距離を置きたいだけなんだけど   作:ろしでれ

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第15話 今日はデートですね

 

 

『辛い』

 

 

――という表現は、果たして正しいのだろうか。

 

 

少なくとも今のアリサには、もっと別の言葉の方が適切であるように思えた。

 

 

『痛い』

 

 

そう、痛いのだ。

舌が痛い。

唇が痛い。

口の中全体が熱を持っているようにひりついて、喉の奥にまで未だ焼け付くような感覚が残っている。

 

どうにか完食したあと既に店を出てから少し経っているというのに、一向に収まってくれる気配がない。

 

むしろ時間が経つほど、自分が先ほどまで何を口にしていたのかを身体の方が理解し始めているような気さえした。

 

水は飲んだ。

何度も飲んだ。

それでも駄目だった。

 

 

冷たい水が口の中へ入った瞬間だけは多少楽になるものの、飲み込んでしまえば、すぐにあの忌々しい熱が痛みを伴い戻ってくる。

 

特に最後。

あの赤い液体。

 

 

【血の池地獄】

※と呼ばれるラーメン。しかもこの店のスタンダード

【鬼の涙】

※と呼ばれる調味料。

正式名称:鬼の目にも涙。鬼が泣き出すほどの辛い調味料

 

 

 

名前からして嫌な予感しかしなかった。と言うより絶対に料理名、調味料の名前にしてはいけないだろう、とさえ思う。それを、どうして自分は食してしまったのだろう。

 

 

いや、アリサ自身理由なら分かっている。分かっているからこそ、余計に腹立たしい。素直になれない自分自身と相まって。

 

 

「…………」

 

 

アリサは公園のベンチへ腰掛けたまま、微動だにしなかった。

両肘を膝の上へ置き、組んだ両手に額を押し付ける。

 

傍から見れば、何か重大な問題について深く思索しているようにも見えたかもしれない。

 

しかし、その実態はそんな高尚なものではない。

 

何も考えたくなかった。

 

喋りたくもない。

 

出来ることなら、このまま口の中から痛みが完全に消えるまで、一切動きたくなかった。

 

ただ、それだけである。

 

そして何より――。

 

 

「(……もう二度と、あれは食べない。二度と、いかない)」

 

 

それだけは、誰に言われるでもなく固く心に誓っていた──のだが。

 

そんな思考の中に入ってくる異物的な光景も広がる。

 

 

『僕も初心者も同然だよ。中学時代に少し付き合っただけで、普段こんな辛いの食べないもん』

 

 

と、言いながらも食べている横に座る彼の姿が目に浮かぶ。アリサがライバル視を、している彼、伊織。

しかし、それは学業での話だ。

 

今回の、この罰ゲームと見紛う地獄――【地獄の釜】でのこととは何の関係もない。

 

ない、はずなのだ。

 

伊織はアリサに食べろと言っていない。煽ってきたわけでもない。そもそも本人だって辛いと言っていた。

 

だから、彼に責任などあるはずがない。

そんなことはアリサ自身、十分に理解している。

 

理解している、のだが――。

 

 

 

「……Это всё из-за Санады-куна」

──……全部、真田くんのせい。

 

 

ぽつり。

 

誰にも聞かせるつもりのない、あまりにも理不尽な責任転嫁。

 

 

 

 

 

 

──いやいやいや、なんでやねん。それは流石に伊織関係無いやろ!

