天国には理想郷がありまして、その後   作:空飛ぶ鶏゜

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膝の上のラプソディ

 総悟が公園でサボってるのを見かけたので、声をかけた。

 そこまではまあ、いつものことだ。

 眠いというので膝を貸した。

 目の前に転がる形の良い丸い頭。

 誘惑に勝てず撫でてみたが、何も言われなかったのでそのまま撫でてる。

 総悟の髪は柔らかくツルリとして気持ちいい。

 そこに通りがかったのが土方さんだった。

 

「お前らなにやってんだ」

 

 土方さんはこちらを見て口を開き、咥えていた煙草を落とした。

 

「総悟、今日サボり? 教育係きちゃったよ?」

 

 ゆすって起こすと、総悟はアイマスクを引き上げちらりと土方さんを見る。

 

「いっけね、こりゃまずいところを見られちまったィ」

「そいつは万事屋と付き合い始めたとか聞いたんだが……?」

 

 ふむ、なるほど?

 

「そーくん、鬼の副長さんにみつかっちゃった。私たちの仲もここまでね」

「そんな寂しいこというんじゃねぇよ」

「だって、こんなとこ見られたんじゃあ」

「大丈夫でさぁ、俺がなんとかしてやる」

「本当、そーくん」

「本当でさぁ」

「そーくん、好き」

「俺も好きだぜ、そのへんに落ちてる空き缶の次ぐらいにな」

「本当!? 嬉しい!」

「待て待て待て!!!!」

 

 土方さんから待ったが入った。

 総悟は私の膝に頭を預けたまま、首の角度だけで私から土方さんへ視線を移す。

 

「男の嫉妬は見苦しいですぜィ」

「なんでそーなる!! つかてめぇ、昼間っから堂々と。いや、こりゃあれか……はぁ」

 

 土方さんは溜息を一つ吐き、胸元から煙草を取り出して咥え、火を点ける。

 どうやら茶番に気付かれたらしい。まあ台詞も棒読みでしたし、演技に熱も入っていなかった。

 

「キリ、てめぇのせいでバレちまったじゃねぇか。演技下手か」

「総悟の演技も大概だよ。空き缶の次はちょっと私嫌だなぁ」

「なんならいいんだよ」

「うーん、給料日前の千円ぐらい?」

「微妙なとこついてくんな」

「お金は大事だよ」

 

 それにしても総悟は動く気配がないな。

 土方さんは連れて行きたそうにしているが、関わりたくない気持ちと葛藤しているようだった。

 

「お前らなにやってんだよ」

 

 背後から声を掛けられ、振り向くと銀さんが立っていた。

 

「万事屋、いやこれは……」

 

 土方さんは汗を浮かべて弁明を始めていた。

 我関せずという感じで総悟が私を見る。

 

「なぁ、キリ、手をこーやって」

「こう?」

 

 総悟がゆるく拳を作ってみせる。

 言われたまま真似ると、総悟は私の拳へ親指を突き立て、出し入れし始めた。

 

「総悟おおおおお!?」

「あー、ごめん総悟。これやっちゃダメって銀さんに言われてるんだ」

「なんでィ、つまんねぇな」

 

 土方さんは二本目のタバコも取り落とす羽目になった。火事には気をつけて欲しい。

 拳をほどいて手のひらを総悟の頭に乗せる。

 

「つか、どういう状況で旦那の前でんなことを話すことになったんでィ。俺はソッチのほうが気になんだが」

「セックスってどう……」

 

 背後から銀さんの手が伸び、口を塞がれた。

 

「なんでィ。旦那まだコイツに手つけてねぇんですかィ」

「沖田君は黙ろうか、一度」

「もがもが」

「お前はもっと黙ろうな」

 

 確かに過失は認めよう。でもなんでそこに行き着いたのかは総悟の推理力の問題で、私が原因ではないんじゃないか?

 そんな事を伝えたいのに、口を塞がれて喋ることもできない。

 

「そこの土方君も、教育ちゃんとしてもらっていいですか? うちの子に悪い影響出てんですけど」

「同罪だろ、そいつもノリノリでやってたぞ」

「そっちが原因で、この子こーなっちゃってんのが分かんないんですか?」

 

 私を挟んでバチバチに火花が散っている。

 あれ、これって刀が抜かれる感じ?

 視線を落として総悟を見ると、面白いものが始まったとでもいうように、楽しそうな顔をしていた。

 

「元からそいつの口は悪かったよ」

「そーですか、けど悪い手癖まで覚えたのは明らかにそっちが原因だろう」

 

 さらにヒートアップしている。

 しょうがないなぁ。少し悩んだが、口を塞いでいる手をペロリとなめる。

 

「っ!?」

 

 驚いた拍子に無事拘束が外れたので、総悟の頭を押して起こす。

 

「土方さん、はい、これ返すね」

「銀さんも大人げない」

「総悟もちょっとやりすぎ」

 

 立ち上がり、膝を払う。総悟の髪の毛が、少しくっついていた。

 

「よし、帰ろう」

「じゃねぇええだろ!!」

 

 土方さんだけ異論があるようだが、三対一の圧倒的多数により否決。

 ベンチを回り込み銀さんの手を取る。

 

「総悟またね」

「次までに膝もっと寝心地良くしとけよ」

「頑張るね」

 

 手を振れば振り返してくれた。

 

「なぁ、お前、いつもあんな遊びしてんの?」

「ああ、総悟と? 今日は土方さんが通りがかったからたまたまだよ」

「膝貸すのも?」

「今日なんか総悟眠そうだったから」

「誰にでも貸すのかよ」

「そんなまさか。総悟だからだよ」

「そうですか」

「そうなんですよ」

 

 家に着くまで、銀さんはずっと私の手を握って歩いていた。

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