ベリルとの手合わせを終えて井戸水で体を拭いていると、モルデア老が近付いてきた。
「悪りぃな…儂に出来ない事をやって貰ってよぉ」
「…いつも観てましたもんね」
モルデア老は俺達の手合わせを気配を消して観ていた。最初から最後まで余すこと無く
「にしても…ビャクエン、お前強くなったじゃねぇか…木剣とはいえアイツを一方的にだ」
「…まだまだ貴方には敵いませんよ」
「謙遜するなよ。現役の時の俺でも殺さずに勝つのは難しいと思うぜ」
~回想~
20年前、俺とベリルは引退前のモルデアさんと手合わせを挑んだ。共に血気盛んな皆伝の剣士2人がかりでのハンデ戦だ。
「行くぞ親父!」
「今日こそ叩きのめす!」
「あーあーさっさと来んか青二才共」
ベリルの今よりも未熟ではあるが激しい切り込み。その隙を突く死角からの突き
「わははは!甘いわ」
モルデアさんはベリルの木剣を受け流し、俺の突きを首を動かすだけで避け、そのまま木剣を弾かれる
「くっ…」
「これだけの圧が」
「いい線行ってるぜぇ!二人とも、そらこい!」
ベリルの力任せな打ち込みを全て受けの型で捌き、俺の突きやフェイントを混ぜた攻撃すら、モルデアさんは全て避け、相殺してくる。
「お前ら若いんだからもっと攻めてこい!!」
「「っ!?」」
モルデアさんから発せられる圧に一瞬、俺達は動きを止めてしまう
「馬鹿モンが!」
次の瞬間には二人同時に木剣を叩きこまれ、倒されてしまった。
「ベリル、お前はやたらめったらに攻め過ぎだ。ウチの型は攻めと守りがあるんだからよ。ビャクエンを見習え。逆にビャクエンはベリルの攻めに合わせてフェイントや隙を突く戦い方が主になり過ぎている。これじゃあまだまだ儂には勝てんぞぉ?」
「まだまだぁ!」
「お願いします!」
結局その後は二人ともボコボコにされて終わったんだった。俺は村を旅立ち、ベリルはその数年後、道場をモルデアさんから受け継いだんだったな。
~回想終了~
「まぁ、良い。お前、次は何処へ行くんだ?」
「…そうですね、王都に行こうかと」
王都へ行って冒険者ギルドに顔出さないとな、久しぶりに妹弟子の顔も見れたら良いなと考えていると
「あ~お前は良い娘とか居ねぇのか?」
「なんです?藪から棒に」
「ベリルの奴といい、浮いた話がねぇ…儂に孫を抱かせてくれるのはどちらが早いかな」
結局そこに行き着くのか…まあ、ベリルといい俺といい、もう良い年だ。そろそろ身を固めても良いのだろうが…
「いやぁ…俺は色んな国を回ってましたので、決まった相手はおりません」
「はぁ~やっぱりか…アレだ、お前を慕う弟子とかもいたろう?」
確かに今でも付き合いがある妹弟子が居るには居るが…彼女は、彼女達はベリルの方を好いている。奴が王都に腰を据える事があれば…
「モルデア老、ベリルの奴が王都に来る事があれば、孫を抱かせて貰えるかもしれませんよ?」
「ほう?詳しく聴かせろ」
レベリス王国のレベリオ騎士団に妹弟子がいる事、ベリルを呼び寄せる為の計画を練っていることを話した
「なるほど…そいつぁいいな!じゃあその時は協力してやれば良い訳だな?」
「そうですね、待っていれば彼女はベリルを迎えに来ますよ」
「よぉし!そうと決まれば今日は飲もう!」
今日も、だけどな。滞在中、晩酌に付き合わされてるんだが…まあ、最後の夜だし構わないか。