 

 

 

 

 

 

そんな心の中のエセ関西弁式ツッコミが聞こえるはずもない。

 

もっとも、それを思った人物は、アリサが気付いていなかっただけで既にすぐ側まで来ていたのだが。

 

そして当然、政近は聞こえてしまったロシア語の意味を指摘することもない。

 

いつものように何も聞かなかったことにして、小さく頭を掻くと。

 

 

「っ……アーリャ? 大丈夫か?」

 

 

おそるおそる、ベンチで項垂れるアリサへ声を掛けた。

 

 

「…………」

 

 

その声に、アリサはゆっくりと顔を上げた。

虚ろな瞳が、目の前に立つ政近を捉える。

心配そうにこちらを覗き込む顔。

 

その顔をぼんやりと見つめていると――ほんの少し前にも、同じような表情を向けられたことを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

『……アーリャ、大丈夫か?』

 

 

 

 

 

場所は違う。

 

今いるのは、公園のベンチ。

けれど先ほど、その言葉を掛けられた時には。

目の前には、見るからに危険な赤色をしたラーメンがあった。

 

 

「…………」

 

 

ずきり。

思い出しただけだというのに、舌先が痛んだような気がした。いや、実際まだ痛いのだけれど。

 

そして、それを切っ掛けに。

 

出来ることなら二度と思い出したくなかった、ほんの少し前の光景が、嫌というほど鮮明に蘇ってきた。

 

 

 

 

――光景の始まりは、伊織の言葉からだった。

 

 

 

 

『僕も初心者も同然だよ。中学時代に少し付き合っただけで、普段こんな辛いの食べないもん』

 

 

店へ入る前、アリサが彼に聞くと、確かにそう返してきた。

だからこそ、アリサは目の前に置かれた真っ赤なラーメンを前にして、すぐには箸を伸ばさなかった。

 

 

赤い。

とにかく、赤い。

スープも赤ければ、その表面に浮かんでいるものまで赤い。

まさに料理名の通りの外観。

 

 

立ち昇る湯気さえ、何となく危険なものに見えてくる。

 

 

政近と有希は別として。

二人が辛いものを好んでいることは、ここへ来るまでの会話で既に分かっている。

ならば参考にするべきなのは――。

 

 

『伊織くんにとっては久しぶりになりますね? 存分に味を楽しみましょう』

『…………ん』

 

 

アリサは、ちらりと隣へ視線を向けた。

有希と話をしている伊織だった。

 

自分と同じく、辛いものを日常的に食べているわけではない人間。

 

先ほど美味しそうにクレープを頬張る可愛らしい男子は、紛れもなく甘党の香りがする、と言うものだ。故に彼の反応を待ってからが一番賢い選択だとアリサは考えた。

 

 

その伊織が箸を取り、麺を持ち上げる。

少しだけ息を吹きかけてから。

 

 

『……ん』

 

 

一口。

 

 

『…………』

 

 

ごくり

思わず生唾を飲み込むアリサ。

密かに伊織の反応をその様子を窺う。それをどうにかして材料とし覚悟を固めなければならないから。

 

そんな伊織の動きが、一瞬だけ止まった。

僅かに眉が寄る。

 

しかし。

 

 

『……やっぱり評判通り。辛いね、これ』

『でしょ? それがクセになって、素材の旨味を存分に引き出して引き立ててもくれて、最高です』

『流石にその域にまではいけないよ……』

 

 

辛いとは言っている。 水にも手を伸ばした。 それでも、アリサの目には何処か余裕があるように見えた。

 

 

『中学以来って言うなら2年以上前? 伊織も辛党新党の仲間入りだな』

『やだよ、そんなの。たまにで良いから。たまにで十分』

『まあ、残念です。でも、いつでも待ってますからね』

 

 

政近の勧誘や有希の言葉も断り、伊織は水に手を伸ばして一口いれた。

で、他愛のない話をしつつ再び箸を取る。

 

 

『…………』

 

 

二口目。 

間違いない、普通に食べていると言える。

少なくとも、毒物ではない。この赤々としたものは立派な料理。食べられないほどではないらしい。

 

伊織はそう言っている、証明してくれているのだ。

 

 

 

『(……大丈夫そうね)』

『アーリャ? 無理はするなよ? マジで』

『なんのことかしら? 無理してないわ』

『(嘘つけ、躊躇しまくりのくせに……)』

 

 

