スイーツイーター ~お菓子の神機使い~   作:フロンサワー

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誤射王国から誤射姫がお出でになりました!
果たして、アマト君は逆玉なるか!?


六品目 誤射姫と、スイーツイーター

「ああー……どうするよ」

 

エントランスルームのとある一角で、ソファーに座っているゴッドイーター『小川シュン』が頭を抱えていた。

 

「あっ、新入り!丁度良いとこに来た!!」

 

タイミングが悪く、丁度アマトが彼の視界に入った。

 

「なんですか?シュン先輩」

 

シュンはまるで苦痛から解放されたかのような表情だった。アマトの第六感が『厄介事だ』と叫んでいる。

 

「お前、この後俺の代わりに任務に行ってくれないか?つーか行け!」

 

後半はもはや命令であった。しかし、思ったよりもまともな頼みだ。

 

「いいですよ」

 

「本当か!?流石新型だな!」

 

新型は関係ないだろ、と思うアマトの傍ら、より一層シュンの表情が爽やかになる。

 

「まさか相当危険な任務なんですか?」

 

余りにも嬉しそうな様子のシュンを怪訝に思う。

 

「いや、そんなんじゃねえよ。グボログボロ一体の討伐だ。ガンバれよ!」

 

普通の任務だな。そう思ったアマトは、まだ同行者が極東支部一の誤射姫だと知るよしもなかった。

 

その後、任務の準備をするためターミナルで装備の状態をチェックしていたアマトに話しかける人物がいた。

 

「あ…………あの!一緒に任務に行くアマトさんですか?」

 

鮮やかなピンクの髪に、緑の衣装で身を包んだ優しそうな女性だった。

 

「はい、そうですけど…………」

 

人違いでないと分かり、安心した顔だ。

 

「私、台場カノンと言います!今日の任務、よろしくお願いします!」

 

「はあ……こちらこそ………」

 

(同行者がいたのか)

 

先輩なのに何故か低姿勢なカノンを見て弱冠引いていた。

 

「それじゃあ、これで失礼します!」

 

少し低姿勢過ぎるが、いい人だという印象だった。そのままターミナルでの作業を進める。

 

暫く作業をしていると、煙草の匂いがすることに気付く。

 

(この匂い……あの人だな)

 

「ん?よお、アマト」

 

「やっぱリンドウさんですか」

 

偶然隣のターミナルを使おうとしていたリンドウがアマトに話しかける。

 

「最近有名だぜ、謎の神機を使う新人だってな」

 

「わー、全然嬉しくないですね」

 

「まあ、そらそうだ。それよりこれから任務か?」

 

「はい、カノン先輩とっすね」

 

「マジか!」

 

ソレを聞いたリンドウは驚いたあと、憐れみの視線を向けていた。

 

「あー……あれだ、何があっても挫けるなよ」

 

「えっ」

 

作業を止め、煙草を口にくわえライターで火をつける。

 

「じゃあな」

 

フーっと煙を吹き、てをヒラヒラと振りながら去ってしまった。

 

「一体なんなんだ……」

 

その後、その意味を痛感することをまだ知らなかった。

 

最近すっかりお馴染みのヘリポートの中心でアマトはヘリの到着を待っていた。

 

「す、すみません!!もしかして待たせちゃいましたか!?」

 

遠くからそんな声が聞こえてくる。声のした方向をみると、カノンが慌てて走っていた。

 

「いえ、まだ時間じゃないですよ。俺が自主的に早く来てるだけですから。」

 

膝に手をつき、息を切らしているカノンに説明する。

 

「そ、そうだったんですか…………」

 

息を整え、改めてアマトと向かい合う。当然彼のお菓子神機が目に入った。

 

(またか……)

 

今までこの神機を見たものは一人残らず戦えるかどうかを心配した。また説明するのかと諦めに近い感情を抱いていたが…………

 

「わあ~、かわいい神機ですね」

 

その言葉はアマトを凍りつかせた。

 

「ど、どうしたんですか…………?」

 

フリーズしたアマトを見て、恐る恐る声をかける。

 

ガシッ!

