スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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 女神三姉妹は優秀なんです。可愛くて、愛嬌もあって、健気で、強くて、戦闘にも役に立って。最強に良い女です。


五十九品目 女神三姉妹は、超優秀

 

 今日の任務は鎮魂の寺院に出現したボルグカムランの討伐だ。

 討伐メンバーはブラッドの全員。あっ、ギルさんはいないっけな。今日は血の力の実験で任務はできないとか。羨ましい限りだ。

 楽とは言わないまでも、決して厳しい任務ではなかった。事実、ボルグカムランはジュリウスさんを筆頭にボッコボコにされていた。

 だって、僕しか攻撃しなかったしあのバカ蠍。あれは戦闘というより集団リンチだったね。

 特に山場もなくボルグカムランをぶっ殺し、あとはアナグラへと帰還するだけだった。

 

「ッ!!」

 

 どこからともなく、新手のオウガテイルが現れた。攻撃対象は勿論僕だけ。尻尾を振り、幾多もの針を僕に飛ばしてきた。

 アレスちゃんを展開し、オウガテイルの針を凌ぎ切る。こんなしょっぱい攻撃、勿論ダメージはない。

 

『緊急事態です! 周囲のアラガミがそちらに集まっています! 第一部隊に応援を要請します!!』

 

 ヒバリさんが切羽詰まった声で状況を説明する。

 その直後、オウガテイルやらザイゴートやらがゾロゾロと集まって来た。あらら、随分と集団でおいでなすって……。

 

「うわっ、今回の数は多いな……」

「各自、撤退の準備だ。レイジは囮役。シエルはレイジのサポート。それ以外は邪魔なアラガミの駆除だ」

「はいはい、了解でーす」

「あっ、そこのオウガテイル、狙撃しておきますね」バヒュン!!

「ぎゃうっ!??」

「ヴァルキュリアちゃんはフェロモンムンムンだね」

『プンスカプンプン!!』

「セクハラでしたすみません!」

「ほら、漫才してないでさっさと行くぞ」

 

 通信機の向こうのヒバリさんが絶句していた。

 

『よ、余裕ですね……』

「日常茶飯事ですから」

 

 ジュリウスさんが慣れたように答えた。

 女神三姉妹に誘われてアラガミが群がるなんて、ブラッドには日常茶飯事だ。おかげで、集団戦に関しては熟練神機使い並みの腕前らしい。まったく嬉しくないけども。

 僕がひたすら逃げ回り、それを追うアラガミをジュリウスさんたちがぶっ殺しまくる。このペースなら撤退できそうだ。

 

「そういや、ナナ最近調子悪いんだろ? 先に戻っておけよ」

「私、だけ……」

 

 調子の悪いナナを気遣い、ロミオ先輩が先に行くように促す。流石はロミオ先輩、副リーダーしている。副リーダーは僕だけど。

 最近のナナ、どうにも様子がおかしいんだよね。表情が沈んでいたり、任務中にぶっ倒れたり。僕から言わせれば、仕事を休める絶好の口実なのになぁ……。

 

「逃げる…… 私だけ……」

 

 あれ? なんか、また様子がおかしいような……。

 

「うぅっ…… うぅ!! お母さん……!!!」

 

 ナナがその場にへたりこんだかと思うと、赤色のオーラを天高くに放った。まさか、血の力!?

 

『偏食場パルスの乱れを確認! アラガミ、更にそちらへ集まってきます!!』

 

 どこからやって来たのか、ヤクシャとシユウが塀の上に立っていた。

 もしかして、ナナがこのアラガミをおびき寄せているのか!?

 最悪な事に、その2匹はナナではなく僕をガン見していた。ナナがアラガミをおびき寄せ、結局狙いは僕になる。何この負のスパイラル!

