ISSOC -IS特殊作戦群-(リメイク版)   作:インフィニット・ストラトス

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第2話

 ぱら、ぱら、ぱら。

 

 雨粒がゴーグルを覆い、防水仕様の特殊作戦用装備──軍用ブレスガンの上を滴り落ちる。

 アリススプリングス 近郊──

 

『こちらチーム・ブラボー。

 前方に通路確認。座標送信』

『チーム・アルファ了解。周辺警戒、待機』『チーム・ブラボー了解。各員視界注意、索敵』

 

 しばらく進んでいくと、高台の上にコンクリート製の突起が見えるようになる。ここが今回の標的たちの住処──あるいは一時的な拠点になるのだろうか。おれ達は、最後までクリアリングを遂行しながら、屋根のついた入口を取り囲む。

「ちっ、ポールがしけってやがる」アレクセイがライフルを指さしながら左握り拳を上下に振ると、即座にショットガンを持った隊員が前に出る。

 

『全隊、セイフティ解除。

 制圧時は適宜報告するように』

『『了解』』

 おれ達は手話で会話をしつつ軍用ブレスライフルの薬室を確認する。箱型弾倉、状態、及び初弾装填を確認し、グリップを持ち直して強く握りしめる。

『アルファ・ワンより〈スローター・ハウンド〉全機。

 各機〈ミートプレーン〉に帰投しつつ、一番機はB型装備に換装。全機アクティブケーブル接続で上空監視しつつ待機』

 

 [了解。ご武運を]

 

 〈スローター・ハウンド〉の祈るような声に『──やめろ』とあきれ顔で反応するルーク。『機械に心なんてねえのにな。情が深いこった』苦笑交じりに皮肉を呟くと『ルークさんは真面目なんですから──』ルークと同じくあきれた趣で茶々を入れるウォルター。任務中だから何とも言えないが、確かにルークは真面目過ぎる部分が強いのは確かで、それゆえに人望も厚い反面、ある種浮世離れしている部分もある。

 それは、おれ達の出身が関係しているといえばそうではあるのだが──

『3、2、1──』

 

 

『お、おい──』

 ドアの先にいた標的の身体を、金属製の太い針が射貫く。

 黒色に塗られた角ばったフォルムをしたこのライフル銃は、不思議なことに火薬を消費しない。消費するのは僅かな空気と、装填される針だけだ。

 圧搾音を淡々と奏でながら、『GO! GO!! GO!!!』手話による合図でおれ達は前に進む。

『ヤクくせぇな……注意してかかれよぉ』

『あぁ』

 ブレスライフルの射出モードをバーストに切り替えながら、頭部に一回、次に心臓を狙う。敵の武装は安価で手に入りやすいアプトマット・カラシニコフで、この世から存在を失った骸が、ぐねぐねと奇怪にライフルを振り回しながら、然しやがて上体が下になってその動きを失う。そうして二人、三人と同じ動作を続けて、おれ達はT字路を二手に分かれていく。

 

 しばらく歩いて階段を下ると、個室がいくつも並んだフロアに行きつく。

 数は三。遠くの別部隊(ブラボー・チーム)の手捌きを見る限り、向こう側には人はいなかったようだ。

『〈スローター・ハウンド〉より全部隊。

 敵車両が二つ近づいている。要警戒』

『アルファ・ワンより〈スローター・ハウンド〉。

 敵側から発砲音が確認され次第処理にあたれ』

 [了解しました。

 回答に対する最適解を算出……算出中]

 思惑するルークをカバーするようにアレクセイが後ろを見張り、更にルークのハンドシグナルで前に進む。ライフルを腰だめに、もう片方の手で腰のハードポイントからフラッシュ・バンを抜き、そのままピンを抜くと同時にドアを開けて放り投げる。『──ッ』

 複数の武装兵士をブレスライフルで音もなく貫いていく。ある者は拳銃を手に取り応戦するが、多少当たったところでこの戦闘服にはダメージは入らない。そうして兵士、抵抗する不穏因子を取り除いていくと、子気味良い音を鳴らしながら、作戦司令室から通信が入る。『特務大尉にも話しましたが、作戦時間がやや超過しています。迅速な対応をお願いします』

『了解した』

 

 

 

 ◆

 

 

 

 アリススプリングス 高度上空

 

 それは、あまりにも異形だった。

 国際連合技術開発局の裏の顔、通称〈エクリプスⅠ〉にて羽化した〈スローター・ハウンド〉という甲殻虫。

 インフィニット・ストラトスと呼ぶにはあまりにも禍々しく、そして異形なこの機体群は、髑髏のような形の頭部に搭載された、単眼の超高感度センサーを時折変形させながら目標を見据えている。

