とある魔術の自己証明《ドッペルゲンガー》   作:natsuki

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第五話

 

 風紀委員第一七七支部の応接スペースは、今日に限って妙な組み合わせの人間が集まっていた。

 

「で?」

 

 ソファに腰掛けた上条当麻が辺りを見回す。

 

「何で俺なんですか」

「こちらが聞きたいですの」

 

 白井黒子は腕を組んだ。

 

「わたくしの携帯へ、あなたの名前が送られてきました」

「いや、意味分かんねえ」

「わたくしも分かりませんの」

 

 二人揃ってため息を吐く。

 その様子を見て、初春は苦笑した。

 

「えっと、お茶をどうぞ」

「あ、ありがとう」

 

 上条が紙コップを受け取った、その時だった。

 支部の扉が開く。

 

「失礼するにゃー」

「土御門さん」

 

 黒子が露骨に顔をしかめる。

 

「またあなたですの」

「仕事だからにゃー」

 

 飄々とした様子で部屋へ入ってくる土御門元春。

 しかし、今日は笑っていなかった。

 

「上条」

「ん?」

「これだけは言っとく」

 

 土御門は珍しく真面目な顔をした。

 

「今日から一人で帰るな」

「は?」

「理由は聞くな」

「いや聞くだろ普通」

 

 その時だった。

 初春の端末が警告音を鳴らす。

 

「白井さん!」

「何ですの!」

「監視カメラです!」

 

 映像が表示される。

 第七学区。

 駅前広場。

 人混み。

 その中を歩く、一人の男子高校生。

 制服。

 鞄。

 歩き方。

 ごく普通。

 

「この人……」

 

 上条が画面を見る。

 初めて見る顔だった。

 しかし。

 黒子は立ち上がった。

 

「間違いありませんの」

「え?」

「榊原悠真ですの」

 

 部屋の空気が止まる。

 

「でも」

 

 初春が画面を見つめる。

 

「この人、普通に歩いてますよ?」

「失踪したんじゃ」

「そのはずですの」

 

 土御門だけが静かだった。

 

「……最悪だにゃー」

「知ってるのか?」

 

 上条が尋ねる。

 土御門は画面を見たまま答えた。

 

「いや」

「知りたくなかった」

 

 映像の中。

 榊原悠真はコンビニへ入り。

 ジュースを一本買い。

 笑顔で店員へ礼を言い。

 普通に店を出る。

 何一つ不自然ではない。

 ただ。

 黒子だけが違和感に気付いた。

 

「……誰も」

「え?」

「誰も、あの子を見ていませんの」

 

 映像を停止する。

 拡大。

 確かに。

 周囲の通行人は。

 誰一人。

 榊原悠真を避けない。

 ぶつからない。

 目も合わせない。

 まるで。

 最初から居ない人間のように。

 

「これ……」

 

 上条が立ち上がる。

 

「生きてるじゃねえか」

「違う」

 

 土御門が小さく呟いた。

 

「生きてるんじゃねえ」

「なら」

「歩いてるだけだ」

 

 その意味が。

 誰にも分からなかった。

 そして。

 映像の中の榊原悠真は。

 ゆっくりと監視カメラへ顔を向ける。

 こちらを見る。

 笑う。

 そして。

 静かに口だけを動かした。

 

『みつけた』

 

 映像が。

 そこで真っ黒になった。

 

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