政近の言葉は今は届かない。

少なくとも、皆のいる場所へ、いかないと疎外感がある。ここまできて、食べないという退路自体存在しないのだ。初心者も同然という、戦友(ライバル)は既に先を進んでる。先導してくれているのだ。

進まなければ、ならない。

その時。

 

 

 

 

アリサ・ミハイロヴナ・九条は、確かにそう判断したんだ。

 

 

 

 

そして、その後それを大いに後悔する。

一口含んだ瞬間にまるで舌先から全身に至るまでに痺れるかのよう。

 

 

『ゴホッ! ゴホッ!』

 

 

食事時に、女の子なのに、あるまじき行為をしてしまうが、意に返すことはない。

 

チラリ、と伊織を見る。

彼は気づかないが、アリサは視線を突き刺した。

 

 

 

 

 

──嘘つき!!!

 

 

 

 

 

と。

無論、伊織は一言も、大丈夫だとは言っていない。

 

ただ「辛い」と言って、水を飲んで、もう一口食べただけである。

 

しかし、この時のアリサにそんな常識的な考えが出来るわけもなく。

ただ、地獄の釜のなかで、盛大な煽りを、地獄の番人に等しい有希からのさらなる煽りを受けて、退路を断ち切り、結果終わりの見えない地獄の綱渡りをし続ける羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなアリサの様子を見ていた政近も、その辺りの事情はなんとなく察していた。

 

食べ始める前から、やけに伊織の方を気にしていたのを見ていたからだ。

 

最初は単純に、有希だけでなく伊織にも負けん気を発揮しているのだと思っていた。

学業では何かと張り合っている二人だ。

その対抗心が、こんなところにまで飛び火したのだろう、と。

 

だが、どうも違う。

 

伊織を見るアリサの視線が、途中から明らかに変わっていた。

特に最初の一口を食べた直後。

むせながら伊織へ向けたあの視線。

伊織本人はまったく気付いていなかったが、あれは対抗心とは違う。

 

 

つまり。

 

 

 

① 伊織も初心者らしい。

『なら参考になるわね』

 

 

② 伊織が食べる。

『…………どんな感じかしら?』

 

 

③ 伊織『辛い』

『やっぱり辛いのね』

 

 

④ 水を飲む。

『水があればなんとかなる?』

 

 

⑤ 割と早く二口目。普通に食う。

『……あ、大丈夫そう』

 

 

⑥ 会話をする余裕もある。

『このくらいなら、いけそう』

 

 

⑦ ゴホッ! ゴホッ!

 

 

⑧ 伊織を見る。

 

 

 

 

 

──嘘つき!!!

 

 

 

この想像通りだとすれば。

 

なかなかに理不尽極まりないと言えるだろう。

伊織は一度たりとも、大丈夫だとは言っていないのだから。

 

むしろ最初から辛いと口にしている。

 

それを勝手に参考にして、勝手に大丈夫だと判断し、勝手に食べて、勝手に騙されたような目を向けているのだから、伊織からすればたまったものではないだろう。

 

もっとも。

 

そんな理不尽な責任転嫁をしてしまうくらいにはきつかったんだろう、と思っている。

 

 

「(……死相が見えてる)」

 

 

そこだけは、政近にも痛いほど理解出来たのだ。

あの場で心底楽しそうだったのは有希だけである。

伊織の前だから自重したい気持ちとアリサをイジメたい嗜虐心の狭間に揺れていて、伊織自身も余裕はなく必死に堪えているのが分かってから、有希の揺れは収まる。

 

 

「(瑠璃乃さんも来てくれてたら、何とかなったかも……か?)」

 

 

アリサの自業自得は当然ある。が、有希をセーブできなかった兄としての不甲斐なさも少なからずある。だから最善はストッパーとして、あの瑠璃乃が特待券だけでなく、一緒に来てくれる未来が合ったのなら──────。

 

 

「あ、ないな。うん、無理だろ多分」

「………なにが?」

「いや、こっちの話」

 

