スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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 ヤンデレによるヤンデレのためのヤンデレな回です


五十五品目 怠け者は、苦労人

 

 目が覚めると、何故か見知らぬ天井が見えた。おかしいな、僕は自分の部屋で眠っていた筈なのに。

 それにしても、薄暗い場所だな。周りが全然見えないよ。こんな場所フライアにあったっけ?

 とりあえず、さっさと起きてこの部屋を調べないと。

 

「……って、あれ?」

 

 なんか、手が鎖で繋がれているんですけど。え? 何これ。

 これは是が非でも脱出しないと。ここに残ってたらやばそうだ。僕は鎖を思いっきり引っ張った。

 

「ぐぎぎぎぎ……!!」

 

 鎖はビクともしない。いやいや、神機使いの腕力でも壊れない鎖って何なんだよ!? 超特注品じゃん!!

 僕にはどうしようもない。誰か助けを呼ばなくては!

 

「ヴァルキリアちゃーん!! アテナイちゃーん!! アレスちゃーん!!」

 

 僕の思いが通じたのか、扉が開く音がした。良かった、誰かが助けに来てくれたみたいだ。

 足音が近づいてくる。暗くて誰か分からないけど、きっとブラッドの皆だろう。持つべき者は友だね。

 

「こんばんは、レイジさん」

 

 現れたのはシエルだった。やった! これで助かった……って、少し落ち着き過ぎじゃない? 仮にも、絶賛拘束中なんだよ?

 

「心配しなくてもいいですよ、レイジさん」

 

 ニコリ、と微笑むシエル。僕の脳内警鐘が鳴り響いている。

 

「私、レイジさんの怠けたいという願いを叶えてあげたかったんです。だって、初めての友達ですから。だから、私はどうすればいいか考えたんです」

 

 心底嬉しそうに語りかけるシエル。その目は黒く淀んでいた。

 

「答えは簡単でした。私がレイジさんの世話をしてあげればいいんです。食事だって、お風呂だって、着替えだって、全部私がすればいいんです。レイジさんの願いは叶うし、私は友達と一緒にいれるし、良いこと尽くしじゃないですな」

 

 ゾワリ、と背中で虫が這ったような感覚がした。逃げようとするにも後ろは壁。退路は、ない。

 

「心配しなくてもいいですよ。私がずっといるから、寂しくなんてないですから……」

 

 シエルの手が徐々に迫ってくる。だから、僕は諦めて彼女の手を取り―――

 

「んな訳あるかぁぁぁぁぁい!!!!」

「「「!!!!???」」」

 

 薄暗い部屋から一転、いかにも高級そうな家具が並んでいる部屋で僕は立っていた。突然叫んだからか、その場に居合わせたブラッドの皆は僕を驚いた目でみていた。勿論、そこにはシエルもいる。

 あ〜…… だんだん思い出してきた。極東支部に着いて、支部長のサカキ博士の挨拶に行って、退屈そうな話だったから立って寝ちゃったんだっけ。

 

「レイジ? お前、凄い汗だぞ。大丈夫かよ?」

「は、はい……」

「無理しちゃいけませんよ、レイジさん」

「………う、うん」

 

 シエルの顔がマトモに見れない。はぁ、なんであんな変な夢を見ちゃったんだろう。

 

「博士ー! 今回の歓迎会…… えっ? 何この空気」

 

 バンダナを巻いたお兄さんが支部長室に入ってきた。なんか、ロミオ先輩と似た雰囲気を感じる。

 

「コウタ君、彼らがブラッドだよ」

 

 ジュリウスさんが一歩前に出た。

 

「ブラッド隊隊長、ジュリウス・ヴィスコンティです。今後ともよろしくお願いします」

「あっ、これはこれはご丁寧に。極東支部第一部隊隊長、藤木コウタです」

 

 お互いに名刺らしきカードを手渡す。すげえ、あそこだけ背景にオフィスが見える。

 

「すごーい! これが大人の挨拶なんだね」

 

 あれ、副隊長の僕もやった方がいいの? 僕、名刺なんて持ってないんですけど!!

 

 

 

 

★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 ブラッドの皆は支部長室から出て行ったけど、僕だけは用事があったので残った。

 そう、僕はこの日を待っていたんだ。サカキ博士に物申せるこの日を待っていたんだ。

 

「おや? どうしたんだい、レイジ君」

「いえ、少し聞きたい事がありまして」

 

 まるで心当たりがないかのように首を傾げるサカキ博士。このっ……! よくもまあ、いけしゃあしゃあとそんな反応を……!!

 

「神機ですよ神機!! なんすかあれ!? どんだけ極東支部の技術を無駄使いすればああなんるんですか!! というか造った意味は!?」

 

 言ってやった…… 言ってやったぞ……。マトモな反応は期待してないけど、言ってやったぞ!

 だけど、サカキ博士は何故か真剣な表情をしていた。えっ? 予想してたのと違う!

 

「君は、神機にも意思があると思うかい?」

「あるんじゃないですか?」

 

 即答してら、サカキ博士は少しだけ驚いた表情をしていた。無いって答えるのが普通なのかな? でも、僕の神機が神機だしなぁ……。

 

「そう、神機にも意思があると私は考えている。私は神機との意思疎通を図る一歩として、君の神機に…… うん、色々と組み込んだんだ」

「色々って何ですか?」

「……」

「黙んないでくださいよ!」

 

 結局、極東支部の技術力は雲の上を突き抜けてると分かっただけだった。

 

 

 

 

★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 ダラダラとエントランスホールをぶらつく。なんか、思ったよりも年季が入ってる支部だな。

 

「むむっ! レイジではないか!!」

 

 あっ、この無駄にいい声はまさか……!

 

「ちわっす、エミールさん」

 

 エミールさんと初めて見るミニスカ少女がいた。あれだと戦闘中にパンツを晒しちゃうんじゃない?

 

「あなたがブラッドの副隊長? 私はエリナ、エリナ・デア=フォーゲルヴァイデよ」

 

 名乗ったかと思うと、エリナはジッと僕の顔を見つめた。えっ? もしかしてモテ期到来?

 

「なんか、アマト先輩と似た雰囲気を感じるわね。神機での苦労が滲み出てるみたいな……」

「……」

 

 ちょっと涙が出そうになった。僕と同じようにサカキ博士の一番の被害者であるアマトさん。出来れば会ってみたいものだ。

 

「おっと! それ以上エリナに近づいてはいけない。エリナを男に近づけないという我が盟友との約束だからな!!」

「あー、もう! うっとおしいわよエミール!!」

 

 喧嘩を始めたエミールとエリナ。2人とも仲悪いな〜。

 

「ほんとゴメン、レイジ!!」

 

 後ろから来たコウタさんが手を合わせて頭を下げた。

 

「2人とも筋は良いんだけど、こんなんだからさぁ……」

「大変っすね、コウタさん」

 

 まるで部下についつ悩む上司のようにため息をつくコウタさん。いや、事実その通りなのか。

 隊長にだけはなりたくない。僕は心の底からそう思った。

 

「そういやレイジ、なんかアマト…… 俺の友達と雰囲気が似てるな。神機での苦労が滲み出てるみたいな」

 

 ……僕からどんな苦労が滲み出てるんだろう。

 

 





 エリックは生きてます。やったねエリナ!
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