ようこそCODEエージェントが住まう実力主義の学校へ   作:不知火新夜

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16話

クラスメートの大半から慕われるリーダー的存在としてクラスの為に精力的に活動する清隆と、出ている所は出ている体躯と派手目な髪色に反して大人しく引っ込み思案な為か1人で過ごす事の多い愛里、クラスメート以上の仲にはならなさそうな組み合わせに思える2人だが実を言うと、その関係は決して浅くない、寧ろ親密な仲と言って良いかもしれない。

2人がこうして浅からぬ仲となった切っ掛けは4月の、体育の時間に実施された水泳の授業、その体躯故か男子からの性的な視線を向けられる事に恐怖を覚えていた愛里、水泳の授業ともなれば水着を着用せねばならず必然的にその身を周りに見せる事となり、始まる前からセクハラ?何それ美味しいの?と言わんばかりに欲望丸出しな春樹や寛治達が怖くて見学しようと思っていたが、それをすれば「サボり」と捉えられ評価に悪影響が及び毎月支給されるpptが減らされる、それが自分だけならまだ我慢出来るもののクラス単位で減らされる懸念がある為、クラスに迷惑を掛けられずどうすればと思っていた所に清隆から「一部男子による重度のセクハラがトラウマになった」事を口実とした見学の奨励とその根拠となる診断書発行の斡旋が呼びかけられた。

願っても無い呼びかけに愛里が飛びついたのは言う迄も無い、他の15人の女子と共に診断書の発行を依頼、受け取ったそれを提出した事で自クラスのcptへの悪影響無く見学席に着く事が出来た。

この件で女子達から絶対的な支持を得た一方で一部男子から蛇蝎の如く嫌われる事となってしまった清隆に申し訳ない気持ちがあったものの「あんなコンプライアンスの欠片もない言動をする方がおかしい」と意に介していなかった事からその蟠りも解け、それ以後もクラス単位での勉強会への参加を躊躇する彼女のフォローをする等関係を重ねていき、やがて今日みたいに昼食を共にする間柄となったのである。

そんな最中で起こったCクラスの颯とDクラス生数人とのトラブル、クラス担任である茶柱から朝のホームルームでその連絡があった後、清隆から情報提供が呼び掛けられた際、極一部から首を突っ込むなと反発の声が上がる等、クラスメートから決して良い反応が帰って来なかった中、

 

「あ、あのね摂津君、実は私…」

「佐倉?どうしたんだ一体?」

 

清隆はこの一件を放ってはおけないとして一部からの反発の声に構う事無く対処に当たろうとしている、そう感づいた愛里は教室を後にした彼に声を掛け、懐に入れてあったデジタルカメラを取り出した。

 

「私…あの日、特別棟にいたの。柴田君達の揉め事があったって言う場所の、隣の部屋に」

「…そうか。良く、名乗り出てくれたな、ありがとう」

「ご、ごめんなさい、あの場で手を上げられなくて…」

「いや、寧ろあの場で言わなくて良かったとオレは思うぞ。手を上げていたら堀北辺りから責められていた」

 

それを操作して目当ての画像を清隆に見せながら名乗り出ると、居合わせていた者がいたとは、然もそれが自分のクラスメートだったとは思わなかったのか清隆は驚愕したと言わんばかりに目を見開きつつ、礼を言った。

 

「そしたら、あの場を撮影した動画や画像はオレの端末に送信してくれ。撮影者がお前である事が分からない様に編集した上で、証拠として審議の際に提出して置く」

「ほ、他に何か出来る事、無いかな…」

「いや、お前はこれ以上関わらない方が良い。下手に動いたらDクラスの連中に嗅ぎつかれる。そうなればお前の身が危ない、奴らはそういう連中だ」

「わ、分かった…」

 

尤も清隆の忠告もあり、愛里がこの件で関与したのはこの時だけだったのだが、この時の情報提供こそDクラスが仕組んだ冤罪を暴く決め手になった、審議の結果が言い渡されたこの日のお昼時、そんな愛里の行動を清隆は称えていたのだ。

 

「それはそれとしてだ、本当に今日で良いんだな?」

「う、うん…ごめんね摂津君、巻き込んじゃって…」

「遠慮するな、こうして昼飯を共にする仲なんだから。そんな佐倉がストーカーに付き纏われていると聞いて、放ってなど置けないさ」

 

此処で話題は、愛里に付き纏い行為をしているストーカーの件に移った。

実を言うと愛里は中学時代に『雫』という芸名でグラビアアイドルとして活動、今程じゃないとはいえ当時から中学生離れしたグラマラスボディと可愛らしい容貌でかなりの人気を誇っていた。

とはいえ此処は外部との連絡が禁じられた国立高度育成高等学校、芸能活動は休止せざるを得なくなったもののブログ等での情報発信までは止められていない為、学校内での自撮りを掲載する形で細々と活動していた。

ところがそのコメント欄に同一人物と思われる過激な書き込みが多くなり、然もその内容が高育の敷地内で愛里を見ていなければ書けない様な物、即ちこの高育関係者内に愛里のストーカーがいる事となる。