 

「ギャウッ!!」

 

 ザイゴートが大きく口を広げて僕に突っ込んでくる。バックステップで後方に移動し、ザイゴートが通るであろう空間にヴァルキュリアちゃんを突き出しておく。

 本能の赴くままに突っ込んできたバカザイゴートは、そのまま横真っ二つになった。ざまぁ。

 

『レイジ、ミギ!!』

 

 ヴァルキュリアちゃんが叫んだ。右方向に目を向けると、ヤクシャが光線を放とうとしていた。

 銃口の向きから射線を予測し、飛来する光線をひたすら躱した。

 

『ヒダリ!』

 

 今度はアテナイちゃんが叫んだ。

 左方向へと目を向ければ、今にもエネルギー弾を放ちそうなシユウがいた。

 ヤクシャとシユウの攻撃が迫る。思いっきり地面を蹴り、宙へと高く跳ぶ。2つのエネルギー弾は僕がいた地面に衝突し、大きな爆発を起こした。

 

『コンドハウエ!』

 

 上を見上げると、大きく口を広げているオウガテイル数匹が見えた。

 ヴァルキュリアちゃんの指示が無かったらヤバかった……! 飛びかかってきたオウガテイル数匹をヴァルキュリアちゃんで斬り捨てた。どんだけ僕を狙うのが好きなんだよ!!

 泣きそうな気持ちを抑え、2匹の猛攻、または雑魚アラガミの攻撃を無理矢理な体制で躱し続ける。

 攻撃する暇はない。だけど、囮の役目なら十二分に果たしている。

 僕への攻撃に夢中になっているヤクシャに、シエルが気配を殺して近づいていた。ジュリウスさんも同様に、シユウに近づいている。

 バカアラガミ2匹もようやく2人に気付いたようだ。だけど、もう遅い。ジュリウスさんとシエルが、シユウとヤクシャの首をポーンと飛ばした。ざまぁ!

 

「第一部隊が退路を拓いてくれた。俺たちも撤退するぞ!」

「ナナは大丈夫っすか!?」

「大丈夫です、ロミオが担いで行きました!」

 

 そうと決まれば、こんな戦場からはさっさとおさらばだ! 3人でスタングレネードを投げまくって、どうにか撤退した。

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 僕らブラッドはサカキ博士の研究室に招集され、ナナの容態について聞かされた。

 話によると、ナナの血の力は『誘引』というらしい。その辺のアラガミを引き寄せる能力だとか。

 正直言うよ? 僕っつーか、女神三姉妹と能力がダブってんだよ。というか、アラガミの狙いは結局僕だったし。

 

「サカキ博士、ナナの血の力が女神三姉妹とダブって―――」

「何も言うな、レイジ」

 

 僕の言葉はジュリウスさんに遮られた。いやいや、最後まで言わせてくれても。

 ふと、奥にある扉を一瞥する。

 ナナはあの扉の向こうで眠っている。なんでも、あそこの部屋ならナナの『誘引』による力でアラガミが集まる心配は無いらしい。

 仕事を休めて羨ましいけど、やっぱり心配だなぁ。そう思っていると、ロミオ先輩が僕の肩を叩いた。

 

「レイジ、お前ナナに余計な事言うなよ」

 

 ナナなら心配いらねーよ、とか言われると思ってたけど、全然違う言葉だった。

 言えないよ、そりゃあ。折角目覚めた血の力が女神三姉妹の下位互換だなんて。

 そんな事実を突きつけられたら、僕なら一週間くらい立ち直れない。まあ、僕の血の力も『喚起』とかいう役立たずだけど。

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 ナナが血の力に目覚めてから数日が経った。その日の任務はソロミッションで、いつも通りに任務をこなしていると、突然フランから通信が届いた。

 

『レイジさん! アラガミ障壁の第6』

「まじで!?」

『タイヘン、タイヘン!』

 

 そういや、コウタさんがあそこの障壁を気に掛けてたっけ……。

 とにかく、急いでアナグラに戻らないと! いくら仕事が嫌だといっても、職務怠慢で人が死ぬのは目覚めが悪い!!

 

『……お待ちください! アナグラから飛び出した一台の車両が、防衛ラインにいるアラガミたちを引きつけて離れていきます!!』

「まさか……!」

 

 まさかもなにも、決まっている。車に乗っているのはナナだ!

