ヤンデレによるヤンデレのためのヤンデレな回です
目が覚めると、何故か見知らぬ天井が見えた。おかしいな、僕は自分の部屋で眠っていた筈なのに。
それにしても、薄暗い場所だな。周りが全然見えないよ。こんな場所フライアにあったっけ?
とりあえず、さっさと起きてこの部屋を調べないと。
「……って、あれ?」
なんか、手が鎖で繋がれているんですけど。え? 何これ。
これは是が非でも脱出しないと。ここに残ってたらやばそうだ。僕は鎖を思いっきり引っ張った。
「ぐぎぎぎぎ……!!」
鎖はビクともしない。いやいや、神機使いの腕力でも壊れない鎖って何なんだよ!? 超特注品じゃん!!
僕にはどうしようもない。誰か助けを呼ばなくては!
「ヴァルキリアちゃーん!! アテナイちゃーん!! アレスちゃーん!!」
僕の思いが通じたのか、扉が開く音がした。良かった、誰かが助けに来てくれたみたいだ。
足音が近づいてくる。暗くて誰か分からないけど、きっとブラッドの皆だろう。持つべき者は友だね。
「こんばんは、レイジさん」
現れたのはシエルだった。やった! これで助かった……って、少し落ち着き過ぎじゃない? 仮にも、絶賛拘束中なんだよ?
「心配しなくてもいいですよ、レイジさん」
ニコリ、と微笑むシエル。僕の脳内警鐘が鳴り響いている。
「私、レイジさんの怠けたいという願いを叶えてあげたかったんです。だって、初めての友達ですから。だから、私はどうすればいいか考えたんです」
心底嬉しそうに語りかけるシエル。その目は黒く淀んでいた。
「答えは簡単でした。私がレイジさんの世話をしてあげればいいんです。食事だって、お風呂だって、着替えだって、全部私がすればいいんです。レイジさんの願いは叶うし、私は友達と一緒にいれるし、良いこと尽くしじゃないですな」
ゾワリ、と背中で虫が這ったような感覚がした。逃げようとするにも後ろは壁。退路は、ない。
「心配しなくてもいいですよ。私がずっといるから、寂しくなんてないですから……」
シエルの手が徐々に迫ってくる。だから、僕は諦めて彼女の手を取り―――
「んな訳あるかぁぁぁぁぁい!!!!」
「「「!!!!???」」」
薄暗い部屋から一転、いかにも高級そうな家具が並んでいる部屋で僕は立っていた。突然叫んだからか、その場に居合わせたブラッドの皆は僕を驚いた目でみていた。勿論、そこにはシエルもいる。
あ〜…… だんだん思い出してきた。極東支部に着いて、支部長のサカキ博士の挨拶に行って、退屈そうな話だったから立って寝ちゃったんだっけ。
「レイジ? お前、凄い汗だぞ。大丈夫かよ?」
「は、はい……」
「無理しちゃいけませんよ、レイジさん」
「………う、うん」
シエルの顔がマトモに見れない。はぁ、なんであんな変な夢を見ちゃったんだろう。
「博士ー! 今回の歓迎会…… えっ? 何この空気」
バンダナを巻いたお兄さんが支部長室に入ってきた。なんか、ロミオ先輩と似た雰囲気を感じる。
「コウタ君、彼らがブラッドだよ」
ジュリウスさんが一歩前に出た。
「ブラッド隊隊長、ジュリウス・ヴィスコンティです。今後ともよろしくお願いします」
「あっ、これはこれはご丁寧に。極東支部第一部隊隊長、藤木コウタです」
お互いに名刺らしきカードを手渡す。すげえ、あそこだけ背景にオフィスが見える。
「すごーい! これが大人の挨拶なんだね」
あれ、副隊長の僕もやった方がいいの? 僕、名刺なんて持ってないんですけど!!
★☆★☆★☆★
ブラッドの皆は支部長室から出て行ったけど、僕だけは用事があったので残った。
そう、僕はこの日を待っていたんだ。サカキ博士に物申せるこの日を待っていたんだ。
「おや? どうしたんだい、レイジ君」
「いえ、少し聞きたい事がありまして」
まるで心当たりがないかのように首を傾げるサカキ博士。このっ……! よくもまあ、いけしゃあしゃあとそんな反応を……!!
「神機ですよ神機!! なんすかあれ!? どんだけ極東支部の技術を無駄使いすればああなんるんですか!! というか造った意味は!?」
言ってやった…… 言ってやったぞ……。マトモな反応は期待してないけど、言ってやったぞ!
だけど、サカキ博士は何故か真剣な表情をしていた。えっ? 予想してたのと違う!
「君は、神機にも意思があると思うかい?」
「あるんじゃないですか?」
即答してら、サカキ博士は少しだけ驚いた表情をしていた。無いって答えるのが普通なのかな? でも、僕の神機が神機だしなぁ……。
「そう、神機にも意思があると私は考えている。私は神機との意思疎通を図る一歩として、君の神機に…… うん、色々と組み込んだんだ」
「色々って何ですか?」
「……」
「黙んないでくださいよ!」
結局、極東支部の技術力は雲の上を突き抜けてると分かっただけだった。
★☆★☆★☆★
ダラダラとエントランスホールをぶらつく。なんか、思ったよりも年季が入ってる支部だな。
「むむっ! レイジではないか!!」
あっ、この無駄にいい声はまさか……!
「ちわっす、エミールさん」
エミールさんと初めて見るミニスカ少女がいた。あれだと戦闘中にパンツを晒しちゃうんじゃない?
「あなたがブラッドの副隊長? 私はエリナ、エリナ・デア=フォーゲルヴァイデよ」
名乗ったかと思うと、エリナはジッと僕の顔を見つめた。えっ? もしかしてモテ期到来?
「なんか、アマト先輩と似た雰囲気を感じるわね。神機での苦労が滲み出てるみたいな……」
「……」
ちょっと涙が出そうになった。僕と同じようにサカキ博士の一番の被害者であるアマトさん。出来れば会ってみたいものだ。
「おっと! それ以上エリナに近づいてはいけない。エリナを男に近づけないという我が盟友との約束だからな!!」
「あー、もう! うっとおしいわよエミール!!」
喧嘩を始めたエミールとエリナ。2人とも仲悪いな〜。
「ほんとゴメン、レイジ!!」
後ろから来たコウタさんが手を合わせて頭を下げた。
「2人とも筋は良いんだけど、こんなんだからさぁ……」
「大変っすね、コウタさん」
まるで部下についつ悩む上司のようにため息をつくコウタさん。いや、事実その通りなのか。
隊長にだけはなりたくない。僕は心の底からそう思った。
「そういやレイジ、なんかアマト…… 俺の友達と雰囲気が似てるな。神機での苦労が滲み出てるみたいな」
……僕からどんな苦労が滲み出てるんだろう。
エリックは生きてます。やったねエリナ!