 甲殻虫を思わせる非固定浮遊部位と、輸送機へ繋がれた背中のケーブルを動かし・はためかせながら、地上にいる敵部隊を観察する。

 

 たたたん……ぱぱぱ……

 

 [……一番機より全機。発砲音を検知、処理にあたれ]

 [二番機了解][三番機了解][四番機──]

 

 一番機はスラスターを吹かし体を下へ。B型装備──長距離レーザーライフルを腰だめに構え、センサーとスコープをリンクさせる。

 一番機のレチクルが車両に吸い付くと、各々が統率された動きで兵士、武器、物を捉える。

 二番機から八番機が降下する。ケーブルが外れ、直立不動のままAICを解除し、高速で下へ下る。

 やがてAICを解除した〈スローター・ハウンド〉に、何名かが押しつぶされる。頭部は肉塊になって飛散し、身体が異様な音を立てて重量と勢いに粉砕されていく。

 〈スローター・ハウンド〉の鳥脚が地面を穿つように着地する。慌てふためく兵士をセンサー越しに見ながら、四番機が兵士の後ろに回り込み、余力を消さずに首元にプラズマ手刀をあてがう。頸動脈は炭化し、しかし心臓の出力に耐えきれずに大出血を引き起こす。ものの数秒で絶命した兵士を踏みつけながら、一歩……また一歩と距離を詰める。

 ライフルを兵士が構える。が、頼みの綱は二つに断ち切られ、薬室から誘爆を起こして兵士の手を焼く。

 二番機は中型の刀を手に接敵する。勢いよく地を踏むと、加速の反動で泥水が後方に飛散し、次の瞬間には相手は袈裟懸けに両断される。そうして淡々と処理は進んでいく。

 

 [〈スローター・ハウンド〉より一番機へ。

 敵機掃討完了、指示を乞う]

 [一番機了解。

 〈スローター・ハウンド〉一番機より地上部隊──]

 長距離ライフルを構えながら、インターフェイスを操作。マップ表示をオンにして各部隊の位置座標も同じくオンにする。

 

 雨粒が金属質の装甲に当たる度に、機械の眼が周囲を細かく観察する。

『──アルファ・ワン了解。

 全機、指定ポイントに待機の後、帰投の準備をしろ』

 [〈スローター・ハウンド〉了解。

 輸送機までの道先、楽しみですね]

『……ふざけるな』

 強引に切られても、彼らは不快感を示さない。不快という言葉すらも当てはまらない。すべてが言葉という概念の羅列で、またプログラムの一部に過ぎないからだ。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「──カレン特務中尉」

 名前を呼ばれると、手慣れた動きで敬礼をする。返事をすると、オールバックのがたいの良いビジネス・マンが、「身体の調子はどうかね?」何かを含んだような言葉づかいでおれ達を一瞥する。

「問題ない。

 あんたこそ、組織の改編は進んでるのか?」

 いつもの皮肉を、やはりいつものように返すと男はやるせない顔をして、順調だよとジェスチャー交じりにこたえる。

「上層部が動きたくないんだとさ。アッシャー家も業が深いことで」「その名前を出さないでくれ。アイツに聞かれると厄介だ」「へいへい……」

 ところで……と、オールバックはおれ達の制服をまじまじと見ながら、「大分、進んだな。お前」どこか神妙な趣で胸元を見つめる。「やめろ……」

 

 インフィニット・ストラトスは、男は禁制だ。

 

 一部例外はいるものの、基本は女性にしか扱えないという事で、ジェンダー的なヒエラルキー構造の一極化を防ぐためにも、国際連合が躍起になって実現させようとしている、〈E.O.S〉という疑似ISの存在は、おれ達の間では常套句のように語られている。

 

 だが、たとえ〈E.O.S〉の存在は知っていても、〈ISSOC〉、その核たる部分には皆こぞって言及はしない──否、そうさせているのだ。

 

 おれをはじめ、今は別室にいるルークや、変わってビジネス・マンの対応をしているアレクセイとウォルターにも、大小さまざまな丸みを帯びたふくらみ、そして特有の香り等を有している。

 〈性的指向(セクス・カモ)〉という事柄は、おれ達をおれ達たらしめるものであるが、同時にこの世の中ではもみ消される存在としての任を請け負っている。

 

 それでも、おれ達よりもこの部隊の長を任されたルークの方が問題なのだが──

 

「──なぁんて、冗談だよ。勇敢な戦士たち」

 今、この場でこいつを痛めつけてやりたいが、お生憎様おれ達にはそれすらも叶わない。

「中尉、もう行きましょ? こんなの、アレクセイに任せてれば──」「おいおい、俺だってこいつとは御免だね。センスがねえもの」

「……」

 