 

政近の声にアリサは反応を見せる。

政近自身は自らの考えを即否定した。決めつける様で悪いが、2人して遊ぼうとする光景しか見えないかったから。

 

 

「……ほかの2人は?」

「ああ、向こうで話してる。じゃなくて、アイス食ってるな」

 

 

政近が視線を向けると、そこには先ほどまで話をしているだけだった2人がいる、が、その手にはアイスが握られていた。

どちらかが奢ったのだろう。十中八九、伊織がだろうが。

 

 

「────────」

 

 

 

その時、アリサの目には光がわずかながら戻った気がした。

その視線の先にあるのは、間違いなく──。

 

「あっと、……アイス、アーリャも食べる?」

「たべる」

 

 

即答である。希望を見出したのはあのアイスで確定だろう。地獄から生還を果たした勇者アーリャは、救いを求めているのだ。あのアイスに。

 

そんな割とどうでもいい考えを張り巡らせると、政近は周囲を見渡す。

何処かで買ってきたにしては、早い、と思ったので、直ぐ近くにあるのだろう、と判断。

読み通り、直ぐ側にアイスを販売しているワゴンがあったので、足早に向かうのだった。

 

 

 

──政近とアリサがアイスを買いに移動した丁度その時だ。

 

 

「伊織くん。もしよろしければ、少し私のお買い物に付き合っていただけませんか?」

 

 

不意に向けられたお願いに、伊織は僅かに目を瞬かせ、そのまま不思議そうに首を傾げる。

 

 

「え、買い物?」

「はい。元々、このあと少し買いたい物がありまして」

 

 

そう言って、有希は柔らかく微笑む。

アリサがあの状態では、政近がその場を離れることはないだろう。

少なくとも、ある程度回復するまでは。

そして、いつ動けるようになるかも分からないアリサを揃って眺めながら待つというのも、それはそれで居心地が悪い。

有希としては、その時間を利用して用事を済ませておきたい、ということらしい。

合理的ではある。

それに。

 

 

「ご安心してください。政近くんには、私からお話ししてありますので」

「そうなの?」

「はい。政近くんは、アーリャさんに付いていてくれるそうですから、その点はご心配なく」

「そっか」

 

 

伊織は素直に頷いた。

政近はアリサの傍に残る。政近がついていてくれたらきっと大丈夫だろう。その間に有希は買い物を済ませに行く。

そして自分には、これといった予定もない。

ならば。

 

 

「僕でいいなら、別に構わないよ」

「本当ですか?」 

 

 

伊織が返事をした瞬間、有希の表情がぱっと明るくなった。

普段から人当たりの良い笑顔を絶やさない彼女ではあるが、今のそれは先ほどまでとはほんの少し違うように見える。

純粋に嬉しそうな。

そんな笑顔だった。

 

 

「うん。元々、今日の用事は終わってるからね。この後も特に予定もないし」

「ありがとうございます伊織くん!」

 

 

有希は嬉しそうに胸元で両手を合わせる。

その仕草を見ながら、伊織はふと昔のことを思い出した。

 

考えてみれば、こうして有希の買い物に付き合うこと自体は初めてではない。

 

中等部にいた頃。

 

生徒会で必要になる備品や、行事で使用する物を揃えるために、二人で買い出しへ出たことが何度かあった。

最初から二人で行く予定だったこともあれば、人手が足りないからと途中で伊織が駆り出されたこともある。我ながら本当に生徒会に所属してないのか? と疑問に思えるほどだった。

 

店から店へ移動して。

必要な物を探して。

 

気が付けば増えていた荷物は自分の両手を塞いでいた。  

 

それでも特に文句を言うことなく、有希と並んで歩いた。

 

大変だったこともあるが、良い思い出とも言える。

あのときは楽しかったから。

 

 

