた友達ができて、それまで溜まっていた欲求不満が爆発してこうなったのだろう。ホント、マグノリア•コンパスでどんな生活をおくってきたんだ……。

 

「いやいやいや、僕だってシエルといて嬉しいから!!!」

「本当ですか!!??」

 

 まるで、生き別れた息子に再開した母親のように笑うシエル。

 ああ、心臓に悪い。これじゃあ胃に穴があきそうだ。そういえば、妙に髪が灰色がかってきたような。

 こうなったら、ブラッドの皆を巻き込…… シエルの友達になってもらわないと。僕1人じゃ手に負えない。

 

「ここは良い場所です。研究続きで少し疲労が溜まってましたが、すぐに回復しそうです」

「色々あって大変だったもんね」

 

 あの日以来、シエルが血の力に目覚めた。直覚という能力で、一定範囲内にいるアラガミの位置や体力が分かるらしい。僕のより数段使い勝手が良さそうな能力だ。

 まだ変わった事がある。それは、シエルの僕に対する態度だ。前までは保護者みたいな接し方だったのに、今となっては友達(?)のような接し方になった。

 あと、周りの話もよく聞くようになった。この様子なら、近いうちに実戦とのギャップにも対応できるだろう。この調子でガンガン任務を捌いて、僕の負担を減らしてほしい。

 

「……あの、お願いがあるのですが」

「うん?」

「実はパレッドエディットの実験に付き合ってほしいんです」

 

 パレッドエディット? 聞きなれない単語に首を傾げる。心当たりはあるような気はするんだけど。

 

「あの、パレッドエディットってなんだっけ?」

「やっぱりですか……。でも、安心してください! レイジが基礎知識を覚えてくれるまで何日だって私が教えます!! レイジの友達ですから!!」

「」

 

 

 

 

★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 シエルを説得して、なんとかパレッドエディット講座は回避できた。自慢じゃないけど、基礎知識だけ覚えるとなっても1週間はかかると思う。僕って、興味ないと全然覚えられないし。

 その後、すぐに任務とパレッドエディットの実験も兼ねて嘆きの平野へと直行した。幸運にも雨は降っていなかった。でも、基本的に湿気が高くて気持ち悪い。

 討伐するアラガミはサリエル。シエルが言うには、狙撃するにはうってつけの相手らしい。

 それにしても、女型か……。今回の任務は厄介そうだ。

 

「あっ、次の角で出てきます」

「はいよー」

 

 シエルが神機を構える。それを確認した僕は、シエルの後方へと移動する。

 今回の僕の仕事は、バレットの挙動をチエックする事だ。だから、サリエルと戦う必要はない。

 

『プンスカプンプン!!!』

 

 あらら、ヴァルキュリアちゃんが御立腹だ。

 シエルばかり見てるから、ヤキモチでも妬いてるんだろう。機嫌を損ねない程度に戦うとしよう。

 

「いきます!」

 

 サリエルが角から姿を現した。

 その瞬間に、シエルの正確無比なレーザー弾が空を切った。

 

「キュアァ!!??」

 

 サリエルの頭部にレーザー弾が叩き込まれる。その瞬間に、サリエルの頭部が爆発した。ああ、爆発のモジュールを組み込んだのね。

 にしても、凄い威力。僕もパレッドエディットした方がいいかな? いや、面倒だし別にいいや。

 

「キュア…… アァ?」

 

 何故か僕を見た。いや、厳密に言えば僕の神機を見た。

 これは…… まさか!

 

「ギュガァァアガァアギガァァ!!!!!!」

 

 サリエルの外見からは想像もつかない咆哮だった。

 あれだね。今回はレズじゃなくて、ヴァルキュリアちゃんの容姿に嫉妬するパターンだったね。

 にしても、どうするかな。僕への集中砲火は目に見えている。これは死ぬ気で避けないと……。

 

「グゥガァォァ!!!」

 

 無数のレーザーが僕に降りかかる。やばばばば、どうして僕がこんな目に……。

 咄嗟にアレスちゃんを展開する。体(?)が痛むのか、目をバッテンにしながら涙を流していた。

 だからさ、どうして僕の精神を殺しにかかるんだよ!!

 

「あわわわわわわわ」

 

 ダッシュでその場から離れる。シエルが狙撃してるけど、サリエルの猛攻は止まらない。女の嫉妬ってマジで怖い。

 これはダメだ。バレットの挙動なんて見てる暇はない!

 駆け抜けたばかりの地面がドロドロに溶けていく。やっぱり神機使いの仕事はクソッタレだ!!

 

「レイジ! 今助けます!!」

 

 シエルがレーザー弾を放つ。

 大まかにしか見えなかったけど、レーザーは頭部の大きな瞳に吸い込まれていった。

 サリエルの猛攻が止む。振り返ると、サリエルが地面に墜落していくのが見えた。

 やれる! 僕にしては珍しく、このチャンスに物怖じしなかった。

 サリエルに向かって跳躍する。ブラッドアーツを使用し、ヴァルキュリアちゃんを紅く輝かせる。

 ヴァルキュリアちゃんを横一閃に振るい、サリエルの脇腹に思いっきり叩き込む。

 サリエルはそのまま吹き飛び、それっきり動かなくなった。

 いよっしゃ、倒した! でも、本来の目的が果たせていないよね……。

 

「バレットを見る余裕なんて無かったですよね……」

「残念ながら……」

 

 無理無理、あの状況じゃあサリエルで手一杯だって。まあ、シエルの射撃訓練にはなっただろうけど。

 

「あの、実は少しだけバレットに違和感を感じるんです。何か気づいた事は…… 有りませんよね」

「まっ、整備士に相談するのが一番じゃないの?」

 

 よく考えれば、最初から整備士に相談すれば良いんじゃね?

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

「よお、レイジ」

「あ、ギルさん」

 

 フライアに戻ったら、ギルさんが出迎えてくれた。その表情は、最近見ないようなシリアスモードだった。

 

「少し、この前の神機兵運用テストの件で話がある」

「も、もう勘弁してください……! 知らなかったんです、僕のあの行動が命懸けなんて知らなかったんです!!」

「いや、少し言いたい事があるだけだ。いいか、あんまり独断で無茶はするな。万が一があった場合、残された奴は一生お前の命を背負い続けるんだ。自分だけは大丈夫なんて甘い考えは、捨てた方がいい」

 

 それだけ言うと、ギルさんは僕に背を向けて歩き出した。

 

「説教くさくなって悪いな」

 

 ギルさんの背は、誰かの命を背負い続けてるように見えた。

 ……ブラッドって、誰かしら重い過去を背負っているのかな? だけど、僕だけが何もない。それって、幸せなんだよ……な?

 

 

 





レイジの神機新機能
•装甲にアラガミの攻撃がヒットすると泣く
•女型アラガミが嫉妬する場合もある。
•が、基本はメロメロになる。

 シエルのヤンデレ化は近い(断言)。
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