スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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 まさかの同時投稿!
 燃え尽きそうです。頑張ったぜ俺。


五十七品目 怠け者と、仇討ち

 

 極東支部のロビーでギルさんから任務のお説教をされてると、不意にギルさんを呼ぶ声がした。

 

「久しぶりだな、ギル」

「ハル……さん……?」

 

 なんかイケメンの人がいた。

 うむぅ、強者の雰囲気がある。さては極東支部の神機使いだな。

 

「あの、どちら様ですか?」

「ん? ああ、俺は極東支部第4部隊隊長の真壁ハルオミだ。そういうお前は無動レイジだろ?」

「なんで僕の名前を?」

「こっちの界隈じゃ有名だぜ。美少女神機を使う神機使いがいるってな」

 

 えっ、そっちの界隈ってどっちの界隈?

 僕の疑問を他所に、ハルオミさんは2階のエントランスに指差した。そこにはいかにもオタッキーな眼鏡の男たちがいた。

 

「ほら、親衛隊もやってきたぜ」

 

 親衛隊? いやいやいや、男ばかりなのに何で親衛隊?

 僕の方に気づいた親衛隊は、狂喜乱舞といった感じで詰め寄ってきた。ギルさん、さらっと僕から距離を取るのはやめてください傷つきます。

 

「レイジ殿、レイジ殿だぞ皆の衆!」

「何ぃ!? ヴァルキュリアたん、ヴァルキュリアたんはいないのか!!」

「馬鹿野郎、アテナイたんを見つけるのが先だろうが!!」

「アレスたんprpr」

 

 ………………うわっ。

 なんというか、人類の負の部分を凝縮したような奴らだ。どうしよう、関わりたくない。

 

「レイジ殿、握手をしてくだされ!!」

 

 そう言った瞬間、既に僕の手は握られていた。なんかベタベタしてるんですけど!!

 なすがままに流されて、結局全員の男と握手してしまった。

 

「いゃっほぉぉぉぉい!!! ヴァルキュリアたんを握った手を握ったよぉぉぉぉ!! 一週間は手を洗わないぜぇぇぇぇ!!!」

「prpr!! prpr!! アレスたんを握った手を握った手をprpr!!」

「アレスたん!! アレスたん!! アレスたぁぁぁぁん!!!! クンカクンカスーハースーハー!!!」

 

 自分の手を舐めたり、匂いをかいだり、頬擦りしたり、クレイジーな行動をとっていた。

 何だこいつら…… 何だこいつら!!!

 

「相変わらずの熱狂ぶりだな。写真集が出てから、こいつらもこうなったんだよなぁ……」

「写真!? いつ撮られたんだ!?」

「そういや時々何かいたな」

 

 どうなってんだよ! アラガミだけじゃなくて人間も魅了してんのかよ女神三姉妹は!!

 

「ギル〜、極東支部にいるなら声を掛けてくれりゃいいのに」

「極東にいるのんて知らなかったっすよ」

 

 ショックに打ち拉がれてる僕を無視して2人は話を進めていた。この薄情者!!

 

「ハルさーん! サカキ博士の報告書、先に出してますよー」

 

 エントランスの二階からポニーテールのお姉さんが手を振っていた。おお、巨乳だ。

 

「今のが第4部隊の隊員、台場カノンちゃんだ。あっ、手ェ出したら極甘ジュースをぶち込まれるぞ」

 

 ハルオミさんは遠い目をしていた。どうやら、ハルオミさんも経験があるみたいだ。

 それにしても、どうしてあの悪魔のジュースがぶち込まれるんだ?

 

「っと、そろそろ時間か。ズラかるぞてめぇら!!」

「「「イエス、マイロード!!」」」

 

 こいつら第4部隊かよ!!?

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 それから間も無く、第4部隊との任務が舞い込んでしまった。嘆きの平野に現れたガルムの討伐だ。正直、いつもより3倍は憂鬱だ。

 だけど、女神三姉妹との共闘にテンションがMAXに舞い上がった第4部隊の隊員は、意外にも討伐対象のガルムを超速攻でぶっ殺してくれた。あの動き、人間の限界を超えていたね。

 流石のハルオミさんも苦笑いで、どうして俺の部隊はあんなんばっかなんだとボヤいてた。心の底から同情します。

 あと、女神三姉妹は任務中ずっと涙目になっていた。ずっと僕の名前を呼んでいたけど、少しだけ萌えたのは秘密だ。

 任務も終わり、滞りなくアナグラに帰ってこれた。さっさと部屋に帰ってゲームしようと思ったら、ハルオミさんが飲みに誘ってくれた。僕、未成年なんすけど。まあ、断る理由はないのでそのまま飲みに付いてった。

 暫くアホな話を続けていると、ハルオミさんが妙に神妙な顔をしてグラスを傾けた。

 