だから今回も、それと大して変わらないだろう。

有希の買い物に付き合うだけ。ただ、それだけのこと。懐かしい記憶を思い返しながら。

 

 

 

 

 

――そのはずだった。

 

 

 

 

 

「では――」

 

 

有希が、ほんの少しだけ楽しそうに歯を見せながら笑うと。

 

 

「今日はデートですね、伊織くん」

「…………」

 

 

一瞬。

伊織の思考が、綺麗に止まった。

今、聞き慣れない単語が聞こえた気がする。

 

いや──厳密には聞き慣れないわけではない。

 

漫画でも。

ラノベでも。

ゲームでも。

それこそ何度となく見聞きしてきた言葉だ。

ただし――。

 

 

「…………デート?」

 

 

自分自身へ向けられたことが、ほとんどないだけで。

 

 

「はい。デートですよ」

 

 

聞き返したところで訂正されることもなく。

むしろ有希は、念を押すようにもう一度口にした。

その顔には、いつもと変わらない柔らかな笑みが浮かんでいる。

まるで何でもないことを口にしたかのように。

対する伊織は、そうはいかなかった。

 

 

「あ、いや、そのーーーえっと、どう言ったら、いいか……っ」

「ふふ、そんな慌てなくても。以前もご一緒していただけたじゃありませんか」

「それは生徒会の買い出しを手伝っただけで────」

 

 

デートとは呼べないだろう、と伊織は言うが、有希は楽しそうに笑う。

 

 

「ふふっ。そうですね。あの時は、生徒会のお仕事でしたから。手伝っていただけたことは感謝してます」

 

 

意外にも、有希はあっさりと伊織の言い分を認めたそのことに、伊織は僅かに安堵する。

そう。

あれは買い出しだ。

休日に男女2人で出掛けていたとしても、目的は生徒会の業務。

必要な物を揃えるために有希が出掛け、伊織がその手伝いをした。

だから、デートではない。

少なくとも伊織の中では、その理屈で綺麗に整理出来る。

しかし。

 

 

「では、今日はどうでしょう?」

「…………え?」

 

 

有希が小さく首を傾げる。

 

 

 

「今日は生徒会のお仕事ではありませんよ?」

「…………」

「つまり、買い出しでもありません」

「…………」

「私が個人的なお買い物に伊織くんをお誘いして、伊織くんが了承してくださいました」

 

 

 

1つ。

また1つ。

逃げ道を塞ぐように事実だけが並べられていく。

そして最後に、有希は変わらぬ笑顔のまま。

 

 

「ですから――今日はデート、で良いですよね?」

「…………」

 

 

何か反論ある? と問われたように思えた。

そして、何も出てこない。

これは学校の用事ではない。生徒会も関係ない。

 

有希が誘って。

伊織が了承した。

 

男女2人で、これから買い物へ出掛ける――つまり、デートと定義される。

一度その言葉を意識してしまえば、先ほどまで何とも思っていなかった状況まで違って見えてくるから不思議だった。

 

目の前にいるのは、昔から知っている友人。

それは何も変わらない。

けれど同時に。

今の有希は制服姿でもなければ、生徒会の仕事をしているわけでもない。休日に。私服姿で。

自分と2人きりで出掛けようとしている、一人の女の子でもあって。

 

 

「…………っ」

 

 

そこまで意識した瞬間。

伊織の頬に、遅れて熱が集まった。

 

 

「あら?」

 

 

当然、有希がそれを見逃すはずもない。

 

 

「伊織くん。お顔が赤いですよ?」

「…………誰のせいだと思ってるの」

「ふふふ。私は嬉しいです」

 

 

伊織は小さくため息を吐き、熱を持った頬をどうにか誤魔化そうとする。

そんな彼を見て、有希は一歩先へ出た。

そして、くるり。

身体を反転させ、伊織へ向き直る。

 

 

 

 

 

「さあ、行きましよう。伊織くん!」 

「……了解です」

 

 

 

 

 

 

 

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