 

あろうことか、カノンの手を掴み少し潤んだ瞳を近づけていた。まるで少女マンガに出てくるようなポーズである。

 

「えっ、ええぇ!!?」

そんなマンガの世界な事をされたカノンの頬は真っ赤だった。

 

「ありがとう…………ございます…………こんなことを言ってくれたの…………カノン先輩位ですよ…………」

 

所々詰まりながらも、感情が随分と籠った言葉だった。

 

「あ…………あわわ」

 

頭に血が昇り、ろくな思考もできないカノンは茫然とするしかできなかった。

 

そんな中、ヘリの音が耳に入る。視線を向けるとパイロットがこれ以上ないくらい目を剥いていた。

 

端から見られればどう写るのだろうか?

 

ボンッ!と音をたてそうな程顔が赤くなる。

 

「ち、違います!違うんですーーーーー!」

 

必死に否定するカノンの傍ら、原因を作ったアマトは感無量といった感じで空を仰いでいた。

 

 

 

グボログボロの発見された場所は鉄塔の森である。

 

ワニのようなアラガミだから水場に現れたのか?と、ずれた考えをしながら鉄塔の森に降り立った。

 

「カノン先輩、行きしょうか」

 

「ハ、ハ、ハイ!!」

 

「?」

 

未だに顔の赤いカノンを見て疑問に思う。しかし、問題なさそうなのですぐに頭の隅に追いやった。

 

捜索すること数分

 

「いたか」

 

水場の周りを調べ始めた矢先、優雅に泳いでいるグボログボロがいた。

 

「カノン先輩、準備はいいですか?」

 

ようやくカノンも落ち着きを取り戻していた。

 

「あっ……えっと、その……射線上に入らないでくれると、嬉しいです!」

 

(ああ、成る程な)

 

カノンの神機はブラスト型であり、間合いの取り方と銃弾も独特なものだ。誤射をしてしまう危険性も高い。

 

「大丈夫です、そんなへまはしませんよ」

 

「あっ!そうですよね、すみません!」

 

そんなやり取りをしてる内、グボログボロが移動を始めていた。

 

「そろそろ始めますよ」

 

それに気づいたアマトが動き出す。

 

ガシャン!

 

GEケーキの銃身が表れ、銃口をグボログボロに向ける。

 

ドンドンドンドン!!

 

ファンシーな銃身とは裏腹に、武骨なオラクルの銃弾がグボログボロを襲う。

 

「ギギャア!?」

 

彼が放った銃弾は全て弱点の背鰭に吸い込まれた。

 

攻撃されてることに気づき、このままでは狙われると判断したグボログボロはドプン、と水に潜る。

 

「ッチ!潜ったか」

 

ズガガガガガ!!!

 

水面に向かい手当たり次第に銃弾を撃ち込む。たくさんの水柱が上がるが当たった気配はない。

 

「アマトさん!」

 

「はい、かまえてください!」

 

次第に目の前の水面にできた小さな影がどんどん大きくなっていく。

 

バシャアン!!!

 

辺りに水を撒き散らしながらグボログボロが表れる。同時に神機をGEチョコの刀身に変える。

 

(いけるか…………?)

 

水から出てくるという大きなモーションの後ということもあり、僅かに隙が出来る。

 

地面を蹴り、グボログボロに接近する。確実に一撃を与えられると確信したが……

 

ボオオォォオン!

 

「ギギャアアアァァアア!?」

 

「なぜ!!?」

 

一人と一匹の悲鳴が木霊する。

 

肉の焼ける匂いと、何故かクッキーが焼けるような甘い匂いが漂っていた。

 

アマトは横からの衝撃で思いっきり吹き飛ばされた。今攻撃できる者など一人しかいない。

 

「射線上に入るなって、アタシ言わなかったっけ!?」

 

銃口から煙を出して佇むカノンであった。

 

「いや誰だアンタ!」

 

そうツッコんでしまう程の変容っぷりである。

 

「台場カノンに決まってるだろ!」

 

「マジですか!あの天使のようなカノン先輩はどこに!?」

 

「………ッ~~~!!そもそもアンタ、あんなことして誘ってるのかい!?」

 

「いや、なんのことですか?」

 

会話をしながら右、左とランダムに放たれる水砲を避け続ける。

 

(今…………!!)