「ギルから聞いたぞ。お前、ここにくるまで相当な無茶をしたらしいな」

「ああ〜…… 神機兵のあれですか」

「そうそう! あと、グレアムのおっさんにもガツンと言ったらしいじゃねえか」

「ああ〜…… 今度は肩パットデブですか」

 

 ぶっちゃけ、神機兵に乗ったら死ぬなんて思わなかったんですけどね。知ってたら乗ったかどうか分かんないし。

 でもなぁ、そんなん言えるような空気じゃないしなぁ。

 

「ほんと、ケイトにそっくりだぜ」

「ケイト?」

 

 僕が首を傾げると、ハルオミさんはやっぱりなと言わんばかりに肩を竦めた。

 

「ギルのことだ。自分の過去なんて喋ってないんだろ」

 

 それから、ギルさんのグラスゴー支部にいた話を聞いた。

 ケイトさんのことも、そのケイトさんがある任務で謎のアラガミに襲われたことも、ギルさんが助けにいっても間に合わなかったことも。

 そして、アラガミ化しかけていたケイトさんを、ギルさんが殺してしまったことも。

 

「うぅ…… うううぅ、あんまりですよ、そんなの…………!!」

 

 いかん、泣きそうだ。というか、もう泣いてる。だけど、この涙は止めれそうにない。

 だって、こんなんじゃ、誰一人として救われないじゃない……!

 

「ははっ、ありがとよ。皆、神機使いだから仕方ないって割り切ってるからよ。この話を聞いて、そこまで泣いてくれたヤツは初めてだ」

 

 ハルオミさんは笑っていた。チャラい人だと思ってた自分の浅ましさが恥ずかしい。

 

「思わずペラペラと話しちまった。何でかなぁ、ここまで誰かに話したのも久しぶりだ」

 

 そう言うと、ハルオミさんは席を立ってしまった。

 

「今日はここまでだ。また機会があったら飲もうぜ」

 

 そう言いながら、ハルオミさんは去っていった。その後ろ姿は、少しだけ小さく見えた。

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 走る。出撃ゲートへとひた走る。

 ついさっき、愚者の空母の付近にルフス・カリギュラが現れたという情報が入ってきたからだ。

 ルフス・カリギュラ。そう、ケイトさんをアラガミ化に追い込んだ赤いカリギュラだ。

 こいつが現れて、ギルさんが黙っている筈がない。きっと、今にも飛び出そうとしてるに違いない。

 出撃ゲートが見えてくると、やはりギルさんの姿がそこにあった。

 

「ギルさん!」

「……レイジか」

 

 険しい顔のギルさん。うわぁ、止めれる気がしねぇ。どうして今日に限って皆任務中なんだ!

 

「止めるなよ、レイジ。こいつは俺の問題だ。俺自身でケリをつける。これ以上関わるな」

 

 クルリ、と背を向けるギルさん。

 ダメだ、このまま行かせたら! ルフス・カリギュラはきっとかなりの強敵だ。ギルさん1人でどうこう出来る訳がない。

 何か、何か言わなきゃ! ギルさんを引き止める、何かを―――!

 

「ふ、副隊長だから!」

「!」

 

 ピタリ、とギルさんの足が止まった。

 

「こ、こんなんでも、僕だってブラッドの副隊長なんだ! ぶ、部下が危険なことをしようとしてるのに、関わらない訳にはいかない!!」

「そういうこった、ギル」

 

 ハルオミさんが僕の肩をポンと叩いた。ハルオミさん、いつの間に!

 

「レイジの言う通り、これは俺たちの問題でもあるんだ。それに、俺が1人で行こうとするなら、お前だって黙っちゃいないだろ?」

「そ、そうだそうだ!」

 

 ハルオミさんのこの言葉がトドメとなったのか、ギルさんは観念したように呟いた。

 

「……すみません、前しか見てなくて」

 

 どうやら、ギルさんも思い直してくれたようだ。

 いや〜、説得できて良かった良かった! どうなるかと思ったけど、ハルオミさんが居てくれたから心強かったよ。

 

「そんじゃ、行くとするか。俺たちの手で、俺たちの因縁にケリをつけるんだ。なあ、レイジ」

「え?」

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 愚者の空母。ここに来るときは、いつも景色が橙色に染まっている。

 その橙色の中、異質な紅が悠然と辺りを闊歩していた。そう、ルフス・カリギュラだ。

 メンバーは僕、ハルオミさん、ギルさんの3人だ。ベテランの神機使いが2人もいるのは心強いけど、ルフス・カリギュラの威圧感で否応無く気を引き締められる。分かってたけど、かなり強そうだ……。

 だけど、今日は。今日だけは本気で頑張ろう。これはただの任務じゃない。ケイトさんの弔い合戦だ。

 

「頑張ろう、アテナイちゃん」

「……」コクリ

 

 相変わらず口数が少ないなぁ、アテナイちゃんは。だけど、気合いが入ってるのは分かる。

 

「お喋りはそこまでだ。いくぜ……」

 

 ハルオミさんが剣形態の神機を構える。ハルオミさんとギルさんが基本的に前衛、僕が囮役として臨機応変に対応する作戦だ。

 さあ、いくぞ!

