スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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六十四品目 怠け者と、敵討ち

 僕らブラッドの面々は今、アナグラのラウンジにいる。

 なんと、ラウンジのテレビでジュリウスさんと連絡が取れるらしい。ヒバリさんが教えてくれた。任務も終わったので、早速通信してみることになったんだ。

 何気なく髪に手を触れる。最近、白髪が目に見えて増えた。

 原因は分かっている。どう考えても、ブラッドの隊長になったせいだ。

 報告書とか、作戦とか、色々と負担が増えた。シエルが手伝ってくれなきゃ、多分胃に穴が空いてた。

 いや、まだ原因はもう一つあるか。神機兵がバリバリ活躍してるから、どうにも暇ができてね。その間に、まあ、色々と用事がある訳よ。

 

「ねえねえ、大丈夫? 最近、目のクマが酷いよ〜?」

「だ、大丈夫じゃないから休日を……」

「……非常に申し上げにくいのですが、レイジは隊長ですから、そう簡単に有給は下りないかと思います」

「……」

 

 なにこれ死ねる。ジュリウスさん、もっと神機兵を量産してください。

 

『何の用だ? これでも忙しい身でな。手短に頼む』

 

 テレビにジュリウスさんが映った。なんか忙しなく手を動かしている。

 今思うと、戦闘力もあって、神機兵の開発もできて、どんだけスーパーマンなんだよジュリウスさん。天は二物を与えずじゃないのか!

 

『……レイジ、少しやつれたか?』

「見ての通りっすよ」

 

 ジュリウスさんが悲しそうな目をしたのを、みんなは見逃さなかった。

 

「おい、ジュリウス。どうしてブラッドを抜けた?」

 

 ギルさんが核心をついた。

 すると、ジュリウスさんの顔から悲しみの表情が消えた。まるで、仮面を被ったみたいだ。

 

『人は脆い。パーツの換えが効き、大量生産できる神機兵の開発に尽力するのが合理的だ』

「それなら、俺らに危険が及ばないってか? ほざけ」

『異論があるなら実績で示せ。では、通信を終える』

 

 ジュリウスさんは一方的に通信を切った。それ以降、ラウンジでは誰も喋れなかった。

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 今日は、ギルさんと2人だけの任務だった。贖罪の街に蔓延る小型アラガミを殲滅するっていう、簡単な任務だ。

 

「おい、大丈夫かレイジ」

 

 程なくして任務も終わり、輸送のヘリを待っているとギルさんが話しかけてきた。

 

「……え? いやいや、怪我なんてしてませんよ」

『ぷんすかぷんぷん! ちゃんとレイジ、まもれてるよ!!』

「あ〜…… そうじゃなくてな。お前、最近無理してねえか?」

 

 ……アラガミに積極的に攻撃してることを言ってるのだろうか?

 今の所、全員から心配されているな。そんなに僕が真面目に戦うのが心配になりますか。

 

「こんなんでも、ブラッドの隊長ですからね。頑張んないといけないですから」

「いや、それ以外でだ。休むことに全力を尽くすお前が、どうしてそんなにやつれている。いつにも増してフラフラじゃねえか」

「…………………ソ、ソンナムリシテルワケナイジャナイデスカー」

『えっとね、レイジはまえから』

「ストップ、ヴァルキュリアちゃん!?」

 

 ヴァルキュリアちゃんの口を塞いだ。最近、饒舌になってから大変だ。

 

「……話したくないなら、それでいい。だが、忘れるなよ。お前を支える仲間がいるってな」

「……はい、そうですよね」

 

 照れ臭そうに帽子を深く被ったギルさん。この人の方がよっぽど隊長じゃね? と思うこの頃だった。

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 今日のアナグラは、いつもより数倍賑わしかった。そう、とうとう現れたんだ。あの犬っころが。

 調査によると、あのわんわんおはギャングのリーダーみたいにアラガミを引き連れているらしい。目には目を、歯には歯を、数には数を、ということで極東支部は総力戦でマルドゥークに対抗するそうだ。

 本陣を叩くのは、勿論僕たちブラッドだ。ロミオ先輩の敵討ち、絶対に成し遂げてやる。

 マルドゥークは、どうやら黎明の亡都でウロウロしてるらしい。まるで、僕らを待っているかのように。

 

「行こう、ロミオ先輩の敵討ちだ」

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 私、シエル・アランソンにとってレイジとは、職場の上司でもあり、初めてできた大切な友達でもある。

 レイジは怠け者だ。ヒドい怠け者だ。前世はきっとナマケモノだろう。しかし、仲間のためになら自分の命を顧みない優しい男性でもある。それが私の評価だ。

 だから、今回の任務も、レイジは囮として逃げ回るのだろうと、そう思っていた。

 