 

水砲の弾幕が途切れる。その隙を見逃さず神機で切り抜ける

 

はずだった。

 

「危なッ!!!」

 

グボログボロの周囲に爆風が吹き荒れる。

 

「邪魔だよ!アマト!」

 

カノンに怒鳴られる。

 

「射線なんて無いだろもう!」

 

最もすぎるアマトの悲鳴は爆風の轟音に掻き消された。

 

 

 

爆風に晒されること数分間。その間アマトはちょくちょく銃弾を放つことしかできなかった。

 

しかし、その爆風もついに止まった。

 

「クッソ、弾切れかよ!」

 

思わずカノンは悪態をつく。

 

「来た…………!」

 

これをチャンスと言わんばかりにアマトがグボログボロまで駆け抜ける。

 

大地を蹴り、宙を舞うなか神機を変形させる。身の丈は有ろうGEチョコが表れる。

 

「ぉお!」

 

グボログボロの巨大な顔面にGEチョコが突き刺さった。

 

「ギ…………ギィ」

 

元々爆風の嵐でボロボロだったせいもあり、特に抵抗もせず地面に伏した。

 

『完全に殺した』そう確信すると顔面からGEチョコを引き抜く。GEチョコは血に濡れて赤く染まっていた。

 

「…………一番しんどい任務だった……」

 

ペタン、と地面に座り込む。

 

「あ、あの……大丈夫ですか?」

 

カノンが申し訳なさそうにしている。

 

「…………いつものカノン先輩ですよね?」

 

「ス、スミマセン!任務中になると興奮して性格が変わってしまって………」

 

(なにそれ怖い)

 

カノンに弱冠の恐怖を覚える。

 

「……捕食して早く帰投しましょう」

 

もう二度と一緒に任務に行かない。そう決意したアマトであった。

 

 

 

ところ変わって新人区間のとある一室。

 

「ヘヘヘ、今日は運が良かったぜ」

 

アマトにカノンとの任務を押しつけることが成功してシュンは上機嫌だった。

 

ドカリと自室のソファーに座り込む。

 

(………腹へったな)

 

ソファーから立ち上がり、冷蔵庫に手をかける。その中には他の食料と一緒に一枚の板チョコがあった。

 

(……俺板チョコなんて買ってたっけ?)

 

「まっ、いっか!」

 

上機嫌だったこともあり、細かいことを気にしなくなっていたが、それがいけなかった。

 

銀紙を破ると、黒色のチョコレートが表れる。

 

パキリ、と小気味良い音をたてて板チョコを味わう。

 

「…………ブハァ!!??」

 

口からチョコを血のように吐き出したあと、彼は暫く動けなかった。

 

ドアの外では中の様子を伺うように立っている、犯人とおぼしき人影があった。

 

「そろそろ食ってるだろうな」

 

勿論犯人はアマトである。シュンが食べた板チョコはアマト特製カカオ500%の、激苦チョコレートだったのだ。

 

報復も終わり、自分の部屋に戻る。

 

(今日は良いことなかったな)

 

そう思いながらベットに横になるが

 

コンコン

 

ドアをノックする音が響いた。

 

気だるげに起き上がりドアを開けると、クッキーを持ったカノンがいた。

 

「カノン先輩じゃないですか、どうしたんですか?」

 

「えっと……今日の任務のお礼です!ありがとうございました!」

 

手に持っていたクッキーを差し出す。アマトの反応は……

 

「カノン先輩ほんっと女神です」

 

狂喜乱舞であった。

 

「め、女神なんてそんな!!」

 

再び頬を赤くするカノン。しかし、喜んでもらいその表情は晴れやかだ。

 

「どうせなら一緒に食べましょう、カノン先輩」

 

「えっ……良いんですか!?」

 

「どうぞどうぞ、上がってください」

 

「ハ、ハイ!お邪魔します!」

 

また任務に行くのも悪くないな、と思いながら二人でクッキーを食べるアマトであった。

 




アマト君…………天然ですね…………
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