スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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五十八品目 怠け者と、黒蛛病

 今日、僕も含めたブラッドのメンバー全員とサツキさんは、サテライト拠点の視察に来ている。

 相変わらず、雑多としたハリボテ民家があちこちに建ち並んでいた。懐かしい光景だ。この光景は昔とまったく変わっていない。

 だけど、それは喜ぶべきではないのだろう。変化がないってのは、ここの暮らしは厳しいままってことだろうから。

 

「どうしたんですか、レイジさん?」

 

 僕の遠い目に気づいたのか、シエルが心配そうに尋ねてきた。

 んん〜…… まあ、隠す必要もないし普通に答えるか。

 

「僕が生まれ育った場所って、こういうサテライト拠点なんだよね」

 

 僕の発言に、サツキさんとブラッドの皆が目を丸くした。

 

「そうだったの!!??」

 

 ロミオ先輩が驚きの声をあげた。

 

「そうっすよ。神機使いになる以前は、のらりくらりと生活してたんですけどねぇ……」

 

 あの頃が懐かしい。友達とバカやったり、弟や妹と遊んだり、不自由は多かったけど充実した毎日だったなあ。

 今となってはこの有様だ。毎日毎日、オツムが残念なアラガミの駆除ばかり。まあ、家族も安全な場所に移れたし、仲間も増えたけどさ。

 

「意外…… ですね。ブラッドは、全員が選りすぐりのエリートだと思ってました」

 

 サツキさんが驚いた様子でそんな言葉を漏らした。

 だろうね。僕自身、神機使いになるなんて夢にも思わなかったし。

 

「まあ、僕はあれですよ。偏食因子があっただけ、路傍の雑草的な?」

 

 目を細めて空を見上げる。この前発表された任務成績だってさ、ブラッドどころか極東支部全体で見ても僕がドベだもん。

 まあ、囮の役に徹しているってのもあるんだろうけど。つーか、無かったら泣く。号泣する。

 

「そ、そんなことないって!」

「うんうん、元気だしなよ!!」

 

 ロミオ先輩とナナは肩を叩きながら励ましの言葉をかけ、ギルさんとジュリウスさんは無言で暖かい目を向けてくれてる。

 マジ感無量。僕、良い仲間を持ったなぁ……。

 

「そうですよ、レイジにも良い部分は沢山あります! 穏やかな性格だし、仲間のために命を懸けれるし、コーヒーはブラックで飲めるし、最近だってピーマンを食べれるようになったし、部屋の掃除はマメにするし、就寝時はちゃんとベッドに寝るし、トイレの蓋はちゃんと閉めるし、シャワーの水だって毎回閉まってるか確認しているし、靴下は右から履くし、就寝直前は牛乳を飲んでいるし、最初に体を洗う部位は腕からだし―――」

 

 シエルだけ何か違う!!?

 

「レイジ君なら分かりますよね? 無用な人間は斬り捨てるとばかりに、フェンリルはサテライト拠点を見捨てているって」

 

 声のトーンを少し低くし、サツキさんはサテライト拠点の問題の核心に触れた。シエルにはノータッチなんですね。

 確かに、フェンリルの支援物資はいつも少なかったな。まあ、そんなんでも割と楽しく暮らしていたけど。

 

「しかし、ここの支援物資をフェンリルが支給してるのは事実だ」

 

 ジュリウスさんも反論する。

 まあ、一理ある。フェンリルが完全に僕らを見捨てていたら、皆仲良くアラガミのお腹の中にいたと思うし。

 その反論を聞いたサツキさんは、心外そうな目をジュリウスさんに向けた。

 

「ジュリウスさん。あのオモチャを設立するだけで、こんなサテライト拠点がいくつ作れたと思っています? この場所を気にかけてくれたのは、極東支部とユノちゃんのお父さんだけでしたよ」

 

 そうだよ、前から思ってたんだ。フライアなんか作ってないで、サテライト拠点の支援物資を増やせよ。

 

「マジ最悪だなあいつら。少しはクジョウ博士を見習えよ」

「レイジ……」

 

 あいつらとは勿論フライアの上層部である。ラケル博士も含めてな!

 どうせ費用を回すんだったら、クジョウ博士みたいな立派な研究者に―――

 

『死ね』

「「「!!!??」」」

 

 スピーカーからそんな声が聞こえた気がした。これ、ラケル博士の声じゃね?

