「大丈夫、ウララ?」
「はい、エスコートすていただきありがとうございます!」
『がんばって、ウララ!』
「ありがとうございます、ヴァルキュリアさん」
テルさんと共に新しく配属されたオペレーター、ウララを連れて足場の悪い道を進む。身体能力が強化された神機使いなら何でもないだろうけれど、一般人にはーー しかも女の子には少し辛い。
はぁ、と思わず溜息をつく。
とうとう今日という日を迎えてしまった。人生を振り返っても、今の憂鬱度はトップクラスに食い込むであろう。
何故かと言うと、今日の任務に同行する人たちがーー
「おい、おっせーぞ」
カレルさん、シュンさん、ジーナさんの3人だからだ。どうしてこう、怖そうな人ばかりが集まってきたのだろう。第一印象って大切だよね。
「す、すみません! ワザとじゃないんです、ワザとじゃないんです!」
「お、おう……」
誠心誠意、全力全開で頭を下げ続ける。
「あ、あの…… レイジさん、私のペースに合わすて遅れたんです。ですから、悪いのは私なんです!」
「あーもう、分かったから気にすんな!」
ウララの助け舟もあり、どうにか事無きを得た。任務前からこんなに疲れたのは久々だ。
「まあ、自己紹介でもしておくか。俺はカレル。こっちのガキみてーなのがシュンで、こっちの陰気な女がジーナだ」
「誰がガキだこのヤロー!」
「さっきまでのやり取りを思い出してみろ」
シュンさんとカレルさんは僕らそっちのけで喧嘩を始めた。というか、シュンさんが一方的に突っかかった。
「まあ…… こんな2人だけど、悪い人ではないのよ。気を悪くしないでね」
「は、はぁ……」
ジーナさん、怖そうだと思ったけど意外と良い人なのかな? やっぱり第一印象だけで性格を決めつけるのは良くないね。
『ねえねえ、わたしよりおむねがないけどほんとうにおねえさんなの?』
「「「!!!??」」」
揶揄でもなんでもなく、空気が凍った。
その場にいる全員が動けない。爆弾発言をしたヴァルキュリアちゃんは不思議そうな顔を浮かべていたが。
「……ええそうよ、お姉さんよ」
『そっかー!』
2人とも朗らかな笑顔を浮かべていた。ジーナさんの背後にドス黒いオーラが見えるが。
「なんつーか、ドン☆マイ!」
「安心しな、骨は拾ってやる」
「何も安心できない!?」
やべえ、やべえよ。これは明らかに地雷を踏み抜いちゃったよ。というか、地雷原一帯が誘爆しちゃったよ。
「ねえ、レイジ君…… だっけ?」
「は、はいぃぃぃ!!」
「1発だけなら、誤射かもしれない…… とっても素敵な言葉だと思わない?」
あっ、これアカンやつや。
★☆★☆★☆
その後、なんやかんやで防衛班の全員が血の力に目覚めてくれた。僕の心労と毛根が犠牲になったが。
そういえば、カレルさんが病院を経営しているらしい。発毛効果の高い育毛剤を作ってくれと頼み、全財産の2分の3を投資したらカレルさんにドン引きされた。
とまあ、そんな感じで色々あったのだが、アラガミの群れから極東を守るのに無事成功した。
僕と防衛班の皆さんは、この任務の打ち上げとしてちょっとしたパーティーを楽しんでいる。ムツミちゃんとカノンさんの手作りお菓子パーティーだ。
カノンさんの作ったお菓子がぶっ飛んだ美味しさだったのが驚きだった。ムツミちゃんと作ったお菓子も美味しかったけど、やはりカノンさんには敵わない。
それでも、スイーツイーターことアマト先輩はこれ以上のお菓子を作るそうだ。もうゴッドイーター止めてパティシエになれよ。
「みんな、楽しんでるかい?」
サカキ博士が現れた。
これはアレだ、厄介事の予兆だ。ソファーから立ち上がり、いつでも逃走できるように体制を整えた。
「どうしたんですか、サカキ博士?」
「ん……いや、ちょっとね。防衛班の君たちに提案があるんだ」
「それは稼げる話なのか?」
「君たち次第、ってところかな」
良かった、僕じゃなくて防衛班のみんなに頼みごとがあるみたいだ。
逃げる必要はないので、ソファーに座ってお菓子を頬張った。
「新たなサテライト拠点の建設が優先事項なのは君たちも知っての通りだね」
あ〜…… 確かに、アラガミに減らされた人口も少しづつだけも増えてはいるかなぁ。実際、僕の住んでた居住区もキツキツだし。
「しかし、拠点の建設にはそこを防衛できる人材が必要不可欠だ。ジーナ君、カレル君、シュン君、ブレンダン君、タツミ君。防衛部隊の隊長として、各々の隊を率いてみないかい?」
おい、カノンさんが露骨に外されたぞ!
これには流石のカノンさんもショックを受けて…… いや、普通にみんなの昇進を喜んでいる。器が広いなぁ。
「あれ、俺はやること変わんない感じですか?」
「君には防衛部隊全体の総指揮もやってほしいんだ」
「うおっ、マジっすか」
あ、悪魔かペイラー榊……!
班長に加えて、防衛部隊の総指揮なんて! タツミさんが過労死するぞ!!
「職務は今以上に大変になるだろうけど…… 現場から離れるのは君も不本意だろう?」
「うっす、気持ちを汲んでくれてありがたいっす!」
タフだ。流石はタツミさん、タフだ。アラガミの群れに突っ込んでも余裕で戦えるだけはある。
「それじゃあ、私はこれで。みんなのいい返事、待ってるからね」
それだけ言い残し、サカキ博士は去って行った。
「あの、皆さんは隊長の話を引き受けるんですか?」
「あたぼうよ! こんな儲けれるチャンス、そうそう無いからな!」
「俺も同意見だ」
僕も隊長になったのを境に、飛躍的に給料も増えたしな。まあ、使う機会がないけど。あっ、カレルさんの病院に投資したか。
「私はお金に興味は無いけれど…… いい機会だし引き受けようと思ってるわ」
「俺もそう思うが…… 自分にそんな大役が務まるのか不安だな」
「ブレ公はそのままで十分だろ。あっ、勿論俺も引き受けるつもりだぜ!」
どうやら、みんな引き受けるつもりらしい。何か言えることはないかと思い、僕はブラッドの隊長にこれまでを振り返った。
「えっと…… 皆さん、隊長職はストレスが多いので、頭髪のケアには十分気をつけてくださいね!」
「「「……」」」
なんか可哀想な人を見る目で見られた。おかしいな、何も変なことなんて言ってないのに。
「いや、本当に抜け落ちる髪が増えて…… ねえ、ブレンダンさん」
「何故そこで俺を見る!?」
いやいやだってね? ブレンダンさん他の人よりおデコが広いし、何より僕と同じような苦労人オーラが滲み出てるから。
「育毛剤の話だが…… できるだけ早急に話をつけてやる。だから頑張れ」
「偶にはお前の任務も手伝ってやるよ。報酬はきっちり貰うけどな」
「そうね、私も手伝うわ。誰にだって、きっと散らしたくないものだから」
「えっと…… 私もレイジさんに任務をお手伝いします!」
「「「それなんて死体蹴り?」」」
その後、万屋で育毛剤を買っているタツミさんの姿が目撃されたとかなんとか。
アラガミが出なくたっていいじゃない、人間だもの。
……冗談です。レイジ破裂編ではちゃんとアラガミと戦わせます。
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