フライアのラウンジで今日の任務の反省会をしていると、フランのアナウンスが鳴り響いた。
『オープンチャンネルに救援要請、繋ぎます』
『こちら、サテライト拠点第二建設予定地! 感応種と思わしき反応を観測塔から―――』
頭の中が真っ白になった。
感応種の言葉で思い出したのは、馬鹿でかい巨体のアラガミ、マルドゥーク。確か、あいつも感応種なんだよな……。
「狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い狼怖い……」
無理無理無理、あいつと殺し合うなんて無理ですから。勝てる気がしないもん、あんなん。僕、最初に殺されかけたし。
行きたくね〜……。でもなぁ、僕だけ待機して、皆に戦わせるってのもアレだしなぁ……。それに、感応種の相手は僕らブラッドにしか務めらないし。
「大丈夫だって! 俺らはあの頃より強くなってるしさ!!」
「いや、僕は逃げ回っていただけですし……。そりゃあ、回避力は上がったと思いますけど」
「大丈夫です! いざとなったら、私がレイジを助けます!!」
シエルがそう言うなら…… って、女の子に全力で頼る僕って一体。
まあ、シエルは僕なんかより数段は強いからね。任務成績だって極東支部全体で見てもトップクラスだし。これがあれか、エリートと雑草の差なのか。
★☆★☆★☆
新たに確認された感応種のアラガミの名は『イェン・ツィー』というらしい。新種だ。マルドゥークじゃなくて本当に良かった。
だけど、能力の一切が不明なんだよな……。マルドゥークより強いってオチだったら死ねる。
そんなアラガミが、贖罪の街周辺に出没したらしい。偶然その場に居合わせた1人の神機使いが、神機使用不可の状態で救助待ちだ。
……感応種が現れる度に、僕らブラッドが休暇中だとしても駆り出されるのだろうか? だとしたら本当に最悪だな、感応種。さっさと絶滅してほしい。
そうこう思っているうちに、贖罪の街に着いた。
「イェン・ツィーの能力は未知の部分が多い。各自、一瞬たりとも気を抜くな」
「「「了解!」」」
一瞬たりとも気を抜かず、周りを警戒しながら進む。僕の場合、いつ奇襲されてもおかしくないし。
そうこうしていると、シユウのような姿のアラガミを見つけた。どうやら、あいつがイェン・ツィーらしい。
「なんか、随分と色鮮やかだな」
「だからって油断すんなよ」
「だれがするかよバーカ!」
相変わらず仲が悪いな、ロミオ先輩とギルさんは。
「ナナ、シエルは救助待ちの神機使いの保護に向かってくれ」
「了解しました」
「でも、私の血の力が発動しちゃったら…… ああ、そっか。レイジがいるから大丈夫だよねアハハハハハ!!」
おぅふ……。
見るに堪えないな、あの顔は。
ナナの血の力は決して女神三姉妹の下位互換という訳ではない。アラガミを誘引する範囲が広い分、ナナの血の力はずっと強力だ。
だけど、それだと乱戦になっちゃうんだよね〜……。各個撃破と乱戦のどっちが楽かと言われると、神機使いならまず間違いなく各個撃破って答えるだろうし。
だから、ナナは視界に入ったアラガミにだけ血の力を働かせるように制御している。相手のアラガミも女神三姉妹を捉えるけど。
だから、どうしようもない。ナナの血の力が活躍するには、僕とミッションに行かないくらしか……。
明らかに意気消沈したナナをシエルが慰めながら、二人は救助待ち神機使いのいる場所に向かった。
「レイジは囮役だ。相手は新種、細心の注意を払え」
「はい」
相手はあのマルドゥークと同じ感応種。其処らにいるアラガミと同じ訳がない。
「いくぞ、ミッション開始!」
僕が先行してイェン・ツィーへと駆け出す。討伐対象が僕に気を取られている隙に、僕以外の全員で集中砲火するのが狙いだ。
「ギュガギガゴァァァァァァ!!!!」
鬼のような雄叫びが贖罪の街に響き渡った。どうやら、レズじゃなく嫉妬するタイプだったようだ。
厄介だな。あのタイプは嫉妬すると同時に、活性化もするしなぁ。
「ギュルゴァ!!」
イェン・ツィーが舞い、何枚かの羽がヒラヒラと地面に落ちた。
ボコリ、と不快な音が響く。羽が落ちた地面から、オウガテイルに似たアラガミが沸いてきた。
その数、3体。だけど、イェン・ツィーは何枚も羽を地面に落としている。もっともっと増えそうだ。
いつの間にか、オウガテイルもどきの数がかなり増えていた。この数で囮なるのはキツいな……。
予想通り、オウガテイルに似たアラガミの視線が一斉に僕へと向けられた。はいはい、分かってましたよクソが!!
