恋愛リアリティ番組で知り合った体格差カップルの話 作:ヒロ@一次創作
それと十話と十一話の間に閑追加話を投稿しました。
実質的な告白を済ませる形になったイベント翌日の自由時間。
参加者たちは思い思いに過ごすなか、豪と美桜は浜辺を歩いていた。
2人で自由時間を過ごせるのはこれが最後かもしれない、お互いそう思っているからか、いつもより会話が途切れない。
子供の頃の話、失敗した話、夢の話を飽きることなく、心ゆくまで話す。
夕方。
海に夕日が綺麗で立ち止まった美桜の隣に豪が立ち、同じ景色を見る。
「綺麗ですね。」
「だな。」
沈黙。
でも苦しくない、むしろ心地良かった。
「出来ることならもっと早く会いたかったなぁ。」
豪のそんな言葉に美桜の胸が大きく鳴る。
「え?」
「美桜さんが大学生になる前とか。」
「そうしたらもう少し長く一緒にいられたかもしれないから。」
反則だ、そんなこと言われたら好きになってしまう…いや、もう十分好きだから今更だ。
美桜は溢れそうになる涙を堪えながら答える。
「充分すぎます。だってこうして会えて、素敵な時間を過ごせていますから。」
泣きそうな顔で笑う美桜を見て豪も何か言おうとして口を開き…結局何も言わず、黙って美桜の背中に手を添えて海を見詰めていた。
最終告白前日。
美桜が目を覚ました時、最初に思ったのは豪のことだった。
今何をしてるのかな。もう起きているかな。昨日ちゃんと眠れたかな。
誰が何をしているかなんて、豪を好きになる前には一度も考えたことがなかった。
リビングにもキッチンにもいなかったので外に探しに出て、浜辺でストレッチをしている豪を見つけると、それだけで胸がほっとする。
その瞬間、美桜は笑ってしまった。
(重症だなあ、私。)
完全に。どうしようもなく。
南美桜は、黒崎豪に、恋をしていた。
諸々のスケジュールを熟して夜を迎えたが、消灯時間を過ぎても美桜は寝られなかった。
しばらくベッドでゴロゴロしていたものの、結局眠ることを諦めて部屋を出てテラスへ向かうと、予想通りに豪がいた。
「やっぱり。」
「やっぱり?」
「いると思いました。」
「…俺も。」
「え?」
「美桜さんが来る気がしてた。」
星が瞬く綺麗な夜だった。
「豪さん。」
「ん?」
「明日ですね。」
「…ああ。」
告白については、お互い意識的に避けていた話題だった。 それが済んでしまえば、終わりが来てしまうのが分かっているから。
それでも豪は正直に話すことにした。
「正直怖いよ。」
「これまで経験してきたどんな試合より、明日の方が怖い。」
その言葉に美桜は驚く、豪がそんなことを言うなんて思わなかったから。
けれどその本音が愛おしくて、美桜も小さく笑いながら答える。
「私もです。」
豪は少し黙った後そっと手を伸ばす。
触れるか触れないか、本当にぎりぎりの距離。その距離は今の2人の関係を表しているようだった。
「明日さ。」
「ちゃんと伝えるから。」
真剣な表情で真っすぐ見詰められ、美桜の呼吸が止まる。
豪は美桜に視線を向けたまま、覚悟の決まった顔で話し続ける。
「逃げないで、聞いて欲しいんだ。」
その声は何処までも情熱的で、優しい声だった。
美桜は泣きそうになりながら笑う。
「逃げません。豪さんの答え、しっかり聞かせて貰います。」
「約束だ。」
「はい、約束です。」
小指だけがほんの一瞬触れる、指切りのように。
微かな感触にも関わらず、甘くて、苦しくて…本当に、幸せだった。