色々試行錯誤中。
「───……ふざ……けるな……!!」
「クク、断じてふざけてなどいませんし、虚言、嘘の類でもありませんよ」
「私はアビドスにおいて、そういった類の研究をしていましてね。【エレウシスの秘儀の再現】、とでもいいましょうか。死、またはヘイローが砕けるとも言いますが……あなたがもし、私に手を貸していただけるのであれば、私の研究により梔子ユメさんを救うという確約を結びましょう」
「何処にお前を信用できる要素があるんだ……!どうせこれだって私を騙して───!!」
「ふむ。私の手を拒むのですか?目の前に梔子ユメを救える方法があるのにもかかわらず?」
「───っ……!!!!!」
「あまり、このようなことは言いたくありませんが……あなたは”また”見殺しにしてしまうのですね……?梔子ユメという人間を───」
その言葉を吐いた瞬間、ホシノの焦点が合わなくなり、瞳孔が揺れ動く。
「───はぁっはぁっ……ゆ、ユメ……先輩」
「助けられる可能性があるのにもかかわらず彼女を見殺しに……その理由がただただ自分が騙されたくないから……ですか。それはそれは……彼女は自分が騙されたとしても人を救い続けたというのに───その背中を誰よりも近くで見てきた、あなたはそうするのですね?」
「、ぁ……ゆめ……せんぱい……ご、ごめんなさ……」
「私はあなたを無闇に傷つけたいわけではありません。これ以上の問答は無駄でしょう。贖罪は行動を伴ってこそ……さぁ、ご返答を───」
「わ、私、は……わたし……は───」
「さて……お待ちしておりました。アサヒ先生、あなたとは一度こうしてお話してみたかったのですよ」
現在、オフィスにて、私は先生と対面していました。
アサヒ……以前の私がユウヒという名前で先生をやっていたことを考えると何かしらの意図を感じますが───それはさておき、あの夜のことは覚えていないご様子で……
「あなたのことは知っています。連邦生徒会長が呼び出した不可解な存在。オーパーツ『シッテムの箱』の
「……まず、はっきりさせておきましょう。私はあなたと敵対するつもりはありません。むしろ協力したいと考えています」
「
〝……あなたたちは、一体何者?〟
「そうですね。先に自己紹介を行いましょうか。私は───この学園都市キヴォトスにて【ゲマトリア】の役割を担う者。名を『黒服』───と申します。……それと、先ほどは便宜上私たちと形容しましたが、今のゲマトリアを構成する
〝……〟
「さて……一応聞きますが、
〝無い〟
「左様ですか。では……あなたはこのキヴォトスにおいて何を追求するおつもりで?」
〝私はただ、ホシノを返してもらいに来ただけ〟
ククッ、やはりそうなりますか。えぇ、もちろん予定調和です。
単なる茶番と言ってもいいでしょう。
「……あなたの行動に正当性がないことにお気づきですか、先生?今のあなたに一体何の権利があって、そんな要求をされているのでしょう?ホシノはもうアビドスの生徒ではありません。届け出を確認されていないのですか?」
〝……まだだよ〟
「……ほう?」
〝顧問である私が、まだサインをしていない〟
「……」
〝だから、ホシノはまだ対策委員会の所属だし、まだアビドスの副生徒会長だし、今でも私の生徒だから───〟
「……成る程」
〝あなたたちはあの子たちを騙し、心を踏み躙り、その苦しみを利用した〟
「ええ、仰る通りです。私は彼女たちの不幸よりも、私自身の目的を優先させていただきました。それ自体を否定はしませんし、私の行動によってホシノを含めたアビドスの生徒が深く傷つけられたのも事実でしょう。その結果、あなた方の目から見て、私がどう映るかと言われれば当然ながら悪でしょう───それであなたに何の正義が?」
〝……〟
「私には私の目的があります、そのために行動しているに過ぎません。例えばそれが数百万単位の生徒の命を救う行為だとしたら?」
「……もう一度問います。現時点で、あなたに何の正義があるのでしょう?私はルールの範疇で生徒の方を利用させて頂きました。別に治らない傷を負ったわけでも、殺害されたわけでもありません。私の存在や行動による死傷者は小鳥遊ホシノを含め0名、対してあなたがこの計画を邪魔したことで数百数千数万人の生徒が死んだとします、死ぬかもしれません。その時点で善悪の天秤はどちらに傾くのでしょうか?」
〝……それでも私は───目の前の生徒を見捨てることなんて出来ない〟
ククッ……それでこそ先生です。それは美徳であり、ある種の視野を狭める悪癖であるとも言えるでしょう。
「えぇ、えぇ。この程度で『先生』であるあなたが諦める筈がありません。決して曲がることのない信念を持つ、その点も美徳と言えるでしょう。大人とは『責任を負うもの』……えぇ、理解できます。賛同はできませんが……」
〝……そっか〟
「ククッ、話が長くなってしまったお詫びです、小鳥遊ホシノの居場所をお教えしましょう。小鳥遊ホシノはアビドス砂漠、PMC基地の中央にある実験室にいます」
〝……そう、わかった〟
オフィスから立ち去る先生へ向け、私は一言声をかける。
「あぁ、最後に一つだけ……近い未来であなたがすることになるかもしれない幾つかの〝選択〟に対して忠告を───誰しもがあなたや周りの生徒を頼れるわけでもありません。頼れなかった結果、やり方を誤ってしまうこともしばしば……」
調月リオや不知火カヤ……それに───
「子供とは往々にして不器用なもの。小鳥遊ホシノの件もその一例です。そういった生徒にどう対応するのか……クックック、私はあなたを心から評価しています。ですが、それと同時にあなたはキヴォトスについて知らなすぎる、とも……」
「この学園都市で学籍を失った子供たちがどうなるか知っていますか?……今回の一件で、カタカタヘルメット団の方々は稼ぎを失いました」
〝!〟
「ヘルメット団は学籍を剥奪され、学校という政府からドロップアウトした方々の集まりです。ですから彼女らは学校からの庇護を受けることができていません。……あなたはそんな彼女らにどのように対応しましたか?」
〝……それは……〟
「まともな事後対応を行っていないのならば、私のようなものに利用されたとしても文句は言えないと思いますよ……クックッ、クックックック……!」
〝……!〟
このようにして、先生との初の会合は終わりを告げました。改めて、私の目的はブルーアーカイブのストーリーを崩さないこと───ではありません。
物語をハッピーエンドへと向かわせ、最低でも、今後三年間の脅威を排除することとなります。
そのために、小鳥遊ホシノの協力を得ることは必要不可欠でしたし、私が黒服として敵意を抱かれることも必須事項の一つでした。
この選択がどう転ぶかはわかりませんが、大人とは『責任を負うもの』ですからね……
ククッ、ええ、その覚悟くらいはあるつもりです。