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 ジュリウスさんとロミオ先輩に引き連れられ、鎮魂の寺院の奥深くでナナを捜索している。ちなみに、シエルとギルさんは退路を確保するために別の場所でアラガミを狩っている。

 それにしても、アラガミの数が報告よりも明らかに少ない。あれだけの数を、ナナが1人で頑張って殺していたのか……。

 

「いたよ、あそこだ!!」

 

 1匹のオウガテイルが、今にもナナに飛びかかろうとしていた。

 

「お母さん、私、皆を守りたいんだ……。だから、力を貸してね……」

 

 小さく、か細い声が届いた。

 バシュン、と音がした。僕とロミオ先輩が反応するよりも速く、ジュリウスさんはそのオウガテイルを撃ち抜いていた。

 

「ああ、力を貸そう」

「皆!? どうして来たの、私の近くに来ちゃダメだよ……!!」

 

 その言葉だと、常時アラガミを引きつけている僕の近くには来ちゃダメって意味になるんじゃね? もしかして、ナナは僕に対してずっとそう思っていたんじゃ―――

 

「うわっ!?」

 

 オウガテイルがナナの横を通り過ぎて僕に襲いかかってきた。

 

「あ、あれ? 私の血の力が効いている筈じゃ―――」

「各員、速やかにアラガミを討伐しろ! 1匹も逃がすな!!」

「イエッサー!!」

『こちらA地点、制圧を完了しました!!』

『こっちも大丈夫だ、問題ねえ!!』

「皆…… ありがとう……!」

 

 ナナが涙ぐみそうになってた。

 うんうん、本当に優しい仲間たちだよ。露骨なくらいに話題を転換したもん。

 さてと、ナナには色々とバレないように隅っこで大人しくしているとしよう。

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 滞りなく討伐作業は終わった。6人もいるってのもあるけど、ナナが頑張ってくれたおかげだろう。

 ナナも血の力を制御できたみたいで、新手のアラガミが出没する気配も無かった。

 だけど、ナナの表情は優れない。多分、迷惑かけたのを気に病んでいるのだろう。

 

「皆、ありがとう……。でもさ、ほら…… 私、また、こんな風に迷惑かけるかもだから……」

「ばか! そんなこと気にしないで、泣きたいときには思いっきり泣いたらいいんだよ」

 

 ロミオ先輩がピシリと一喝した。流石はロミオ先輩!

 そのあと、ロミオ先輩はおでんパンを出して―――!?

 

「おでんパン……!」

 

 いや待て、どっから出した!? おでんパン、結構サイズあるじゃん! ポッケに入る訳はないし…… えっ、あれ!?

 

「俺も持ってるぞ」

「俺もだ」

「私もです」

『ワタシモー!』

 

 何故か、皆持っていた。

 呆然としている僕に、お前も速く出せよみたいな目を皆向けてくる。

 いやいやいや、僕がおかしいの? 僕だけがおかしいの!?

 

「美味しいよ、おでんパン……!!」

 

 ロミオ先輩のおでんパンを食べながら、ナナは満開の笑みを見せた。久々に見たよ、ナナの笑顔。

 良かった、良かった。ナナが笑顔になってくれたら、これでもう一件落着―――

 

「そういえば、アラガミが私じゃなくてレイジを狙っていたような?」

 

 気付いてしまった。僕らがひたすら隠そうとした事実に、ナナは気付いてしまった。

 いつまでも隠し続けるのは無理だと分かってるけど、この感動的な場面でバレるのはマズい!

 周りに助けを求めると、全員が目を逸らした。僕に説明しろってのか、この薄情者ども!!

 

「えっと、調子が悪かったんじゃない―――」

『ヴァルキュリア、ナナヨリチョウユウシュウ!』

 

 ヴァルキュリアちゃんはえっへんと言わんばかりに胸を張っていた。

 やってしまった…… もう、バレちゃっただろ……。

 

「えっ……? もしかして、私の血の力より、女神ちゃんたちの方が……?」

 

 ナナが僕の胸倉を掴んだ。

 その顔には、ハリボテのような笑顔が張り付いていた。

 

「じょ、冗談だよね!? だって、私の血の力が、女神ちゃんよりも下だったら、存在意義が……」

 

 僕は悟った。下手な慰めなど、ナナには逆効果だと。

 心を鬼にし、僕はゆっくりと首を横に振った。

 

「そ、そんな…… そんな……」

 

 ナナがドシャリと崩れ落ちる。

 誰も、何も喋れない。しんしんと降り続く雪の音が、この寺院に響き渡った。

 





 今回のナナの話はバッドエンドでした……。人生、そうそう上手くいくもんじゃないしね!!
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