 

 

 

 

★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 ルフス・カリギュラも女神三姉妹の虜になったのか、僕だけを重点的に狙っている。

 作戦通りなんだけど…… いやね、反撃をする余裕が無いんだよ。ルフス・カリギュラの攻撃、苛烈すぎるるんだよ!!

 まあ、ギルさんとハルオミさんが超自由に動けるんだけどね。斬ったり撃ったり、やりたい放題だよ。

 目に見えて衰弱してるルフス・カリギュラ。あと少し、あと少しでケイトさんの仇もとれる!!

 

「―――っあ!!??」

「「レイジ!!」」

 

 振るわれた左腕の刃が、アテナイちゃんを吹き飛ばした。

 最悪だ。勝ちを目前にした気の緩み、そこにつけ込まれた……!

 一瞬、ほんの一瞬だけルフス・カリギュラと目があった。その目に写っているのは、僕の更に先―――

 

「まさ、か……!!」

「ギュガァァァ!!」

 

 ルフス・カリギュラは女神三姉妹へと駆け出した。ほぼ反射的に、僕も女神三姉妹のいる場所へと向かった。

 ルフス・カリギュラは左腕の刃を振り上げた。狙いは勿論女神三姉妹だ。神機使いより優先的に狙われる神機って一体……!?

 女神三姉妹を庇うように、僕はルフス・カリギュラの前に飛び込んだ。

 

「ぐあぁっ!!???」

「レイ―――」

「痛い痛い痛い背中がメッチャ痛いというか熱い熱い熱いぃぃぃぃぃ!!!!!」

「……いや、ピンチには変わりねぇ!!」

 

 背中が痛くて動けねぇぇぇ!!

 ヤバいヤバい痛い痛い痛い!!! というか、ビックリするくらい血が出てる!!

 

『ウワァァァァァン!!! ビェェェェェェェン!!!』

 

 僕が斬られたせいか、アテナイちゃんが大声で泣いていた。アテナイちゃん、こんな大声で喋れたんだな……。

 再び、ルフス・カリギュラが刃を振り上げる。動けぇぇぇ、僕の身体ぁぁぁぁ……!!! せめて、女神三姉妹だけでも逃がさないと……!!

 

「!!」

 

 ルフス・カリギュラの刃が振り下ろされた。ああ、間に合わな―――

 

「諦めんな、レイジ!」

 

 ルフス・カリギュラの古傷――― ケイトさんの神機が突き刺さった部位に、ハルオミさんが放った銃弾が撃ち込まれた。

 銃弾のダメージが響いたのか、ルフス・カリギュラは大きく仰け反っていた。

 敵に生じた一瞬の隙。だけど、僕にはもうそれを活かせるだけの体力がなかった。

 そう、僕には。

 

「いけ、ギルさん!」

「うおおおおおおおお!!!!!」

 

 ルフス・カリギュラに向かってギルさんが駆け出す。次の瞬間、ギルさんの槍がルフス・カリギュラのコアを貫いていた。

 ドシャリ、とルフス・カリギュラの巨体が地面に沈む。その衝撃でケイトさんの神機も外れ、地面に突き刺さった。まるで、ギルさんとハルオミさんの因縁が吹っ切れたかのように見えた。

 はぁぁぁ…… しんどかった。本当に強敵だったな、分かっちゃいたけどさ。

 

「ほらほら、泣き止んでよアテナイちゃん」

「……///」カァァァ…!!

 

 大声で泣いたのを恥ずかしがっているのか、ビックリするくらい赤面していた。うん、無機質だとは思えない。

 

「大丈夫か、レイジ?」

「背中がメッチャ痛いっす」

 

 ギルさんが心配そうな表情で駆け寄ってくる。

 

「……ははっ。それだけの軽口を叩けるなら大丈夫だな」

 

 ギルさんが手を差し伸べる。僕はその手を掴み、どうにか立ち上がった。ほらほら、アテナイちゃんもそんな顔しないで。

 

「そんじゃ、帰るか!」

 

 僕とギルさんの肩を組むハルさん。瞬間、背中に鈍い痛みが走った。

 

「ちょっ、痛いっすよハルさん!!」

「おっと、悪い悪い!」

 

 こうして、長い長い一日が終わった。

 

 

 





女神三姉妹新機能
・人間だって魅了する。
・ご主人の心配をする。
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