恋愛リアリティ番組で知り合った体格差カップルの話 作:ヒロ@一次創作
芸能人でもないのに、どうしてここにいるだろう。大型バスの窓に映る自分の顔を見ながら、南美桜は小さくため息をついた。
身長150センチ48キロで顔もスタイルも平凡などこにでもいる普通の女子大生、しかも小学生に間違われることすらある自分はどう考えても恋愛リアリティ番組に出るような人間ではないというのに。
現在美桜は人気番組『シェア・ラブ』の撮影現場へ向かうロケバスに揺られていた。
きっかけは三か月前。授業を終えて帰宅する途中の駅前で声をかけられたことだ。
「恋愛リアリティ番組に興味ありませんか?」
最初は詐欺だと思ったが、差し出された名刺に記載された会社名と番組名から本当に制作会社のスタッフであることを理解した美桜は、興味本位で話を聞いてみることにしたのだ。
撮影は夏休み中であるため授業に影響は出ない。人気番組故に予算も豊富なのだろう、報酬も最低30万円で終盤まで残れば更に出来高が付くという好条件。そして何より知っている番組に出演出来るという興味と好奇心も相俟って、両親の許可を得てから、という条件付きで出演を了承。帰宅後両親に説明し、許可を得たことで正式に出演が決まった。
自分の容姿が男性受けする方ではないと理解していた美桜だったが、折角出演するのだから良い人と会いたい、そう思っていたのだ。
出演者の情報を見るまでは。
10代からカリスマ的な支持を得ているモデル。
フォロワー数100万人越えの超人気インフルエンサー。
新進気鋭の女性用下着ブランド経営者。
大手企業から何本も案件を貰い20代から30代女性に絶大な人気の美容系動画配信者。
後日届いた主演者一覧に並んだ参加者の顔写真と経歴は雑誌の表紙みたいに華やか。その一方で自分はといえば、何とも地味な写真に経歴。
美桜はその時点で理解した。華やかな人ばかり集めても比較にならないから、一般人枠が必要だった。引き立て役、脇役、背景。それが自分に与えられた役割なのだと。
「最初に消えるために呼ばれたんだ、私は。」
誰に聞かせるでもなく呟くが、その考えは不思議と苦しくなかった。昔からそうだったから。主役になったことなんて一度もないから、諦めることは得意だった。
バスが目的地の海辺のヴィラへ到着し扉が開くと、夏の潮風が流れ込んできた。
「よろしくお願いします!」
既に到着していた女性参加者たちがお互いに挨拶しているが、その場にいる女性全員、自分とは別世界の住人だった。
スタイルが良くて、ブランド物に身を包み、笑顔も自然で…一般人である自分だけが明らかに場違いだ。劣等感に苛まれた美桜は彼女達から少し離れた、目立たないところに立ち、スタッフから声を掛けられるまで待つことにした。
美桜が到着して10分程過ぎた頃、一台のロケバスが到着したことに気が付いたスタッフが声を上げた。
「最後の男性参加者が到着します!」
女性陣が一斉に入口へ視線を向け、美桜もつられて振り返ったその瞬間だった。
「……え。」
思わず声が漏れる。
現れた男は、あまりにも大きかった。黒いTシャツの上からでも分かる厚い胸板。丸太のような腕。広い肩。そして周囲の誰より頭一つどころか二つ近く高い身長。
身長195センチ、体重115キロ。職業プロレスラー。
その情報は事前プロフィールで見ていが、数字と現実は全く違う。実際に目の前に立たれると威圧感が凄まじかった。
その場の視線を一身に集めた男性は姿勢を正し、
「はじめまして、黒崎豪です。よろしくお願いします。」
深々と頭を下げながら丁寧な口調で挨拶した。
年齢の割には低く落ち着いた声に空気が少しだけ張り詰める。
有名プロレス団体に所属しながら国内外の格闘技大会に出場し複数回の優勝を誇る、今シーズンで唯一のアスリート枠の参加者が、黒崎豪だった。
豪の丁寧なあいさつを聞き、すぐに何人かの女性が話しかけ始める。
「わあ、本当に大きいですね!」
「試合見たことありますよ!」
「筋肉すごい!」
見目麗しく社会的ステータスの高い女性に囲まれても、豪は困ったように笑うだけ。何だか楽しそうには見えないし、むしろ早く帰りたそうだな。
ふとそんなことを思った美桜の視線を感じたのか、豪が僅かに顔を上げた。視線がぶつかる。驚いた美桜は慌てて目を逸らした。別に見つめていたわけではない。ただ少し気になっただけだ。
けれど胸が妙にざわつく。周囲の女性たちが太陽なら、自分は街灯。そんな自分が、あんな人と関わることはない。そう思っていた。
この時はまだ。
これまでハーメルンは読むだけでしたが、一次創作を投稿してみようと思い立ちました。
気になったら読んでいただければ幸いです。
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