『宇宙戦艦』こと『ウトナピシュティムの本船』。
それがあるという座標までやってきたオペレーターであるアヤネを除くアビドス対策委員会一同、そしてシャーレの〝先生〟は地下へ続く扉を見つけた。
───だが、その場所には既に先客が居た。その者はタブレットを片手に青白く罅割れた顔を戦艦へと向けている。
「……おやおや、これはこれは、偶然ですね。アサヒ先生、それからアビドス生徒の皆さん───」
〝黒……服ッッ……!!!!〟
対峙する先生、そしてアビドスの面々の向ける感情は警戒と敵愾心に満ちており、その反面黒服と呼ばれた者はその芯を為す覚悟を以てして、先生と呼ばれ慕われているその者を冷静に見つめ返した。
「……っ……ごめん……なさ……」
〝……?……アロ…ナ……?〟
時は大きく巻き戻り、連邦生徒会長失踪より数日後───
『───ザーザー宅、シャーレの空きテナント、サンクトゥムタワー。連邦生徒会直轄下から始まり、出来る限りの場所へは手を回している……連邦生徒会長。……一体、何処にいらっしゃるのですか?』
「……クックック、ついに、ですか……いえ、此処からが正念場ですね」
元々ユウヒという名前でブルーアーカイブのストーリーを……いえ、シャーレの先生をやっていた私は気が付いた時には、ゲマトリアに所属する大人……黒服へと成り代わっていました。
───ゲマトリアはブルーアーカイブ作中に存在するキヴォトスの外から来た大人の〝集団〟です。
フランシス及びゴルコンダ&デカルコマニー、ミスターオーウェル、ベアトリーチェ、マエストロ、地下生活者、そして私こと黒服、それぞれが原作上で確かな意味を持ち存在しています。……存在していた筈だった……と、いうのが正しいでしょうか?
この世界において、私以外のゲマトリアは存在しませんでした。少なくとも現時点において……具体的に言えば連邦生徒会長が失踪したのがつい数日前……。
その時点で、他のゲマトリアメンバーが研究していた痕跡もなければ、幽閉されている地下生活者も存在せず、アリウスの支配を行っていたベアトリーチェも、デカルコマニーやゴルコンダ、マエストロなども
───それらの示すところは即ち、
例えば、ですがアリウスを洗脳によって支配下に置いていたベアトリーチェが居なければアリウススクワッド等のメンバーとシャーレの先生が出会うことはなかったでしょう。
その他にも、共通の敵が居なくなれば、先生に対して生徒が全幅の信頼を置くまでが遅くなります。
よって、私はこの世界で何をするべきかを真っ先に定めました。キヴォトス中を監視し、ゲマトリアの担う役割の補填やズレの補修等を全て行うこと。そして、いずれ来るこの世界の先生を中心とした
──それが私が元先生として……現在唯一のゲマトリアメンバーとして担うことのできる最後の責任であり、背負うべき責務だと、思っています。
作中においてゲマトリアが明確に関係するストーリー上の鍵となるものは無数にありますが、その中でも早々に手を出しておかなければならない物があります。
それが───アリウス分校の掌握。
本来の正史において、彼女……マダム・ベアトリーチェはアリウスの完全な掌握と洗脳に恐らく十年以上の時間を有したのでしょう。
その手段が暴力なのか、契約なのか、はたまた完全に口先だけで丸め込んだのか、その辺りはわかりませんが……とはいえ、ここで先生としてのやり方を貫く訳にもいきません。
───そう考え、私は色彩へのアプローチ方法を含めて、ある程度はベアトリーチェのやり方を真似ることとしました。
今の私に求められている役割は先生ではなく、『ゲマトリア』であり、尚且つ原作の『補填材』としての役割なのですから。
当然、実際に動き出したのは遥か昔のことではありますが……役割上重要であり、さらには時間も必要で、極めて慎重に扱わなければなりませんからね。
「……アリウスは予定通り掌握、ただ、その上で安全策も並行して行っている為、全体としては85%といった所ですか」
「トリニティ、及びDU地区の調査においてはあまり進んでいませんね、ただカイザーとのパイプは繋げたので及第点……」
「ゲヘナとミレニアムは原作通り殆ど手付かずで置いておき、アビドスに関しては幕引きも視野に入れた上で想定の98%近くまでは来ていますし……あとは細かいヘイトコントロールを含め、正史をなぞれば良いだけ。……そして、一番の問題である、数週間?数カ月後?その果てに期待される先生の来訪に関しては……」
サンクトゥムタワーに取り付けられた神秘計測装置のグラフを眺めながら言葉を吐き出す。
脳内を整理するように、或いは自分に向けて刻み込むように……
「連邦生徒会長が姿を消した以上、この世界は正史、あまねく奇跡の始発点だと思われます。アロナ、即ち連邦生徒会長が先生のサポートとしての立場を有するために、姿を消したわけですから……」
以前までは先生が来なかった場合のことも念頭に置いていた黒服だが、一先ず選択肢として省くことに決める。
「……よって、此処からは私自身が
目を細めながら、モニターを眺めてつぶやく。
「結果として、ベアトリーチェのあれによって色彩が到来する日が早まりました。ですが、それは全体を通して見れば決して戦犯というわけではなく、むしろある意味、英雄だったとも言えるでしょう」
「
彼女……連邦生徒会長は、この世界のことを、あまねく奇跡の始発点。あらゆる物事、すべてが上手く収束した、まさに奇跡のような世界であると言い表したが、まさしくその通りであった。
たった一年、色彩の到達がズレるだけで、作中最強格のホシノやヒナ、他にも後方支援の役割であるリオやヒマリといった重要人物が卒業し、色彩へと対抗することができなくなってしまう。
綱渡りのような世界で、奇跡を生んだのはある意味でベアトリーチェの蛮行が成したことでもあったのだろう、と。
そんな風に考えながら、書類を纏めホチキスで止めると共に自身のオフィスを後にする───
今、その役割を背負うのはベアトリーチェではなく私であると心の中で言い聞かせる。
「クックック。さて……先生、期待していますよ?───どうか、その手で……あの時にヒフミが言っていた―――皆が笑顔になれるような、そんなハッピーエンドを───」
先生は
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男性
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女性
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無回答