どうも皆さん、レイジです。
色々な人にパシらされて、ブラッドの隊長としてこれ以上なく職務を全うしています。
さて、僕はつい先日ソーマさんの研究のお手伝い…… という名の任務のデスパレードを終えましたが、間を置かずに次の厄介事が舞い込んできました。
原初のアラガミとか言われている『キュウビ』というアラガミの討伐をクレイドルの隊員さんに頼まれたのです。クレイドルが長年追っていたアラガミで、ここ最近になって極東に姿を見せているらしいです。流石はアラガミの動物園。劣悪な環境すぎて禿げそうです。
あと、キュウビは普通のアラガミとは一線を画す強さらしいです。断ろうにも、拒否権は当然のようにありません。周りの空気的に。
という訳で、僕らは今黎明の亡都でキュウビを探し回っています。他のメンバーはソーマさん、アリサさん、そしてこの厄介事を運んできた疫病か…… 新しく極東支部にやって来たリンドウさんです。元第一部隊のよしみでコウタさんを連れて行けや、と思いましたが口に出せませんでした。
「働けど働けど なおわが生活楽にならざり ぢつと手を見る」
「だ、大丈夫です! この任務が終わったら、きっと有給が取れますよ!」
「私はもう何度そのセリフを聞いたのでしょうか?」
じっと手を見続ける。自分で言うのも何だけど、働き者の手に見えた。某風の谷の姫君もこの手を好きになってくれるだろう。
そういえば、最後に休日を貰えたのは何日前だったろうか? 二週間、三週間、四…… 止めよう、数えると心が折れそうだ。
『レイジ、あそんでないでにんむにしゅうちゅうしなさい』
「すみませんアテナイちゃん……」
気を引き締めて、アテナイちゃんを構え直す。心なしか、いつもより三姉妹を持つのが辛いような。
『…………だいじょうぶ、はやくおわらせるようにわたしもがんばるから』
「アテナイちゃん可愛すぎる女神か」
『…………///』
アテナイちゃんは顔を赤くしながらもソッポを向いた。
なんやかんやで僕のオーバーワークを心配してくれるアテナイちゃん。そんな彼女を見ていると疲れが吹き飛ぶ。渇いた砂漠でオアシスを見つけたような気分だ。
「なーんか姉上を見てる気分だぜ」
「あ〜…… そういえば。ツバキさんも大概ツンデレでしたもんね」
「そうそう、昔からあんな感じでさ」
「ツンデレなんて下らねえ。所詮は精神疾患の一種だろうが」
「「それはひょっとしてギャグで言っているのか?」」
★☆★☆★☆
はい、そんなこんなでお狐様を見つけちゃいました。
地面に寝っ転がって日光浴してるみたいだけど、なんとなく神々しい感じがする。外見だけでもヤバイと分かるアラガミとはいかに。
キュウビはおもむろに立ち上がり、頻りに辺りを見回す。
警戒しているように見える。多分、僕らがいる気配を感じ取ったのだろう。瓦礫に隠れて様子を見ているといるのに、大したアラガミだ。
「何かこう、お前らと組んでアラガミをぶっ殺すのも久しぶりだな」
「どうしたんですかいきなり?」
「あー、いやな。歳をとると昔を思い出し易くなっちまってさ」
「昔、か。そういやアマトは今どうしているんだ?」
「あいつか? 相変わらず天然のカカオ豆捜索に精を出しているな」
「何やってるんですかあの人……」
なんか急に除け者にされたんですけど。別に寂しくないけどね、女神三姉妹がいるし。
「だからかな、今度こそあのキュウビを仕留められる気がするんだわ。頼りになる隊長さんもいる訳だしな」
「それでさ、シャワーを浴びようと浴室に入ったら何故かシエルがい…………アッハイ、ソウデスネ」
『わすれられてなくてよかったね!』
『それよりにんむにしゅうちゅうしなさい』
「悪い悪い、後でパーッと奢ってやるから許してくれ」