「ギルさん、ナナはマルドゥークにまとわりつくガルムを引き離してくれ。僕とシエルでマルドゥークを叩く。ガルムを全部倒したら、速やかに僕らの援護に回る流れで」

『レイジ、あたまいい!』

『ふつうだとおもう』

 

 黎明の亡都の周りに数体のガルムがいる。それらと一箇所で戦えば、こちらがあっという間に不利となる。分担して戦うのはベストな作戦だろう。

 

「俺はこっちにいく、ナナはそっちのガルムを頼んだぞ」

「うん、任せて!」

 

 ギルとナナが早速ガルムを討伐しにいった。少し時間がかかるかもしれないが、あの2人なら問題なくガルムたちを倒せるだろう。

 

「シエル、今回はサポートに回ってくれるかい?」

「え?」

 

 耳を疑った。

 ロミオが死んで以来、レイジはどんなアラガミにも積極的に攻撃をしかけている。かつての彼を知る者から見れば、信じられないと思う程に。

 今までアラガミに集中放火されたレイジの回避能力は、既にベテラン神機使いの域にある。それでも、このレベルのアラガミの猛攻を掻い潜りながら攻撃するなんて無謀だ。

 

「無謀ですよ、レイジ! 攻撃なら私に任せて―――」

「シエル、これは命令だよ」

 

 聞いたこともない程、静かで有無を言わせない口調だった。結局、その迫力に押されて私は何も言えなかった。

 それにしても、ゾクゾクするような声だった。テープで録音したこの音声は、あとで100回聞くことにしよう。

 暫く黎明の亡都を進むと、ビルの上に佇む一体のアラガミと遭遇した。狼のような白いアラガミ。忘れはしない。ロミオの仇、マルドゥークだ。

 

「グルルル……!」

 

 マルドゥークの視線は完全にレイジに向かっていた。片目を潰したレイジに恨みを持っているのだろう。

 

「待ったかい? 僕も会いたかったよ、犬っころ」

 

 レイジが神機をアテナイちゃんへと変型させた。私も神機を銃形態にし、マルドゥークへと銃口を向けた。

 レイジが引き金を引くと同時に、私も引き金を引いた。

 熱を帯びた弾丸たちがマルドゥークを喰い破らんと宙を奔る。しかし、マルドゥークはビルからビルへと飛び移り、難なく銃弾を躱した。

 

「狙撃は無理くさいな。シエル、接近してヤツを叩くよ」

「は、はい!」

 

 レイジは素早く神機をヴァルキュリアちゃんへと変型させ、地面を蹴った。

 ……やはり、任務に積極的なレイジは少し心配になる。そう思いながら、私も後に続いた。

 マルドゥークがビルから地面に飛び降りた。その巨体に違わない、大きな地響きがした。

 足を止め、マルドゥークと一定の距離を保つ。あの巨体で、あれだけ俊敏な動作だ。迂闊に接近なんて出来ない。

 

「レイジ!?」

 

 レイジは少しも速度を緩めずにマルドゥークに接近した。

 待ってましたといわんばかりに、マルドゥークが右腕を振るった。しかし、レイジさんはそれを間一髪で躱した。続けて斬撃。マルドゥークに一筋の裂傷が刻まれた。

 レイジを潰し殺そうと、マルドゥークは何度も何度もレイジ目掛けて両腕を叩きつける。それでも、レイジはそれらを全て間一髪で躱し続ける。そして、何度もヴァルキュリアちゃんを振るう。マルドゥークの身体は傷だらけだ。

 地面にはマルドゥークが腕を振るった数と同じだけのクレーターができていた。恐ろしい威力。一発でもマトモに貰えば大ダメージは確実。あの猛攻を掻い潜るなんて、私には到底不可能だ。それこそ、相手の動きを予知するレベルでないと。

 レーザーや銃弾を放ち、せめてもの援護をする。しかし、マルドゥークはさして気にした様子もない。なんて、歯痒い……! ここまできて、レイジの助けになれないなんて。

 

「本当に、どうしてここまで動けて……!!」

『あの、少しいいですか?』

 

 通信機を通し、ヒバリさんが話しかけてきた。

 

『レイジさん、実はあの日から昨日までガルムの討伐を続けていたんですよ。みんなにバレないように、こっそりと任務を回してほしいって頼まれていたんです』

「……あ、あのレイジが自分から任務を!!??」

『それで、そのガルムの討伐数が…… 500体なんです』

「500!!!??」

 

 驚きを隠せない。通常の任務もこなしながらだとしたら、毎日毎日寝る間も惜しむレベルでないと、そんな数には到底及ばない。

 

『動きの先読みが可能なほどガルムの動きを研究して、それをマルドゥークと重ね合わせて交戦しているのかと……』

「レイジ……」

 

 レイジの本気の凄さを、少しだけ垣間見た気がした。また新たな一面を知れて嬉しい。

 録画しているこの映像を、あとで200回見ておこう。

 

 

 

 

★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 見える。マルドゥークの動きが手に取るように分かる。素早いといっても、所詮はガルムの上位互換でしかない。

 昔の偉い人が言った。当たらなければどうという事はないと。全くもってその通りだ。

 

『レイジ、うえ!』

 

 マルドゥークの巨大な爪が迫る。この軌道、躱すのは難しい。それなら!