ヴァルキリアちゃんを構える。だけど、オウガテイルもどきは僕以外のブラッドメンバーに襲いかかった。
「「「なっ!?」」」
予想外だ。ホント、予想外だ。
皆も油断していたのか、対応が遅れていた。
僕に向けられる殺意はただ一つ。そう、イェン・ツィーだ。
多分、あのオウガテイルもどきはイェン・ツィーの支配下にいる。僕とサシの状況を作るため、他の皆に襲わせたのだろう。
とりあえず、この場所から離れるとしよう。皆がイェン・ツィーの攻撃に巻き込まれるかもだし。
撃ち逃げすべく、アテナイちゃんに神機を変型させた。
「グルルルルル……!!!」
『ミグルシイ……』
アテナイちゃんの冷徹な言葉を皮切りに、イェン・ツィーが滑空しながら襲い掛かってきた。
挑発しないでよ、アテナイちゃん!!
★☆★☆★☆
贖罪の街のとある一角。皆のいる場所から少し離れたその場所で、僕はイェン・ツィーと死闘( )を繰り広げていた。
イェン・ツィーの滑空やらエネルギー弾やらを躱し続ける。
流石は感応種ってところか。シユウよりも技が多彩だ。
迂闊に近寄れず、銃でチマチマ攻撃するしかない。
イェン・ツィーの顔面に銃弾をお見舞いしようとしたら、急に視界から消えた。
『レイジ、ウエ!』
上を見ると、僕に飛び蹴りをくらわせようとするイェン・ツィーの姿があった。
反射的に真横へと飛び込む。その直後、僕がいた地面はイェン・ツィーの蹴りにより大きく陥没した。
勘弁してくれよ……。仲間がいるなら兎も角、こんな強いアラガミの相手なんてしてらんないぞ!
割と真剣に撤退も考えたその時、どこからともなく放たれた銃弾がイェン・ツィーにヒットした。
「無事か、レイジ!?」
「ロミオ先輩!!」
銃弾を撃ったのはロミオ先輩だった。流石だぜ先輩!
「ギャウゥ!!??」
物陰から隙を伺っていたのか、ジュリウスさんとギルさんがイェン・ツィーの脚に一太刀浴びせた。妙に動きがいいと思ったら、2人ともバーストモードだった。
イェン・ツィーが体制を崩す。間髪入れず、弱点であろう頭部に銃弾を撃ち込んでやった。
イェン・ツィーが地面に倒れる。どうやら、さっきの一撃がトドメとなったみたいだ。
「よくやったぞ、レイジ。イェン・ツィーと1人で戦わせて悪かった」
「いえいえ、あんな事態想像できませんって……」
「だよなー。まさか、アラガミがアラガミを生み出すなんて思わなかったし? ジュリウスでも予測は無理だって」
「だからってお前の慌てっぷりはどうかと思うぞ」
「なんだと!?」
疲れた〜……。さて、これで今日の任務は終わりっと。
★☆★☆★☆
救助待ちの神機使いのいる場所へと向かうと、ナナとシエルが銀髪の美人さんを連れて歩いて来た。
「この方はアリサさんという名前だそうです。怪我もなく、神機に支障もありません」
アリサさんって言うのね。とりあえず、日本人ではなさそうだ。
「これにて任務完了です!」
「2人とも、ご苦労だった」
ビシリと敬礼する3人。だけど、その表情は柔らかい。
「改めて自己紹介させていただきます。私は極東支部の神機使い、アリサ・イリーニチナ・アミエーラです」
アリサさんが名刺を出した。だけど、今回はちゃんと準備してるぜ!
僕とジュリウスさんは、上着のポケットから名刺を出した。
「フェンリル極致化技術開発局、ブラッドの隊長を務めるジュリウス・ヴィスコンティです」
「同じく、副隊長を務めさせていただきます。無動レイジです。こちらは僕の神機、女神三姉妹ちゃんです」
『ヨロシクネ!!』
『……ヨロシク』
『……』
「はい、よろしくお願いします!」
アリサさんは特に驚いた様子もなく微笑みかけた。流石は極東支部の神機使い、まったく動じない。
「またあそこだけオフィスが見えるよ〜」
「隊長職って大変なんだな……」
なら、1日でもいいから僕と代わって―――
「それにしても、妙ちきりんな神機ですね〜」
「「「!!!!????」」」
アリサさんのあまりに直球ストレートな言葉に、僕は耳を疑った。
『『ビェェェェェェンンンンン!!!!!』』
かつて無い大きな泣き声だった。アレスちゃんは泣いてないけど。
アリサさんが目を丸くした。悪意が無いってのはタチが悪い!
「妙ちきりんじゃないって! 可愛くて、強くて、健気で、女神ちゃんたちは最高の神機だよ!!」
『グスッ…… ホントウ……?』
「本当本当!!」
『……///』
ようやく泣き止んだ……。
最近、ヴァルキリアちゃんやアテナイちゃんを宥めるのが上手くなってきた気がする。
「ご、ごめんなさい。まさか、大泣きするなんて……」
「大丈夫です。でも、次は気をつけてくださいよ?」
「あ、ありがとうございます!」
アリサさんが深々と頭を下げた。
やっぱり悪意が無かったのか。
「……やっぱり、私の知人に似てますね。神機に関しての苦労が滲み出てる雰囲気が……」
ま た ア マ ト 先 輩 か ! !
しばらくはスイーツイーターを更新します。とあるおっぱいは一先ず終わったしね!
フハハハハ泣いて喜ぶがいいごめんなさい調子乗りました。