「えっ、いいんですか!?」
「おうよ。男に二言はないぜ」
『わたしはスサノオ!』
『…………ツクヨミがいいな』
「ちょっと待って」
男前だぜリンドウさん! とりあえず、それを支えにこの任務を遂行するとしよう。
「おい、いい加減にしないと逃げられるぞ」
ソーマさんは神機を構えていた。いつでも斬りかかれる状態で、準備オッケーといった感じだ。
そういえば、どうしてソーマさんの神機は真っ白なのだろうか。また極東支部の変態どもの悪ふざけなのか? 今度聞いてみよう。
「さーて、ご馳走の時間だ。頑張ろうねヴァルキュリアちゃん、アテナイちゃん、アレスちゃん」
『がんばろー!』
『…………きをつけてね』
『……』
★☆★☆★☆
はい、そんなこんなでお狐様もぶっ殺しました。僕がやったことは囮です。いつもと全く変わりませんね。
正直、レーザーが飛んできたときはゴッドイーターになったのを本気で後悔した。リンドウさん、ソーマさん、アリサさんがいなければどうなったか……。リンドウさん、右腕の装甲がぶっ壊されたし。
まあ、とりあえず三姉妹が美味しそうに食べていたので良しとしよう。流石は原初のアラガミと言われるだけある。……ねだられたらどうしよう。1人だと死ねるぞ僕。
「いよっ、お疲れさん」
「リンドウさん」
運送の車の上で黄昏ていると、リンドウさんが話しかけてきた。ヒョイっと車の上に飛び乗り、僕の隣に腰を下ろした。
「お前がいてくれて助かったぜ。こりゃあ奮発して奢んないといけねえな」
「感謝っ…… 圧倒的感謝ですっ……!」
とりあえずあれだ、酒だ酒。
酒っ! 飲まずにはいられない!
「……なあ、これが気になるか?」
「えっ?」
リンドウさんから右腕についての話題を振ってきたことに少し驚く。
気にならない、と言えば嘘になる。だって確実に人間の腕じゃないし。黒くてトゲトゲですし。でも、そうやすやすと踏み入っちゃいけない領域な気がしてたんだよな。プライバシーの侵害良くない。
「気になる、って顔だな。そうだな、ある日のミッションで―――」
リンドウさんの口から語られたのは、衝撃的すぎる体験談だった。
リンドウさんは過去に神機と腕輪を食われて、そのままアラガミ化して…… 普通なら絶対に助からないような悲劇だ。
それでも、そんなリンドウさんを助けたのが元第1部隊の隊長、桐永アマト…… 通称スイーツイーターだ。1人だけ最後まで諦めずに、リンドウさんを救出したらしい。
……なんなんだろうな、この差は。僕はロミオさんは死なせてしまい、ジュリウスさんも未だに助けられずに。気づけば、僕は拳を握りしめていた。
「レイジ、何があったかは大体聞いた。だからこそ、お前は誇ってもいいんだぜ?」
「……誇るだなんて、そんな。僕は隊員すら救えない、未熟で愚かな隊長ですよ」
リンドウさんは静かに首を振った。
「アマトは俺の神機までは…… レンまでは救えなかった。だけど、お前はあのかわい子ちゃんたちを救えたじゃねえか」
「レン?」
「ああ、俺の神機の精神体だ…… って、レイジは神機に精神体があるって信じるか?」
「信じますよ。信じるに決まっている」
「まあ、そうだよな。あの神機が相棒だとなぁ……」
そう言って、リンドウさんは空を見上げた。
「だからさ、お前はブラッドの隊長として3人も救っているんだ。十分に立派じゃねえか」
「そう、ですか。そう言ってくれると、少し救われた気分です」
僕もつられて空を見上げる。ムカつくくらいに晴れ渡った、綺麗な青空だった。
キュウビ「甚だ遺憾である」
マガツキュウビ(アカン)
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