「銀さんとお付き合いすることになりました」と新八君に報告すると、「あー、そうですか、良かったですね」と祝福のメッセージが返ってきた。
神楽ちゃんに伝えたら、「子どもいつ生まれるアルか? 名前私きめてやるネ」と出産予定日を聞かれた。
銀さんに至ってはなんか「好きにしろ」という感じだった。
「日頃の行いだろうか?」
「日頃の行いだろうな」
同意してくれたのは総悟だった。
風船ガムを噛みながら公園でサボってるのを見かけ声をかけた。
「つーかその話初めてきいたんだが」
「初めて言ったからね」
「いつからでィ」
「うーんと、私が戻ってきて好きって告白したんだけど、なんか色々あって返事が先日」
「旦那も難儀だねィ」
ぱちんと風船が割れた。
「総悟。祝ってよ」
「祝ってやるから、アイス買ってきな。俺レモン味がいい」
「なんでだよ。総悟が買ってきてよ」
ぶすくれる私に総悟はポケットから、シガーチョコレートをくれた。
「総悟はさ、そーいうのないの。浮いた話」
「ねぇなー。さっぱりだ。あ、お前寝取ったら、旦那、本気でやり合ってくれるかな。なぁキリ、一緒に夜明けのコーヒー飲もうや」
「趣味わるぅー」
だらだらと二人で真っ昼間の公園のベンチで座りながら、生産性のない会話を行う意味は? と誰かに聞かれたら、時間は全ての人間に与えられた平等な権利であると答えよう。
つまり暇つぶしだ。総悟もよっぽど暇だったのか付き合ってくれるし。
「浮いた話といや、最近トッシーとか名乗る奴が、姉上の周りをうろちょろしてんだが、誰か代わりに殺してくれねぇかな」
「土方さんまた妖刀に飲まれてるんだ。大変だね」
「ヘタれてるヤツの方が目障りなぐれぇだ。なあ、キリひとおもいにアイツ殺っちゃってくれねぇか?」
「自分でやりなよ」
「俺ァ、姉上に恨まれんだけは御免なんでィ」
「シスコンめ」
はぁー、本当無駄な会話だ。
そんな話をしていたら遠くに土方さんとミツバさんらしき二人が見えた。
「ねぇ、そうごー。少し聞くけど、今日なんでここにいたの?」
「野郎が、姉上と待ち合わせする話を聞いちまったもんだから、警護しねぇとなーと。ついでに事故に見せかけて殺せねぇかなぁ」
「シスコンめ」
ミツバさんが花壇に咲いた花を指差し、トッシーは大げさに頷く。足元を走り抜ける子どもたちを威嚇し、ミツバさんに笑われる。
クレープ屋のキッチンカーを見つけたトッシーは、走り出し転び、ミツバさんに心配されていた。
「そろそろ殺したくなってきただろ」
「いや、全然。微笑ましいじゃん。ミツバさんも満更じゃないみたいだし諦めて応援しなよ」
「けっ、やなこったい」
総悟は太ももに肘をつき、手のひらへ顎を載せた。そうとうイライラしてそうだ。
「総悟はさぁー、土方さんとミツバさんが結婚したらどうすんの?」
「しねぇように邪魔するに決まってんだろィ」
「でもさぁ、ほら子どもとかでき……あー、嘘ですなんでもないです」
びっくりした、とんでもない顔で睨みつけてきたよこいつ。
「くそ、なんかいい雰囲気になってんな」
「邪魔しないであげた方がいいよ」
お金が足りないというヘタレっぷりを発揮したトッシーは、一つのクレープをミツバさんと分け合っている。
マイ七味を振りかけ真っ赤にそまったクレープを一口食べ、悶絶したトッシーは、慌てたミツバさんにお茶を飲ませてもらってる。
それがさっきミツバさんが飲んでいたペットボトルだと気付いたトッシーは更に真っ赤になり、おろおろと忙しなく動き回っていた。
「ちっ、思春期かよ。間接キスぐらいで狼狽えてんじゃねぇ」
「そーいう総悟も、間接キスぐらいでイライラするの止めたら?」
「それとこれとは話が別なんでィ」
わたわたするトッシーの手をミツバさんが握る。赤を通り越し、赤黒く染まったトッシーは硬直し、それを見たミツバさんは笑う。
「もう、我慢ならねぇ」
「あーあー、いってらっしゃい」
飛び出した総悟は二人に割って入り、ミツバさんに窘められていた。
ベンチの人口は一人減り、代わりに観察対象が一人増えた。
「つまんなーい」
いや、興味深いではあったんだけど、共感してくれるオーディエンスがいない観戦というものは面白さが急速に低下する気がする。
「何一人で騒いでんだ?」
振り向くと、銀さんと神楽ちゃん、新八君が立っていた。定春もその後ろから顔を出す。
「仕事終わり?」
「終わった終わった」
「予定より早く片付いたネ」
「神楽ちゃんが凄い勢いで資材運んでくれたから」
どうやらこの前行っていた工事現場のヘルプらしい。
ガテン系のズボンを穿き、ヘルメットを被っていた。
「向こうにいるの、土方さんとミツバさん、それに沖田さんですね」
「さっきまでは、総悟と二人で見てたんだけどね、一抜けされちゃったんだよ」
「なんだよサド、大好きな姉上にちょっかいかけられて辛抱たまらず飛び出しちゃったアルか。大人気ないアルな」
「人の恋路みてなにが楽しいんだか」
そう言いながら銀さんはベンチの背に肘をつき、腰に提げた保冷袋からペットボトルを取り出して一口飲む。
そーいえば、この炎天下で水分補給をしてなかった。
「喉かわいたなぁ」
「飲むか?」
銀さんは飲みかけのペットボトルをこちらへ差し出す。
「いえ、結構です」
さっきのシーンが脳内でリフレインされる。銀さんは蓋を開けて口を付けて飲んでいた。
無理じゃない? と思ったところへ、二人の声が重なる。
「思春期ですね」
「思春期アルな」
差し出した銀さんは、呆れたような表情で、また一口ペットボトルからお茶を飲んだ。