仲良くなる過程で『雫』の事とストーカーの件に気付いた清隆が仔細を聞くと、どうやらケヤキモールにある家電量販店でデジタルカメラを購入してからそうなったとの事で、それを受けて高育関係者の中でブラックリスト的な情報が生徒会に入っていないか学に確認すると、男性の家電量販店員――楠田(くすだ)ゆきつが過去に女子生徒とトラブルを起こしていた為に要注意人物として情報が入っており、その写真の顔と愛里が家電量販店へ行った際に対応した店員の顔がほぼ一致していた為、今日の放課後にデジタルカメラ用の記録媒体を購入するという名目で家電量販店に出向いて楠田へ警告、従わない場合は制圧、あれやこれや理由を付けて追放させる事にしたのだ。

そうして放課後に家電量販店へとやって来た清隆達は、レジで勤務していた楠田を発見するや否やでっち上げた理由を挙げて懲戒処分が下される危険があると警告、然しながらそれに逆上した楠田が清隆に襲い掛かるも難なく制圧となり、その場で警備員に連行される事となった。

 

(やっぱり、摂津君は凄いな…こんな私にも親身に接してくれて、怖い人にも臆する事無く対応する…私、摂津君の事が…)

 

恐らく愛里に対しての、というより『雫』に対しての物だろう罵詈雑言を叫びながら警備員によって連れ去られてゆく楠田に警戒を解く事無く睨みつける清隆、その後姿を見ながら愛里は、己の心の内に彼への熱い想いが芽生えるのを感じた。

 

――――――――――――

 

そんな事態に清隆達が直面していたのと同時刻、帆波は校舎裏の物陰に来ていた。

登校して来た時に下駄箱の中を見ると手紙が入っていた、というベタな展開で見つけた、この時間に指定の場所に来て欲しい、という内容の手紙を受け取って此処へとやって来たのである。

この手紙を見た当初はDクラス辺りが仕掛けた罠なんじゃないかと一瞬思ったものの、文面の様子からその危険性は感じられないと罠という考えを彼方へと追いやった彼女を待っていたのは、帆波のクラスメートで、淡い髪色の女子生徒――白波(しらなみ)千尋(ちひろ)だった。

 

「手紙、読んだよ。千尋ちゃんかな、此処へ呼び出したの?」

「うん、ごめんね帆波ちゃん。こんな状況の中で、此処へ呼び出して」

「ううん、気にしていないから大丈夫だよ。教室では、クラスメートが居る所では言いづらい事なんでしょ?」

 

颯の件等もあってDクラスへの警戒心があった中で今回の呼び出しをした事は流石に不味かったという自覚はあるのか会って早々に謝罪する千尋だったものの、それでも2人きりになれる、誰かが通りかかる可能性の低い場所で話したいことがあるのだろうと気づいた帆波は気にせず、用件を促した。

 

「わ、私、帆波ちゃんの事が好きなの!私と、付き合って下さい!」

 

帆波に促された千尋は、固めていた決意のままに帆波へと愛の告白をした。

言う迄も無いが千尋は同性愛者で、クラスメートとなった帆波と出会った入学初日、一目惚れしたのである。

とはいえ同性愛者は現代社会において少数派、制度はある程度整えられ、社会的にも少しずつ認知されて来ていると言えどその状況は変わらない、この想いが届く事は無いんじゃないかと千尋は思い悩んだ。

だがクラスメートとして接していく内、出会ったばかりの頃は分からなかった帆波の裏表のない優しさや、不良だらけのDクラスが自分達にいちゃもんを付けて来た頃に教室内へと乗り込んで抗議する正義感の強さ等を目の当たりにし、その想いは強くなるばかり、内に抑え続けるのは耐えられないと、告白する事にしたのだ。

 

「ゴメンね千尋ちゃん」

「え…?」

「告白してくれたのは嬉しいし、千尋ちゃんが半端な決意で私に告白した訳じゃないのは分かる。

 

 

 

 

 

でも、他に好きな人がいるの。多分、千尋ちゃんが私を想ってくれている位か、それ以上に」

「そ、そんな!?その人って…」

「1年Cクラスの、摂津清隆君。千尋ちゃんも知っているよね、柴田君がDクラスから訴えられた時、弁護を引き受けてくれて、柴田君の無実を勝ち取ったばかりか、私達をBクラスへと上げてくれた男の子」

(それだけじゃない。堀北会長から断られていた生徒会役員の話で取次ぎをしてくれたし、それからも事ある毎に相談に乗ってくれた。私と彼は其々のクラスでリーダー的存在、Aクラスの座を争う敵同士。柴田君の件だって見過ごしていたら私達と言う敵が再起不能になって万々歳な筈だったのに、彼はそんなの関係ないと、駄目なものは駄目だと、毅然とした姿でDクラスの悪行を暴いてくれた、自分のクラスがCへ転落する事もお構いなしに。そんな勇敢で、思いやりがあって、いざという時頼りになる摂津君の事が、私は好き)

 

だがその想いが結ばれる事は無かった。

他に好きな人がいるから千尋とは付き合えない、そう断られ、涙を零しながら去って行く千尋。

そんな後姿を見て胸の奥でチクリとした痛みを感じたか、或いは清隆への想いを確かめんとしたか、帆波は1人、胸に当てた拳を握りしめた。




ようこそ、CODEエージェントが住まう実力主義の学校へ――

「これより、本年度最初の特別試験を開始する」

――突如として始まった、特別試験

「思う存分、働くと良い。遠慮する事は無いぞ」

――発揮される、清隆の策略

「摂津君は、その、今付き合っている人とか、いるの…?」

――清隆に集う女子達、そして

「此処はオレ達の、高育の中の世界だ。お前らが来て良い場所じゃない…!」

――ゼッツ、現実に立つ!

第3章『手繰る』
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