 

 戦闘服から解き放たれた、上半身にぶら下がる二つの袋を小さく揺らしながら、ホワイトハウス地下に靴音を鳴らす。

 




メカニカル

・【スローター・ハウンド】
国際連合国家安全保障部門傘下特殊作戦群「ISSOC」に八機(主人公の隊には四機)が配備されている第三世代型試作インフィニット・ストラトス。
ISの慣性制御システムである「PIC(パッシブ・イナーシャルキャンセラー)」、ドイツで実証化を果たした「アクティブ・イナーシャルキャンセラー」、そして日本での実験を経て実用化された「IS用AI」などを発展させた機体で、その戦闘能力もさることながら、本機は同時に「ステルス機能」に重点を置いた機体でもある。

本機の誇る特徴は、そのマリオネットのようなシステムと生理的嫌悪感を与えるために作られた外装である。
本機体には日本国内で実験が進められていた『人工知能(AI)搭載無人インフィニット・ストラトス(福音のこと)』とドイツで試験運用がされている『AIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)』、イギリスにて運用が確認されている『BT兵器』、そして既存の技術とIS機能を組み合わせた『ISDS(イナーシャル・ストリング・ドライブ・システム)』を搭載している。

またAIなどのシステムを用いた『スローター・ハウンド』は、実際には有人操縦は想定されておらず、本来操縦者となる『ISSOC』の隊員たち(カレン、ルークら)は所謂非常用のデバッガーと地上での作戦を行うための人員なだけである(後付けで有人操縦はできるが、彼らの操縦経験は浅いのが現状である)。
各隊員(特にルーク)にはそれぞれ対応する機体ナンバーの指示権が与えられており、『スローター・ハウンド』がいる詳細情報を把握しながら、各々が指示(プロンプト)を与えることで資格からの攻撃に対応する事が可能になっている。


このほか、インフィニット・ストラトスの欠点であるステルス性、特に熱を放出する推進機関をいかに工夫するかが焦点となっていた。開発されたのが、本機の特徴の一つである「ガス・ブラスターユニット(誤字ではない)」である。
本スラスト機構は文字通り、貯蔵機関内に内包したガスを超高圧に圧縮・使用し慣性を得る推進方法で、「PIC」と背部の「カスタム・ウィング」による慣性飛行の他に、本スラスト機構を用いた瞬時加速(イグニッション・ブースト)、通称「スニーク・ブースト」を使用することが可能になっている。
「スニーク・ブースト」は「イグニッション・ブースト」よりも出力で数歩劣る反面、排出したエネルギーによる「熱」や「音」が発生しにくいため、結果的に隠密性に優れる。
そのため背後からの奇襲や偵察などの斥候、はたまた暗殺用途に使用されるなど、運用用途は多岐にわたることができる。

見た目:髑髏のような頭部に一基の超高感度センサー(ハイパーセンサー)を備える。黒のカラーリングと、甲殻虫のようなスポーティな見た目が特徴的(まんま同じというわけではない)。
そして虫の外殻のような、肩の「固定浮遊部位(アンロックユニット)」と背中の甲殻虫の羽に酷似した「カスタム・ウィング」部分にあるナローノズルが特徴的(ここから超高圧ガスが噴射される仕組み)。
鳥の脚のような見た目をしている。足は3本指。
右肩の固定浮遊部位には「ISSOC」のロゴがあしらわれている。

ISタイプ:ステルス/パワー型。

また拡張パッケージに、スニーク・ブーストを多用した高機動・高速戦闘及び、より急襲に特化した「A型装備」と、長距離射撃に対応した「B型装備」、そして電脳ダイブでの戦闘に特化した「C型装備」の三種類が存在する。


【スローター・ハウンド】基本装備
・三点バースト式消音アサルトライフル「シグ エイ・アール16(対IS仕様)」

・消音拳銃「シグ 2000」

・コンバットナイフ「スミス リトル・パル」


【A型装備】
高機動・高速戦闘及び急襲などに特化した拡張パッケージ。固定浮遊部位やカスタム・ウィングに新たに増設されたガス推進機と増槽タンクが特徴的。
兵装に『打鉄』のメイン武装である刀に酷似した武装を有する。


【B型装備】
長距離射撃に対応した拡張パッケージ。トリケラトプスの角のように配置された強化センサー類が特徴的。
兵装に『ブルーティアーズ』のメイン武装である”スターライトMark.Ⅲ”に酷似した武装を有する。


【C型装備】
電脳ダイブに特化した、所謂電脳戦に特化した拡張パッケージ。
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