 空耳…… いや、それにしてはハッキリ聞こえたような気が……。周りの様子を伺うと、皆にも聞こえていたらしく、表情が固まっていた。

 やっぱり、あの声って―――

 

「オカズは残して置く派だし、恥ずかしいと口を隠す癖があるし、指の爪を切るのは小指からだし」

 

 訂正。シエルだけは相変わらずでした。

 

 

 

 

★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 そのまま、黒蛛病の患者さんがいる施設へと足を運んだ。

 ずらりとベッドが並び、何人もの人間がそこに横たわっている。僕らが見た限りは軽度の黒蛛病患者ばっかりだけど、奥には何人も重度の患者さんがいるらしい。

 怖いなぁ…… 黒蛛病。さっさと治療法が見つかればいいのに。僕も罹ったらどうしよう?

 施設をちょっと進むと、1人の女の子と遊んでいるユノさんの姿があった。絵になりますわぁ……。

 

「こんにちは、ブラッドのみなさん」

 

 僕らに気づいたらしく、ユノさんら軽く微笑みながら会釈した。

 ロミオ先輩とユノさんで色々と話し込んでいた。というか、ロミオ先輩が一方的に話し掛けてる。うわ、これは長くなるパターンだ。

 

「ん?」

 

 女の子が持っているのはお手玉に目線がいった。懐かしい、3年くらい前に特訓してたっけなあ。

 腰を落とし、女の子と同じ高さの目線になる。子供と話す基本です。

 

「僕にもやらせてくれる?」

「うん!」

 

 女の子は快くお手玉を渡してくれた。合計で6つか……。ゴッドイーターの身体能力なら――― いける!

 

「すっごぉぉぉぉい!!!」

 

 ぽんぽんとお手玉が宙に舞う。

 うん、意外とスイスイできた。特訓しとして良かったよ。カッコいいとこを見せれたもん。

 お手玉を終えると、女の子が尊敬の眼差しで僕を見つめていた。幼女は見てるだけで心が癒されますな。

 

「私にも教えて!!」

「うんうん、僕に教われば直ぐに上達するよ」

 

 僕は女の子の頭の上にポンと手を置き―――

 

「何やってるの!!?? 黒蛛病は接触感染するのよ!!!」

「あ」

 

 やべぇぇぇぇぇぇ!!!??? 忘れてたぁぁぁぁぉぁ!!!!

 

「ロミオ、有りっ丈の消毒液を持ってこい!! ギルは医者を至急医者を呼んでこい!!」

「イ、イエッサー!!」

「了解!」

「ナナは…… えっと、おでんパンを持ってくるね!!」

「いやぁぁぁぁぁぁ!!! レイジが、レイジがぁぁぁぁぁ!!!?」

「落ち着け、シエル!!」

「えっと、この場合は110番!!」

「ユノ、それは警察よ!!」

 

 その日、隔離施設は稀に見るお祭り騒ぎだったらしい。あっ、僕の体に異常はなかったよ。

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 僕は今、アナグラのヘリに乗っている。サテライト拠点の視察から帰ってきた直後、任務が舞い込んできたらかだ。

 討伐対象はヤクシャ・ラージャ。贖罪の街辺りに出没したらしい。メンバーは第1部隊のエミール、エリナだ。今回の任務、めちゃくちゃ心配なんですけど。

 

「そういえば昨日、かくかくしかじかって事があってさ」

『オバカ!』

 

 昨日の顛末をヴァルキュリアちゃんに話したら怒られてしまった。

 

「返す言葉もありません……」

『レイジ、ハンセイ』

「分かってるよ、アテナイちゃん」

 

 あの後、シエルが付きっ切りで黒蛛病についてご教示してくれた。同じ失敗はもうないだろう。

 

「ホント、黒蛛病ってなんなんだろうね?」

『ワカンナイ!』

『サア?』

「だよね〜……」

 

 治療法が見つかんないと、ずっと赤い雨に怯えながら戦わなきゃいけないんだよなぁ……。

 やだやだ。さっさと見つかれよ、治療法。

 

『自然の摂理…… 地球の自衛手段』

「!!??」

 

 ボソボソと呻き声が聞こえた。

 喋れたのかアレスちゃん!? ちょっと何言ってるか分からなかったけど!!

 凄い、これは大発見だ!!

 

「レイジの感覚、大分麻痺してきてるわね……」

「うむ、仲良きことは素晴らしいではないか!!」

 




 シエルのヤンデレ化待ったなし。
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