 

「アテナイちゃん!!」

 

 神機をアテナイちゃんに変え、上に向かって銃弾を放つ。

 狙いは適当でいい。アテナイちゃんが勝手に修正してくれる。

 銃弾の衝撃が、マルドゥークの巨大な腕を弾き飛ばす。マルドゥークが痛みに怯んだ隙に神機をヴァルキュリアちゃんに変え、斬りつける。

 これはロミオ先輩の分。そして、その次も―――

 

「ロミオ先輩の分だ」

 

 ブラッドアーツを発動。ヴァルキュリアちゃんが紅く輝いた。威力が上昇したヴァルキュリアちゃんを、残った目におもいっきり突き刺した。痛みか、はたまた屈辱でか、マルドゥークは見境なく暴れ回った。

 流石に近寄れない。僕は急いで後退した。

 

「レイジ!」

 

 シエル…… そういや、いたなあ。

 

「両目を潰した。多分、攻めるなら今だと思う」

 

 神機をアテナイちゃんに変え、暴れ回るマルドゥークを狙撃した。シエルもハッとした表情で僕に続いて狙撃した。銃弾が見えていないせいか、面白くらいに当たる。

 ひたすら撃ってると、ガルムを討伐し終えたギルさんとナナがやって来た。

 

「待たせ…… おいおい、シエル一人でこれをやったってのか」

「凄くボロボロになってるよ!」

「いえ、レイジが一人で……」

「「!!!???」」

「ほらほら、チャンスだからいくよ」

 

 暴れ疲れたのか、マルドゥークの動きが鈍っていた。叩くなら今しかない!

 

「「「!」」」

 

 銃声が響いた。マルドゥークから煙が立ち上っている。

 三体の神機兵が、まるで誰かさんの代わりのようにマルドゥークを銃撃していた。予想外の痛みに、マルドゥークは大きな隙を晒した。

 これを機に、ブラッド全員でマルドゥークに飛びかかる。ナナのハンマーがマルドゥークの顎を弾き飛ばし、シエルとギルさんはそれぞれの脚を斬り飛ばした。

 マルドゥークは無様に地に伏せる。僕はヴァルキュリアちゃんを構え、力を溜めた。

 怨念の籠った唸り声をあげるマルドゥーク。自分がこんなちっぽけな生物に負けるなんて、と言ってる気がした。

 

「こっちはさ、4人(女神三姉妹と自分)で戦ってるんだ。負けるわけないだろ」

「レイジ……」←ブラッド4人と思ってる

「……フン」←ブラッド4人とry)

「うん、当たり前だよ!」←ブラッドry)

 

 マルドゥークの頭部にヴァルキュリアちゃんを振り下ろした。

 この前、昼飯のときに落としたプチトマトみたいな潰れ様だった。チャージクラッシュの威力に戦慄しつつ、僕は神機の構えをといた。

 ……勝った。やっと、勝てた。ロミオ先輩の仇を討てた。同時に、僕の努力が報われた瞬間でもあった。

 

「長かった、な……」

「でもさ。少し、寂しいよね……」

 

 ナナの言う通りだった。

 達成感が無いわけじゃない。あれだけの辛い日々が報われた瞬間なのだから。それでも、言いようのない寂しさの方が大きかった。

 神機兵が敬礼をしていた。僕らにか、それとも天国にいるロミオ先輩にか。ヴァルキュリアちゃんがお礼を言いながら満面の笑みを浮かべていると、神機兵の一体がデレデレして、先輩らしき神機兵がその神機兵を殴っていた。

 

「……あ、ヤバイ」

 

 安心したら、酷い眠気に襲われた。倒れ―――

 

「きゃあ、だいじょうぶですかレイジさん!!??」

 

 急にシエルが目の前に現れて、僕の体をガッチリホールドした。

 柔らかいけど、うん、女神三姉妹の方が心地良かったかな。そう思いながら、僕は眠りに落ちた。

 

 

 




 〆は女神三姉妹だと思った? 残念、シエルちゃんでした!

シエル「なんで本当に残念そうなんですかそんなにヒロインは女神三姉妹がいいんですかそんなにヒロインはメガネの冴えない中年がいいんですか答えてくださいよヒロインはヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロインヒロイン」

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